魔王の村長さん   作:神楽弓楽

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5 「村長と盗賊の骸」

 

「カケルっ! 」

 

「うわっ!? 」

 

 遺体を安置していた村の外れから村に戻っていると道中に天狐に急襲された。

 

 

 麦が生い茂る畑の中から天狐が突然飛び出てきて、油断していた俺は押し倒されて、一緒に道端に転がった。

 

 

「カケル! 一人で溜め込まずに私の胸で泣いてくれたらいいのよっ」

 

「んふぁっ!? 」

 

 目を白黒させて驚く俺の首に天狐が両手を伸ばしてきて、天狐の胸へと掻き抱かれた。

 

 いや、もう抵抗の暇もないくらいの早業で、踏ん張りが効かないくらいの力で、その豊満な胸の谷間へと顔を押し込められた。

 

 

「ん、ん~~っ! 」

 

 ビックリして抜け出そうとしたのが悪かったのか、逃がさないとばかりに抱きしめる力が強くなった。

 天狐の肋骨が感じられるくらいには柔らかさを感じる域を超えた圧力が顔を締め付けてくる。

 

 

 まって、天狐。力強い! 

 

 天狐の両肩に手を置いて引き剝がそうとするけど、ビクともしない。

 むしろさらに力が強くなった。

 

 天狐の胸は確かに柔らかいのだろう。巫女服のような和服から露出した谷間は生肌で、圧し潰されてる俺の顔の両側を隙間なく密着するように胸が圧し包んでくる。声を出す隙間すら埋められる。

 

 

 あっ、そう言えば、天狐の力のステータスは俺よりも強かったわ。

 

 

 と、気づいた辺りで抵抗を諦めた。

 

 

 

 理由はよくわからないが、満足したら解放してくれるだろう。

 

 女性に抱きしめられているという展開は、役得なのかもしれない。

 しかし、どちらかというと大きな犬にのしかかれて一方的に甘えてこられているのに近い。なんというが、嬉しい気持ちもなくはないが、困った気持ちの方が強かった。

 

 

 俺が抵抗をやめて少ししたら、天狐の抱きしめる力が緩み、顔の向きをずらして息を吸えるくらいになった。

 

「ぷはぁ」

 

「大丈夫、だいじょうぶよ。落ち着いて、力を抜いて、よーしよーし」

 

 天狐も感情が最初よりは落ち着いたのか、両腕を首に絡めて片手で頭を押さえつつ、もう片方で俺の頭を撫でるようになった。

 

 それでもガッチリと抑えられていて、天狐の気が済むまで引き剥がせそうにはなかった。

 

 最初の驚きが消えてくると、天狐の体温がダイレクトに伝わってきて、天狐の鼓動がよく聞こえる。

 

 

 温かい。

 

 天狐から伝わる温もりで、自分の顔が思っていたよりも冷え切っていたことに気づく。

 

 自分に意思に反してふっと体から力が抜けて、天狐に身を預けてしまう。

 

 

「あら、ふふふっ。そうそう。力を抜いて、私に身を預けてください」

 

 天狐にもたれかかってしまうと、天狐がそれに合わせて地面に座り直し、俺を抱え込むように抱き留める。手の位置が変わり、天狐の手が背中を優しく叩いてくる。

 

 

 胸に抱かれた顔は天狐の熱が移ったかのように温かく、熱くなってくる。自分の呼気の湿りでしっとりとし、ミルクのような芳香が包み込んでくる。

 

 

 目の周りがひときわ熱く湿り気があると思ったら、いつの間にか俺は泣いていた。

 

 止まったはずの涙が何故出るのかわからなかったが、留めなく涙が溢れてきていた。

 

 

 優しく撫でられる手の心地よさ。

 

 人肌の温もり。心臓の鼓動。

 

 

 張っていた気持ちが緩んでいくのを感じた。

 

 

 

 辛かった。

 どうして俺なんかが

 

 誰かに変わってほしい。

 でも、天狐たちを放って別れたくない。

 

 

 表情が豊かになった彼女たちの顔が悲しいものになって欲しくなかった。

 

 

 でも、どうしたらいいかわからない。

 

 何もかもなくなって

 

 ここがどこで

 

 何が一緒で、何が違うのか、

 

 自分や彼女たちがこの世界の人からどう見られるかもわからない。

 

 

 わからないことばっかで、でもここで生きていくならやらなければいけないことは多い。

 

 亡くなった彼らを弔いたいし、襲った盗賊たちがほんとに全滅したかも確認したい。

 

 

 そして、それを全部投げ捨てて、全部忘れて、元の生活に戻りたいと思う自分がいた。

 

 

 

 

 ああ、なんて自分は情けないのだろうか。

 

 ああ、どうして天狐は、彼らはこんな自分を慕ってくれるのか。

 

 ゲームという仮想の世界で作られた意思を示す彼女たちを相手にしたおままごとに夢中になって、現実での付き合いを蔑ろにしてた薄っぺらな自分なんかを、どうして信頼してくれるんだ。

 

 

 そんなどうしようもない自分でも、そんなどうしようもない自分だから、彼女たちとの関係は失いたくなかった。

 

 

 天狐も、ゴブ筋も、小鴉も、ポチも、ミカエルも、オリーも、頑冶も、黒骸も、操紫も、みんなみんな大事で愛しくて、彼らの笑顔が見たくて、彼女たちの悲しい顔は見たくなくて、活き活きとした働く彼らを見たかった。

 

 

 

 

「カケルは、よく頑張ってる。よく頑張ってる。だから、私の胸の中でぐらい泣いたっていいじゃない」

 

 頭の中でずっと渦巻いていたぐちゃぐちゃだった気持ちが涙と一緒に吐き出されていく。

 

 自分ですら自覚のなかった、無意識のうちに考えないようにしてた気持ちが浮かんでは、天狐から伝わる温もりで溶かされ、背中を叩かれるのに合わせて、涙に融けて吐き出されていった。

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 一体どれくらい天狐に抱かれていたかわからない。

 

 

 気づいたら俺は寝ていて、目が覚めたら、いつぞやの時のように天狐に膝枕をされて、頭を撫でられていた。

 

 

「あ、起きた? 」

 

 

 身動ぎをした俺に気づいた天狐が、撫でる手を止めて、陰をつくる胸を押さえながら覗き込んできた。

 

 俺は天狐の金色の瞳を見続けることができなくて、顔を逸らした。

 

 

 

 先ほどまでのことを思い出して、顔から火が出るような気持ちだった。

 

 

 体を起こして、天狐の方を向く。

 天狐の顔を見れなくて視線を逸らし、胸元に視線を落として、巫女服を盛り上げる白い谷間が目について、明後日の方向に目をやった。

 

 

 顔が真っ赤になっているのを自覚する。顔に熱が集まって熱かった。

 

 

 気持ちを鎮めるために、深呼吸を数度繰り返して、天狐の顔をみた。

 

 

「えっと、その、さっきはすまなかった……いや、ありがとう。天狐のおかげで気持ちの整理がついた」

 

「いいのよ……。カケルに無理をさせてしまったのは、私たちのせいだもの。むしろ、一人で我慢せずに私に身を預けてくれて、嬉しかったわ。すごく」

 

 

 礼をいうと、天狐はほんのり笑みを浮かべ、ふるふると首を横に振った。天狐は、自分を労わるような笑みを浮かべる。その微笑みに耐えれず、視線を逸らして、畑の方に目を向けた。

 

 

 そして、草葉の陰よろしく麦畑にしゃがんで潜んでいた緑顔の鬼面のゴブ筋と黒尽くめの小鴉と、その頭を押さえている赤髪の女こと呉羽(クレハ)と目が合った。

 

 

 

「ぶっ、お前らいたのか!? 」

 

 他の仲間がいるとは思わなかった驚きともしかしてさっきまでのを見られてしまったのかという羞恥で、つい声が大きくなった。

 

 

 俺の叫びで、ゴブ筋と小鴉が気まずそうに立ち上がって、頭を下げた。

 

「村長が心配だった。その……あまり気に病むな」

 

「村長の心中お察しすることができず、誠に申し訳御座いません」

 

「村長、辛い時はわたしの胸も貸すよ? 」

 

 呉羽(クレハ)が気遣わしげに眉根を下げながら、着物の襟を引っ張り、その下の肌をチラリと覗かせる。

 

 

「うむ、オレでよければオレの胸も貸す」

 

「それでしたら、某が、某の胸をお貸し致しますっ」

 

 ゴブ筋と小鴉も何故か、それに乗って自分の胸に手をやる。半裸のゴブ筋の胸筋は厚く、片肌を脱いで鎖帷子越しの薄い胸を見せる小鴉。

 

 

 俺は、彼らから視線を足元に落として、目元を覆う。

 

 

 

 もしかして、最初から全部見られていた? 

 

 

 

 ふと思い返すと、彼らがいた場所は、天狐が飛び出てきた場所ではなかっただろうか。

 

 

 

 バッと顔を上げて、天狐を見やると困ったように苦笑いを浮かべた。

 

 

「カケルが酷い顔で一人にしてくれっていうから心配だったのよ。だから一緒に跡をつけてたの」

 

 

 約束破ってごめんなさいと、申し訳なさそうに天狐の耳がへにょりと垂れる。

 

 

「すまなかった」

 

「ごめんね」

 

「村長の下知を某の一存で違えてしまい、言い訳の余地もありません……」

 

 ゴブ筋たちの方を見ると、揃って気まずそうに頭を下げる。

 いや、小鴉だけは、片肌を脱いだまま地面に膝をつくとおもむろには小刀を抜いた。

 

「かくなる上は、腹を切って詫びる所存」

 

 

 

「いや、そこまで求めてないから!! 」

 

 

 ほんとにそのまま突き刺しそうな勢いの小鴉を慌てて、ゴブ筋に止めさせる。天狐も【神通力】を行使して、小鴉を拘束した。

 

 

「あなたが腹を切ってもカケルを困らせるだけよ。変なけじめをつけようとしない」

 

「……あい、すまなかった」

 

 天狐の見えない力で押さえつけられた小鴉は、天狐の説教に項垂れる。

 古風で堅苦しいだけかと思ったが、まさか侍や任侠みたいな詫びを始めようとは思わなかった。

 

 

 小鴉が落ち着いてくれてほっとする。

 そして、これ以上、自分が一人にしてくれといった約束を破ったことを追求できる空気ではなくなってしまった。

 

 というか、下手に続けたら、今度は小鴉が小指を詰めるとか言い出しかねない。

 

 

「まぁ、いいや。心配してくれてありがとう。でも恥ずかしいからあんまりつけたりしないでくれよ。ところで、今3人とも手が空いてるのか? 」

 

 

「うん、暇だよー」

 

「村長のご命令とあれば、何なりとお申しつけください」

 

「仕事は他の仲間に振っている。手は空いてる」

 

「そうか。じゃあ、ちょっと野暮用を頼まれてくれないか。盗賊たちが全滅した場所に行きたいんだ」

 

 

 俺がそう口にすると、3人とも微妙な顔をした。

 

 

「村長のご命令とあれば、すぐにでも行きましょう。……しかし、村長もあそこに行かれるのですか? 」

 

「うん、行きたいんだ」

 

「えっと、あんまり気分のいい場所じゃないよ? 臭いし、気持ち悪いし」

 

「まだ体調が優れていないのではないか? 」

 

 さっきのやり取りを見られていたのもあって、3人とも俺が同行することに難色を示してきた。

 

「うん、でもちょっと気になるんだ。盗賊たちを見たいっていうのもあるけど、この世界のアンデット化が気になるんだ」

 

 俺が理由を話すと、呉羽(クレハ)が納得の声をあげた。

 

「あー、そういえば何もせずに放置してきたからアンデットとかになっちゃうかもね。村を襲った当人たちだけあってあそこに生じてた瘴気は、なかなかだったからね。朽ちるより先に起きちゃいそうだね」

 

「そういうこと。詳しいことは黒骸(コクガイ)にも同行してもらって、判断してもらいたいけど、前の世界とこの世界でどう変わっているかを自分の目で見てみたいんだ。あと、死体の処理は呉羽(クレハ)の炎でしてほしいんだ」

 

「えー。あーでもわたしが焼き払った方が後腐れなくていっか。ほんとは触りたくないけど」

 

 盗賊の死体は、炎であっても触れたくないのか、呉羽は嫌そうにしながらも渋々頷いてくれた。呉羽の使える炎は、能力通りなら瘴気の浄化効果が高く、瘴気が濃い場ごと祓える。

 

 

「もちろん、無理はしないよ。天狐、一緒に来てくれるか? 」

 

「ええ、もちろん」

 

 後ろを振り返って聞けば、天狐は二つ返事で頷いてくれた。

 

「カケル、一つ聞かせて。今から弔いに行く相手は必要もなく女子供も関係なくここの住人を殺した相手よ。因果応報で土に還ろうが、アンデットに成り果てようが、放っておけばいいんじゃないの? 」

 

 

「弔うというか、村をこんなにした盗賊は俺だって許せないけど、死体がアンデット化して被害を出すようになるのはもっと嫌だよ。だから、確認も兼ねてそうならないようにしにいくだけだよ」

 

 

「……わかったわ。カケルがそういうなら、止めないわ。だけど、気分が悪くなったらちゃんと言ってね」

 

「うん、そうするよ」

 

 

 

 

 天狐たちの説得に成功した俺は、村で暇をしていた黒骸にも声をかけて事情を説明した。

 そして、快く了承してくれた黒骸たちと共に盗賊が全滅した場所へと俺たちは向かった。

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 天狐の【神通力】で、俺は空を飛んでいた。

 

 念力やテレキネシスに近い力で、自分と俺の体を持ち上げて空に浮かんで移動していた。力をこめやすいからと、俺は天狐の尻尾の1本に巻き付かれていた。

 

【神通力】で浮けるのは、ゲームでもできて知ってたが、こんな風に飛べるなんて知らなかった。

【神通力】による浮遊は固定する紐がゴム紐のようなふわふわとした浮遊感があるので、ちょっと怖い。でも、未知の体験でちょっと楽しい。

 

 

 あと、天狐の尻尾はふわふわさらさらで手触りが心地よい。腰から胸元にかけて巻き付いている尻尾を手慰みに撫でているだけで気分が紛れる。これも一種のアニマルセラピーになるのかもしれない。

 

 

 同行している小鴉と呉羽は、自前の翼で空を飛び、黒骸は魔法で飛んでいた。ゴブ筋は、小鴉の背に乗っている。ゴブ筋を乗せるために小鴉は人型ではなく自動車よりも大きな黒い鳥に変じていた。

 

 

「カケル、もうすぐ着くわよ」

 

「え、もう? 早くないか? 」

 

 目的地まで徒歩だと2半刻(5時間)はかかると小鴉は言っていたが、空を飛んでの移動だとあまり時間がかからずに目的地に到着した。

 

 

 空を飛んだ感想としては、浮上する時は、興奮したけど、降下する時は肝が冷えた。

 

 

 目的地に全員が降り立つ。

 

 それなりの距離を飛んでいたけど、誰も疲れた様子はない。黒骸も魔法で空を飛んでいたのにも関わらず、MP総量はほとんど減ってないに等しい。自然回復する魔力で賄えてしまえている。

 

 天狐も俺一人を運んでいても疲れた素振りはなかった。むしろ、地上についても巻き付かせた尻尾を解くのを渋る素振りを見せた。

 

 甘えてくれるのは、悪い気分でもないので、天狐の頭を撫でた。

 

 

 

 

 盗賊たちが死んでいる場所は、村よりも酷い状態だった。

 

 血の匂いや死臭に誘われた獣が派手に食い散らかしていたし、全員の内臓が引きずり出されて食われた跡があちらこちらにあった。小鴉の報告通り軍狼(グルッフ)の死体もあったけど、どれもこれも似たような状態だった。

 

 こんな状態の死体を好き好んで持ち帰りたくはないな。

 村人の死体を持ち帰ってきてくれたポチたち追跡班には、改めてお礼を言っておこう。

 

 

「……予想はしていたとは言え、酷いもんだな」

 

 むせ返る腐敗臭を吸わないよう手で鼻を覆う。

 腐敗臭などで吐き気は相変わらず出てきそうになるが、今回は予想していただけに周りを冷静に見れる余裕があった。

 

 それにこれを為したのが、人ではなく獣というのも大きいのだろう。死者を冒涜するような悪意がそこにないだけで、随分と違うものに見えた。

 

 

 瘴気が濃いせいなのか、死肉を漁りにきた小動物や鳥が瘴気に当たって死んでいた。

 

 瘴気なんていう地球ではなかった気配の感覚、ゲームでもBGMの変化や景色の見え方の変化でしかわからなかったが、村の時も数えて二度目となれば、その不快な感覚を自覚できた。

 

 村で吐いてしまったのは、死体を見ただけではなく、慣れない瘴気の気配に酔ってしまったのだろう。

 

 不快感以外での言葉でうまく言い表すことの難しい感覚だが、長居をしたら体を悪くしそうだった。

 

 

 

「黒骸、この近辺の瘴気の濃度はどうだ? やはりアンデット化しそうなくらい濃くなっているのか? 」

 

「……濃いな。村長の懸念の通り、その可能性は高い。まだなってはいないようだが、瘴気の耐性が低い小動物が死んでいる。時間の問題になっていただろう」

 

 ギリギリセーフってことか? ならさっさと呉羽にやってもらおう。

 

呉羽(クレハ)、【神火】を頼む」

 

「ん。りょうか~い。こんな気持ち悪い場所ちゃっちゃっと清めちゃいましょう! 【神火】」

 

 呉羽(クレハ)は軽い調子で応えると、手元に金色に輝く神々しい火の玉を生み出した。

 

 

「それっ」

 

 ぽいっとそれを呉羽が気安く投げると、火の玉は死体の数だけ分裂し、死体の元に正確に飛んでいった。

 

 火の粉のように小さくなったそれは、死体に触れた途端に一気に燃え広がり死体を包み込む。

 

 炎の色は、煌々と神々しい眩く燃える金色に縁取られた白。

 

 燃え上がった炎からまたいくつか火の粉が飛んで、辺りの肉片や乾いた血に飛び火して燃え上がる。

 

 数分もしない内にそこに死体があった痕跡は、塵一つ残さず燃え尽くされた。

 

 

 不思議なことに周りに生えていた草や地面には、焦げひとつついていない。

 

 

 まるで最初から死体などなかったかのように錯覚さえ覚えるほど、死体とその痕跡は呉羽の生み出した【神火】によって燃え尽くされた。場に漂っていた腐敗臭すら、すっかりなくなっていた。

 

「見事だ。ここの瘴気はすべて掻き消えている」

 

「んふー。清めるのは大得意よ。黒骸もばっちいから一緒に燃えとく? 」

 

「結構だ。我は元より不浄の存在。清める必要はない」

 

 これが【神火】の力か。指定したものだけを燃やし尽くすまで燃える効果は、このような結果になるのか。

 

 

 

【神火】にはミカエルの浄化のように瘴気を祓い、清める効果を持っている。

 先ほどまで、場から感じていた不快感の原因である瘴気は、消えていた。むしろ、【神火】によって焼き清められたここは、心地よさすら感じる。

 

 

(地獄があれば、そこで罪を償うんだな)

 

 死体があった場所を眺めながら、俺は盗賊達に向けて心の中で一言送った。

 

 

 念の為、近辺を捜索して他に死体が無いのを確認し、ついでに役立つ薬草や木材を調達してから俺たちは村に帰った。

 

 





急に異世界飛ばされるわ。愛情注いで育成した仲間たちも一緒にいて、なんか自我あるし、それでも自分慕ってくれるし。でも、ここがどんな世界かわからなければ、どんな危険が潜んでいるかもわからないし、資源を全部失って、どうにか生活拠点をつくらないといけない。なのに、最初に見つけた村は、猟奇的な盗賊の襲撃で壊滅してたし、グロイし、地域住民と交流したいのにお先真っ暗。なにから手をつければいいかわからないし、仲間を不安にさせたくないし、心配かけたくないけど、もうめちゃくちゃだよー(略

と、カケルの精神はかなり瀬戸際なギリギリです。
前話では、彼等の死に向き合えて、気持ちの整理がひとつつけれただけで、他のことはぐっちゃぐちゃです。

改稿前だと、ずっと天狐にすらほとんど頼らず、一人で抱えていたのでぐだぐだしてしまったので、天狐のメンタルケアとかをちょくちょく導入していくことにしました。

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