我々は皆、怪物である   作:西城文岳

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第24話 神聖だった学び舎

 

 生徒指導室、そこは特別棟と教室棟の間、二階の渡り廊下にありその下は昇降口と保健室がある。

 

「失礼します」

 

 柳は職員室に入った時と同じように生徒指導室に入る。

 

「誰だぁ?」

 

 そこで柳を迎えたのは伏と同じような体系だがその肌は浅黒く日焼けし、白髪が目立つ男性だった。

 

「久しぶりです。鍋川先生」

 

 柳は細かい記憶を思い出した訳ではない。だがそれを掘り出す為に彼に話し掛ける。少しばかりその声は緊張で(うわ)ずっていた。

 

「ん?お前?」

「柳です。柳風斗」

「は?え?お前が?」

 

 その教師は信じられ無いモノでも見るかのように目を丸くしていた。それもそうだろう。大学でネックレスなど貴金属を身に着けていたような人間だ。高校も似たようなものだろうと想像はつく。

 実のところ中学の時の柳はそこまで行っていない。夢でも見た高校生であったであろう柳もそこまで行っていない。

 柳が知りたいのは高校から大学までの間の空白の記憶だ。

 

「は、はっはっ……がーっはっはっは!あ、あんな、あんな聞かん坊だったお前が?スーツ着て?メガネ?う、噓だろ?」

 

 最近こんな反応を誰かにされた気がする。

 ともあれ豪快に笑う鍋川に柳は、どう話を進めよか考える。

 

「いいじゃ無いですか、今はこうして就職先を見つけたんですから」

「いやー意外だな。そうか、そっかー」

 

 鍋川先生は非常に嬉しそうだ。

 

「で、どこなんだ」

「なにがです?」

「だから、お前どこに言ったんだ?まさかマル暴の世話になるようなとこじゃないだろうな」

 

 そう柳を小突きながら言う鍋川先生の言葉は笑いながらではあるが威圧感があった。柳には少し不快に思ったが目にも物を言わせてやろうと含み笑いを浮かべながら言う。

 

「それが聞いて驚かないでくださいよ」

「なんだよ~」

 

 たったこのやり取りで想像できる。きっと柳は最後にはこの人と打ち解けていたのだろうと。だがその時の記憶はない。

 

「実は……」

 

 そうして懐から黒い手帳を取り出す。

 

「ほー?ほ?巡査部長?は?巡査部長!?こんな短期間でお前なにしやがったんだ!?」

 

「まぁーちょっと特殊なんですけどね。自分、ここまで昇進いたしました!」

 

 ふざけて敬礼までしてしまう柳。

 

「……」

 

 あんぐりと口を開けて驚いてしまった鍋川。彼は最初とは違う、信じられないと言う驚愕の顔で止まってしまった。

 そして柳はノリでここまでしてしまった為、後のことを何も考えていない。敬礼を行う柳の背中には焦りの汗が流れる。

 

(やっべ、どうしよう……)

 

 怪異やここにいるらしい外来人のことは聴けない。如何にか上手い事、彼にこの学校の異常を聞き出さなければならない。だが柳から見てその異常はどこにも見つからない。

 

「すいません、少々よろしいでしょうか」

 

 そこに真面目な声でやって来た稲永。

 柳は突然やってきた稲永に驚く。稲永は二人の会話に割り込んだ。

 

「あなたは?」

「こいつの上司です。稲永警部補です。実はこの辺りでおかしな事件がありましてね。」

「は、はぁ」

 

 続けざまに起きた突然の出来事で上手く反応出来ない鍋川。

 

「これなんですがね」

 

 そう言って稲永が取り出したのはさっき廊下で拾ったモノ。

 古ぼけたハンカチにくるまれていた。

 

「そ、それは?」

 

 鍋川は糸を引くソレに身を引いている。

 

「これなんですがね、さっきすれ違った先生が落としていったんですよ」

「あ~……またそう言った輩ですか」

「と言いますと?」

「ここ最近誰が使ったのかわからない、そういう痕跡が街中にあるそうなんですよ。まさか教師まで、しかもこの校舎内でも行われているとは……」

 

 鍋川は言葉を濁して言う。

 

「……ん?でもこれって警察が調べることなんですか?」

「まぁ、そこは今のところ捜査状況を簡単にお話は出来ないですが……」

「そうですか……」

 

 稲永は申し訳なさそうに言うがその表情は何かをかんがえているようだ。

 

「まぁそういうことなんだよ。先生」

「そうか、あんな怒りん坊だったお前が刑事か……どうなるかわからんもんだなぁ」

「ホントだよなぁ、ワシもそう思うよ」

「刑事さん、この馬鹿の事、頼みます」

「うるせぇ……」

 

 柳そっちのけで始められた保護者会に、柳は苦虫を嚙み潰したような顔になる。

 だが、部屋に入ってきた人物の言葉で状況が変わった。

 

「今話されてたことについて何ですが、龍造寺様のものですから気にしなくていいですよ」

「ああ、そうか。ということですので、もう大丈夫そうだな、柳」

 

「は?」

「は?」

 

 屋上で会った風紀委員が言った意味の解らない一言で、安心そうに言う鍋川に二人は理解が追い付かない。

 まるで皆が知ってるかのように、龍造寺様とやらが関われば全て問題ないと言わんばかりに、それが当たり前かのように今までと同じように話す彼らはきっと何の疑問もないのだろう。今まで普通だと思っていた人間が一瞬にして変わってしまった、まるで自分たちだけが常識に取り残されたのではないかと錯覚してしまった程の衝撃。

 だが何かがおかしいことは柳と稲永だけが知っている。狼狽する柳とは対称に稲永は深くため息を吐き気、木札を見る。少しづつ焼け、炭に変わりつつあるそれ。時間はあまり残されていない。

 

 ここからがこの学園に現れた異常、狂気の始まり。

 

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