日本の代表的妖怪
チャリンコに乗って地底を出ると、真っ先俺を迎えてくれたの太陽だった。
「ぐぁ!」
暫く地底の方に居た目には少しその光は眩しすぎて、目を覆う。
ミーンミンミンミンミンミーン……
影が短い事と蝉の鳴き声から、どうやら今は昼頃だとわかる。
ギラギラと降り注ぐ光は、暑かったが、だからこそサッカー部で活動してた中学を思い出させてくれた。
嘔吐するほどの走り込み、どうやっても護れなかった大きすぎるゴール、結局勝てなかった敵達。どれもこれも俺の大事な思い出になっている。
俺は過去を噛み締めながらチャリンコを漕ぐ。行き先も決めず。約束さえなく。
辺りは一面の緑。空気はいつもより美味しくて、雲一つないような青空が俺に生きる実感をくれる。
ふと空を見上げると、黒い流星のようなものが見えた。
そうか。幻想郷だから未確認飛行物体があっても不思議じゃないんだ。
それにしても、ヤマメ達はもうこの空を仰ぐことはないのかな……。地霊殿にいるのはだいたいが嫌われ者で地上から追われた者達だから……。ずっとあそこで過ごすのかな……。
ペダルを踏みしめ、全身で風を感じる。悲しいほどに風が心地よかった。
すると、一際大きい風が急に俺のすぐ横を駆け抜けて行った。
「!?」
何かが横を通り過ぎたのだとわかったのは少し後。痛みはないから風とともに俺の身体の一部を持って行くようなことはないようだ。
「おおっと、これはこれは。外来人さんですね!?」
前を向くと、毛玉がついたとんがり帽子を頭に乗っけて、カメラを首から提げている黒髪の少女がいた。
その身に包んだ確か山伏とかいう人の装備の背中からは漆黒の翼が生えていた。
「どうも。清く正しい射命丸文です。単刀直入に言います。あなた、外来人ですね!?」
射命丸文……か。なんか射命丸ってかっけーから、射命丸って呼ぶか。
「ああ、らしいな」
今は人間をやめたが。
「でも、無縁塚には現れず、地底から現れたみたいなんですけど、そこのところどうなんですか?」
「まぁ、気づいたらあそこにいたし」
「ではでは」
俺は射命丸がさらに話を続けようとしたので、射命丸の言葉を遮ることにした。
「あー、一ついいか?」
「なんですか?」
俺は射命丸の翼を指差し、ずっと気になっていたことを告げる。
「お前それ、暑くないのか?」
「……へ?」
「黒という色は熱をもらいやすいんだよ。だから太陽光に晒すと比較的白より幾分か熱くなりやすいんだ。でもって、取材は構わんがやるならあそこの木陰にしようぜ」
適当なことを言っておく。
正直勉強は苦手だから本当にこうなのかは覚えてない。
この気遣いに特に善意はない、ただ、こいつのペースに乗せられると何かいけないきがする。でも、なんとかこいつをこっちに引き寄せれば何かと便利だろう。TRPGでもマスゴミはうまく使うもんだ。
「あ……はい、そうしましょうか」
と言って、射命丸は近くの木のそばに腰掛けた。俺も並んで腰掛ける。
「それではさっそく」
そういや、一応外来人つったら異世界の住民らしいから、多分こいつはそれを聞きに来たんだろう。
「俺の名前は木亥広星。普通風味の男子高校生で、身長は170。気づいたら地底にいたから、地霊殿というところにお世話になった。今は山にある川の河童を探してる。聞きたいことはこれで終わりか?」
射命丸の方を見ると目を丸くしてた。
「いやはや、驚きました。さとりさんに何かされました?」
「なんというか、馴れ馴れしく話しかけてくるくせに敬語で距離を取っておく。つまり、限られた時間で手短にたくさんの情報を聞き出したいが、肩入れする気はない。そしてカメラをぶら下げてる。というと、仕事は報道関係かな。合ってる?」
「……そこらの外来人とは格が違うようですね。で、そこまで当てて何が目的ですか?」
「情報交換だ。来たばっかりでここが特にわからんからな。地理的情報が欲しい」
「ああ、あなたが探してる山は向こうですよ。ちなみに、あちらの赤い建物が吸血鬼の館、この方向に行くと人里や命蓮寺、迷いの竹林があります」
「ああ、さっぱりわからん。地図くらいは作って欲しいね」
「なるほど、今時の外来人はわざわざ近所の友達の家に行くのに地図が必要なのですか?」
……憶えろってか。
「まぁ……いいや。じゃあさっき言ってた山に行きたいがつれてってもらえないか?」
「わかりました。では、あなたは飛べますか?」
そう尋ねられてもう一回飛ぼうとしてみたが、あんまり速く移動できなかった。
「うん。確かにものになってるが……やっぱり移動する時はチャリンコの方がいいな」
「……本当に飛べるとは……まさか……」
「あ?なんだ?」
「いえ、なんでもないです。では、その二輪車をしっかり持って飛べますか?」
「え?ああ、いいが…」
俺はチャリンコを掴み、浮いたが、さっきより速度は出そうにない。
なんなら歩いた方が速そうだ。
「おい、これ速く動けな……あれ?」
近くにいたはずの射命丸がいなくなっていた。もしかして……おいてかれた?
「あのやろう……」
「動かないでくださいね。指が落ちますよ」
突如、高速で飛んでくる謎の物体が突っ込んできて、俺の襟首と自転車の荷台を掴んできた。
射命丸だった。
射命丸があまり筋肉のついて無さそうな腕で俺と自転車分の重さを持ちつつも高速で移動してるのだ。
「あ、身動きしないでください。皮膚がズルズルになりますよ?」
俺はちらりと地面を見ると、まるで地を這うジェットコースターにのって下を眺めた時のように視界にあるものが動いていた。落ちたら痛いじゃ済まないだろう。
「というか、思いのほか筋肉あるな。お前」
俺は射命丸に聞いてみた。
「私は風を操れるので、幻想郷一速いんですよ?速さは重さ。重さは馬力。それに、どういうルートなら一番効率よく運べるかわかるんです」
とか話してるうちに減速してた。
気づいたら俺は山の中に立ってた。
近くには川が流れてて、一つの研究施設らしきものがあった。
射命丸は川のそばのリュックサックが大きな青い髪で青い防水性の服の少女に話しかけた。
「にとりー。お客さん連れてきましたよー」
「ん?……ひゅい!?人間!?ど、どうしてここに連れてきたんだい!?連絡したら向かったのに」
にとりは俺をみて相当驚いてるらしい。人間嫌いの人間だろうか。まさかこんなに可愛い娘が河童なわけがない。まさか、そんなことは
「あ、広星さん、こちらが河童なあなたの探してた河童、河城にとりですよ」
「ど、どーも。盟友」
河童だったおー^p^
「お、おう。俺の名前は木亥広星だ。よろしく頼む」
俺は手を差し出し、にとりと握手する。
「まぁ、立ち話もなんだし、ラボにきてくれないかい?文は……ってもういないし」
にとりの言う通り、射命丸はもういなかった。
「……そうだな。ちっと一回腰を落ち着かせて、ゆっくりと話そうじゃねえか。んで、お前さんのそのラボとやらはどこにあるんだ?」
「ああ、あれだよ」
といってにとりは一つの建物を指差した。特に飾り気もなく、質素な感じの一軒家だ。
「……思いのほか簡単な作りにみえるけど……本当か?」
「近くに来たらわかるって」
そう言ってにとりは歩き出した。
少年少女移動中…
にとりのラボは近くでみても、何も飾り気がない普通の建物に見える。
白い無機質なコンクリート、茶色の気の扉。まばらに設置された窓。想像とは大違いだ。
「なんか不満そうな顔だね。盟友」
にとりが言いながら扉に近づくと、オートで扉が開いた。
自動ドア……か……。そこそこだな。
そう思い、入り口にチャリンコをとめ、扉を抜けるとビーと警報らしきものが鳴った。
続けざまに誰かの声のような気がするけど、誰のでもなさそうな女声がスピーカーから聞こえてきた。
"警告。警告。能力を検知。誤魔化す程度の能力。危険物の所持を検知。今すぐ確認されたし"
「盟友、ちょっと荷物を預かるよ」
にとりにリュックサックをとろうとしてきた。
「お、おい!何すんだ!」
「花火とか刃物とかあるんだろ?この中、大事をもって没収させてもらうよ。怪しきは罰せよと言うだろ?私はできるだけ警戒を解きたいんだ」
装備がバレてるなら仕方ない……。俺は素直ににとりにバッグを渡した。
「すまないね盟友。でも、水力発電とか、対人里用弾道ミサイルとか、ヅダとか、壊されたらまずいものがいろいろあるんだ」
「ああ、そりゃあ心配にもなるか……人里になんの恨みがあるかは知らんが」
歩きながら話してるうちに応接室らしき部屋についた。
「ああ、そこにかけてくれ」
にとりに言われ、席に座る。
さっそく十分の一スケールのヅダが現れ、そっと俺とにとりに緑茶を出してきた。
それにしても、河童、脅威のメカニズムである。明らかにAIが搭載されてる。もしかしてその辺のSガンダムからALICEを移植したのかもしれんが。
「それで盟友、なんのようだい?」
にとりが本題を切り出してきた。俺もにとりに視線を戻し、携帯を取り出す。
「なぁ、これ。外の世界の携帯電話なんだけどさぁ、草の根妖怪ネットワークに繋げられないか?」
「もちろんできるさ。でも無料ってわけには行かないな。そうだな……二万円ってところかな」
ふむ……。
「……後払いでいい?」
「金が足りないんだね。いいよ。いろいろいじくりたくもありし」
「まぁ、というか、なんか物を買ってくれる店ってどこにあるか知らない?」
「香霖堂のことかい?えーっと、山を降りて、南西方向にだいたい12kmくらいだね」
「わかった。んじゃ、後でまた会おう!」
「ああ、いってらっしゃい」
俺はにとりのラボを出て、チャリンコをおしながら水の流れる方向を見て下流を判断し、歩き出した。
とりあえずいろんな人からごめんなさいしなきゃですね。不快に思われた皆様、誠に申し訳ございませんでした。