しおりを差し込んでくれた方、評価をくれた方、感想をくれた方、ありがとうございました。
第一章の改稿は、ちょっと今の技術じゃ難しそうなので、また頃合いを見計らってやっていきます。
それでは第二章です。
お楽しみください。
【日常編1】変わった日々と変わらない日々
うんと伸びをして、肩の凝りをほぐす。
そして少し蒸れてしまった、耳の穴から細身のヘッドセットを抜いて、一息つく。
「んーー、んっ、あっ…………」
いつもの日常であるぼろっちいアパートの一室。
けれどさっきまでの時間はちょっとだけ非日常。
「……はぁ、配信は楽しいけど疲れるねぇ」
そう、私はさっきまで配信をしていた。金の盾を茜と誓い合って数日が立つが、あれから特別なことは何もやっていない。日々バズってる様々な切り抜きと初日配信アーカイブから流れてくる人の流れに翻弄されながらも、初日に築いた私たちのスタンスは崩さなかった。
というか、編集スキルが無い自分はまだ、ただの垂れ流し配信しかできないのだ。茜に余りの機材を借りているだけいくらかマシといえるだろう。流石にガビガビ音声じゃ人が離れる。
ある程度慣れてきて気が付いたことなのだが、配信は結構気疲れする。
コメントを追うのもそうだし、喋ることと、ゲームを上手くやることを考えているとなかなか疲れる。普通に遊ぶ時の3倍ぐらいだろうか。
「mikanmochiさん、強かったなー」
そして今日の配信は、例の配信における元プレデター1位の大戦犯mikanmochiさんと、同じく大戦犯の私、そして大正義の茜による、EPEX配信だった。配信するのは茜と私。もっとも茜は企画に必要なければ顔出ししない人なので、顔出しは私だけだったが。mikanmochiさんは言うまでもなく顔出ししてない。
私の部屋が殺風景と煽られたり、mikanmochiさんがハーレムと煽られたりでちょっと笑ったが、中々盛り上がった企画だった。
だって、3連続チャンピオンだもの。
ただ、会話の流れには上手くついていけなかった。
そもそも、EPEXの他の配信者がどうとか興味がなかったので、名前を出されてもよく分からなかったからだ。
余りにも知らなかったので、どうやって上手くなったのと疑問視された程だ。
そして配信内で懇切丁寧に説明を受け、他の配信者にもちょっと興味がわいてきたのが今だ
ぼろっちい畳床の上にごろんと寝転がる。
ずりずりと体を這って枕をつかみ、肌触りの良い布団でくるむ。
そして胸と床の間に挟み込み、少し体を浮かせた。
これがスマホ視聴モードだ!!
椅子に座ってみればいいじゃんと思うかもしれないが、寝っ転がることにはまた違った良さがある。
人は横向きで生きるべきなのかもしれない。
重力の向きと床との圧力がなんとやらである。
そんなアホなことを考えながら、掲示板アプリを起動した。
えっ、そこはZowTubeじゃないのかって?
それじゃあ忌憚のない意見が聞けないじゃないですかー。
ここはインターネット老人会らしく、掲示板を活用してみよう。
【ZowTube】Epex Legend総合スレ part201
221:名無しさん:2021/11/12(金)ID:eruhusan
割と最近始めたんだが、おススメの実況者教えてくれ
228:名無しさん:2021/11/12(金)ID:3RoFHqQH6
>>221 一生ROMってろ
228:名無しさん:2021/11/12(金)ID:Cgvpp+B1d
>>221
「やべぇなコイツら、話が通じねぇ」
余りの傍若無人っぷりに思わず笑ってしまう。ふと黎明期のニマ生を思い出す。何を言っても『働け』『うるさい』『キモ』で返される
特に気にせずしばらく待っていると、コメントが帰ってくる。
236:名無しさん:2021/11/12(金)ID:
>>221 マジレスするならRage、世界最強の覇王様やぞ
238:名無しさん:2021/11/12(金)ID:3RoFHqQH6
>>221 ある程度上手くて面白いなら、Vだけど暁月グレンもおススメ
239:名無しさん:2021/11/12(金)ID:Cgvpp+B1d
>>221 初心者にはイースポートの子たちがおすすめアフィ
解説上手くて当サイトでは大麻を〇売していますで面白いぞ
「このバグ挿入みたいな文章は何なんだよ」
変わっていないと思っていた掲示板も、どうやら変わっていたらしい。
知らないスラングが増えているようだ。
ちょっと寂しい。
244:名無しさん:2021/11/12(金)ID:eruhusan
>>236 >>238 >>239 ありがと
暁月グレン以外は知らなかったから見てみる
245:名無しさん:2021/11/12(金)ID:QVWZlxFTh
今ならアーシャちゃんもおススメやぞ
新進気鋭の怪物や
248:名無しさん:2021/11/12(金)ID:eruhusan
そいつはどうでもいいわ
249:名無しさん:2021/11/12(金)ID:b9zJEfcrg
>>248 は?
250:名無しさん:2021/11/12(金)ID:bwlZdFO7n
>>248 氏ねじゃなくて死ね
251:名無しさん:2021/11/12(金)ID:aK/exUC6W
>>248 満場一致の女神さまやぞ
252:名無しさん:2021/11/12(金)ID:nqZaUzp1f
>>248 Rage並に対面強いのに、立ち回りゴリラなんやぞ
あれほどロマンと可能性感じる存在はおらんわ
253:名無しさん:2021/11/12(金)ID:hpweX85og
>>248 一回見てみろって、飛ぶぞ?
254:名無しさん:2021/11/12(金)ID:RMW++sFRr
>>248 さっきまで実況スレしてたからな
255:名無しさん:2021/11/12(金)ID:45DlYHd6P
レス番速すぎて見えんかったよな
とりあえず>>248 は死刑な
死ぬんだぁ………。
スレ番が真っ赤に燃え上がった私は満場一致で死刑になるらしい。自分だから興味ないって言っただけなのにひどい話である。とりあえず最後に一言『草』とだけ残して去っていった。チラシの裏側なんてこれぐらいでいいと思っている。
掲示板で非常に有意義な時間を過ごした後、ZowTubeでいくつか適当な動画を漁っていると、そろそろ夜も深くなってきた。
このぐらいの時間になると、いつもふと思う。
――風呂に入りたいな。
あっちにいた頃は毎日風呂に入っていたわけではない。
けれどお風呂は大好きだ。
これは単純な理由で、風呂に入るのが気持ちがいいからだ。
あの風呂に入った瞬間の、ふわぁっとなる感覚が好きなのだ。
まぁ、このボロアパートの風呂はめちゃくちゃ狭いし、元からあんまり綺麗じゃないのだが。
うつ伏せの状態から起き上がった後、布団で作ったお手製抱き枕を抱えたまま、小さな部屋を更に小さく仕切るパーテーションの向こうに行く。
すると、マシロがノートパソコンに向かってカチカチと何か作業をしていた。
耳をピンと張っているマシロは、尻尾の先に軽く触っても気が付かない。
相当集中しているのか、それとも無視しているのか。
画面をちゃぶ台と胸の間に抱き枕を挟み込み、その余った布団を机の上に垂らし顎の下に敷く。
今度はゆるゆるノーパソ視聴スタイルだ。
きっと机の向こうから見ると、生首がやっはろーしているだろう。
さすがに気が付いたのか、マシロは作業の手を止めて私の方を見る。
「あっ、お姉さま!! 配信が終わったのですね」
「ちょっと前に終わってたけどね………。それより集中してたけど、なにしてんの?」
そう問いかけると、マシロはイヤホンを引き抜いてスピーカーに音声を切り替えた。
そしてカチカチとパソコンを操作し、こういうものを作っていましたと説明する。
『ここでは王者の剣を一定のタイミングで売り払うことにより、金を無限増殖できるという小技があります。王家の品を闇市で売り払う勇者の鑑ですね』
映し出された画面にはRPGゲームの画面と、タイマー、そしていくつかの解説が記載されていた。左下には、愛嬌のある可愛らしい手書きの絵が張り付けられている。
多分マシロの手作りだろう。
所々表情が変わっていることからも分かるが、かなり手が凝っている作りだ。
「……もしかしてRTA動画?」
「あっそうですそれですそれです!!」
目尻を下げて笑みを浮かべ、ご機嫌に狐耳をピクピクさせる。
何を思ったのか、マシロはゆったり実況動画という機械音声による動画を作り始めたらしい。まぁずっと家にいるのも暇だろうし、修行するには場所がないので、何かしらの趣味を持つのはいいことだ。
「セリフ作りは初めてやってみたのですが……これが中々難しく。けれど同時に楽しくもあるのです」
ゆったりの解説動画は凝っていて面白いものが多いのでいくつか見たことがあったのだが、実際に作っているところはあまり見たことがない。なので正直いってかなり興味がある。だから見せてもらうことにした。既にソフトの中には動画データが入っているらしく、あとはセリフと解説を打ちこむだけなのだとか。
「えっと、まず下にセリフを打ちこみます。それで、あとはエンターキーを押せば……」
かなりタイピングが早くなってきたマシロは、素早くセリフを打ちこむ。
すると、ニョキっと動画上に字幕が追加された。
こう見ていると案外楽そうに見える。
そしてシークバーを戻すと、ちょっと変な機械音声が再生された。
『このムービーを見ている時間は暇なので、寝ていても大丈夫です(ホジホジ)』
「ホジホジの発音おかしくない?」
「おかしいですね」
間髪入れずに答えたマシロはちょっと疲れている様子だった。
すかさずセリフをクリックして、何かしらの作業をする。
すると、音声は正常になった。
しかしたった5秒もないセリフに1分近くの時間を要していた。
「いやめちゃくちゃメンドくさいなコレ!!」
「そうですよ!!」
単純計算で、1時間かけても5分しか作業が進まない。
しかもこれカット編集とか、周りの解説とか全部抜きでである。
さらにそれは最低限で、その上で効果音やネタを過不足無く盛り込まなければならない。
……茜からも動画編集はめんどくさいと聞いていたが、改めて確信した。
しかも労力が報われると限らないのがえげつない。
「………それでも、もうpart2までは完成しているので頑張ってみます」
「あっもう完成してるんだ」
どうやら茜の所に行っている間に、RTAを既に走ってしまったらしく、その上既に二つの動画を完成させているのだとか。
そう聞いて見せて欲しいと頼んでみたが、ふるふると首をふって断られてしまった。
「ま、まだ待ってください………。 最終パートまでちゃんと完成してから投稿したいのです」
完成してすぐサイトに投げるのが普通だと考えていたので、その意図を聞いてみた。すると、マシロらしい答えが帰ってきた。なんでも最近とても面白いRTA動画を見つけたのだとか。しかしそれはpart4で投稿が止まっておりとても悲しい思いをしたらしい。なので、全ての動画が完成してからまとめて投げるつもりなのだとか。
正直自分には絶対無理だ。
頑張って作ったのなら、その瞬間人に見て欲しいと思ってしまうだろう。
『この先には難所があります。具体的には12回ほどのリセを挟んだ場所です――』
健気に頑張るマシロを応援しつつ、考える。
これはきっといい兆候なのではないだろうか。
もちろんゆったり動画を編集できるようになったからって、コミュ障が治るわけではない。
でもきっと交流のきっかけぐらいにはなるだろう。
『ん、今なんでもするって言ったよね』
………純白だったマシロが汚れていってしまっているような気がするのは気のせいだと思う。
なんとなく、何故かは分からない、分からないのだが現実逃避したくなったので、お風呂に入ることにした。何の関係もないが若い芽を摘むのは良くないと思う。
抱き枕を投げ捨てて、服をはらりと脱ぎ捨てる。
慣れ親しんだ自分の裸なので、元男だったと言っても何も思わない。
少しばかり胸があるので、脱いでみるとあらためて女の子だなって思うぐらいか。
ウチの風呂は狭い。
そしてお湯のスイッチなんて高等なものはないので、熱湯の蛇口と冷水の蛇口をいい感じで捻るしかお湯を出す方法はないのだ。
お湯を3捻り、水を1捻りがこの頃の黄金比である。
しばしの間クッソせまい浴槽に水を垂れ流し、湯気が上がってくるのを待つ。
最近寒いので、この時間が一番辛い。
魔力節約モードでなければこの程度の寒さなんともないのだけれども。
「………うぅ」
そうして数分ほどたった。
寒さでさぶいぼが立ち、体が縮こまってくる。
しかし、一向にお湯は出てきていなかった。
ここでやっと気が付いた。
ついに給湯器が壊れたらしい。
クソボロアパートめ。
【Tips】アフィ語:金銭主義の行き過ぎたまとめサイトを嫌う掲示板の住人が考案した抵抗術。『ア〇センスクリックお願いします』や『当サイトでは大麻を〇売しています』等の広告提供者側の規約違反に当たる言葉を盛り込み、気が付かずにコピペを行った運営者を通報して収益をはく奪することを目的とする。効果の程は不明。
「ただいまー」
「おかえりー……ってちゃうやろ!! ここはあんたの家やないで!!」
小気味いいノリツッコミに軽く笑いながら改めて挨拶する。
水にぬれた銀髪を軽く乾かして、厚着を着込んで来たのは茜の家。
私の背中に隠れて、同じく着込んだ人間形態のマシロも付いて来ている。
「………ほら、マシロも挨拶」
「…………っ、っぁ………!」
服を握ってしがみついたままマシロは動かない。
戦闘ではあれだけキリっとしているのに、こういう時はダメだ。
「………まぁ、無理せんでええよ」
優しげな声で部屋着の茜は家の中に招き入れてくれた。
靴を脱いで、靴下のまま玄関を上がる。
そして今日泊まる予定の部屋に、大きめのリュックサックを置いた。
「いや、給湯器壊れたんやってね」
「そうなんだよー、水しか出なかった。風邪ひくわ!!」
実のところお湯ぐらいなら魔法で沸かせたりもする。
しかし、風呂を作るとなると、ちょっと難しい。
綺麗で大きなお風呂に入りたい私にとって、それはちょっとだけ悲しい。
魔法で給湯器を直すこともできる。
しかし故障の原因はどうせ経年劣化だ。
時間を巻き戻してもどうせすぐ壊れるので、面倒なことこの上ない。
ところで茜の家の風呂は、私と家精霊が掃除したのでピカピカである。
だったら私にもたまに泊まる権利があるはずじゃあないだろうか!
そんなこんなで給湯器の話をした後、二つ返事でOKを貰ってお風呂兼お泊りに来たのだ。
幸い部屋は空いているし、客用の布団ぐらいはあるのも確認している。
お泊り会、いい響きである。
前世じゃやったことないしね。
修学旅行も1度も行けなかったので、ちょっと憧れだ。
少し心をウキウキさせながら、茜に動画制作の相談に乗ってもらう。すると意外なことにマシロが自分から寄ってきて、椅子に座った。
そして、何故かおもむろにノートパソコンを開く。
意図が分からないので、茜と二人で顔を見合わせた後、改めてマシロを見るが、当の本人はノートパソコンをじっと見つめたまま動かない。
「…………」
作業の続きがしたいのなら、部屋に戻ってすればいい。
そして、用もないのに邪魔しに来るほど遠慮無しな子ではない。
つまり、会話を試みようとしている、これは間違いない。
と、ここで画面をのぞき込んで気が付いた。
「………マシロ、自己紹介できる?」
「…………!」
カタカタっとキーボードを数秒ほど打ちこみ、そして答えた。
『私は雪村真白です。趣味は様々な動画を見ること、あと最近ゆったり実況動画を作ってます』
「おっ、おおおっ」
「マ、マシロぉ…………!!」
その壊滅的コミュ障っぷりを聴いていた茜はあんぐりと口を開けて驚き、私は初めて明確に前進した瞬間に感涙する。なんと、私以外の人間と初めてまともなコミュニケーションが取れたのだ。
もちろん機械音声を通してだが、ネットでのチャットとは違って対面だ。
どうやら、ゆったりのセリフを通して喋る分には問題ないらしく、少しのラグはあるけれど、楽しく話すことが出来た。少し驚いたのは、茜からチマチマ解説を受けていた私よりも、既にマシロの方が動画関連の知識が多かったことだろうか。
突然RTAをやりだして、突然ゆったり実況を始めたマシロ。
そんな前触れまったくなかったのに、一体何があったのだろうか。
一度話してしまえば、話題は尽きない。
だって元々一緒にEPEXで遊んでいた仲だったのだから。
そして、しばらく話していると、お風呂の方から扉が開く音がした。
どうやら、先にお風呂に入っていた葵が風呂から上がったらしい。
少し待っていると、豊満な胸をバスタオルで隠して、艶やかな黒髪を垂らした眠れる森の美女がやってきた。
「………きてたんだ、やっほー」
どこか気だるげな葵は、ろくに体も乾かしてないのでぽたぽたとお湯をまき散らしシルクロードを作っていく。
葵のそんな姿を茜は軽く叱り飛ばす。
「おい葵っ!! ちゃんと髪は拭いてから出ろって言ったやろっ!!」
「どうせ乾くのに?」
「今はお客さんもおるんやで!!」
葵は茜の注意なんてなんのその、そのまま自分の部屋に入ってしまった。
と、思いきや、寝巻に着替えてすぐに戻ってきた。
今度はスマホを持って。
「………マシロちゃん、だっけ? 写真は見たことあったけど。……これは凄い」
葵は遠慮なしにジロジロとマシロを見る。
ここに来るまでは人の姿に変身していたのだが、こっちの部屋に入ってからはすぐに変身を解除して九尾の獣人の姿になっていた。茜も驚かなかったわけではないだろうが、余り興味深々だと嫌がられると思って特に触れなかったのだ。
しかしその辺、葵は遠慮しない。
思わぬ勢いに身じろいだマシロは、またキーを打ちこむ。
『あまりジロジロ見られると恥ずかしいです』
「ん……、そうだね。ごめん」
はっきりと指摘された葵はすんなりと謝った。
いつも興味なさげでそっけない態度のくせに、自分の興味があることには遠慮のない葵だが、本人には決して悪気はないのだ。
「じゃあ、二人のツーショット、撮らせて。作画の練習に使いたい」
「私は別にいいけど………マシロもいい?」
『私も構いませんよ』
特に反対する理由もないので、二人で適当なポーズを取り、写真を撮ってもらう。
さっきまで奥に隠していた興味を表に出した茜と、ほんのりと、しかし普段と比べるとかなり興奮した様子の葵。そんな二人を背に、いくらかのフラッシュを浴びた。
………何故かマシロの尻尾の付け根と耳、私の髪と耳ばかりを念入りに撮られた気がする。
「……ありがと、今度お礼はするね」
「和田銀のすき焼き楽しみにしてる」
「それは無理」
謝意を伝えてくる葵に冗談を返し、そろそろお風呂に入ることにした。
流石にまだ温くはなっていないだろうが、やっぱり早いうちに入りたい。
どっちが先に入るかでマシロと目線を合わせる。
今度のマシロは、キーを打たなかった。
真っ赤で美しいルビーの瞳を少し煌めかせ、しばしの間、私を見つめてくる。
そして、今度は椅子を降りてトタトタと私の横にやってきた。
どうやら、なにか内緒話がしたいらしい。
今度は私から、耳をぷるんとした唇に近づけ、続きを催促する。
すると、コソコソ声で、少し恥ずかし気にマシロは言った。
「お姉さま、……久しぶりに、一緒にお風呂、入りませんか?」
それは数か月ぶりの、癒しのお誘いだった。
【Tips】ゆったり実況:音声合成ソフトを使用したゲーム実況等の動画。歴史は比較的浅く、2008年頃が初出。現在は数多のツールにより作業が比較的楽になっているが、旧来は出力した音声を一つずつタイムラインに張り付けるという地獄の作業を要求されていた。