この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

10 / 57
またもや一日遅れの投稿です。


この中二病少女をパーティーに!

「何やってるんですかあああああっ!!」

 

平原に響き渡る、私の声。私は慌てて、和真さん達の下へ駆け出していた。

……話は、少し前に戻る。

 

 

 

 

 

冒険者ギルドにて。

 

「ええと、それじゃあまず、めぐみんの実力を見てから決めるって方向で」

 

パーティー募集の面接を、そう切り上げる和真さん。まあ、これが妥当な意見だろう。いくら上級職とはいえ、ステータスが足りてるというだけで、実力が伴っているとは限らない。

事実私も、中級魔法まで覚えておきながら、ジャイアントトードに捕食されるという失態を犯してるのだ。

 

「……それで、めぐみは?」

「私は…、私もそろそろパーティーを組もうとは思ってますが、今はめぐみんを優先させてください」

 

和真さんにはそう返した。めぐみんが中々パーティーを組めなかったのは知っているし、私はといえば、ジャイアントトード相手ならソロでも、まだしばらくは問題ないだろう。

 

「そうか。それじゃあ早速…」

「あ、待ってください。私もジャイアントトードの討伐依頼を受けてくるので、平原まで一緒に行きましょう」

 

 

 

 

 

「……なあ。めぐみってどういう風に、ジャイアントトード倒してんだ?」

 

平原に到着するなり、和真さんが聞いてきた。とはいえ。

 

「私はアークウィザードですから、魔法で倒すだけです。……まあ、実際に見せた方が早いですね」

 

言って私はそろりと、前方にいる二匹のカエルに近づき。

 

「『火炎球(ファイアー・ボール)』!」

 

光球を投げつける。光球は地面に触れた瞬間、炎を巻き上げ、二匹のカエルを飲み込む、はずだったが、一匹が不意に動いてしまい難を逃れてしまう。

カエルは当然私に気づき、こちらへ襲いかかろうとするが、私は既に次の魔法の準備が整っている。喰らえ! 私の新たなる再現魔法!

 

「『閃熱呪文(ギラ)』!」

 

放たれた閃熱がカエルを直撃、全身を焦がして絶命した。

 

「……とまあ、こんな感じです」

 

そう言いながらみんなの下に戻ると、全員ぽかんとした表情をしていた。はて、何かおかしな事でもしただろうか?

 

「な! 何ですか、今の魔法はっ!? アレンジしたファイアーボールはまだしも、ギラなんて、見たことも聞いたこともありませんよ!?」

「ちょ!? ギラってどう見ても、閃熱呪文の、あのギラだよな!?」

 

……ああ、確かに。めぐみんにとっては未知の、和真さんにとってはDQの呪文を見たら、驚かれても仕方がない。これは、私のうっかりですね。

 

「今のは、私が一から構築した呪文です。私や和真さんが生まれた国にある、とある物語の架空の呪文を再現しました。ちなみに火炎球(ファイアー・ボール)も、別の物語の魔法を再現するために、既存のファイアーボールをアレンジしたものです」

「【スレイヤーズ】か…」

 

和真さんが、ぽそりと呟いた。

 

「ともかく。私の戦い方は、現状では参考にならないでしょう」

「そう、なのか?」

 

ちらりとめぐみんを見る和真さん。おそらく、同じアークウィザードなら、等と思っているのだろう。

 

「まあ、すぐにわかると思います。それでは私は、向こうで討伐してきます」

 

そう告げて、私は和真さん達と別れた。

 

 

 

 

 

狩りを始めて数分。たまたま三匹が固まっているのを見つけたので、中級魔法のフリーズガスト三連弾でまとめて動きを止めて、各個撃破した。呪文はもちろん、ギラである。ようやくDQの魔法が使えるようになったのだ。少しくらい浮かれても、罰は当たらないだろう。

その時。ドオオッ! という大きな音と共に、激しい爆発が起きる。どうやらめぐみんの爆裂魔法が炸裂したようだ。……我ながら、爆発、炸裂、爆裂と、訳がわかんなくなりそうな言葉のチョイスだ。

そんな下らないことを思いながらそちらを見れば、随分と立派なクレーターが出来上がっている。ホーストの時にも思ったけど、やはり中々の威力だと…え? ええと、あのカエルの口から出ているのって、アクア様の足? あのブーツ、見覚えがあるのだが。

和真さんから話を聞こうと、視線を移したその先では。カエルにパクリとされる、めぐみんの姿があった。

…………って!

 

「何やってるんですかあああああっ!!」

 

こうして冒頭に戻り。私は慌てて、和真さん達の下へ駆け出していた。

 

「『フリーズ』ッッッ!!」

 

めぐみんを飲み込もうとしているカエルを、全力のフリーズで凍結させる。

 

「和真さん! こちらは凍結で足止めしてるので、今の内にアクア様を! 私が倒すと、和真さん達の討伐にならないので!」

「あ、ああ、わかった!」

 

和真さんはショートソードを振り上げ、アクア様を飲み込もうとしているカエルに向かって行った。

 

「あの…、この状態、なんとかなりませんか?」

 

動きを止めたカエルの口から、頭だけ出しためぐみんが言う。

 

「半ば自業自得なんですから、和真さんがとどめを刺すまで我慢してください」

 

それを冷たく突き放す私だった。

 

 

 

 

 

私は和真さん達と一緒に、ギルドへ向かう道を歩いている。私は少し離れて歩いているのだが、その訳は。

 

「ぐすっ…、生臭いよう…、生臭いよう…」

「カエルの体内って、生臭いけどいい感じに温かいんですね…」

 

めそめそと泣く、粘液まみれのアクア様と、いらない知識を披露する、同じく粘液まみれのめぐみん。いえ、私も知ってますが。

因みに魔力切れのめぐみんは、和真さんに背負われている。

 

「今後、爆裂魔法は緊急時以外は禁止だな。これから、他の魔法で頑張ってくれ」

「……使えません」

「……は?」

 

めぐみんの返しに、和真さんはハテナ顔だ。私は知っているが、これはめぐみん自身が言うべき事。私から言うわけにはいきません。

 

「……私は、爆裂魔法しか使えないです。他の魔法は、一切使えません」

「……マジか?」

「……マジです」

 

和真さんが絶望したような表情になる。

 

「爆裂魔法以外使えないって、どういうこと? 爆裂魔法を習得できるほどスキルポイントがあるのなら、他の魔法習得してないわけないでしょう?」

 

アクア様の疑問ももっともである。ゆんゆんだって、他の魔法を習得するように言っていたし、それが世間一般的な発想だろう。

 

「私は爆裂魔法をこよなく愛してます。爆発系統の魔法が好きなんじゃないです。爆裂魔法だけが好きなんです」

 

めぐみんが爆裂魔法について、熱く語る。

 

「もちろん、他のスキルを取れば楽に冒険が出来るでしょう。……でも、ダメなのです。

たとえ、今の私の魔力では一日一発が限度でも。たとえ、魔法を使った後は倒れるとしても。それでも私は、爆裂魔法しか愛せない! だって私は、爆裂魔法を使うためだけにアークウィザードの道を選んだのですから!」

 

めぐみんの独白には、強い念が隠っているように感じた。以前聞かないとは言ったが、それでもやはり、気にはなる。一体何が、彼女をこれほどの想いに駆り立てているのだろうか。

 

「素晴らしいわ! 非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に、私は感動したわ!」

 

……え、アクア様? それ、本気で言ってます?

いや、私もロマンを追い求めているが、少なくとも、他の全てを(ないがし)ろにする気は無い。中二病な私と、普通に社会生活を営んでいた私、それを両立しようとしていたのが何よりの証拠だ。因みに以前にも述べたが、恥ずかしくて隠していたわけではなく、社会生活を営むための知恵である。

 

「……そっか。多分茨の道だろうけど頑張れよ。それじゃあ、ギルドに着いたら今回の報酬を山分けにしよう。まあ、また機会があったら、出会うこともあるだろ」

 

あ、和真さんが切り捨てにかかった。

 

「ふ…。我が望みは、爆裂魔法を放つこと。報酬などオマケに過ぎず、なんなら食事等の雑費のみで、無報酬でも構いません」

「いやいや、その強力な力は、俺達みたいな弱小パーティーには向いてない。めぐみんの力は、俺達には宝の持ち腐れだ」

「いえいえいえ、私は上級職ですけど、まだまだ駆け出し。レベルも6ですから」

 

くっ! (われ)の倍のレベルだとっ!?

……あ。今確認したら、レベルが4に上がってた。悔しいけど、なんか嬉しい。

 

「いやいやいやいや、一日一発しか使えない魔法使いとか、かなり使い勝手悪いから。……くっ、こいつ魔法使いのくせに、意外な握力をっ…!」

 

ついに和真さんから、本音が漏れだした。

 

「お前、他のパーティーにも捨てられた口だろ!? というか、ダンジョンにでも潜った際には爆裂魔法なんて使えないし、いよいよ役立たずだろ!」

「見捨てないでください! もうどこのパーティーも拾ってくれないのです! ダンジョン探索の時には、荷物持ちでも何でもします! だから捨てないでください!」

 

めぐみんが切実に願っていると、それが聞こえた街の人達から視線を集める。

 

『 あの男、小さい子を捨てようとしてる』

『 隣には、粘液まみれの女の子を連れてるわよ』

『見て。女の子は二人ともヌルヌルよ? どんなプレイをしたのよ、あの変態』

 

少し離れて歩いていたためか、どうやら私はカウントされなかったらしい。しかしこのままでは、和真さんの風評被害が大きすぎる。フォローを入れてあげないと、と思った矢先、めぐみんが発したのは。

 

「どんなプレイでも大丈夫ですから。先ほどの、カエルを使ったヌルヌルプレイだって」

 

瞬間、私はめぐみんの下に入り込み。

 

すぱああん!

 

ワンドで彼女の脇腹を一閃する。さすがに今回は手加減無しだ。

 

「~~~~~!」

 

あまりにもの痛さに声が出ない様だが、知ったことではない。

 

「やれやれ。あなたがパーティーを組みたいと思って、形振り構ってられないのはわかってます。ですが、曲がり形にもジャイアントトードに飲み込まれそうだったあなたを救った人に、こんな濡れ衣を着せる様な形でパーティー入りして、それでいいのですか!?」

「……う、ですが」

「それに紅魔族は、格好良さを求めてるのではないのですか? ハッキリ言って今のあなたのやり方は、最低に格好悪いですよ?」

「……」

 

めぐみんも思うところがあったのだろう、私の意見に押し黙ってしまった。

 

「ええと、めぐみ、助かったよ。ありがとう」

「いえ。私はめぐみんのやり口が、気に入らなかっただけですから」

 

そう。これは私の、勝手な押しつけである。

 

「……なあ、めぐみ。冗談抜きで、うちのパーティーに入ってくんないか?」

「え?」

 

まさか、このタイミングで勧誘されるとは、思ってもなかった。

 

「なっ、私という者がありながら!」

「そういうところだぞ、めぐみん」

 

めぐみんの暴言は、今は無視するとして。和真さんのパーティーか。同じ転生者同士、少しは気兼ねなくいられるだろう。

 

「……そうですね。それも面白いかも知れません」

「本当か!?」

「なっ、メグ…」

「ですが! 一つ条件があります」

 

文句を言おうとするめぐみんのセリフに被せ、私は言った。

 

「……条件って、なんだ?」

 

恐る恐る尋ねる和真さんに、私はにっこりと微笑み。

 

「めぐみんも和真さんのパーティーに入れてください。これが私の出す条件です」

「……悔しいけど、カッコいいです」

 

ポツリと呟くめぐみん。

 

「……むうう、背に腹はかえられないか。わかった、条件を飲もう」

 

背に腹は、って。めぐみんの評価、低いですね。

 

「やったじゃない、カズマ! 優秀なアークウィザードが二人も入ってくれるなんて!

後はアタッカーかタンカーが来てくれれば、もう言うこと無しね!」

 

アクア様は子供の様にはしゃいでいる。いい大人の、しかも女神に対して失礼だが、アクア様のこういうところは憎めない。

まあ、私達が優秀かは置いておくとして、あとアタッカーかタンカーが来てくれれば、というのは非常に正しい。先ほどの和真さんの戦闘で確信したが、今のこのパーティーには、近接戦闘を得意とする者がいない。なので近接戦闘のアタッカーか、それが無理でも、主戦力となるだろう私達を守るタンカーが欲しいところなのだ。

しかし。こんなパーティーに入ってくれるような、上級職のアタッカー、もしくはタンカーなんて、果たしているのだろうか?




めぐみがめぐみんに対してアンチヘイト気味な発言をしてますが、脅しをかけることは、交渉手段として否定していません(あまり良い手段とは思ってないが、清濁併せ持つとも思ってる)。ただ、濡れ衣によって謂われの無い悪評を広めかねない、浅はかな行動が許せなかっただけです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。