ウマ娘から競馬に入ったけど、まさかこういうことにリアルタイムで遭遇するとは思いませんでしたね。
「ケホッケホッ、うー、もう流石に無理ですかねぇ」
ベットに寝ており残念そうな笑顔でそう話す老婆は、美しいピンクの髪を持ち、耳と尾を小さく揺らす。
棚には様々な楯やトロフィー、同じような姿の娘と若い男が笑顔で映る写真、少し歳を取り大人びた娘と勇ましく見えるようになった男が子どもに囲まれている写真、老婆とすっかり白くなった髪を弄る老人が沢山の人と笑顔で映る写真、まさしくこの老婆の人生を物語る品の数々が丁寧に鎮座している。
「トレーナーさん……、こう呼ぶのももう五十年以上振りですねぇ」
「そうだな……じゃあ、デジたんって呼ぶのも五十年振りか」
「!? ……トレー……ナーさん?」
「はははは、デジタルはこんなヨボヨボになっても、泣いてるのか?」
「えぇ……えぇ! トレーナーさん! 私たちの孫が今レースを走ってるんですよ、私達と同じように夢を追って」
「そうか、見たかったものだなぁ。デジタルは尊いものを沢山見たんだな」
「勿論です、ウマ娘ちゃんオタクとして、尊いウマ娘ちゃんを追うのは、いつまでもやめません」
トレーナーと名乗る、先程棚に飾ってあった写真の男のような人物が、老婆にデジタルと親しみを持って話しかける。
とてもとても楽しそうな笑みを浮かべる、心なしか少し若くなったようにも見える老婆と話す彼は、少し寂しそうな笑みで会話を続ける。
「もう見れないかもな、デジタルも」
「ふっふっふ! 相方! 忘れてませんか!? 向こうには、オペラオーさんやタキオンさん、それに……カフェさん……だっ……て……皆んな、先に逝ってしまったんですから……」
少女のような笑顔で、オタ活の時の呼び方で、色々と思い返したアグネスデジタルは涙を零した。
「でも……でも、またすぐに逢えるから……、トレーナーさんはどうするんです?」
「デジタルを迎えにきたんだ」
「そう……ですか」
「やっぱり怖い?」
「いいえ、だって私は死にません。ただ、尊いウマ娘ちゃんたちを追いかけるだけですよ」
「強いんだね、僕は怖かったよ」
「みなさんがそちらにいるからというのもありますけどね」
「そっか」
「ええ、それじゃあ相方! また一緒に尊いウマ娘ちゃん達を追いかけましょう!」
「……うん、アグネスデジタル」
「はいぃ?」
「今までお疲れ様でした」
「えぇ、ですが私は生き続けますよ! 皆さんの夢の中でね」
そう言ってピンクの髪を持つ可愛らしい少女は、少し頼りない気もする男性と共に光の向こうへゆっくりと歩き出して行った
勇者アグネスデジタル、戦場を選ばない貴方は空でも勇姿を見せるのでしょう
安らかに眠りたまえ