この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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遅くなりましたが続きです。


この最弱冒険者にスキルを!

翌日。和真さん達と共にギルドで食事をとっていると。

 

「なあ。スキルってどうやって覚えるんだ?」

 

和真さんがそんな事を聞いてきた。しかし、どうやって覚えるもなにも、スキル習得欄にスキル名が…。

そんな事を考えていると、受け応えをしていためぐみんが。

 

「そういえばカズマは冒険者でしたね」

 

と言った。という事は、冒険者は普通とスキルの習得方法が違うということか。

 

「初期職業の冒険者は、誰かにスキルを教えてもらうのです。目で見て、スキルの使用方法を教わることで、カードに習得可能スキルという項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば完了です」

 

なるほど。要は使ってるところと、その使用法を教わるというプロセスが加わるわけだ。

 

「つまり、めぐみんに教われば、俺でも爆裂魔法が使える様になるって事か?」

「その通りです!」

 

あ。和真さんが、めぐみんのヘンなスイッチを入れてしまった。めぐみんは和真さんに顔を近づけながら、爆裂魔法について熱弁をふるっている。和真さんが引いているのにも気づかずに。

とはいえ今回は、いい加減めぐみんの性格を把握してるであろう和真さんの落ち度なので、めぐみんを止めるようなことはしない。

 

「ちょ、落ち着けロリッ子! つーか、今3ポイントしか無いんだが、これで習得出来るのか?」

「ロリッ子…!?」

 

…………!?

 

「……ええと、アクア?」

「冒険者が爆裂魔法を習得しようと思うなら、スキルポイントの10や20じゃ利かないわよ? 十年くらいポイントを一切使わずに貯め続けたら、習得出来るかもね」

「待てるか、んなもん!」

「ふっ…、この我がロリッ子…」

 

…………。

 

「……和真さん」

「ん? ……うおっ!? ど、どうした、めぐみ!?」

 

……あれ? 和真さん、どうして顔を引き攣らせているのでしょう?

 

「和真さん。めぐみんがロリッ子という事は、私もロリッ子という事でしょうか?」

「……え? ああ、めぐみんと同じくらいの年齢なら、ロリッ子じゃないか?」

「ぐはぁっ!!」

 

ショックを受けた私は、テーブルに突っ伏した。大袈裟だと思われるだろうが、それだけのショックを受けたのだ。……決して中二な理由ではない。

しかし和真さんはそうは思わなかったらしく、やれやれといった表情でため息を吐き、アクア様にスキルを教えて貰おうと声をかけている。全く、乙女心のわからない男だ。そんなではモテないですよ?

 

 

 

 

 

アクア様が教えてくれたのは宴会芸だった。和真さんからの激しいツッコミでアクア様は気落ちしてるが、声をかけると何だか面倒くさそうなので、ここは敢えてスルーをする。

 

「あっはっは! 面白いねキミ!」

 

と、突然横合いから和真さんに声がかけられる。って、この声は。

 

「ねえ、キミがダクネスが入りたがってるパーティーの…」

「クリスさん!」

「えっ、メグミ?」

 

そう。隣のテーブルから声をかけてきたのは、こちらでの恩人の一人、クリスさんだった。

クリスさんの向かいには、ポニーテールにした長い金髪に青い瞳、そしてフルプレートで身を固めた騎士風の女性。おそらくこの人物がダクネスという人なのだろう。……というか、和真さんのパーティーに入りたい?

 

「なんだ? めぐみの知り合いか?」

「メグミ、彼のパーティーに入ったの?」

「ええと、どちらもその通りです。

和真さん。こちらはクリスさん。冒険者になってから色々とお世話になっている、恩人の一人です。

クリスさん。私はこちらの、和真さんのパーティーに入ることになりました」

 

和真さんとクリスさん、それぞれに答える。

 

「そうか。ありがとう。めぐみが世話になってたみたいだな」

「こちらこそ。メグミをよろしく頼むよ」

 

えっと。目の前でそんな事言われると、私が気恥ずかしいのだが。

 

「ところで話の続きだけど、キミ、有用なスキルが欲しいんでしょ? それなら、盗賊スキルなんてどうかな?」

 

なるほど。攻撃魔法は私とめぐみんが、回復魔法やバフならアクア様が。そうなれば和真さんが取るべきスキルは、探知系やプリーストのバフ以外の攻撃補助のスキルがバランスが良いはずだ。そして盗賊には、そのどちらもある。私に付き添ってくれていた時に見せたバインドなんかは、かなり有効だ。

実際、どんなスキルがあるかを尋ねた和真さんにクリスさんは、中々に役立ちそうなスキルをあげている。そして、クリムゾンビアで手を打つと言ってきた。中々に強かだ。

 

「よし、お願いします! すんませーん、この人に冷えたクリムゾンビアを一つ!」

 

どうやら和真さんは、クリスさんからスキルを教わることに決めたようだ。

 

 

 

 

 

私達はギルド裏の広場へと移動した。……とはいっても、アクア様とめぐみんは落ち込んだままだったので、そっとしておいたが。私だって、話しかけてきたのがクリスさんだったから気分が持ち直しただけで、そうでなかったら未だに落ち込んでた自信がある。

とまあ、そんな事は置いといて。

 

「それじゃあ改めて自己紹介から。あたしはクリス。見ての通り盗賊だよ。で、こっちがダクネス。キミは昨日会ってるんだっけ? この子はクルセイダーだから、キミに有効そうなスキルは無いかな」

「ウス! サトウカズマです。クリスさん、よろしくお願いします!」

 

二人が挨拶を交わして、和真さんのスキル習得が開始した。

……しかし、ダクネスさん、ですか。ううむ、何だか私の周りでは、激しい格差社会があるような気がする。

ルナさんやダクネスさん、ゆんゆんにアクア様の様な人達もいれば、私やめぐみん、クリスさんにリーンさんの様な人達もいる。細かいことは言わないが、世の中不公平だと思う。

なんて事を考えているうちに状況は進み、ダクネスさんに石を当てたクリスさんが樽の中に隠れて《潜伏》、更に、近づくダクネスさんに対して《敵感知》を披露するものの、怒るダクネスさんに樽を転がされて仕返しを受けていた。まあ、スキルを教えるためとはいえ、自業自得である。

 

「それじゃあたしの一押しのスキル、窃盗をやってみようか。これは対象の持ち物を、何でも一つ奪い取るスキルだよ」

 

しばらくして。目が回った状態から回復したクリスさんが、再び説明を始めた。

 

「武器だろうがサイフだろうが、何でも一つ、ランダムに奪い取る。スキルの成功率は、幸運値のステータスに依存するよ」

 

なるほど。聞いた話によると、和真さんは幸運値がかなり高いらしいので、まさに打ってつけのスキルだろう。

 

「それじゃ行くよ。『スティール』!」

 

和真さんに向かって片手を突き出し、スキルを発動させた次の瞬間、クリスさんの手にはサイフが握られていた。

 

「あっ、俺のサイフ!」

 

これは凄い。なにが凄いって、幸運値が高い和真さんから、今の和真さんにとって一番良い物だろうサイフを奪ったのだ。もしかしたらクリスさんも、かなり幸運値が高いのかも知れない。

そんなクリスさんは、和真さんにサイフを返す仕草をするが、その手を不意に引っ込める。

 

「ねえ、あたしと勝負しない?」

 

勝負を持ちかけるクリスさん。

 

「あたしから何か一つ、スティールで奪っていいよ。それが、あたしのサイフでも武器でも、文句は言わない。どう?」

 

和真さんはしばらく考え込んでから。

 

「よし、その勝負乗った!」

 

そう答えて、冒険者カードを取り出す。

 

「……え?」

 

……? どうしたのだろうか。私が和真さんに近づき尋ねると。

 

「いや、《敵感知》《潜伏》《窃盗》それに《花鳥風月》は良いんだが…」

 

花鳥風月? あ、アクア様の宴会芸スキルか。

 

「《火炎球(ファイアー・ボール)》10ポイント、《閃熱呪文(ギラ)》10ポイントって」

「はい!?」

 

慌てて私は和真さんのカードを覗き込む。……本当だ。《火炎球》と《閃熱呪文》が項目にある。

 

「確かに術は見たけど、教わったわけでもないのに」

 

その通り。私は戦闘で使ってる所を見せただけだ。それなのに、何故…。あ。

 

「もしかしたら和真さんが、その二つの知識を持っているからでは。どちらも色々な媒体で説明がなされてましたから」

「なるほど。既に使い方を教わった状態だったから、実際に見て習得可能欄に表示されたって事か」

 

もちろん推測に過ぎないが、今の所これで納得はいく。

 

「……えっと、カズマくん?」

「ああっと、すまねえ! とりあえず盗賊スキル以外は後々考えるとして。……よっし、習得完了!」

 

カードを操作し終わった和真さんは、クリスさんに向き直る。

 

「早速覚えたぞ。何盗られても泣くんじゃねーぞ?」

「いいね、キミ! そういうノリって好きだよ!」

 

さすが盗賊、ギャンブラーだ。

 

「さあ、何がとれるかな? 当たりは、魔法がかけられたこのダガーだよ。これは40万エリスは下らない一品だからね。

そして残念賞は、この石だ!」

「ああっ、きたねえ!」

 

掌の中に収まる複数の石を見て、和真さんが文句の声を大にするが、これも立派な作戦だ。むしろ、この勝負を見越して準備をしていたことを考えると、中々の強かさを感じる。

和真さんもそう思い至ったのだろう、クリスさんの「授業料」とか「どんなスキルにも対抗策がある」といった言葉もあり、気持ちを切り換えたようだ。

 

「よし、やってやる! 『スティール』!」

 

彼がスキルを発動し、その手に掴んだものを見て、私の顔が紅潮するのがわかる。

 

「ヒャッハー! 当たりも当たり、大当たりだああああ!」

「いやああああ! あたしのぱんつ、返してえええええ!」

 

そう。和真さんが振り回してるそれは、クリスさんのぱんつだったのだ。

……さて。

 

ずぴしぃ!

 

「あでえっ!?」

 

素早く踏み込み、ワンドで和真さんの胴を打つ。……本当は面打ちしたいのだが、身長差があるので仕方がない。

 

「和真さん。さいてーです」

 

和真さんの正面に立ち、私は言い放つ。

 

「……すんませんでしたっ!」

 

和真さんは素早く土下座をするのだった。

 

 

 

 

 

私達がギルドへ戻ると、アクア様の宴会芸で冒険者達が盛り上がっていた。もう一度とせがまれていたが、アクア様は、「芸は請われてやるものではない」とか、「私は芸人じゃないから、芸でお金を受け取るわけにはいかない」と言って断っている。やがて和真さんに気がつき。

 

「ちょっとカズマ、やっと戻ってきたわね。あんたのおかげでえらい事に…。って、その人どうしたの?」

 

クリスさんに目を向けたアクア様が尋ねた。

 

「クリスはカズマにぱんつを剥がれた上に、有り金毟られて落ち込んでるだけだ」

「おいあんた、何口走ってんだ!」

「な、ダクネスさん!? 間違ってないけど間違ってますから!」

 

そう。あのさいてーな言動は諌めたものの、勝負は勝負。その後のクリスさんとの交渉までは口出ししなかった。しなかったが、これでは和真さんが一方的に悪いみたいではないか。

 

「公の場でいきなりぱんつ脱がされたからって、めそめそしててもしょうがないよね。ダクネス。あたし、稼ぎの良いダンジョン探索に参加してくるよ。下着を人質にされて、有り金失っちゃったしね!」

 

クリスさんまで!和真さんが縋るような目で私を見ているが、ごめんなさい。嘘を吐いてない上に、和真さんにも非があるので、口出しはできません。

ギルド中の女性から、冷たい視線を受ける和真さん。せめて後でフォローしておこう。

クリスさんは和真さんに声をかけてから、ギルドの掲示板へと向かっていった。

 

「……それでカズマは、無事にスキルを覚えられたのですか?」

 

な、めぐみん! それってフラグ発言…!

 

「ふふ、まあ見てろよ? いくぜ、『スティール』!」

 

和真さんも!

……そして次の瞬間、和真さんの手には、黒い布が握られていた。めぐみん、見た目に反して中々…。

 

「何ですか? レベルが上がってステータスが上がったから、冒険者から変態にジョブチェンジしたのですか?

……あの、スースーするので、ぱんつ返してください」

「あ、あれ!? ランダムで何かを奪い取るスキルのはずなのに!?」

 

どうやら和真さんは、気づいていないようだ。

 

「あの、めぐみんのあのセリフって、どう見てもフラグですよね? つまりその後の和真さんの行動は…」

「なっ! 知らず知らずフラグ回収してたって事か!?」

 

その通り。別名お約束というやつだ。

 

「やはり私の目に狂いは無かった! こんな幼げな少女の下着を剥ぎ取るなんて、何という鬼畜の所業!」

 

かふぅ! 幼げ…。ダクネスさんにまで幼げなどと…。

 

「是非とも! 是非とも私を、このパーティーに入れて欲しいっ!」

「確かに前衛は欲しい」

「では!」

「だが断る!」

「んん…!? くぅ…!」

 

露伴先生の様に断る和真さん。今度私もやってみよう。

……しかし。断られたダクネスさんが、顔を上気させて身悶えているように見えるのだが、気のせいだろうか? 私はふと、イヤな予感を感じていた。




中級魔法のアレンジ《火炎球》とDQの初級呪文《閃熱呪文》が同じ10ポイント(ウィザードなら5ポイント前後)なのは、閃熱呪文がこのすば世界だと中級魔法レベルの攻撃力があるからです(独自設定)。
なお、どちらもめぐみオリジナルの魔法扱いなので、爆裂魔法同様、ウィザードやアークウィザードも教わらないと使える様になりません。
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