我々は皆、怪物である   作:西城文岳

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第38話 私が居るから

「フウト、何してるの」

 

 淡々と告げられたその一言に柳は狼狽える。無表情に柳を見据え、はっきりと言う。見開かれた眼は真っ直ぐ柳を見据えている。蛇に睨まれた蛙のように柳は身動きができない。暗い月明かりだけが部屋を照らし、周囲の闇から何が出てきてもおかしくない程、今の姫から出る恐ろしさは計り知れない。

 

「えっと、その……」

 

 柳はしどろもどろに言葉を並べその場をやり過ごそうとうしたが。

 

「ホントの事を言って」

 

 その一言で柳は怯む。落ち着いているようではあるが、怒りが込められているようでもあるトーンで問い詰めてくる。

 

(どうするべきだ?言うべきか?)

 

 少しづつ、精神的に追い詰められて行く柳。

 

 答えずどうするべきか考える中、思考が白く染まる。

 

「ねぇ、”教えてよ”」

 

 白痴の姫、忘却の神。その権能をフルに、柳から答えをひねり出そうとする。

 

「うぐっ…うがぁ……言う、いうから!」

 

 とにかく柳は焦った。このままでは全てを消されてしまう。

 

「曖昧な記憶と勘で、ここに来れば姫の何かがわかると思ってここに来ただけだ!」

 

 悩んだ結果、柳は正直に全てをぶちまけることにした。

 

「この部屋がもしかしたら神になる前の姫の部屋だったかもしれないんだ!」

「ふーん、そっか。」

 

 それだけ言うと彼女は微笑み後ろに手を組む。柳の気はまだ抜けない。

 

「ここがあたしの家だったの?変な家」

 

 あっけらかんと吐き捨てる姫。どうやら姫はここの事を知らなかったようだと、ここでようやく柳は胸をなでおろす事が出来た。

 

「帰って来るのが遅いから心配したちゃったよ。さ、帰ろ!」

「あ、ああ」

 

 いつもの調子に戻った姫に手を引かれ、柳達は夏川家から出る。

 危機は去った、さぁ帰ろう。写真を置いて。()()()()()()()()()

 

 

 

 館を出て、姫と二人で歩く。姫は上機嫌で柳の前を歩く。

 

 振り返って館を見る柳。錆び付いた館が寂しそうに見えるのはなぜだろうか?

 空の月が瞬きしたような気がするのは気のせいだろうか?

 疲れ切った柳は余り元気がない。全て目の錯覚か何かだと片付けた。

 

 館の前に、()()()()()()()()

 

「どうしたの?帰るよ?()()()の家に」 

 

 いつもの調子で言う姫に向き直って、姫が柳の手をつないで帰路に進む。姫が語気を強めたのも気のせいだろう。

 

 館の前で透けた白いワンピースが揺れる。

 その人物は寂しそうに柳の後ろ姿を見つめる。

 

 柳は知らない。彼が分かった気でいる事は氷山の一角。まだ真相には達していないのだ。

 それがわかるのはその当人達だけだ。 

 

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