ダクファン帰りのエルフさんは配信がしたい   作:ぽいんと

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【バーガーランド】最高のバーガーを作って食うぞ!

ちぬれとエルフだ!

コラボコラボ!

実写回待ってた!

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大好き!

いいっすねぇ

 

やったぜ!

▶ ▶❘ ♪
 
 ⚙ ❐ ▭ ▣ 

【バーガーランド】最高のバーガーを作って食うぞ!

 19,522 人が視聴中・2分前にライブ配信開始 
 
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 エルフのアーシャ/ elf Asha
 チャンネル登録 

 チャンネル登録者数 203,121人 

 

 

「どもー! それじゃあ今日はバーガーランドやってくぞー!」

 

 いいねぇ

 名作だよねこれ

 だけど何故かやってる人少ないんだよな

 まってアーシャいつもの服じゃないじゃん

 

「いやお前らが臭い臭い言うから着替えたんだろうが!」

 

 これはリスナー達とのネタなのだが、毎日同じフードを被っていた結果、そのフード臭くね?というネタが生まれた。心配になって確認してもらったが実際は臭くはなかった。しかし、リスナー達は気になって仕方ないようだ。

 

「実際臭くはないんやけど、同じ服毎日着続けんのは正直どうかと思うで?」

「いや持ってないんだから仕方ないだろ。………もちろんめんどくさいのもあるけどさ」

 

 単純な話、金がないので服を買ってなかっただけだ。

 もちろん異世界の服は大量に持っているのだが、そもそも材質が蜘蛛の糸とか、竜の髭とか明らかに普通じゃない素材で出来ているうえに明らかに目立つ意匠をしているので、こっちでは着ないようにしているのだ。

 まぁ最近の扱いを見るにコスプレと言い張れば誤魔化せる気もしているが。

 

「みんな思わんか! 今日のアーシャいつもの3倍ぐらい可愛いって。いやー、やっぱ素材だけはええよなこの子」

「だけってなんだよだけって!」

 

 そう言って、私は三つ編みにして編み込まれた髪をくるくると弄る。

 ちらっと配信画面を見ると、銀髪エルフの可愛らしい女の子が恥ずかしさからか少し顔を赤くしていた。

 

 そう、今の格好は普段の男っぽい格好とは全く違う。

 

「………この服、20万人登録者記念に、ゆいにもらったものの一つなんだよ」

「いつものラフな感じもええけど、やっぱこういうのもええわー」

 

 ワンピいいねぇ

 写真集出してくれよ

 かわいいいいいいいいい

 

 

「………っ」

 

 今の自分のスタイルはお洒落さんな茜がスタイリングしてくれたものだ。

 下から順に、スカート、青白のワンピース、あとネックレスに、花柄のバレッタだ。

 青と白というのは落ち着いていて結構好きな色なのだが、今日はどうにも胸がざわつく。

 あまりに女の子っぽい格好に少しドキドキしてしまう。

 

 初めて女装する男の子がこんな気持ちになるのだろうか。

 いや、別に初めてでもないし、今は女の子なんだけどさ!

 久しぶりすぎてちょっと動揺してしまう。

 

「………苦手なんだよなぁ、可愛いっていわれるの」

「あ"あ"あ"ー、その反応がまたええんよ」

「うぅ…………」

 

 どうにも恥ずかしくて目線が泳いでしまう。

 けど、流れる怒涛の称賛を見ていると、多くの人が喜んでくれているのが分かってしまう。それを思うと、更に顔が熱くなり不思議なむず痒いさも強くなっていった。初めての感情に戸惑ってしまう。

 なんなのだろうかこれは。

 

 これが何かは分からない。

 けど、なんだか一度嵌ると戻ってこられなくなりそうな感覚もあった。

 少し怖いね。

 

 そんなことを考えながら、本題に移った――

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 さて、服には一応触れたところで、企画説明だ。

 これは慣れている茜がやってくれる。

 

「今回の企画やけど、ウチとアーシャでバーガー対決するで!」

 

 バーガーランドは、ある街に進出したバーガーチェーン店として、町一番を目指す経営ゲームだ。単純にバーガーを作るだけでなく、それなりに頭を使って経営することも重要らしい。評価が非常に高く、販売数が少なくてプレミアがついているらしい。この企画を考えてから茜は一生懸命に安いものをAmazonessで探していたのだが、ようやく見つけて今日届いたのだ。

 

 ちなみにキャプチャーボードなるものがこのゲームの配信には必要なので、今日は茜の部屋からお送りしている。

 

 リアルでもバーガー作るのか

 二人は料理できるのか?

 ↑アーシャはかなり料理できるぞ、ツイート見ろ

 

 

 このゲームではいくつか自作のバーガーを出品できるのだが、そのうち半分を私が、残り半分を茜が開発して売り上げが多い方が勝利とするのが今回の企画だ。

 そして、リアルで再現バーガーを作るときに、負けた方は費用を負担するというのが今回の企画内容である。

 自分たちはしょっちゅう対決を行っている。

 まぁプロレスの一環でもあるわけだ。

 

「材料費をどっちが出すとしても、作るのは私なんだけどね」

「………アーシャの料理は絶品やからな―期待してるでーー?」

「まぁ私が作って旨いのは当然だけどさ――ってこら手握るな!」

 

 照れてて可愛い

 キマシ?

 リアルで萌えるとは……不覚

 

 

 茜に突然手を握られて思わず照れてしまう。

 葵の快楽調教の一件があってから、妙に茜のスキンシップが増えたのだ。

 勝手に考えを読む気はないので何を考えているかは分からない。

 

「――えぇ、コホン。まぁゆいは料理できないので私が頑張ります」

 

 昔はずっと中華料理屋でバイトしてたので料理の腕には結構自信がある。

 

 この企画、実はこれからの方針における重要な布石だったりする。

 アイリスにも少し相談して、リアルの方向性を調整することにしたのだ。

 

 葵の話でやっと自分のやるべきことを整理した私。

 そして、やっぱり自分のチャンネルの今のスタイルは崩したくないと考えた茜。

 アイリスはあまり良い顔はしていなかったが、方針を決めたことは自体は喜んでくれた。

 

 とりあえず決めたのはジャンルを統一すること。

 

 まず茜と私の共通点として、動画のジャンルがばらけているチャンネルがあまり好きではない。

 だから、少なくとも同じチャンネルでVtuberの配信をすることはないだろう。

 サブチャンネルか、完全に切り離して別チャンネルかはまだ未定だが。

 

 それは私たちに任せるとアイリスは約束してくれた。

 なんとも太っ腹な話である。

 本人はガチ合法ロリだけど。

 

 そしてメインチャンネルについてだ。

 はっきり言って、ゲームだけでは限界があるのはアイリスの指摘通り。

 しかし自分はゲームがやりたいし、もっと面白さを伝えたい。

 そこで、自分は自分の得意で大好きな『料理』と『ゲーム』を組み合わせることにしたのだ。

 

 料理は、3大欲求の一つであり、最も需要があるジャンルだからだ。

 もちろん敵も多いので、普通に勝負するつもりはない。

 

 例えば今回のバーガーランド。

 ゲーム配信や動画で出て来たバーガーをリアル配信で作る。

 そして作るものを決めるのに、動画や配信を活用するのだ。

 

 例えば次回予定のモンファン。

 漫画肉だったり、煮込み料理だったり、美味しそうな料理は枚挙に暇がない。

 

 まだ予想段階だが、正直この企画はかなりハマるんじゃないだろうか。

 勿論全てが上手くいくとは思っていないが、それぞれ単独で勝負するよりはよっぽど勝算があるはずだ。

 

 エルフの女の子が、ファンタジーの料理を再現する。

 作って食べる方の動画ではあまり多くを語らず、世界的に見てもらうことを狙うつもりである。

 そして、その中から興味を持ってくれた人を配信に誘導するのだ。

 

 そして、その先駆けになるのがこの配信というわけだ。

 新たなる一歩、自然と気合が入る――。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「――もうちょっとマシなネーミングないのか?」

 

 血塗れバーガーはねぇだろwww

 絶対食いたくない

 ネーミングどうにかしろ

 

 

「それじゃあエルフバーガーとか?」

「いやそれやとウチの名前が入らんやん」

 

 まず開始前に店のネーミングで揉めている。

 

「血濡れとかいう物騒なワードどうしろっていうんだよ」

「…………せやねぇ」

 

 輸血バーガー

 赤いエルフと緑のたぬき

 レッドエルフバーガーとかどう

 

 

「あ、レッドエルフ良くないですか!」

「リスナーのくせにやるやん」

 

 茜は慣れた手つきでリスナーをあしらう――

 

 

 

 

「――難易度は当然ハードやな」

「だな。私らに最高難易度以外は考えられない」

 

 いやちょっと待てこのゲームのhardはヤバい

 詰むぞ?

 既プレイでもきついのに

 

 どうやら、このゲーム相当難しいらしいが。

 

「いや、ウチは数多のシミュレーションゲームをなぎ倒してきた女やで?」

「ゆいがなぎ倒したのは遊園地の観客だったと思うんだが」

 

 あったなww

 ジェットコースターを観客の列に突っ込ませる奴なww

 あれはまごうことなき†血濡結衣†

 

 難易度と名前を決めると、次に秘書を決めることになった。

 ウサギに、宇宙人、オカマに、成金、アイドル。

 様々な人がいるが、その中で一人だけ目に留まる子がいた。

 

「このこMASHIROのアイコンに似てない?」

「うおおっ似てる似てる!」

 

 言ってしまえば白狐の女の子だった。

 マシロのRTA動画のアイコンは手書きなのだが、何故か自分に似せているのだ。

 そして自分のリアル妹として既にリスナーには周知されているので、ここで話題に出しても問題はなかった――

 

 

 

「――いや、一号店は派手にいくべきだろ!」

「絶対小型店の方がええと思うんやけど、維持費とか」

 

 初店舗の大きさで二人のオーナーが揉める。

 

「……それじゃあじゃんけんで決めるか」

「いいよ? いつまでも負けてる私と思うな?」

 

 自然とじゃんけんで決着をつけることになった。

 ちなみに、喫茶店時代から私は一度もじゃんけんで勝ったことがない。

 リアルラックが最低値なのだ。

 

 しかし、本気でやれば負けない。

 魔力を開放して自身の速度を引き上げると――

 

「よし勝った!」

「う、嘘やろ……アーシャに負けた…………?」 

 

 運とか全く関係なく、動体視力のゴリ押しだ。

 

 ちなみにこれで音ゲーをやると絶対にフルコンボできる。

 しかし全く面白くないしまともにやってる人に失礼なので、私もマシロも絶対にやらないようにしている。

 言ってしまえばサッカーで手を使わないのと同じだ。

 ルールを破ると遊びは途端につまらなくなる。

 

 じゃあなんでじゃんけんは使ったのかって?

 負ける気がしないと調子に乗ってる茜がむかついたからだ。

 所謂わからせである。

 どーんなもんだい!

 

「ゆいにはロマンがないんだよ! いつからそんなつまらない人間になっちゃったんだ!」

「めんどくさいなほんま!」

 

 アーシャが勝ってるの初めて見た

 明日は雷雨か……?

 これは台風待ったなしですわ

 

 ちなみに運の悪さはリスナーにも知れ渡っている。

 ガチャゲー配信で毎回最低保証しか出ないのはある意味伝説だ。

 案件動画とか絶対受けられないと思う。誰もガチャ引かなくなるから。

 

 そして、ゲームをその場のノリと勢いで進める文系肌(ロマン派)の私と、都度都度検証しながら確実に進めていく理系肌(堅実派)の茜の対立も、リスナーの中では結構人気の構図だと思っている。

 こうして配信していると確信するのだが、私と茜とはすごく相性がいい。

 一緒にいて素で楽しいし、自然と笑顔が漏れてしまう。

 

「………ふふっ」

「はぁ大型店舗かぁ……、ん? 突然笑ってどしたん?」

「いや、楽しいなって」

 

 首をかしげる茜に、そして変わるきっかけをくれた葵に心の中であらためて感謝した。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 バーガーの開発も進んできた。

 

 私のバーガーを紹介しよう。

 

 清々しいポークパティ三段重ねの『三段腹バーガー』!

 チーズ、ケチャップ、ベーコン、レタスの、『ヘルシー(ピザ)バーガー』!

 ソーセージ×4、『皿バーガー』!

 

 以上の3点だ。

 

 ちなみに由来だが、チーズは牛から取れるから野菜、ベーコンは草食動物だから野菜、ケチャップはトマトだから野菜というアメリカのピザ理論である。アメリカではピザは野菜だと法律で認められているらしいのでヘルシーで間違ってないだろう。

 そして皿バーガーは、単純にバンズに挟まる4本のソーセージを皿の漢字に見立てただけだ。

 

 そして、そんな私のふざけたバーガーは茜のバーガー群を圧倒していた。

 

「……な、なんでや! ヘルシーやって評価受けてんのに、売り上げではアーシャに負けとる」

「お上品なバーガーなんて誰も食いたくねぇんだよ! リスナーのみんなもそうだよね!?」

 

 まぁそうなんだよなw

 ヘルシーが欲しいならバーガー食わないって

 皿バーガーは流石にどうかと思うが、ある意味ホットドッグみたいなもんか

 

 このゲーム、バーガー製作後に8段階評価で評価が出る。

 しかし色々施設を強化するまでは5~8は取れない。

 そんな中自分のバーガーはどれも3~4の評価を受けていた。

 

 それに対して、ヘルシー志向を意識した茜は2~3を連続している。

 

「……試金石のトリプルダイコーンはどうや!」

 

 挙句の果てにとち狂ったのか、茜はダイコンを3つ重ねて売りつけるという暴挙に出た。

 

「アーシャの大根と鶏肉の煮物旨かったからな。大根は旨いんや……!」

「いや流石にこれは無理があるって、絶対べちょべちょだよこれ」

 

 えっ手料理食べてんの?

 もはや通い妻じゃん

 アーシャちゃんの手料理たべたいなぁ

 

「いや普通のことやけど」

「私も安く済むしちょうどいいんだけどね」

 

 当たり前のことなのだけれど、コメント欄はどうにもざわついていた。

 何か大きな勘違いをされているような気もするが、まぁいいか。

 

 そしてゲームから無慈悲な宣告を受ける。

 

 ――★1

 

「なんでやああああああああああ」

「いやそりゃそうでしょうよ」

 

 ゲームメッセージを読むと、なんと名前を出しただけでも客に嫌がられるとのコメント。

 

「……はぁっ!? 待って売り上げ0やんけ!」

「ハハハハハハハハ! 売り上げ0とか初めて見た!!」

「いや待て! 売れてないのにマズイってどういうことやおかしいやろ! 買ってもないくせに文句言うなやボケ!」

 

 収 益 0 円

 0wwwwwwwwwwww

 消費者はね、誰一人買いませんでした(スゥー)

 

「これはもう格付け完了したかな? 私の勝ちでいいだろこれ」

「いやまって? 原価的にはウチのバーガー結構売れとるからな?」

「未だ赤字だけどね?」

 

 茜が開発費100万をドブに投げ捨てたところで、イベントが発生した。

 このゲーム、デフォルト以外の食材はイベントか開発で調達するしかないのだ。

 

 そして、手に入ったものは――

 

「あっ、滅茶苦茶うまそう!」

 

 ――油淋鶏(ゆーりんちー)だった。

 

 旨そうだけど食材じゃねぇだろwww

 料理する前の鶏肉をもってこいよww

 無能

 

「いや待ってみんな、これ多分結構うまいの作れると思うよ? 中華は特に得意だし」

 

 中華料理には自分は慣れ親しんでいるということを話す。

 すると、茜から質問が飛んできた。

 

「……そういや、どういうきっかけでバイトしてたん?」

「んーー? 親がろくに面倒見てくれなかったから、小さかったころ近所のおっちゃんのとこで良く遊んでたんだよ。でそこから成り行きって感じ」

 

 正直な話、幼かったのでちゃんとしたきっかけは覚えていない。

 面倒見のいいおっちゃんだったが結構強面で恐れられていたらしい。

 自分は一切気にしていなかったのだが、周りの大人が教えてくれた。

 

「……ある意味じゃ親代わりみたいなもんだったかな。厳しいとこもあったけど、おかげでちゃんとしたご飯を食べられるようになったし」

 

 父親が買ってくるのは酒のアテみたいなものばっかりだったので、おっちゃんの賄いは自分にとっては重要だったのだ。

 

「……子供がいたらしいんだけど、昔に出ていったって言ってたなぁ。だからか実の子供でもないのにお店を継がないかーなんて言われてたよ。まぁ諸事情で日本を離れることになっちゃったから無効になっちゃったんだけどね」

 

 自分が学校を辞めたのもこの辺がきっかけだったりする。

 辞めてもなんとかなると思うと、嫌な奴しかいなかった学校に行く意味が見いだせなくなってしまったのだ。

 ちょっと余計に語ってしまったので、明るく締めくくることにする。

 

「まぁそういうわけで! 店任されるぐらいには大得意なわけですよ!」

 

 なるほどなぁ

 めっちゃええおっちゃんやん

 こんなかわいい近所の子おったら嬉しいやろなぁ

 

 こっちに帰ってきたときも、父親より先におっちゃんを探したぐらいだ。

 一言ぐらいおっちゃんにお礼と詫びを言いたかったのだが、見つからなかった。

 

 ………ちなみに、分かっていると思うが自分の前世は男である。

 だから視聴者の思っているような感じとはちょっと違うはずだ。

 そんなことを考えながら、新たなバーガーを作る。

 

「――というわけでこれに社運をかけます」

 

 作ったのは、油淋鶏、レタス、きゅうり、油淋鶏の構成の――

 

「――アーシャバーガーだ!」

 

 絶対美味しいし、自分のアイデンティティにも関わるので、自分の名前を付けることにした。

 

 おお社運かけてるな!

 ここで賭けちゃうかーー

 出来合い品はちょっと…………

 

「いやもう魂込めて作りましたからね。絶対旨いですよこれ、流行るの間違いなしです」

「いや……多分このゲームの仕様的にあかん気が………」

 

 しばしの間待って、バーガーの評価が出る。

 

 ――★2

 

「なんで!? 絶対美味しいってこれ!」

 

 社運を賭けた渾身のバーガーは自己最低評価を更新した。

 

 草

 やっぱりそうなるかw

 うーん、これはゴミ!w

 このゲーム出来合い品入れると評価絶対下がるんよ

 

「ええ………」

 

 そして、経営状況が更に悪化する。

 

 後で知ったのだがこのゲーム、大型店舗は基本地雷らしい。

 相手の店舗を潰すために使う程度で、普通は小型で十分なのだとか。

 つまり、経費ばかりがかさんで、お金が一切溜まらない。

 

 たまらないどころか茜と自分のバーガーで赤字が加速していく。

 そして、ついに資金が尽きてしまった。

 

「……も、もう店売るしかないやろこれ」

「どどどどうしようこれ! 潰れるって!」

 

 そして店舗を小さくする。

 

 しかしこのゲームの悪意がここでも牙をむく。

 人が多くて敵の少ない場所を的確に選ばなければ、大赤字になるらしい。

 そして大型店舗の売却で得た僅かな資金は瞬く間に底をついた。

 

 最期に残った店を売却する。

 もう、1店舗も立てる余力はない。

 

「ははははは、終わったわこれ………」

「へへへへへ、どうしようもないねこれ………」

 

 遠い目を浮かべて視聴者と最期の時を待っていると、ふとイベントが始まった。

 

 出てきたのは社長秘書の狐耳少女。

 勝手にMASHIROと名付けていた彼女は、自身の昇給を要求する。

 

『さて、年に1回の社員昇給です。昇給期待しています!』

 

 二人で顔を見合わせる。

 

「なしに決まってんだろMASHIROォ!!」

「状況わかっとんのかコラァ!!」

 

 当然昇給なんてしてやるわけない。

 当たり前だよなぁ?

 

『ひどいです! これだけ粉骨砕身して働いているというのに………!』

 

「こちとら売り上げ0やぞ! この状況で給料泥棒してんじゃねぇ!」

「そうや! もうあと二か月でウチの会社潰れるんやで!?」

 

 お前らをクビにしろよww

 無能CEOを持ったMASHIROちゃんかわいそう

 あのさぁ………

 ひどいです………(MASHIRO)

 

 やべぇ本人いた。

 

「あっ、ちちがうんだよMASHIRO?」

「せせせやでー、言ってるのはゲームの中の無能な秘書のことやでー」

 

 そして必死にMASHIROを慰めている間に、

 

 ――GAMEOVER

 

「「………」」

 

 無能な二人によりバーガー店はつぶれた。

 

 ちなみに一応、最後まで合わせて一番の売り上げがあがったのはアーシャバーガーと、茜のトマトをメインにした血塗バーガーだった。潰れた店のバーガーを料理動画にするのも縁起が悪いような気がするが、一応企画なのでちゃんとやるつもりだ。

 

 勝負は私の勝利なので、代金は茜持ちである。

 しかし勝負に勝ったが、ゲームに負けてしまったのでかなり悔しい。

 茜とバーガーランドへのリベンジを誓い、動画を締めくくった。

 

 

 ちなみに、マシロはネタとはいえボロクソ言われてたことに結構傷ついたらしい。家に戻った時には結構いじけていた。なので、ちゃんと謝っておいた。

 その時に、明日丸一日はお休みにして二人きりで過ごすことを約束させられた。

 させられたとは言うが、全く嫌じゃないんだけどね。

 むしろ合法的に二人でのんびりできるのは嬉しい。

 

 なんたって明日はハロスターズ4期生、一宮かぐやのデビュー日なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

【Tips】キャプチャーボード:コンシューマーゲームの映像をPC画面上に出力するために必要な機器。機能はしょぼいが、ちゃんとしたものだと3万近くの値がすることもある。

 

 

 




元ネタ:バーガーランド:バーガーバーガー


文章を短く区切る書き方に変えてみました。
好評そうなら続けます。





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