我々は皆、怪物である   作:西城文岳

22 / 42
第19話 奇妙な教室

 

 稲永はその日、長い張り込みの後で狩った妖怪を燃やして後始末をしていた。

 

「くそ、何度も分裂しやがって」

 

 張り込みの途中で持ってきたガソリンが無ければ今頃大変なことになっていただろう。ここが草木の少ない岩場で助かった。森だったら今頃一面焼け野原だったろう。

 

 炎に抱かれ黒く燃え盛る複数の怪異だった塊を横目に一服する。

 

「ねぇ、らーいぞう」

「またお前か。ヤマダ」

 

 そう言う稲永の口調は前程ではないが少しキツイ。

 

「調子はどう?」

「何の用だ。先に要件を言え」

 

 稲永はたばこの煙を深く吐出しながら問い詰める。

 いつもの調子のヤマダに嫌な感覚を覚えながら。

 二人は決して近づくことなく、何メートルも離れた所で話し合う。

 

「そこまで心配しなくていいよ。今回は別件で動いて欲しくてね」

「何だ?」

「某県K高をちょっと調べて欲しくてね」

「なんだ、そこに神でも出たか?」

「手先がね。今も遠くからだけど見てもらってる。なるべく急いで、面倒なのも出てきたらしい」

「で、その面倒な……」

 

 稲永の質問が聞こえてないかのように、少し姿がブレた瞬間ヤマダは消える。

 

「クソッ、だから詳細を言えってんだ……」

 

 詳細がわからないまま兎に角、高校に向かう稲永。

 その場には地面にこびりついた焼け跡だけが残った。

 

 

 

 

「ここに何があるってんだ?」

 

 稲永がたどり着いた校門前。

 だがその発言は訝しげに言ったのではなく、警告音を鳴らすASを見て警戒して出た言葉だった。

 しかし、このまま壊れた目覚ましのように音を鳴らしても不審に思われる。

 ASの電源を落とす。

 

「さて、どうしたもんか。どうやって捜査すればいい?」

 

 稲永は頭を抱える。何か事件があったことにして、捜査を行おうにもどこの誰がヤマダの言う外来人なのかわからない。ぼろを出して教師に警戒されてしまえば意味が無い。

 

「そもそも、在校生なのか?教師なのか?誰なんだ?」

 

 両手の輪を覗きながら校舎を見る。

 校舎全体が紫の波紋状のオーラに包まれている。

 

「術は一つか?波紋は一つだ」

 

 その波紋を揺らす発生源を探す。

 

「あの教室か?」

 

 目に付いたのは三階にある一つの教室。こっちからでは廊下になっていて何もわからない。

 

「むぅ、どうしたものか」

 

 自身の髭を撫でながら考える稲永。

 腕時計は十二時を指している。

 対象がわからない状態で校舎に入ろうにも先の行動の難易度が高い。

 

「きっかけがあればいいんじゃが……」

 

 稲永は悩んだ挙句、取り敢えず校舎の周りを歩くことにした。校舎内には入らず周りを歩き、何か切っ掛けを探すことにしたのだ。校舎、体育館、プール、運動場。一見普通だ。どこにもおかしな所はない。

 グラウンドで走る生徒。遠くて見づらいが普通に授業が行われているように見える。だが一つの教室だけカーテンが閉め切られている。稲永が波紋、術の痕跡を見た教室だ。

 

「ん?」

 

 その教室の屋上、一人の女子生徒が屋上からこっちを見ている。表情は遠くてよく見えないがフェンスを掴んで立ち竦んでいる。グラウンドを見る限りまだ授業中、そんな時間に彼女は何をしているのだろうか。

 

「何かあるな」

 

 刑事の勘がそう言っている。

 だがそれは稲永の想像より最悪だが。

 

「ハァ……あんまり、使いたくはないんだがなぁ」

 

 折り畳み式の携帯電話を取り出し伏警部に電話を掛ける。

 

「警部、柳にアレを持って来させてください」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。