五条悟の妹は千里眼を持って呪術廻戦の世界を生き抜く 作:アルトリア・ブラック(Main)
〜特級呪詛師・夏油傑〜
乙骨憂太及び狗巻棘が担当した商店街の任務にて、予定にない一級呪霊が現れた事により、それが呪霊操術持ちの特級呪詛師・夏油傑の仕業だと断定。
本格的に夏油傑を死刑にすべく動き出していた。
「ホント、バカな奴ですよね、呪術師が傷つかない未来をとか、くそまじめにも程があるってのに」
夜娥と歩いていた零はそう愚痴を漏らすと
「…上層部はかなりお怒りだ。今月にでも全てを終わらせなければならない。これ以上非術師の犠牲は増やしてはならない」
「そうですね」
零は興味がなかった
非術師の犠牲も
呪術師の犠牲も
心底どうでもよかった。
人はいずれ死ぬ生き物だから、それが早いか遅いかの違いでしかない。
「零。高専内敷に宣戦布告をしに来るというのは本当か?」
夜娥の言葉に『まぁ、何もこっちが仕掛けなければ』と返す。
あの会議の場にて、零の千里眼による対処を求められ、零は狂乱する上層部を尻目にわかっても問題のない未来を告げた。
「そうか」
夜娥が足を止め、外を見る。
外にいる悟は仲良さげに乙骨達に絡んでいた。
「…あの時。夏油傑が村の人間を皆殺しにしたと聞いた時、驚いたか?」
「いえ、いつかやるとは思ってましたし、バカ真面目のする事だからなんとなくは見なくても予想つきましたよ」
必死に夏油の未来を変えようとしたことは言わない。
「そうか、悟はかなり驚いていたな」
「まぁ、すっごい仲良しでしたからね、あの二人」
壁に寄りかかり足をふらふらさせる。
他人行儀な零に夜娥は何も言わない。
高専生だった頃、夏油と恋仲関係だった零は、何度も夏油の未来を変えようとしたのだろう。
しかし、呪詛師に夏油がなってから零はどこか空虚というか、どこを見ているのか分からないぐらいの遠い目をしていた。
「!噂をすればだ!」
上空から高専のものではない呪力が発しられているのを感じ取る。
「………」
去って行く背中を零はその場で黙って見ていた。
窓際に行き、ペリカンみたいな呪霊が降り立ったのを見て、窓際に寄りかかる。
降り立った夏油は乙骨の肩を組み何か演説していた。
「なんかやってんなぁ、アイツら」
隣にきた硝子はタバコを吸いながら話す。
「乙骨君の里香ちゃん狙ってるんでしょ、特級過呪怨霊ってなかなかいないからね」
「会いに行かないのか?元恋人だろ?」
「元だよ元。それに、失恋したしねぇ」
硝子は「ふーん」と返して、校庭の方を見る。
「あ、手振ってるよ、あの犯罪者」
夏油の方を見ると、胡散臭い笑顔で『零〜!硝子〜』と言ってるのが微かに聞こえた。
「こっち見んな犯罪者」
『思う存分、呪いあおうじゃないか』
その言葉と共に夏油たちが居なくなる。
夏油の宣戦布告において緊急会議が開かれた。
会議の場において女性の権利は著しく低い
非術師の世界では女性の権利やらなんやらやっと当たり前になって来たが、呪術師の世界はまだ遅い
(…猿って言ったら呪術師の方だよな…)
夏油は非術師を猿と呼んでいるが、どっちかというと昔の思想に囚われている呪術師の方が猿な気がするのだ。
今この場にいる女性は零のみであり、理由は千里眼と五条家の人間だからという理由だけだ。
無下限がなければここに呼ばれることすらなかったのだ。
「特級呪詛師・夏油傑を止めるべく、今度こそ動かなければならない!」
夜娥の言葉に呪術師達は息巻く。
「まーためんどくさいことになって来たねぇ…」
「…新宿と京都だっけ?また離れた地点を襲撃対象に選んだよね」
悟と二人、廊下を歩きながらそう話していた。
「夏油一派の呪詛師は狂信者と言えるほど狂信者じゃなさそうだし、各個撃破しても大丈夫そう?」
その言葉に零は双子の姉妹を思い出す。
「……双子の姉妹。確か、名前は菜々子と美々子って言ったかな、あの二人についてはかなりめんどくさいかもしれない。傑の事を実の親のように慕ってるような感じだったし」
「そっか…んー…その双子についてはおいおい考えていくかぁ」
悟は千里眼を頼りにはして来ない。
子供の頃から一緒にいる分、零自身が千里眼を嫌っているのを知っているため、他の呪術師のように聞いて来ない。
それが嬉しかった。
二人で外に出ると…
「五条さん!」
伊知地が走って来る。
「「ん?」」
「あ、妹さんの方です…」
「ややこしいんだよなぁ…」
悟がそう言いながら遠ざかっていく。
「どうしたの?」
「特級呪霊が出現しました。零さん、乙骨憂太と二名で任務に当たるようにとのことです」
「りょーかい」
唐突な任務に零は何かあるなと感じる。
(…未来を見て良いことはないけど…)
迎えの車に乗り、乙骨君がいる地点に向かっていた。
「ちょっと寝るから起こさないでね〜」
「え?あ、はい!」
アイマスクを付けて眠りに着く
零の千里眼は1時間先の未来は見えない。
故に2時間の睡眠だと安眠出来るのだ。
しかし、三時間以上になると千里眼が勝手に動いてしまうので意味がない。
(…見ようとしたら見えるだろうけど…)
目を閉じて眠りに入る。
〜乙骨〜
「お迎えに来ました」
人気のない路地近くで待ち合わせしていた乙骨の前に伊知地の車が止まる。
「は、はい!よろしくお願いします!…五条先生…?」
アイマスクをして眠っている零を見てそう呟く
目隠しに近いアイマスクのため、遠目から見れば完全に五条悟そのものである。
「零さんの方ですよ」
伊知地の言葉に乙骨が「そ、そうなんだ…」と呟く
車に乗り込み、目的地に向かっていると…
「乙骨君。五条さんおきてますか?」
その言葉に乙骨は零を見るが、先ほどと様子は変わっていなかった。
「…五条さん…-」
声をかけても微動だにしない零に伊知地は
「五条さんは2時間以上の睡眠は決して取らない人なんです。2時間以上寝てしまうと未来視が勝手に行われるので」
「そうなんですか…起こした方が良いですか?」
「いえ…いつもだったら自分で勝手に起きる方なので、今回は今後のことで何か不安があるのかもしれないのでそっとしておきましょう」
「はい」
乙骨は黙って座席に深く腰掛け、外を眺める
「これから行く呪霊についてなのですが、基本的に五条さんは後方支援。乙骨君が前衛で挑むようにとのお達しが来てます。等級は特級呪霊です」
その説明を聞いていると…
「……はぁ」
寝ていた零が起き上がり、アイマスクを外す。
「…!」
アイマスクの下から現れた真っ赤な瞳に息を呑む
今までサングラス越しでしか見たことがなかった。
「おはよう、乙骨君。いやこんばんわだったかな」
すっかり日は暮れ20時になっていた。
「こんばんはですね…よく寝てましたね…」
「まぁね、よく寝れたよ」
窓の外を眺めながらそう呟く
「………」
零の瞳はどこか暗い。
場所は林道の近くに止まり、小さな歩道が山の方に続いていた。
「この上にある神社、通称ーー神社にて一級呪霊が出現。肝試しに来た人物たちを呪殺し始めている噂があり、緊急性を擁しています」
伊知地の説明を真剣に聞く乙骨と、どこか上の空の零がいた。
「乙骨君には一級呪霊の討伐を、五条さんは乙骨君の特級過呪怨霊・折本里香が暴走しないように見張るよう、上層部からの命令が来てます」
「了解。足元に気をつけて行ってらっしゃい」
乙骨に向かって手を振る。
向かって行ったのを見て
「…世の中、真面目な人ほど損をする世の中になってるよね」
「と…言いますと」
「いや、真面目な人間ほど、このクソみたいな呪術界の在り方について行けずに呪詛師やらフリーの呪術師になって、真面目だけど上から使えない烙印を押されたら使い勝手の良いモノ扱いされて、上の奴らは何も考えてないグズどもで、そう行った奴らに使い潰されてく、本当に嫌になる世の中だよ」
その言葉に苦笑いする。
五条兄妹は相変わらず上層部が嫌いだと思っていると…
「そうだとしたら零はどうしたいんだい?」
「!!」
伊知地が驚き、後ろを振り向く
「人間自体が居なくなればいいと思うけど、極論だろうけどさ、私は呪術師は嫌いだし、非術師はどうでもいい。私が守りたいと思う一部の人だけの世界になれば良いと思う」
「極論だなぁ、それ」
後ろに現れた夏油が笑いながらやってくる。
「極論だろうけど、それが事実だよ、私も悟もそんな聖人じゃないよ、で、傑は何しに来たわけ?」
振り返り言うと傑は微笑み
「あの時は零が昏睡状態だったから言えなかったけど、こっちに来ないかの勧誘だよ」
その言葉に伊知地はハッとなり、零を見る。
「その言葉に意味があるの?未来が見えてる人間に問いをかけて何になる?」
「あはは、聞いてみるだけ良いじゃないか」
その言葉に零は悲しげな表情をし
「…呪詛師になるほどの思い入れもないし、今のこの状況でも良いかなと思ってる。何より、悟がいて楽しい」
その言葉に夏油は昔のような表情を見せ
「じゃあどうしてそんな悲しそうな顔をしてるんだい?未来が見える苦しみは私には分からないけど、未来が見えていても、自分がやりたいように出来たら良いんじゃないかな、レールをただ歩くだけじゃなくて」
「………」
何も言わない零に夏油は黙って微笑み
「私はいつまでも待ってるからね、零」
そう言って横を通過して行く
帰りの車の中、零は問題なく解決して来た乙骨と別れた後、家の前まで送ってもらい、車から降りる。
「ご、五条さん」
伊知地が心配そうに声をかけてくる。
「ん?何?」
「先ほどの件は上に報告した方が良いでしょうか…?」
夏油傑が現れた報告をするべきか否かということと、夏油傑が五条零を勧誘して来たことを伝えようか迷っているのが見て取れる。
「まぁ、していいんじゃない?腐ったみかん達は取り乱すと思うけど」
零が勧誘されたことが上の耳に入れば、無理やりと言って良いほどの任務を入れてくるか、あるいは教師としての仕事を増やそうとしてくるだろう。
「あぁ、私が呪詛師側に行くことを心配して聞いて来た?」
「………はい」
長い沈黙の後にそう言ってくる伊知地
「心配さなくても向こうに行くつもりなんてないから平気だよ。何があろうと」
その言葉に安心したようにため息をつく伊知地。
「では、通常通り、上層部に報告します」
「うん、そうしといて〜」
そう言って車が去って行ったのを見て、空を見上げる。
「………未来の通りに生きなくても良い…か」
レールの上をただ歩かなくても良いよという言葉を思い出し、笑う
「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
未来を想像しながら自宅に入って行く。
一泊二日の旅行に犬と行った後の旅行ロスが苦しい
あ、なるべく外に出ないように気をつけました。