トレーナーがウマ娘に助けられる話   作:げんぶ

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お腹が痛くてトイレから出られなかったので初投稿です。


エアグルーヴ

 光の糸を辿って歩く。

 その糸は細い、細いが絶対に途切れる事は無かった。

 

 「この先に誰かが待ってるのか」

 

 誰が待っているのか分からない、だからこそ誰に会えるのかワクワクする。

 そう思うと足取りが軽くなる。

 

 (誰に会えるのかな)

 

 

 糸が不意に途切れた。

 

 「あれ?なんでだろ」

 

 辺りを見回すが糸は見えない。

 糸の向いてた方向に歩いて行った方が良いかな。

 そう思い、足を踏み出す。

 

 「たわけ!こちらだ!」

 

 瞬間、聞き覚えのある声にハッとなる。

 

 「エアグルーヴ?」

 

 声のする方を向くとそこには眉根を寄せ、俺をみるエアグルーヴの姿があった。

 

 「全く、自分の知らない所で勝手に動こうとするな」

 

 エアグルーヴは俺の近くに寄ってくると俺の身体を探る様に見る。

 彼女は身嗜みに厳しく、少しでも緩んでいるとピシッとさせられる。

 一通り見終えるとグルーヴは「まあ、良いか」と呟くと俺を見上げ、そして手を差し出した。

 

 「時間が惜しい、私が案内する。行くぞ」

 「あ、あぁ」

 

 手を繋ぐのは良いが、何故恋人繋ぎなんだ?

 そんな疑問をよそに、グルーヴは俺を引っ張る様に歩き始めた。

 

 

 テイオーの手を握った時も思ったが、女の子の手はなんでこんなに柔らかいんだろうな。

 そんな益体もないことを考えているとグルーヴが立ち止まってコチラをジーッと見つめていた。

 

 「えっと、どうしたの?」

 「いや、……何というか、手が大きいなと思ってな」

 

 そう言うとグルーヴは手をニギニギと動かした。

 その顔は少し綻んでいた。

 

 「さて、時間が惜しい。行くぞ、トレーナー」

 

 そう言うと再び歩きだした。

 

 

 「思えば、トレーナーには沢山世話になったな」

 「俺の方こそ、グルーヴにはたくさん世話になったよ」

 

 グルーヴと契約した当初は距離感が掴めず、どう向き合えば良いのか手探りだったし、彼女の方も今までのトレーナー達との事もあり、トレーナーと言う存在に対して不信感を募らせていた。

 だからこそ、俺は彼女の事をまず信じようと思った。

 不信感を持っているとは言え、彼女は俺の作ったメニューをきっちりこなしてくれた。

 その上で生徒会業務、後輩の指導、花壇の世話をこなしていた。

 

 「いや、トレーナーが管理してくれなければ、私は倒れていただろう」

 「君の本気、君のやりたい事の助けになれればって思っただけだよ」

 

 グルーヴは何事にも本気だった。

 手を抜かなかったのだ。

 実際、一度疲労が溜まり倒れてしまった。

 それは彼女を止められなかった俺の落ち度だ。

 トレーナー失格だと思う。

 

 「貴様、また私が倒れたのは自分の所為だと思っているだろう。あれは貴様だけの責任ではない。私自身が私自身を甘く見ていたのだ。私と貴様の責任だ」

 「グルーヴ…」

 「改めて言わせてほしい。トレーナー、私のトレーナーになってくれて、ありがとう」

 

 頬を赤らめるエアグルーヴ。

 

 「そして、あ、貴方と共に勝ち取れた栄光を絶対に忘れない」

 

 キュッと俺の手を握る手に力が入る。

 

 「まだ時間はある。話をしよう。私達の歩いてきた道を…な」

 「そうだね。君とこうやって話をする時間も少なかったしね」

 

 テイオーの時もそうだったが、彼女とも思い出がたくさんある。

 出会いの話、初めて一緒に行ったゲームセンターでの失敗談、突然やって来た彼女の母の話、友人“サイレンススズカ”が合宿中に走りに行って帰って来なかった話、生徒会長“シンボリルドルフ”の駄洒落の話、後輩たちとの話、ドリームトロフィーリーグの話。

 話題はいくらでも尽きなかった。

 時に笑い合い、時に怒り、楽しい時間は過ぎて行った。

 

 

 「そうか、そろそろ交代の時間か」

 「え、君もか?」

 「すまない、トレーナー。皆との約束でな」

 「そうか…。それで、次は誰と?」

 「それは秘密だ」

 

 そう言うと、エアグルーヴが手を離す。

 

 「相変わらず方向音痴な貴様の為に、道を示してやる(貴方が私にそうしてくれたようにな)」

 

 彼女が先を指差すと、暖かい光が伸びていく。

 

 「この光を辿って行けば無事に次の相手に会えるだろう。一応言っておくが、光が途切れたと言う事はそこで待っていれば誰かがやって来ると言う事だからな!」

 

 「いいな!」と俺に念押しすると、グルーヴは別れて走って行った。

 

 「寂しいな。……けど、次に会える娘が誰なのか、楽しみだ」

 

 グルーヴの後姿を見送ると、俺は彼女が指し示した方向へと足を向けた。

 次に会える娘を想像しながら。

 

 

 

 「っく、は――!」

 

 シーツを跳ね除け、エアグルーヴは飛び起きた。

 飛び起きた彼女は肩で息をする。

 

 「先輩、お水です」

 「あ、あぁ、ありがとう」

 

 コップの水を一気に飲み干すと額に浮かんだ汗を拭う。

 

 「トレーナーさんはどうでしたか」

 「いつもと変わりない。……自分がどこにいるのかも分かっていないから、のんきなものだ」

 「仕方がありません。それにトレーナーさんの状態を本人に知らせてしまったら、テイオーさんとエアグルーヴさんの努力が水の泡です」

 「分かっているさ。……さて、私は生徒会室に戻るとする。次の催し物が近いのでな」

 「お疲れさまでした」

 「あとは頼んだぞ、■■■」

 




この時期、寒くてお腹が痛くなります。
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