あー、だから後付けでいろいろ使う
「よし。まあ、後は実戦で慣らして行けばいいでしょ」
暫く後。俺は休みなし、飯なしでずっとさとりと戦闘訓練をしていた。
「ゔぁー……疲れた」
「お疲れ様」
さとりは座って本を読みながら、指図するだけだったので楽そうだ。なんというか、学校もそうだったけど教える側って楽そうだな。
「そんなわけない。特にこういうのを口で指示するのはかなり難しい」
「本当か?どー考えても楽そうだぞ?お前」
「根っからの妖怪だもの。それも能力がかなり頭に負担がかかるタイプの」
「へ?人の心を読むなんて楽なんじゃないの?」
「あなたにはわからないでしょうね。人混みに入った時に同時にたくさん聞こえてくる心の叫び達を。たまに来る下衆い外来人達の本性丸出しの醜くて野蛮な妄想が大量に流れ込んでくる時の不快さを」
「……まじさーせんっした」
「まぁ、私の事はともかく、あなたこれから泊まるあてはあるの?」
「うーん……ないな」
「じゃあ、地霊殿で泊まっていかない?」
「え?いいのか?」
「えぇ。座布団くらいなら出せる」
「……まぁ、何かしら衣類があるだけましか」
俺はよろよろと地霊殿に入ってみる。
「あ、ちょっと待って。私より先に入ったら」
後ろでさとりが何か言ってるけど、疲労で頭はうまく動いてくれなかった。
その時、
「侵入者発見!」
いきなり目の前に黒い髪、緑のリボンで、身長が高めの女性が現れた。中心に赤い大きな目のような模様がある白いシャツと緑のスカートを履いてて、大きな黒い翼と俺に突きつけてきてる右腕の合金製の何かが特徴だろう。
その女性は俺を強い意志を秘めた目でこっちを見ながら俺に立て続けに言う。
「動くな!動いたら溶かす!」
……斬新な挨拶だった。しかし、何と無くとした勘だが、あの合金製の筒は何か危ない気がする。
「……あの」
「お前はもう包囲されている!」
「いや、ちょっと誤解が」
「誤解も蚕もない!すぐに蒸発させる!」
「ま、待って!お空待って!」
さとりが入ってきた。
お空と呼ばれた女性は、さとりに驚き、右腕を上に向けた。
しっかりと地面を踏みしめて撃ったそれは熱光線らしく、地霊殿の天井に穴を開けた。何と無く、ガンダムバトルユニバースというゲームのラストシューティング仕様のガンダムを思い出した。左腕と頭がなかったら良かったのに……。
「いや、脳内で私のペットを虐殺しないでくれる?」
「え?さとりのペット?このロックマンみたいなの」
「そう!私こそ、さとり様の一番のペット!霊烏路空!」
目の前の黒髪が高らかに宣言する。
すると、柱の傍から赤い髪を三つ編みにした黒い服をきた猫耳少女も飛び出してきた。
「ちょっとお空!一番はあたいよ!」
「何おう!いくらお燐でもその発言は聞き捨てならない!」
「はいはい。喧嘩しない。私は皆同じくらいの愛を与えてるわ」
さとりが二人の背中を撫でつつ、制止させた。
そして、俺に目を向けた後、手で二人を指しながら、紹介した。
「改めて紹介するわ。こっちのヤタガラスが霊烏路空。こっちの火車が、火炎猫燐。二人とも私のペットよ」
そして、さとりは俺を手で指して言った。
「お燐、お空」
「あ、今お燐の事先に呼んだ!やっぱり順位つけてる!」
お空にペースを崩されたさとりはいささかめんどくさそうな顔をしながら仕切り直した。
「……二人とも、これは人間もどきの木亥広星。今日の酉の刻、あなた達がちょうど裏手の源泉の管理をしてる時訪ねてきたのよ」
「なるほど……でも、何の用なの?」
「えっと、外来人なんだけど、ヤマメがここに連れてきた。なんでも弾幕を習いに来たんだって」
「ふんふん」
見る限り、さとりの言葉を全面的に信用しているらしい。まぁ、ただの情報交換らしいし、ちょっとさっきまでやったことを確認しておくか。
俺はぐるりと見回して的を探す。
ちょっと奥にある机は……いや、なんか無駄に偉そうなくせに座高が引くそうだから多分さとりの物だろう。怒られたくはないのでやめとこ。他は特になかったので、仕方なく壁を的にすることにした。
さとり曰く、ここ幻想郷は他の世界とは違い、そこら中に妖力が濃い濃度で漂ってる。それは幻想郷を作ったのがスキマ妖怪だかららしい。
妖怪は特別な回路が身体の中にできていて、空気中の妖力を濾し取り、妖怪や妖精は空を飛べたり、弾幕が撃てたりできるとの話だ。それを無理矢理作る物と麻酔的なものをヤマメは俺の中に流し込んだらしい。ちなみに、自我が有る物全てに、強化するとサイコキネシスとかが使える霊力があって、人間は特に魔力という物がどんな人にもあるらしい。普通の人の中には微弱すぎてそこらの埃さえも動かせないらしいが。まぁ、だから遠くの紅魔館とかで大量の魔力製の赤い霧が出てきた時には、魔力に慣れてない人間が集団引きこもりを起こしたとかなんとか。あと、この世界に神が居るらしいが、神は基本的に人の信仰に比例して強くなる神通力を使ってるらしいので、神社もないような残念な神は河童や天狗に劣るらしい。そして、これらの力は能力とは別に使える者が多いと言う。魔女以外は。
俺はさっき教えてもらったことをロードしながら、そっと壁を見据えて、攻撃命令を出した。
すると、灰色のサッカーボールくらいの大きさの球が飛んで行き、壁に当たって消えた。
うん。弾はバッチリ撃てる。まぁ、弾二つ分、着弾点がズレてたが、始めなんてこんなもんだろう。
次に、少し深呼吸して上を見た。
が、何も起きなかった。
仕方がなく、足を踏みしめ、跳んでから足元に力をイメージする。
妖怪になった時から無駄に脚力がついたらしく頭をぶつけたが、それでもしたいことはできた。そう。落ちるのがゆっくりになったのだ。まあ、理想は空中に停滞することだけど。
「……こんなもんか」
とかつぶやいてると、お燐がこちらに歩み寄ってきた。
「広星さん、部屋の準備ができましたのでこちらに」
お燐はそう言うと歩き出した。
俺は後ろをついて行きながら質問をしてみた。
「なぁ、お燐?」
「なんですか?」
「さとりって偉いんだよな?」
「ええ。ここの主ですから」
「じゃあなんで入ってちょっと歩いた程度の距離に事務机があるんだ?偉い人って建物自体の奥にいるんじゃないか?」
「ああ、あそこに私らがいるより、さとり様がいた方が仕事の効率とかがいいので。さとり様の能力が心を読む程度の能力なので、訪問者の用事がすぐわかるんですよ」
「あぁ。なるほどね。というか、お前猫なのににゃーにゃー言わねえんだな」
「そりゃ、あたいの本質は猫じゃないしね。そういや、広星さんは妖怪としての名前は?」
「うーん……人間もどき?」
「……ダサい」
「そこ!ボソっと本音を言うな!」
「あ、もうここです。この部屋」
話してるうちに部屋についた。
中は六畳の部屋で、妙に古めかしい電灯があった。そして卓袱台にはもうご飯がある。用意が早いことだ。
俺は靴を脱いで部屋に入った。
「それではゆっくり休んでください」
そう言って燐は部屋のドアを閉めた。
「ふぅ……さてと」
俺はドアの鍵を閉めて、リュックサックを置き、いろいろと見る。
中は和風らしく、押入れがあり、中に布団が入ってた。
「なんだ。ちゃんとあるじゃないか」
俺は卓袱台を傍に寄せた後、布団を隅の方にしいてから、ご飯を食うことにした。
そっと箸を手に取り、手を合わせる。
「いただきます」
そして、左手に米が盛ってある茶碗を持ち、トンカツを口に入れた。
トンカツは外はサクサク、中はジュワッと肉汁が出て。ご飯はふんわりと柔らかく。味噌汁は熱すぎずぬるすぎず、程よい温度で味も良かった。が、
「……漬物か」
その目の前にある食物は明らかに子供泣かせの野菜だった。小学校の頃から給食とかで出るたび嫌な思いをしたもんだ。完食しないとお代わりが禁止だから無理矢理牛乳と一緒に流し込んだあの日を今でも思い出せる。
「……うーん。いいや」
俺は漬物を無かったことにして、布団に飛び込んだ。
いろいろあって疲れたせいか、すぐに瞼が重くなった。程なくして、俺の意識は温かい闇に沈んでいった。
ま、漬物は無理…