とあるキラキラしたいウマ娘   作:乾燥海藻類

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第14話 いざ福島

『波乱の天皇賞!』

 

『異例のウイニングライブ中止!』

 

『なんとびっくりマックイーン!? まさかまさかの大降着!!』

 

などと、新聞各紙は好き勝手に書き並べた。

秋の天皇賞で走行妨害(斜行)を行ったマックイーンの処分は、罰金と6ヵ月間の出走停止だった。

これに対してマックイーン及びメジロ家からの異議申し立てはなく、むしろ「公正な判断に感謝します」とメジロ家当主は言ったそうだ。

レース後、マックイーンは出走した全てのウマ娘に謝罪して回った。特に斜行によって大きな影響を与え、最下位となったハニーフィッツには優勝賞金と同等の金額を賠償金として支払うと言ったが、ハニーフィッツはこれを拒否した。

 

「彼女にもプライドがある。正直あのメンバーでは、優勝は難しかっただろうしな」

「そうね。あたしが彼女の立場でも、受け取らないでしょうね」

 

西条の言葉に、ネイチャは静かに同意した。

 

「思えば、マックイーンはレース前からかかっていたのかもしれないな。春秋連覇(1番人気)の期待。ライバル(テイオー)との対決。あと1秒、内に寄るのを我慢していたら斜行にはならなかったかもしれない。焦っていたんだな」

「その気持ち、少し分かるかも」

 

ネイチャもテイオーとの対決は気分が高揚した。ダービーの時はそれが良い方に作用し、菊花賞の時は悪い方に作用した。

 

「マックイーンは元気でやってるのかな? テイオーもあんなんなっちゃったし」

「大丈夫だろう。テイオーも大した怪我じゃなさそうだ」

 

マックイーンは本家から自宅謹慎を命じられた。テイオーも、あのレースの影響で集中力を欠いたのか、練習中に足首を捻挫して年内一杯の休養を発表している。

 

「それよりも、自分のことだろ? とりあえず調子を戻そう。いまレース勘が少し狂ってるだろうからな。気分を変えて福島あたりに行ってみるか?」

「あいあい。りょ~かいです。んじゃまあ、頑張りますか!」

 

ネイチャは軽く伸びをして、気合を入れなおした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月中旬に開催される福島記念は、名前の通り福島レース場で開催される。ネイチャは西条の運転する車の助手席に座り、コースの最終確認を行っていた。

 

「コース全体の高低差は1.9メートルか。スタミナ配分には注意しないとね」

「特に注意するのは、ラジオNIKKEI賞で逃げ切り優勝したツインターボだな。福島の走り方を知っているだろう。たしか前走のセントライト記念でも2着だったはずだ。逃げにつられないようにな」

「ああ、うん。あの子ね」

「知ってるのか?」

「クラスメイトなのよ」

 

ネイチャは何とも微妙な表情で返事を返す。ツインターボは後先考えない大逃げのレースを繰り返してきており、それによってファンもつき始めている。だが相手にするには面倒なウマ娘だった。

 

ハイペースだと思って油断したらそのまま残って優勝したり、逃がすまいとついていったら途中で逆噴射し(バテ)て諸共に撃沈したりと、見る分には面白いレースなのだが、一緒に走るとなれば警戒するに足るウマ娘だった。

ネイチャがそういった総評を口にすると、西条は小さく笑った。

 

「なかなか面白そうなウマ娘だな。まあ、自分のペースを守って走れば勝てない相手じゃない」

 

そんな、世間話ともブリーフィングともとれない会話を続けながら、気づけば福島レース場は目の前に迫っていた。

 

 

 

『本日はあいにくの曇り模様ですが、バ場状態は良との発表です。各ウマ娘ゲート入りが完了したようです。さあ福島記念GⅢ、今スタートしました。1コーナーまでの500メートル、先頭争いですが、やはり飛び出してきたツインターボ。抜群のスタートでぐんぐん逃げる。メインスタンド前を軽やかに疾走していきます』

 

(やっぱ加速力は凄いなぁ、GⅠ並みだよ)

 

逃げはスタートが命だ。出遅れは逃げウマ娘にとって致命的なダメージになってしまう。ツインターボはきっちりと綺麗なスタートを決めてきた。

それを追って何人かのウマ娘が前へと出る。ネイチャは中団あたりに付けていたが、1コーナーを曲がって考え始めた。

 

(思っていたほど早いペースじゃない? ターボのやつ調子悪いのかな。抑えるような性格でもないしな~)

 

『さあ1000メートルを通過してタイムは59秒2。隊列は縦長になっています。先頭はツインターボ。ツインターボが逃げて向こう正面を通過。3コーナーにかかります』

 

その間にもネイチャはスルスルと位置を上げていた。ペースを上げたわけではない。無理に先行していたウマ娘が落ちてきたのだ。

 

(肩が落ちた。こっちに来るから、あたしはこう! うん、見えてきた見えてきた)

 

西条に言われた通り、自分のペースを保ちながら、他のウマ娘を観察する。今回のネイチャは良く見えていた。やはりGⅠレースに出走するウマ娘と比べれば、幾分か分かりやすい動きだ。

 

『最終コーナーを回ってツインターボが先頭で最後の直線に入ります。このまま逃げ切るかツインターボ!』

 

(そうはいかない、よっと!)

 

『1番人気のダービーウマ娘ナイスネイチャが2番手で直線に入ります。残り200メートル余り。逃げるツインターボ! 追うナイスネイチャ! ナイスネイチャ凄い末脚だ。ツインターボを見事差し切ってゴールイン!』

 

ゴールしたネイチャがスタンドに向かって手を振る。その後ろからツインターボが話しかけてきた。

 

「ぜぇ……はぁ……さすがネイチャ。ターボのライバルなだけはあるな」

「あははは、ありがと。てか大丈夫?」

「大丈夫! 次はターボが勝つからな! 次は……えっと、有記念で勝~~~つ!」

「……そうね。じゃあ、有記念で勝負だ! ターボ!」

「おっしゃ~! 顔を洗って待ってろよ~!」

 

そう言ってツインターボは駆けて行った。

 

「顔じゃなくて首でしょ。相変わらずしまらないなぁ。でも有記念か。選ばれるかなぁ、あたし」

 

今回のレース、マークはそれほどキツくなかった。自分がフロック(まぐれ)でダービーを勝ったと噂されていることは、無関係ではないだろう。言っているのは一部のマスコミと過激なテイオーファンだけだということも知ってはいる。

それでも、全く気にしないでいられるほど、ネイチャの精神(こころ)は強くなかった。

 

(勝ち続けないとなぁ。みんなを納得させられるくらいに)

 

勝ちたいという気持ちが強くなっていく。

次のレースは、有記念。

 

 

 

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