ダクファン帰りのエルフさんは配信がしたい   作:ぽいんと

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このゲームもうないけどな!
作中ではまだあるってことで
懐古厨だから!


【ペーさんのホームランダービー】地獄の始まり

ハランデイイ

ハランデイイ

きちゃったかぁ…………

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耐久配信すき

アーシャも物好きねぇ

 

初見です

▶ ▶❘ ♪
 
 ⚙ ❐ ▭ ▣ 

【ペーさんのホームランダービー】地獄の始まり【耐久配信】

 12,522 人が視聴中・0分前にライブ配信開始 
 
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 エルフのアーシャ 
 チャンネル登録 

 チャンネル登録者数 198,111人 

 

「えー今日はね、この『ペーさんのホームランダービー』をプレイしていきたいと思います! なんでも最近野球が流行っているらしいですからね」

 

 謎チョイスで草

 学習しない耐久配信

 このゲームもヤバいんだよなぁ

 収益化おめ!

 

 

「あ、収益化おめでとコメありがとう! 暴力的なコンテンツって言われた私ことアーシャですが、なんと今日! 収益化が許可されましたー!!」

 

 嬉しいニュースに自分でパチパチと拍手をすると、コメントも『88888』と反応してくれる。

 

 そう、嬉しいことについに収益化が許可されたのだ。

 収益化が通って初めて、職業配信者を名乗ることが出来る。

 

 自分のチャンネルに今あるのは、短いトーク動画と長いいくつかの配信アーカイブか。

 トーク動画についてだが、簡単なカット編集ぐらいはできるようになった自分がお試しがてら作ってみたものである。これらの反響は思った以上に良かった。

 また、配信アーカイブもかなりの回数、再生されている。

 しかしこれまでは、実は一銭も手元には入っていなかったのだ。

 

「これでやっと生きて行けそうです…………」

 

 今の生活は、言うなれば茜たちに寄生している状態だ。

 いや寄生というとなんだか悲しいから言い換えよう。

 家事を手伝ってあげる代わりに、ご飯代を浮かさせてもらっているのだ。

 

 ¥10,000

 おめでとう! これからもずっと応援するね

 ¥15,000

 前のライブ代です

 ¥30,000

 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

 

 

「うわわわ、ありがとうございます! ………っていうかホント無理しなくていいですからね? あと最後の人はキーボードでも壊れたんですかね…………」

 

 初めてのスパチャである。しかも赤て。嬉しいけど怖い。

 ちなみに今あるアーカイブは既に広告を付けてあるので、収益自体が初めてというわけではない。既にいくらかの収益は発生しているのだが、実は収益というのは貰った瞬間に現金化出来るものでもない。

 確定までは時間があるし、そのあと月に一回銀行口座に支払われる形になるからだ。

 なので貰った収益を実際に手にするのは来月からになる。

 

 まだしばらくは茜たちのお世話になることになりそうだ。

 

「………ちなみにこのゲームもゆいちゃんから勧められたゲームです。なんたってもう少しで遊べなくなるらしいですから」

 

 ちなみにこのゲーム、古き良きフレッシュプレイヤーで出来ていたのだが、ついに2021年でサポートを終了するので遊べなくなるのだとか。

 

「『人生オタワの大冒険』とかやってたんですよね………。あれももう遊べなくなるのかー」

 

 懐かしいなぁ

 なにそれ?

 時々来る懐古すき

 エロフラも遊べなくなるよね…………

 

 

 コメントは全く知らない若年層と、インターネット老人会で分かれているらしい。

 ちなみにこのゲーム、自分は良く知らない。

 好きなVtuberもやっていて気になっていたゲームではあるのだが、意図的に情報を絶っていたからだ。

 しかしもう間もなく消えてなくなってしまうらしい。

 ならやるしかないよなぁ?

 

 あーYwitterで話題になってたな

 ゆいちゃんまともなゲーム勧めたれやww

 操作は簡単だぞ、操作はな

 

 

「不穏なコメントがありますがまぁそれは置いといて、まぁあのクソ壺と違って操作は簡単らしいので、早速やってきますよー」

 

 そう言ってプレイを始める。

『ヒグマのペーさん』を元にしたこの野球ゲームは、ただひたすらタイミングよくバットを振ってホームランを繰り出すだけのゲームだ。

 得点とか、塁とか、防御とか面倒なものは一切ない、野球盤よりシンプルな仕様である。例えば、原作の登場人物の一人であるカンガルーが投げてくる35球のうち、12球を()()()()()すればクリアというわけだ。そしてクリアする度に次のステージに進めるのだとか。

 

「……え? このゲーム簡単じゃない? 超余裕でしょこんなの」

 

 言ったな?

 言いましたねぇ…………

 これはイキリエルフ

 ラスボスまではチュートリアルだぞ

 

 

 コメントの不穏さにちょっとだけびびっていたのだが、壺のような操作性の悪さは全くない。ぶっちゃけ余裕である。

 

「あー、もう完全に理解した。ごめんねぇ、強くってさ?」

「いやー、ヌルゲーでしょこれ」

「流石キッズゲームだねぇ…………」

 

 全弾をホームランし、次々とステージを進んでいく。

 加速する弾だったり、波打つ魔球だったりするが、全然普通に打てる。

 そもそも全開スペックなら銃弾見切って避けられるのが私たち異世界人だ。

 大幅に能力ダウンしているとはいえ、ゲームの球ごとき見切れないはずもない。

 

「え? こんなゲームに苦戦してたの? あの天下のちぬれゆいさんが?」

 

 まだ始まってもないんだよなぁ

 苦戦してたね、ラストで。

 いけるいける

 

 

 全てを芯にとらえてホームランにしていくと、十数分で6ステージまで進んだ。

 そして、6ステージの敵はフクロウのようだ。

 

「まぁ超余裕で――うおっ、なにこれ!」

 

 今までとは全く違う法則で飛ぶ球に思わず面食らってしまう。

 何とこのフクロウが投げる球、横にジグザグするのだ。

 最早シュートとかカーブとかそういう次元じゃない。魔球どころか完全な魔法の球である。

 

 そして何より問題なのだが、はっきり言って滅茶苦茶打ちにくい。

 当てるだけなら何とかなるのだが………、 

 

「えっ、ヒットってカウントされないの?」

 

 されないぞ

 ただの演出でしかない

 RTAだと遅延以外の何物でもない。

 

「えぇ………ホームランしか認めないとか漢かよ。イケメンじゃんか…………」

 

 どうやらこのゲーム、ホームラン以外は一切カウントしないらしい。一応ストライクとファールとヒットがあるのだが、全部カウントされないので違いは全くないのだとか。むしろ毎回演出が入って鬱陶しいのでストライクの方がマシらしい。

 そしてヒットも本来の野球においては重要なのに、ホームランしか認めないその余りに男らしい姿勢から、このゲームの主人公である『ペーさん』は『ペニキ』と呼ばれ恐れられていた。

 

 そんなペニキだが、ここからが本番というのはどうやら本当らしい。

 ジグザグの余りの厄介さに、ここまできて初めて数本を打ち損ねた。

 

「いやおかしいだろその弾! どうやって投げてんだよそれ、もうメジャー行けよ!」

 

 バットの芯に捉えないとホームランが出ないのだが、不規則にジグザグするせいでどこに球が来るのかが分からない。苦肉の策でジグザグの中央にカーソルを当てて撃っているのだが、そうすると今度はカス当たりでヒットかファールしか出ないのだ。このゲームではそれらはゴミに等しい価値しかない。

 

 だから難しかった。

 だがクリアには一切支障はなかった。

 なぜなら35球中19球打てば良いだけだったからだ。

 半分とちょっとホームラン打つだけならなんとかなる。

 

 いやうめぇな

 こっからやぞ?

 トラー来たあああああああああ

 

 

 そしてコメント曰く、お次が本番らしいのだが………。

 

「………ホントに簡単だね。いや、正直壺みたいになんだかんだボロクソになるのかなーって思ってたんだけどさ」

 

 意外なことに、あっさりとクリアしてしまった。

 茜の薦めるゲームなので相当ヤバイと思っていたのだが、今回はそうでもなかったらしい。

 

 うっま

 トラー一発かよ

 消える魔球きつくないの?

 

 

 虎男の投げる球は消える魔球だった。

 しかし、たかが消えるだけだ。

 遅い球と速い球が混じっているので決して簡単ではないが、クリアできないほどではなかった。

 

「よし……これがラストかー」

 

 半刻も経たずにラスボスまでたどり着いてしまった。

 そして、コイツが問題だった。

 

「えぇ………50球中40球ホームランってマジですか。…………しかも消える球とジグザグ両方やってくるとかやりたい放題やってんじゃん」

 

 全種類使ってくるぞ

 39球撃たれても絶対に負けを認めないルビカス

 大正義ルビカスやぞ

 

 

 どうやらヤバイヤバイと言われていたのは、コイツのことらしい。

 何とか撃てる消える魔球はともかく、ジグザグが結構な割合で飛んでくるのがかなり辛い。これが来た時点でヒットやファールになる確率が上がる。そしてそれが11本溜まればゲームセット(屈辱の負け)になってしまうのだ。

 

「………うぐ、やるじゃんかルビン。認めてやるよ。お前は強い」

 

 ああああああああっ

 惜しかった。

 後2球か…………。

 うめぇな。

  

 

 そして初めて自分は土を付けられた。

 全50球のうち、なんとかホームランに出来たのは合計38球。

 ノーミス全撃破には後一歩だけ届かなかった。

 

「ラスボスさん容赦なく強いなぁ…………。てかこの子って確か普通の人間だよね」

 

 普通の子がこんな魔球を投げられるわけないという、自分の素直な疑問にコメント欄から回答が返ってくる。

 

 そもそも元の童話自体がルビン少年の妄想だからな

 妄想だから自分が最強だし、全ての技使えるんだぞ

 RTA of Japanで大罵倒されてて笑ったわ

 ラスボスがルビンなのは、人間こそが一番の畜生であるという鼠の国からのメッセージ

  

 

「想像するのは最強の自分ってとこかー、いややり過ぎっしょ! 強すぎるだろ、もうちょっとなんというか、手心というかさ、あるんじゃないのって話ですよ全くもう」

 

 最初のはビギナーズラックだったらしく、その後は中々上手くいかなかった。

 やっぱりジグザグボールがどれだけ来るかにかかっている。

 

 しかし、前ほど(壺の時)お通夜ムードではない。

 おそらく最初に惜しいところまで行っているからだろう。

 こういう素のスペックで勝負できるゲームは自分有利だ。

 

 そして数時間が経過すること、ついにたどり着いた。

 

「あと、5球! あと5球! 2本打てばいいんだ私!」

 

 ルビカスをあと一歩というところまで追い詰めたのだ。

 

 現在、ホームランは38本で目標まで必要なのは残りたったの2本。

 それに対して、残り球数は5球もある。

 つまり5本中2本撃つだけでいいのだ。

 

 きたああああああああああ

 いけええええええ

 冷静にな

  

 

 ………しかし、容易に進めることは許してくれない。

 

「………くそっ、残り3球か」

 

 2本連続でジグザグボールが来て、ファールになってしまう。

 今度は自分が追い込まれた形となった。

 

 思わず息が荒くなり、ドキドキといった音が体に響く。

 濁流のように流れるコメントを見ていると、ここが正念場であると嫌でも実感する。

 ゴクリと唾を飲み込み、大きく息を吸う。

 そしてゆっくり吐き出した。

 

 そして、撃つ。

 

「――よしっ、後1つ」

 

 狙い通りにホームランになり、クリアに王手を掛けた。

 

 あと2球で、1つだけホームランを打てばいい。

 それだけの話である。

 ………しかし、またジグザグが来てしまった。

 

「…………っ!」

 

 あと1球。

 それなのにここで初めてのストライク。

 もう後がない。

 

「はぁ………はぁ………」

 

 今まで8割打ってきてるはずなのに、どういうわけか打てる気がしなくなってくる。

 ここに来るまで、次はどれくらい時間が掛かるか分からない。

 今自分は気圧されているのだ、ルビカスに。

 

 ここでふと懐かしい感じがした。

 正直自分はあっちの世界では、かなり気の小さい方の人間だった。というか平和な日本で育ったのだから、死と病魔で満ちた異世界で育った人と比べると繊細なのは当たり前だと思う。そこら辺の平民が平然と襲ってきた盗賊ぶっ殺すとか思わんて。

 

 まぁともかくとしてだ。

 だからこそ、頭がハッピーセットな連中に気圧される経験は多い。

 そして、こういう時はどうすべきかも分かっていた。

 

 ――辛い時は、笑うのだ。

 

 無理やりに口角をあげ、獰猛に笑みを浮かべる。

 笑うという行為は本来攻撃的なものとは誰の言葉だったか。

 本心でなくとも相手を見下し、屈服させるぐらいの心構えを持つためには、思いっきり笑うのが一番なのだ。笑うと自然と余裕が出てきたような感じすらしてくる。 

 

 これでも私は過酷な異世界を、偶然とはいえ生き残ってきたエルフだ。

 ゲームの中、増してやこんな場末の雑魚に気圧されるわけにはいかない。

 

 目の前のルビカスが振りかぶり、ボールが手の中から飛び出す。

 

 最後のチャンスに来たのはジグザグボール。

 しかしさっきまでのボールの中に、全く同じ軌道のものがあったとふと気が付く。

 ならばわざわざ中心でとらえる必要もない。記憶の通りになぞればよいだけだ。

 

 さっきまでとは違う位置で振ると、バットの中心に当たった。

 グングンと飛距離が伸びていき、ストンと場外の草むらに落ちた。

 

「よっしゃあああああああ!! ざまみろルビカスうううううううう!!」

 

 やりますねぇ!

 成し遂げたぜ。

 おめでとおおおおおおおおおおお

 ないすううううううううううう

 

 

 高らかに手をあげ、勝利の咆哮を挙げた。

 ソワソワとした達成感が胸の中に満ちていく。

 嬉しさの奔流の中に押し流されながら、今一度大きな勝どきを挙げた。

 

「やったああああああああああ――」

 

 ――ドンッ

 

 しかし勝どきは、仕切りから聞こえた鋭い打撃音で途切れた。

 ひやりと汗が流れる。

 カメラの端より外、仕切りのちょうど外側から、怒気すら纏ったマシロがじとっとした目でこっちを睨んでいた。最近はいつもふわふわしてる可愛いマシロだが、今は珍しく相当不機嫌な様子だ。いったい誰のせいだろう…………。

 

「………ご、ごめんね?」

「…………」

 

 草

 激オコ妹ちゃん

 MASHIROがお怒りになられてる………!

 もっと謝って! ちゃんと謝って!

 

 

 

 後日談だが、ちょうどRTAの記録を更新できそうだった時に私が大声をあげたせいで、ミスして記録ペースをロストしたのだとか。

 それを聞いてしまうと、正直かなり申し訳なく感じてしまう。

 

 マシロは感情的になってつい反射的に壁ドンしてしまったことを謝ってきたが、むしろ自分が完全に悪かったので平謝りしておいた。

 

 だがこれからも配信を続けるなら、音の問題はちゃんと考えておく必要があるだろう。

 少なくともボロアパートの一室で続けるのは、カメラに映る背景的にもどうかと思う。

 

 ガサガサの畳に正座して、薄っすらと冷気の漏れる窓を見ているとどうにも悲しい気分になってくる。思い出すのは茜たちの大きなマンションルームだろうか。

 そろそろ真面目に引っ越しを考えた方がいいかもしれないなと、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

【Tips】収益化:メンバーシップ、スパチャ、広告費等から収益を受け取るために必要な許可。著作物等の切り抜きによる売り逃げ等を避けるため、登録者数1,000人以上かつ総再生時間4,000 時間以上というある程度厳しい条件が課せられている。

 

 

 

 




ちなみに私は血反吐吐きながら勝ち逃げしました。
グッバイロビカス。
願わくば二度と会わないことを。

2021/12/18:チャンネル登録者数を倍程度に増やしました
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