ダクファン帰りのエルフさんは配信がしたい   作:ぽいんと

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【緊急配信】ゆいラジ第6回!ゲスト:友人A その2

「おかえりー!大丈夫か!?」

「あ、はい、ただいまです。もう大丈夫です」

 

 おかえり

 ほんとに大丈夫?

 いきなり大人数やもんな、仕方ないやろ

 

 

「いや、ほんとごめんなさい、いきなりお見苦しいところを………」

 

 虹色に輝く物体Xを洗面所でどうにか処理してきた。

 若干腹が痛かったので、もしかしたら冷蔵庫に眠っていたナスが悪かったのかもしれない。

 一度魔力を纏えば毒なんて効かないのだが、あいにく今は省エネモードなので気が付かなかったのだ。

 今は一度だけ軽く魔力を纏ったので、体調も元通りになっている。

 

 そして、1つだけよかったことがある。

 それは物体Xと同時に緊張もいくらか吐き出してしまったということだ。

 なので今はさっきと比べると全然ドキドキしてはいなかった。

 まぁ緊張というのは良く見せようと思うからするものだ。

 一度落ちるとこまで落ちてしまえばなんてことはない。

 グスン………。

 

 

 ¥500

 かわいい!頑張って!

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 初スパチャです。チャンネル登録しました

 ¥30,000

 ゲロ飲ませて

 

 

「い、いや、あの、えぇ…………?」

「…………やっば」

 

 なんかやべーのいる。

 特殊趣味すぎるだろ。

 

 飲ゲロニキは前世でどんな悪行をつんだのか………

 やばすぎて草

 引いてて草

 

 

「あ、うん、まぁありがとうございます。この子マジでお金ないんで、」

「はい………これもディープちゃんが悪いと思うんですよね。」

 

 ちなみにあの20000円のせいで、全ての予定が崩れた。

 どうしても急いで買いたいものがあったのだが、それも買えなくなったし、食費まで削れた。

 挙句の果てにバイトそのものが消滅してしまったので、日銭すらもらえないのだ。

 空き缶と廃品回収で稼ぐのはもういやなんじゃ………。

 

 まだ少し緊張しているが、一度話し始めてしまえば割と大丈夫になってきた。

 そして、まず最初に、謝罪動画について触れておく。

 楽しい楽しい配信にするためには、まず最初に誠意を見せておくのが大事だろう。

 だから、先に謝罪の意を伝える。

 

「この度は世間をお騒がせして、申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫びします」

 

 かわいいは世界を救う

 アレどう見たってあいつらが悪いやろ

 むしろようやったとおもうで

 スカッとした!

 

 

「あ、ありがとうございます。」

 

 正直ちょっと、うるっとくる。

 私のせいで、他のバイトの子もいきなり収入源がなくなったのだ。

 恨みごとの一つぐらい貰っても文句は言えない。

 それなのに誰も怒っておらず、むしろ慰めと褒めの言葉ばかりを貰った。

 だが内心どうかは分からないのだ。

 実は陰で中指を突き立てているかもしれない。

 

 だからか。 

 匿名だろうと少しでも誰かに認めてもらうことは、すごく嬉しい。

 

「………っ、ありがとうっ、ございます………」

 

 ちょっと涙ぐんでしまう。

 だからなのかコメント欄は慰めと可愛いで埋まってきた。 

 

 だが、ここで一言言っておきたいことがあるのだ。

 

「私できれば可愛いって言われるより、カッコいいって言われたいです。なのでカッコいいって言ってください」

 

 その顔でカッコいいは無理やろ

 むしろかわいい

 いや、喧嘩はマジでかっこよかったよ

 啖呵もよかった

  

 

 かっこいいって言われた……えへへ。

 

 ちなみに今日の私は基本は敬語モードだ。

 茜曰く、まだ視聴者との距離感が掴めていないうちは、できるだけ丁寧に喋った方がいいのだとか。

 まぁ人間関係と同じだろう。

 いきなりハイテンションで来られても困る。

 まずは最初にまともな人間であることを見せるのは大事だ。

 

 そんなこんなで自己紹介が終わり、進行表の遅れを取り戻していく。

 しかし、ここで茜からトンデモナイ爆弾が投下された。

 

「いや………この照れ具合、昨日を思い出すなぁ~」

「……昨日、昨日…………?」

 

 はて、昨日になにかあっただろうか。

 昨日といえば、焼肉屋に行って、二人で話して、それで…………

 

 あっ。

 

「……みんな聞いて聞いてや、この子な、私が配信に誘おうとしたらな、や、やめろ邪魔すんな!」

 

 こいつっ!

 アダルト配信と勘違いしたことバラす気だな!

 とんでもねぇ野郎だ!

 これ以上私に恥の上塗りをさせる気か。

 

 

 何?

 ききたい?

 きかせて!

 はよはよはよ

  

 

 掴みかかって口をふさいで、喋らせないようにする。

 すると茜は諦めたように、秘密を漏らすのをやめた。

 

 

 

「……はぁ、そこまで嫌がるんならしゃーないなぁ…………」

 

 

 

 そう言い切った後、一瞬こっちをみて、ニッと笑った。

 

 と、ここで気が付いた。

 どうやら茜は緊張を紛らわせるために冗談を言ってくれたらしい。 

 完全にいつものノリに戻った私は、もう全く緊張してはいなかった。

 

「………ありがと」

 

 自然と笑みが浮かび、軽く感謝の意を告げる。

 

 めっちゃなかよしやん

 これが尊いか……

 仲良しの美人さんいいよね…………

  

 

 ありのままの自分でいい――茜の言葉だ。

 そう、自分を良く見せようと思っているから余計に緊張する。

 いつも通り、自分は自分の好きなようにやればいいのだ。

 だってプロじゃない、素人なんだから。

 素人が頑張っているから、配信は距離が近くて面白いのだ。

 

 そう思うと、ずいぶん楽になった。

 

 雑談は進み、一度画面が消えて、10秒程度のアイキャッチが挟まる。

 オープニングが終了し、雑談企画が本格的にスタートした。

 

 進行表によれば、次は普通のおたより、略して「ふつおた」のコーナーだ。

 

「さーて、今までのゆいラジでは、マシュマロはあらかじめ募集していましたがーまぁ、誰もこの子を知りませんので、ええ、今送ってくれてもいいですよ」

 

 そういいながら、カチカチとノートパソコンからPCを遠隔操作している。

 器用なことである。

 

「えー、まずは、これやな。既に来てた中でほんまに多かったやつです」

 

 

                                  

アナスタシアちゃんは本物のエルフなんでしょうか?

耳があまりにも自然に見えます。

本物ならとっても嬉しいです。

 

マシュマロ

❏〟

 

 

 

 やはり来たか。

 事前の茜との大事な大事な打ち合わせ。

 そこで話した自分が緊張していたもう一つの理由を、ここで思い出す。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 配信1時間前、私の言葉に首をかしげて、茜は言った。

 

「……嘘がつけん?」

 

 ――嘘が、つけない。

 

『私ねー嘘つけないんだよー?』という言葉をイメージすると、なんだが噂大好きでお口ゆるゆるな女子高生ちゃんが脳裏に浮かんでくる。

 しかし、私の場合、本当の意味で嘘がつけない。

 というより嘘をついてはいけない、というのが正しいか。

 

 聖神官の縛りの一つに、嘘がつけないというものがある。

 これは、真偽判定を行い、裁判において判定を下す聖神官の言葉が疑いの余地もなく正しいことを証明するためのものだ。

 記憶を読めるのは本当に限られた人間だけだが、真偽判定ぐらいならそこら辺の聖神官でもできる。

 そして彼女らは全員同じ誓いを立てている。

 詳細は省くが、これを破ると物理的にも社会的にもかなりのペナルティを食らうことになる。

 だから嘘はつかない。

 

「……でも、それやと、色々まずくないか? ほら、秘密の塊やろ? きっと騒ぎになるで」

 

 ちらりとみた茜の視線の先には、小さなツッパリ棒でチャンバラごっこをしている家精霊たちの姿があった。

 この子達はかしこいのでカメラ前には出てこないので問題ない。

 でも例えばだが、私がふとしたきっかけで反射的に魔法を使ってしまうと、CGと言い張れるかは怪しいところだ。

 なんかこう、異世界だとブサイクに例えられそうな日本人のおじさん(イケメンのおじさん)ならそれでも誤魔化せそうな気がするが、私はちょっと怪しい。

 

 茜はこう言いたいのだ。

 素直に質問に答えたら、全部バレちゃうで、と。

 

 しかし実際はなんてことなく対処できる。

 そのちょっとしたテクニックを、茜に伝えた。 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 えいえいむん、と少しだけある胸を張り、えっへんのポーズをとる。

 そして、自信満々に答えた。

 

「本物のエルフです! 信じてください! 」

「んなわけあるか、アホ!」

 

 作戦の内容は単純。

 あえて本物を主張する、ちょっと痛い子作戦だ。

 自分が嘘をつく必要はない、ただ周りに上手く勘違いさせればよいのだ。

 

 高位の聖神官はみーんなこうして修羅場を抜けてきている。

 清らかで美しいなんて言われる聖女たちが、実は私みたいな腹黒しかいない理由の一つがこれだ。

 

 茜はあえて浮かべた悪そうな笑みで、私のエルフ耳を触ろうとする。

 

「ほら、みとけよー」

「やめてくださいよー本物の耳なんですから。取れちゃったらどうするんですか」

 

 いやいやと体をよじり、伸びてきた手を軽く払う。

 ぷくりと頬を膨らせ、怒ったふりをした。

 

 本物なので取れるわけなんてないのだが、これは実は嘘にはならない。

 こうして説明することで、視聴者は勝手に付け耳&整形あたりだろうと勝手に勘違いするのだ。

 

 嘘は、言ってない。

 

 

 

                                  

どうみても外国の方だと思うのですが

どうしてそんなに日本語がうまいのでしょうか?

 

マシュマロ

❏〟

 

「あ、実は私、日本人とのハーフなんです。それで10年前までは日本に住んでました。アニメとかゲームとか今でも大好きです」

 

 ちなみにエルフはとある事情で父親が分からないのが大半だが、母親は間違いなくエルフだ。

 だから日本人なわけないので、ハーフじゃないと思うかもしれない。

 

 しかしこれも決して嘘ではない。

 魂は日本人で、体は異世界人。

 ある意味ハーフである。

 

 ………嘘つけない縛りは案外ガバガバだ。

 

 なるほどな

 納得したわ

 アニメ好きで日本語覚える外国人おるけどほんま尊敬するわ

 

 

 そしてコメントで知ったのだが、海外の人は案外エルフ耳整形をする人もいるのだとか。

 妖精と見まがうほどの美への憧れは、どこでも強いものらしい。

 私も海外人フィルターが挟まっているからか、痛い子扱いのコメントは全くと言っていいほどなかった。

 

 その後もいくつかの質問を適当に受けながしていく。

 そして、ちょうど配信に興味を持ったきっかけの話を経由したところで、自分から話したいことが出来た。

 

「そう、久しぶりに日本に戻ってきて、驚いたことはいっぱいあるんですけど、一番は配信が無料でできることですね」

 

 ???????

 なんで配信が有料なんだ?有料配信のこと言ってるのか?

 配信に金が要るの? なんで?

 

 

「いや、今の子ってそうなんですね。……少なくとも私の時はニマニマ動画で配信するには枠を取らなきゃいけないし、枠は30分限定だし、延長も有料だったんですよ」

「え、そうなん?」

 

 なっつ

 いつの話だよ

 ニマニマ視聴者やったんか

 ガチオタクやん!チャンネル登録します!

 

 

 茜も知らなかったらしい。

 少なくとも、自分の知っている10年前は、ゲーム実況は身内で楽しむ内輪のもので、生放送はニマニマにプレミアム会費を払ってやらせてもらってるものだった。

 収益化のようなことを突然やりだした実況者はそれはもう全力でぶっ叩かれていた。

 画面全面が赤い大文字と暴言で埋まるのだ。

 酷いと思うかもしれないが当時の感覚だと、それほどありえないものだった。

 

 現在のZowTubeフィーバーを見るに彼らは先見の明があったのだろう。

 実際10年前に見ていたゲーム実況者のいくらかは、今では古巣を捨て、100万近くの登録者を抱えて贅沢な暮らしをしている。

 

「ゆいは知ってる? アリーナって」

「え、何それ知らん」

 

 アリーナとは、500人しか入れない視聴席である。

 そしてそこからあぶれた人間は、順次立ち見A、立ち見Bと押し出されていくのだ。

 

「え、何の意味あんのそれ…………?」

「さぁ?」

 

 あとBSPとかな

 追い出しも忘れたらいかんぞ、プレミア以外人権なかった。

 コミュレベルある程度で延長無料とかあったな、悪意ある設定やったが。

 インターネット老人会はここですか?

 

 

「あーあったあった追い出しあった!」

「……ええ、配信見てるだけで追い出されんの………? なんで……? 意味わからん」

「大丈夫、みんな意味わかってなかった」

 

 なんか懐かしいなと嬉しさがこみあげてくる。

 10年たった日本は、見た目は全然変わっていなかったけれど、中身は大きく変わっていた。

 若者たちの間で圧倒的な位置を占めていたテレビ番組は既に過去の産物になった。

 私がやりこんでたMMOは、みーんなサービス終了していた。

 スマートフォン(よくわからない電話板)が普及してみんながインターネットを使っていた。

 

 久しぶりに帰ってきた日本は、既に私の故郷じゃなかった。

 しかし、実はここにもあったのだ、故郷が。

 ほんのわずかだけれど、残っていたのだ。

 

 

 置いてけぼりやろなぁこれ

 いいじゃん楽しいし

 ネット老害じゃったか

 っていうか何歳なんだよ

 

 

「知らないですよ、どこで生まれたかもわからないんですから」

 

 ちなみにこれも嘘じゃない。

 生まれた正確な場所なんて分かる人間の方が少ない。

 ○○病院です。

 とは答えられても、○○病院の○○室ですまでは答えられないはずだ。

 聖神官にちゃんと質問しない方が悪い。

 

 そして、嘘なんて決して混じってない来歴を説明する。

 

 まず私は日本に生まれた。

 母親は顔も見たことがないうちに死んでしまい(事実)、母一直線だった父親はやる気をなくしダメ人間になってしまった(事実)。

 そしてある時海外(異世界)に行き、そこで紛争(ガチ)に巻き込まれ、しばらくの間帰ってこられなかったという設定だ。

 

 ……なんか割と悲惨だな、これだけ羅列すると。

 

 もしかして私って可哀そうな子なのか……?

 でもなんでも慣れだ。

 どれだけ辛くても、折れさえしなければ、いつかは楽しくなってくる。

 

 そんなことを説明すると、コメント欄はより一層同情的になった。

 なんでや!

 

 いやほんとよう生きてくれた

 悲惨すぎてさすがに草はやせんわ…………

 辛すぎやろ

 ゆいちゃん養ったれや、金あるやろ

 

 

「そんな金ないって………、いやでも家政婦やってくれるなら嬉しいわ」

「養ってくれるんですか!?」

 

 思わず目を見張ってしまう。

 ぶっちゃけエアコンもないぼろアパートなので冬は寒い。

 魔力さえ使えばどうにでもなるが、一応節約中なのだ。

 

「だって料理上手いしな、ウチ料理全くできんから……」

「掃除も出来ないよな。この仕切りの裏ぐっちゃぐっちゃだしね」

「うっ……」

 

 配信画面に切り取られた部屋は美しく整頓されている。

 しかしそれ以外はぶっちゃけひどいものだ。

 確かに一応掃除はしているのだろうが、ちょっと埃っぽいのだ。

 そして仕切りの裏にはコード類やら器具やらがぐちゃぐちゃに置かれている。

 

 汚さを思い出して若干キレてる私に曖昧な笑みを返し、茜は先ほど取っていた2枚の写真を配信画面に映した。

 

「ほら、これ、アーシャが作ってくれたパイとご飯な」

 

 めっちゃうまそう!

 ええなぁ、手料理

 エルフ飯か………

 

 

「あ、そういやあのナスいつの? 聞いてなかったけど………」

「二週間前やな」

 

 ………正直微妙なラインだ。

 まぁだから辛めに味付けして誤魔化したのだが。

 新鮮なのと比べると勿論美味しくはないけど、痛んでいるかといえば微妙だと思う。

 ………もしかしたら茜もアタってるかもしれないので、注意しておこう。

 

 そして今は何より住居だ。

 

「さっきみたいに家事洗濯炊事なんでもやるよ?」 

「それはええけど………妹ちゃんに聞いてからな」

 

 妹いるのか!?

 妹もエルフちゃんなの?

 妹みせてー

 

 

「見せません。妹はそうだな………私より強いですかね」

 

 マジか

 やっば

 姉妹対決が見てみたいです

 

 

「まぁ重度のコミュ障なんで外でないんですけどね」

 

 草

 なんやねんそれ

 

 

 妹の説明をした結果、なんか勝手なイメージが出来てしまった。

 まず強さは、紛争地帯で養われたものだと勝手に解釈された。

 これはあながち間違いでもない。

 

 そして妹の存在が追加されたことで、さらにコメント欄が同情的になった。

 戦地で心を病み働けない義理の妹を必死に養っていたのに、勤めていた喫茶店がなくなって食うにも困るようになった美人姉妹。

 そんなイメージが共有されてしまったらしい。

 もはや悲劇のヒロインレベルである。

 全米も泣いてるかもしれない。

 

 こっちののんきな思考と全く釣り合ってない。

 ぶっちゃけ戦いもないし娯楽も楽しいので、貧しいの差し引いてもバカンス気分である。

 最悪山の中でも生きていけるので、どこか適当に生きているフシがある。

 

「いやー、めっちゃ掃除も早いし」

「中華包丁っていうんか? ぶっちゃけプロ並みやと思うでアレ」

「まずウチに来てやってくれたことが掃除やからな、めちゃ優良物件やで」

 

 ここでさらに何故か茜がもう私をプッシュ。

 料理洗濯掃除の手際がいいことを、もうそれはめちゃくちゃほめてくれた。

 

 褒められたり甘やかされたりは好きだか、ここまで褒められるとタジタジになってしまう。

 

「………えへへ」

 

 中華屋のうちにおいで、割とマジで自給2000円ぐらいで雇うで

 おさわり禁止やぞ

 あの身体能力にセクハラするとか自殺行為やろ

 いるだけで売り上げ上がると思う

 

 

 時給2000円の文字が見えて、思わず茜を見てしまう。

 

 ――ふるふる、と。

 

 茜は緩やかな否定を示す。

 口約束なんやから信用すんな、ということなのだろう。

 ぶっちゃけ魅力的過ぎて、対面なら即OKしてたかもしれない。

 

 するとどこか演技めいた動きで、ふんわりと茜が私を抱擁する。

 そしてカメラに向かって、偉そうにアピールをした。

 

「だめやで、この子はウチのもんやからな!」

「……ごめんなさい、ゆいのものになってしまいました……」

 

 エッッ!!!

 ゆるゆりゆるゆりゆりりりり

 なにその小芝居(笑)

 

 ぶっちゃけ適当なノリに乗っただけである。

 たいして面白くもないが、くだらないノリは結構好きだ。

 

 

 

 緩やかで、楽しい時間が過ぎていく。

 ふと見えた視聴者数は15000人を超えていた。

 

 ながーい配信の予定は、まだまだこれからだ。

 

 ――でもきっと、楽しいものになる。

 

 次のコーナーへフェードアウトしていく画面を見ながら、そんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

【Tips】BSP:ニマニマ動画における、放送主がメンバーに与えられる特別な権利。大きく表示されたりと様々な優先権が与えられる権利だったが、それゆえに視聴者間での些末な奪い合いに発展することもあった。

 

 

 

 

 

 

 




元ネタ

【イケメンおじさん】:異世界おじさん
転移して以来17年異世界で生きてきた割と悲惨なおじさん。
甥のたかふみの企画で魔法を使ってYouTubeでお金を稼いでいる。
こっちは逆に合成CGだと思われてる。



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