我々は皆、怪物である   作:西城文岳

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第8話 神秘の印

 

 その日の柳の目覚めは最悪だった。

 

 曖昧な記憶の中、思い出したくても思い出せないそれは柳に困惑を与えた。

 

「おえ」

 

 柳は二日酔いはそこまで強くない体質だがこの吐き気はもっと違う何かだと思った。洗面台の鏡に映る黒い眼は、柳のくすんだ心を見ているようだった。

 

 

 

 昨日と同じようにスーツを着る。

 社会人として想定より少し早く出てしまった。

 今なら何をしていたかを考えようとするが柳は咄嗟のところで止めた。

 

 

 

 指定された8時より少し早く警察署に行く。

 オフィスには伏警部が誰かと話してる。

 

 スーツを着た若い美しい黒いボブカットの女性のように見える。結構楽しそうに談笑している。

 

 軽く会釈をしながらオフィスに入る。

 向こうもこちらに気付いたのかこちらに近づいて来る。

 

「君が例の新人クンか~。あの狸から話は聞いてるよ~?あの即死持ちのスロールを一人で倒したって?やるねー!」

 

 なんだこいつ馴れ馴れし過ぎる。と思った柳はその胸は無いがスーツからわかるそスレンダーなスタイルの良さは…………

 

 

 

 まて、自分はこんな事を思ってないぞ!?

 

 

「あちゃ~君も耐性もち~?まぁ~な~る~ほ~ど~?ここに来れるだけは~?ってあれ?」

 

 彼女は目を見開いて柳の目をのぞき込んでくる。

 

「やめてくれないかね?ヤマダクン。うちの貴重な戦力なんだ。ダメにしてもらっては困る」

 

 そう淡々と語る伏警部は初めて見る冷徹な目だった。

 その威圧感は普段の朗らかさからは想像出来ない。

 

「しょーがないなー?ポンは~。まっいいもん見れたし。バイビー!」

 そう言った後に柳に近づいて

 

「ラブラブだね。君ぃ~」

 

 そう小声で言った後にボン!と音を立てて煙を立てて消える。

 

「え?え!?なんだったんですか!?」

「私の普段使いたくないコネの一つだよ……」

 

 そうつぶやく伏警部の顔は少し悲しそうで悔しそうだった。

 柳はそれよりもさっきの発言の意図が気になっていた。

 

「さて、あのクソアマはさておき稲永君が来たら早速外回りなんだが、その前に色々渡して置こう」

 

 そう言っていつもの調子に戻り、壁際の棚からいくつか何かを取り出す。

 柳は六課関係者、実は全員仲が悪いのではないかと非常に不安だった。

 

 出て来た小道具は全部で七つ。

 警察手帳、警棒、手錠、稲永から渡されたのと同型のナイフ、無線機、

 ガイガーカウンターのような機械、そして……名状しがたき()()()

 

 まず二つ、迷わず聞きたいことがあったが常識的な方を選んだ。

 

「拳銃はないんですか?」

「巡査部長クラスとはいえ君は銃の訓練を受けてないだろ?」

 

 その一言で納得はできた。

 

「で、これなんです?」

 

 これは本当に言葉では形容できない。常に形と色を変えるせいで言葉を見つける度に形が変わる。そして重い。一キロ程の手のひらサイズは変わっていない。

 

「さぁ?」

「さぁ!?」

「あのクソアマが君に渡してくれと」

「大丈夫なんですか…それ……」

「まぁ、あのクソアマとはいえ人間の敵ではないからな。君の役には立つだろう」

 

「え?それってまるであ「おーう!もう来てたのかお前さん!」

「お。稲永君が来たじゃないか。ではお行き。うちの部署に朝礼はないからね」

「えちょ」

 

 柳は聞きたいことだらけだったが稲永に速攻で連れ去られた。

 

 

 

 

 

「さて柳。今日は失踪事件の調査をしながら基本的なことを教える。」

 

 木々の隙間から指す陽の光。夏の終わりとはいえまだ少し暑い。

 KEEP OUTと書かれた黄色いテープを潜り抜けながら稲永は話す。

 

「基本ああいう怪異、異常存在は色々種類がある。幽霊、妖怪、宇宙人、外来人、神など。

 基本的には幽霊、妖怪が怪異と呼ばれ、宇宙人と外来人と神が外的存在と呼ばれている」

 

「それらは何か違うんですか?」

 

 二人は封鎖された森の中を歩きながら喋る。稲永の吸うたばこは取り分け臭いが強かった。

 

「怪異は人間の念が生み出し、外的存在は文字通り何処か別の星、次元からやって来る」

「それらには種類ごとに他にも特性があるが今はいいか。全部殺せば死ぬし」

 

「え?神と幽霊殺せるんですか!?」

「適切な手段を取れば普通に殺せる。死なないのは結構レアなケースだ。」

 

長い山道。二人以外に生き物の気配は無い。

 

「お前さん、前に土座衛門を殺したろ。その前にどこに行っても帰れなかったて言ってたよな?あれはああいった異常存在の使う基本的な術、(しるし)の仕業だ。」

「それがあるとどうなるんです?」

「印は凄く単純で作用は二つ。自らの下に来させ罠に掛ける逃亡不可の呪い、もう一つは、異常存在からの祝福」

「祝福?」

「ああ、奴らごとに効果は違うが基本はそいつの為を思って付けられる」

「そして印は強ければ強い程体に体に浮き出る。お前のガイガーカウンターみたいな奴、Abnormal Sensor(異常探知機)にもそういうのに反応出来るよういじってある」

 

 事件の現場として知らされた伐採場跡前に付いた時、稲永は立ち止まった。

 

 柳のASの針は、ほんの少し揺れていた。

 

「そしてお前さんが土座衛門殺すまで気付かなかったんだが」

 

「お前さん、まだ印付いてるぞ」

 

 そう言って稲永が見せたASは一切針が動いていなかった。

 

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