我々は皆、怪物である   作:西城文岳

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第33話 捜査講座①

 休み明けの月曜、柳は警察と違い民間協力者。(巡査部長だが)

 捜査中は土日も仕事はあるが基本休みだ。

 

 今日からは本格的に捜査に入る。

 

「おはようございます」

「ああ、おはよう。柳君」

 

 柳の入った事務所には伏警部以外にも、もう一人。

 

「女医さん」

「やぁ、柳風斗くん」

 

 いつも通りに黒いマスクを被ってここに居る。外でもその格好なのだろうか。

 

「どうだい?調子は?」

「別に……なんともないです」

「なにかあったらウチに来な。君は今日からあたしのお得意様になるようなもんだからね」

 

 そう言って鴉女医は白衣から名刺を取り出す。連絡先と住所が書かれているだけの紙だ。

 

「名前は?」

「だから好きに呼びな」

 

 名前の書いていない名刺なんて怪しいに決まっている。納得のいかない柳だが黙って懐にしまい込む。

 

「で、今日は何をするんですか?」

 

 初任務というわけではないが柳は自分の鍛えた力を試したくて内心うずうずしている。若気の至りだろう。

 

「それなんだが……無い」

「ない?」

「無い」

 

「……え?ない?」

「うん、無い」

「ほんとに?」

「本当に」

 

 本当に無い。ないのだ、仕事が。

 

「え?噓ですよね!?どういうことですか!」

 

 問い詰める柳に伏警部が顔を逸らしながら言う。鴉女医はマスクの嘴から紅茶を飲んでいる。どういう原理なんだそれ。

 

「前に人手不足と言ったがそれは事件の起こった時の話なんだ。二人で捜査はできんだろう?だがそれ以外の時は基本暇なんだ、私以外」

 

 そう言ってる間に柳は逸らされ続ける警部の顔を追いかけ回りをグルグル走っている。

 

「私は基本おかしな事件がないか署を見張り、上層部の指示や見つけ次第に稲永君にゴーサインを出す係なんだ。つまり事件の無い今、君の仕事はないよ。おととい稲永君が手荒く全部燃やしたからね」

 

 この時、伏警部の脳裏には稲永が怪異や宇宙人相手に火炎瓶を投げながら高笑いする姿が映る。おとといの報告書にも大体燃やしたとしか書かれていなかった。手荒にも程がある。警部が上層部らしき所からの苦情を言われながらもを稲永に始末書を書かしていたのは柳も見た。その一枚には火炎の良さがありありと綴られていた。

 

 これだけ見れば放火魔だ。

 そんな稲永は仕事がないと知ると否やサボるらしい。今日もいない。

 

 柳は拍子抜けだった。それもそうだろう。いざ張り切って仕事をしようとしたら全部終わっているのだから。

 

「え~!?じゃあ今日は何するんですか!」

「そう心配するな、柳君。今日はさっき言ったアレ、怪事件探しだ。君にも覚えてほしくてね。事件を調べる時に足掛かりになることもある。今まで殆どはヤマダクンの持って来たものばかりだっただろ?」

 

 

 

 署内をうろつく伏警部とその後ろを歩く柳。時折見知らぬ刑事からジロジロ見られたが警部は気にする事無く歩みを続ける。

 

「大丈夫なんですか……?」

「君が気にすることは無い。もうすぐだ」

 

 見たことない人間に警戒する人間もいれば物珍しそうに見る人間もいる。

 

「誰だ?あのでかいの」

「おい、前のあいつ六課の……」

「ということは珍しく新人が来たのか」

「どこかで見た記憶があるような…」

「どうせ、あいつも長くないんだろうよ」

「落ちこぼれにしては若くないか?」

 

 数人の刑事が好き放題言うが反応する間も無く伏警部は速歩で去っていく。

 

「警部?警部!?」

 

 柳を置いて行かんばかりに歩いて行く。一体彼はどういう思いでここに勤務しているんだろう。少なくとも好まれてるとは思いづらい。

 

「ここだ」

 

 何事もなかったかのように連れられた部屋は資料室。息を切らす柳。

 彼の署内的地位が低いのは絶対、彼の普段の行いだと思う。

 

「あ、今起きてるのから捜すわけじゃないですね」

「事件自体は一週間で一回有ればいい方だよ」

 

 事件があればいいと形容するのは流石にどうだろうか。

 

 そう言って警部は棚から適当に未解決事件のファイルを三個、取り出す。それを持って先程と同じ様に高速で歩く。

 

「警部!?ちょっとぉ!?」

 

 伏警部は六課事務所でそれを広げ柳に尋ねる。稲永が警部を馬鹿にするのが分かる気がする。

 

「これらは表向きには解決していない事件がある。だがこの中から一つ我々が解決した事件がある。それを探してみてくれ」

 

 柳の嫌いな勉強の時間だ。

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