我々は皆、怪物である   作:西城文岳

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第26話 外道と不良

 

 柳は稲永に釣られて出て来た理性の無い生徒達には驚いたが、柳には目もくれず仇であるかのように稲永を追っていった。

 

「マジかよ……」

 

 ヤクでもキめられたような正気ではなく、半裸だった者までいた。すりガラスで見えなかった他の教室ではどのような事があったか。想像もしたくない

 

 柳はコッソリと教室の中を見る

 

 

 

 静かになった教室。

 先程まで荒れ狂った世界は嘘であったかのように静寂に包まれてる。だがその被害者である少女たちは虚ろな眼で教室の隅に横たわっている。

 

「クソっ、なんなんだよあのジジイ……」

 

 自分の思い通りにならない男。それも目の前の異常を気にもかけず、ただ自分に向けて殺意を向けてきたその男に、今まで思い通りに全てを操ってきたこの子供は癇癪を起こした。

 龍造寺は近場にあった肉を蹴る。肉は悲鳴をあげるが彼は気にすることなく蹴り続ける。

 

 柳はその光景がどこかと被る。

 

 (ああ、そうだ、確かあの時も彼女は……)

 

 柳の脳裏には幾つかの情景がフラッシュバックする。

 

 暗い室内で磔にされた彼女。

 それを崇めるローブの狂人ども。

 血に汚れ、気を失った彼女。

 彼女を連れて帰る最中、閉じ込められていた少女たち。

 

 感情が沸々と赤く煮えたぎり、その目の前の人間以下の外道を見つめる。

 こいつ()ここで殺さなければ

 

 

「おい」

「あ?」

 

 龍造寺は声の方向に振り向く。

 

 次に龍造寺が認識したのは鋭い衝撃音と自身が吹き飛ぶ感覚だった。

 

「ガッハアァァ!」

 

 情けない声と共に簡易玉座に顔面からぶつかる。

 積み上げられていた椅子や机が崩れ龍造寺の上に雪崩れ込む。

 

 玉座は崩れ王は威厳を失った。

 

「起きろ、人間相手には負ける気がしねぇんだ」

 

 崩れた玉座から汚物を引き抜き、片手で首を絞める。

 首を掴まれているというのに龍造寺も柳を睨み返す。

 

「てめぇ!何しやがる!」

 

 頭から血を流した龍造寺は制服から素早くスタンガンを引き抜き柳の首目掛けて振るうが、柳は首にナイフが来る前に龍造寺を地面に投げ飛ばす。

 龍造寺は痛みに悶えながらも立ち上がり吠える。

 

「てめぇらが来なければ俺はずっと頂点だったんだ!俺を屑とさげずんだあいつらと同じ人間を復讐していたはずなんだ!」

 

 彼を動かしているのは自分が頂点でなければならないというプライドだろうか、彼がここに来る前にあった出来事への八つ当たりだろうか。だが柳はそれを一蹴した。

 

「他人にそれをぶつけんじゃねぇ!」

 

 柳は叫ぶと同時にナイフを投げる。

 

「うるせぇぇぇ!お前に何が分かる!」

 

 龍造寺は近くの椅子を掴み、それで受け止めて投げ返す。

 椅子には数センチ程、刃が貫通している。

 

 柳の警棒を抜き取り椅子を弾いて、龍造寺に突っ込む。

 椅子に続くよう龍造寺も突っ込み激突した。

 

 スタンガンと警棒。二つが交差する。携帯型のスタンガンの先端に柳の警棒がぶつかる。先端窪みに警棒が捉えられる形で鍔迫り合いが始まる。

 

「てめぇのようなカスがいるから…あの娘のような人が被害者になるんだ…!」

 

 柳は自分でも何を言っているのか解らない。

 あの娘とやらの素顔も何もわからない。予想するしかない。

 朧げの記憶では明確な言葉に出来ないはずなのに、その赤い感情、憤怒だけが柳の口を動かす。

 

「クソ!なんなんだよ……なんなんだよお前!」

 

 そのまま龍造寺を上から押し込み、龍造寺は体勢を崩され尻餅を付く。

 柳は怒りのまま脳天に向けて振りかぶった時。

 

 柳は後ろから殴り飛ばされ龍造寺との硬直が解かれ逃げられる。柳のスーツから残り僅かの木札が落ちる。

 

 目の間には恩師、鍋川が虚ろな眼で木刀を携えて立っていた。

 

「よくもやりやがったな!そこから一歩でも動いてみろ!こいつの命は無いぞ!」

 

 その後ろで動かない少女の首に椅子から回収されたナイフを突き立てる龍造寺。

 柳は今、赤く蠢いた感情が爆発した。

 

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