「ここかな……」
通りすがりの人や妖怪なんかから道を聞きつつ、やっと香霖堂とやらやついた。森をバックにした和風の家で、狸の置物とか、庭に置く用のちっこいサッカーゴールとか、パトレイバーっぽい何かとかがなぜか外にまで置いてある、店構えとしてこれはどうよというような感じだった。
そして、【春夏冬】とかかれた張り紙の横に入口らしきスライドドアがあった。
「ごめんくださーい」
三拍子でノックする。
すると、中から男の声がした。
「ごめんは売ってないよ」
……。
「ノックしてもしもーし」
すると、中から男の声がした。
「あ、鍵はあいてるから自由に入ってきてくれて結構だ」
「一回目の時点で言えや!」
俺は思いっきりドアを開けてやった。中も物置みたいに乱雑に物が置いてあった。かなり昔のガンプラのパチモンや、マッサージチェアのようなものがあった。
奥まで行くと、白髪のメガネ男が机に座ってた。物腰柔らかそうな男で、なんかリア充してそうな雰囲気でイラっとした。
「君、人にあったら爆発物を構えて脅すように教えられたのかい?」
メガネがなんか言ってるが、なんかその態度がすげえ腹立つ。爆ぜろリア充。
「……まぁ、何があったかは知らないけど落ち着いて……」
「うっせぇ白カビメガネ」
「君は仮にも初対面なのにズバズバと酷いことを言うね」
なんかこの悪口に対する寛容な態度とか、つくづく嫌なやつだ。こういう奴は誰にでも優しくして陰では黒いに違いない。
「さてと、ここは道具の店だ。なんのようだ?」
メガネはあくまで冷静に尋ねてきた。
「うりにきた」
俺はウエストポーチからPSPやその周辺機器を取り出し、メガネの前の机に置いた。
「これは……携帯一人用遊戯機?」
「プレイステーションポータブル。略してPSPだ。型は2000。右下の穴が充電器の差し込み口、上にUSB差し込み口、背面にUMD入れ、左上にメモリースティック差し込み口がある。メモリースティックの中に音楽や動画を入れれば音楽や動画を楽しめる。そして、ワイヤレス通信が可能で、人数分のPSPとUMDさえあればだいたい2〜4人でも遊べる。物によってはPSPだけでも遊べる。そう。なんかにんてんどーやらさんてんどーだが知らんが、DSになど敗れたりしない。PSPはデマゴーグに敗れたのだ」
「うん。なんか空中分解するの?これ」
「んなこたぁない。で、いくらになりそう?」
「ちょっと実用性を見させてもらうよ。どうやってやるんだい?」
「右のツマミを上にスライドさせてくれ。電源がつく。ちなみに、スリープモードも同じ手順、電源を切る時は右のツマミを三秒ほど上にあげたままにする」
えーっと、今UMDは……あ、アレだ。
「それで…えっと、このUMDってやつかい?」
「ああ、基本的にその丸が書いてあるボタンが決定、バッテンが書いてあるボタンでキャンセルだ」
ロードが終わると、画面には赤いメッセージウィンドウ。
メガネがマルボタンを押すと、カリッという音。そして流れるオープニングテーマ。宇多田ヒカルの光。
「これは……ムービーか?絵が綺麗だ……」
キングダムハーツバースバイスリープファイナルミックス。スクエアエニックスとディズニーが合同で送る、アクションRPGのゲーム。前作までとは段違いの量の豊富なアクション、そして感動のストーリーの個人的な名作。立ち位置的にはシリーズ物の0話なんだけど……まぁ、一応バトルアリーナモードはストーリー関係ないからネタバレ無しに戦闘ができるよな。
「dearly belovedだっけか?いい曲だよな。あ、ちょっとかして?」
俺は適当なデータ(Lv45)をロードし、バトルアリーナモードを起動させる。これは本来はオンラインで協力プレイとかミニゲームとかできるんだけど……まぁ、オフラインでいいか。
えーっと、特技スロットには使いやすい奴を〜っと。よし。準備OK。
俺はメガネにPSPを差し出す。
「丸ボタンで殴る。三角ボタンでこっちの世界のスペルカードみたいなの。四角ボタンでローリング回避。アナログスティックで移動して、十字キーでスペルカード選択。Lボタン、Rボタンで視点を動かす。LボタンRボタン同時おしてでロックオン、LボタンRボタン同時長押しで弾幕がうてる。OK?」
「いや?全く?ちょっとやって見せてくれないか?」
と、メガネにPSPが差し出された時には敵がタックルをしようとしてたので、四角ボタンでガードし、カウンターしておく。
「わーった。1ラウンドだけな?」
といっても、ぶっちゃけレベル的にどれがどのコマンドか教えながら闘うのは余裕だけどな。
だいぶ後。
「おい!マグネガ溜まったっぽいぞ!」
「わかってる。でも、もうちょっと引きつけないと……」
コンコン
「十字キー下!もいっこした!うんそれ!マグネガはサンダガと組み合わせてやれ!」
「なるほど……」
ガラララ…
「ボスだぞ!気をつけろ!特に身体が黒くなって目だけ赤くなった後はモーションが追加される!」
「さすがにマグネガは……効かないみたいだ……ん?」
メガネが顔を上げた。つられて俺も前を見る。
目の前にはすこし黄色が入ってるっぽいのと青っぽいの、二種類の色の髪と頭と背中から赤の翼が生えてることが特徴的な少女がいた。
少女は俺達を見た後、開口一番こう告げた。
「……イイッ!」
「!?」
少女は鼻息を荒くし、目を輝かせながら俺達に詰め寄ってきた。
「いい!いい感じの発酵臭です!霖之助さんもすみに置けませんね!どこで彼氏さんを見つけたんですか!?もっとそのゲロ以下の臭いをクンクンさせてください!」
「はぁ!?なにいってんのおまえ!?」
と言いつつ、よくよく自分の状況を観察してメガネから離れる。
さっきまでゲームのアドバイスをしてたが、どうやらヒートアップしてのめり込むように画面をみていた。確かに距離的にBLにも見えなくはないだろう。
「朱鷺子。この人は客だ。ちょっとこの携帯遊戯機の使い方を教えてもらってただけだ」
「またまた〜。そんなこといって〜」
めんどくさいなこいつ。対応が。
ちらっとPSPを見ると、リザルト画面に戻ってた。まぁ、そりゃ死んでるか。
「さてと。なあメガネ。これ、いくら?」
「ふむ……このUMDとやらと合わせて1万5000円ってところかな」
「じゃあ、さらにこれとこれをつけてやろう」
さらに俺はモンスターハンターポータブルとラチェットアンドクランク5を取り出す。
「同じようなアクションゲームだ。これで?」
「じゃあ、1万9000円ってところかな」
「そこをなんとか!2万5000円くらいくれ」
「えー?さすがに厳しいかな」
「じゃあ2万円!」
「それならいい……かな」
「よし売ったぁ!」
「確かに買い取った」
俺は二枚の諭吉を受け取る。
「えー?」
朱鷺子とか呼ばれてた少女が不満げな表情をしてる。
「あ?どうしたんだぜ?」
「折角だからついでに身体売ったりとかしないんですか?」
「宍道湖に沈めてやろうか?あ?」
と言いながら、俺は財布に一万円札を二枚乱雑に突っ込み、二人に背を向ける。
「さて、邪魔したぜ。じゃあな」
「毎度ありー」
「えー?きゃっきゃっうふふ展開はー?」
「は?ねえよんなもん」
俺はガラガラとスライドドアを開けて、チャリンコに跨りゆっくりとペダルを回し始めた。
なんだろ……朱鷺子さん好きな方々誠に申し訳ございません。とりあえず謝辞を。