最近、村が騒がしい。御前試合があるのも理由かもしれないが、一番の理由は、やはり、村の外から来た人間。名前は知らないが村長の娘のコハク、妖術使い、最近は化学使いを自称しているクロム達とクロムの倉庫で一緒に行動しているらしい。最近の村の話題はもっぱらその村の外から来た人間の話題ばかり。
「楽しそうにしているのね。そろそろ私も混ぜて貰おうかしら。」
七実はそうひとりごとを呟く。七実は、病弱なこの体のせいで労働が出来ない。以前ラーメンと言う未知の料理を食べた料金として、村人が労働させられていた時も病弱が理由で免除されていた。毎日、村の老人と同じように村の外には出ず村の中で細かな作業をするばかり。病弱ではあるが、性格は働き者である七実には、それが退屈で仕方が無かった。村の中でもう1人の病人であるルリも、もう先は長くないと言われているほど良くないらしい。もう歩くことすらあまり出来ないほどであるようだ。しかし、病気の重さで言えば実は七実の方が重症である。なぜ生きているのかも理解出来ないと言われるほどなのに、生きている。明日死んでいてもおかしくないと、言われているほどであった。しかしそれは七実が子供の頃に言われたこと。それなのに七実の体は、死を選ばない。病気で死ぬかもしれない状態で10年以上生きている。死に損ないならぬ生き損ない。それが七実であった。
そんな七実の前に楽しそうな出来事。しかも前回の御前試合では、コハクが出場した事で、女性が出場しても良い。出場できると言う前例が出来た事により、七実が出場しても、ルール的には問題ない事になる。
そのため、今回の御前試合は七実にとって待ちに待ったまたとない自分が楽しい事に混ざれる機会であった。
「私も御前試合に出場しましょう。そうと決まればジャスパーに出場すると伝えましょう。楽しみね誰と当たるのかしら。マグマやコハク、キンロウの誰かと当たると良いのだけど。いえ、悪いのかしら♪。」
そう呟いた。そう呟きながら生まれて初めてかもしれない楽しげな事に自分も混ざれることを心から楽しみにジャスパーに出場の意を伝えに行った。それにより、村人、そして村の外から来た話題の人間、千空やゲンなど、大勢の人に混乱を、巻き起こすことなど1ミリたりとも考えていないことは明白であった。
七実が出場を伝えに行ったのが、外が暗くなる頃だったため、村人は少なく七実の出場を知るのはジャスパーのみとなってしまったのも原因であった。