我々は皆、怪物である   作:西城文岳

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第22話 手詰まり

 

 柳は一瞬にして目の前に現れた校舎に目を奪われた。どこか見覚えがある。

 

「連れて来たよ~!」

 

 ヤマダは明るく校門前に立つ稲永に向けて手を振る。

 

「お前か、アレは持って来たんだろうな?」

「新人クンが持ってるよ~」

 

 稲永が柳に目を向けるが柳は動かない。ずっと校舎を見ている。

 

「柳どうした、とっとよこせ」

「あ、はい」

 

 惚けていた柳は急いで稲永に持って来た木札を渡す。

 

「さぁいくぞ。目標は屋上だ。」

 

「えっ?今、入るですか?」

 

「まだチャイムはなっていない。今のうちに行けばどっかから来た別の教師かなんか

 と勘違いしてくれる」

 

「いや、こういう事は無断でやっていい事じゃ…!」

「そんなもんは後で警部が泣きながらやってくれる。というか元チンピラのお前が何を言う。暴行事件起こしてたお前が言うか?」

 

 柳はその一言で何も言えなくなった。というか稲永にとって、伏警部は完全に雑用係として舐められている。

 

「私はちょっとやる事があるから」

 

 ヤマダがそう言った瞬間、学校のチャイムが鳴る。

 

「急ぐぞ。騒がれても面倒だ」

「警察が不法侵入……」

 

 稲永を先頭に昇降口に入って行く。

 

 

 某県立K高校、柳は校舎を進む。入口傍の階段を上がる。道中何人か生徒と通り過ぎる。彼らは自分たちを学校説明会かインターンシップの人間と勘違いしてのか挨拶を返してくる。柳はとても悪い事をしているような、いたたまれない気分になっている。

 そうこうしているうちにに着いた屋上の扉を稲永が開け放った、が屋上には誰も居なかった。飛び降り防止のフェンスを通り抜け、そよ風が吹き続けている。

 

「どこかにはいるはずじゃが……」

「何が?」

 

 柳は木札を持って来ただけで一切の詳細を知らない。強いて言えば外来人が関係してるくらいだ。

 

「授業中にも拘らずここに居った生徒を見たからここに来た。それだけだ」

 

 辺りを見渡すが誰もいない。

 

「もう降りたんじゃ?昼休みになったから下に降りて、何処かに紛れこんだじゃないですか?」

 

 柳がそう言うと稲永が屋上入口の上を指す。給水タンクが目立つがそれを隠すように後付けの壁が建てられている。

 

「あそこ、誰か隠れられそうじゃないか?見てこい」

 

 言われた通りにそばの壁に付けられた梯子に手をかける柳。

 

 カツン、カツンと一段一段登る。

 

「誰もいないです」

 

 その先には稼働する室外機と色褪せた貯水タンクしかない。そこは誰かが隠れられるような隙間はない。誰かが盛ったのかその痕跡のゴムやその箱が転がっている。柳の眉間にしわが寄っている。

 

「無い……下校時刻まで待つか?ASが使えりゃいいんだが」

「顔は憶えてるです?」

「グラウンドを挟んで屋上を見ていたんだぞ。あんな距離で顔を認識できるか」

「というかそもそも、他に何の手掛かりがあるんです?」

「ねぇよ」

「無い!?」

「仕方ねぇ、あの教室の様子見にでも行くか?だが流石に危険過ぎる。どうしたもんか……」

 

 そう言って二人は屋上を後にしようとした時だった。

 

「貴方たちはここで何してるんですか!屋上は教師であっても使用禁止なんです!」

 

 鋭い眼つきの腕章をした男子生徒が屋上にやってきてこちらに向かって叫んでいた。

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