この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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お久しぶりです(何度目だよっ!)。


このデュラハンと邂逅を!

「やっぱり他の呪文も再現するべきです!」

「ちょっと! いきなりどうしたのよ!?」

 

あれから六日。いつもの特訓場所で私はそう述べた。思った以上に(りき)が入っていたせいで、リーンさんを驚かせてしまったが。

 

「すみません。いえ、今特訓中の術も大分様になってきました。しかしそうなると、段々他の呪文も再現したくなる欲求が膨らんできまして…」

「……再現?」

「ああ、そういえばリーンさんには話してませんでしたね。私の創作魔法やアレンジ魔法は、私のいた国では有名な物語に登場するものなのですよ。お教えした烈閃槍もそうですし…」

 

言って私は短く呪文を唱え。

 

「『火炎球(ファイヤー・ボール)』!」

 

掌に現れた光球を、今まで的にしていた岩に目がけて放り投げる。

 

どぐうぉおおん!

 

光球は岩に触れた途端に爆炎をあげた。

 

「……とまあこの魔法も、その物語に出てきたものを再現するために、ファイヤーボールをアレンジしたものなのです」

「……そ、そうなんだ」

 

リーンさんが若干引きながら言う。どうやら、いきなりの火炎球に面食らった様だ。

うむ、自重しないと、めぐみんと同じ扱いを受けかねない。気をつけなければ。

 

「ええと、それじゃあしばらくは、魔法の再現に没頭するの?」

「いえ、特訓は続けますよ? 何処ぞの魔王軍幹部のお陰で、時間は有り余ってますから」

「あはは…」

 

私が放った皮肉に、苦笑いを浮かべるリーンさん。

 

「というわけで、何事も無ければ明日もお願いします」

 

そうお願いしたものの、後になって思えばその一言がフラグだったのだろうと思う。

 

 

 

 

 

『緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』

 

翌日の朝、街中にギルドからのアナウンスが流れる。しかし今回のアナウンスは、キャベツ狩りの時とは違い、かなりの緊迫感が感じ取れた。

私は和真さん達と共に、急いで正門の前まで駆けつけた。その前には…。

あるべき所に首の無い黒甲冑の騎士。左腕には、その首を抱え立っている。

デュラハン。ファンタジー物ではお馴染みの、死霊騎士。作品によってその強さは違ってくるものの、総じて強敵として描かれるアンデッドだ。

何故かこの様な[駆け出し冒険者の街]に現れたそれは、自分の頭を私達の前に突き出し、そして言った。

 

「俺は先日、近くの城に越してきた魔王軍幹部の者だが…。

ままま毎日毎日毎日! おお俺の城に毎日欠かさず、爆裂魔法を撃ち込んでくる頭のおかしい大馬鹿者は誰だあああああっっ!!

 

デュラハンは、大変お怒りで在られる。

……というか。

 

「爆裂魔法?」

「爆裂魔法を使える奴って言えば…」

「爆裂魔法って言ったら…」

 

私も含め、みんなの視線がめぐみんへと集中する。するとめぐみんは、近くにいた少し年上の、魔法使いの女性へと視線を移した。それに釣られた和真さんも、その女性へと視線を移し、さらに他の冒険者達も釣られて視線を移す。

 

「ええっ!? あ、あたし!? なんであたしが見られてるのっ!?」

 

物凄く慌てる女性。それはそうだろう。濡れ衣を着せられているのだから。たとえ彼女が爆裂魔法を使えたとしても、毎日爆裂魔法を撃ち込むような人物は、この場にはめぐみんくらいしかいないはずだ。

おそらく唯一視線を逸らさなかった私は、すぅっとワンドを構える。それを見た途端めぐみんは顔色を変え、そして同時に、何かに気づいたようなハッとした表情になった。どうやら心当たりがあったみたいだ。というか、失礼ではあるが、犯人はめぐみん以外に有り得ないだろう。

観念したのだろう、めぐみんはため息をひとつ吐くと、デュラハンに向かって歩き始めた。その後を和真さんが続き、それに合わせて私、アクア様、ダクネスさんもついて行く。

それにしてもアクア様がずいぶんと大人しい。ウィズさんには物凄い形相で向かっていったのに。なんだか興味津々といった表情をしているので、このデュラハンの言動が物珍しいのかも知れない。

 

「お前が! お前が毎日毎日、俺の城に爆裂魔法を撃ち込んで行く大馬鹿者か!? 俺が魔王軍幹部と知って喧嘩を売っているなら、堂々と攻めてくるがいい! その気が無いのなら、街で震えているがいい!」

 

うむ。このデュラハンの言うことが正しければ、確かにめぐみん以外の何者でもない。

ただ、どうでもいいが、そもそも(くだん)の城は廃城だという話。勝手に棲みついてるだけで、彼の城ではないのだが。

 

「……何故こんな陰湿な嫌がらせをする!? どうせ雑魚しかいない街だと放置をしていれば、調子に乗って、毎日毎日ポンポン撃ち込みおって!! 頭がおかしいんじゃないか、貴様っ!!」

 

ずいぶんと上から目線ですね。まあ確かに、魔王軍幹部のデュラハンという強敵ではあるが。

そして頭がおかしいと言うのは正解である。何しろ、「頭のおかしな爆裂娘」なのだから。

そんな爆裂むす…もといめぐみんが、若干怯みつつも、ばさりとマントを翻し口を開く。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードにして爆裂魔法を操る者!!」

 

うん。やはりこういう場面での名乗りは燃えますね!

私はそう思ったのだが。

 

「めぐみんって何だ。馬鹿にしてるのか?」

「ちっ、違わい!」

 

……まあ、めぐみんの名前に関しては、致し方ないと思う。

 

「我は紅魔の者にして、この街随一の…、ええそう、随一の魔法使い。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは、あなたを誘き出すための作戦! こうしてまんまと現れたのが運の尽きです!」

 

めぐみん、ここぞとばかりに乗ってますね。中二病な私としては、気持ちもよく判りますが。

そんな事を考えていると、和真さんがぼそりと囁いた。

 

「……いつから作戦になったんだ? 毎日爆裂魔法を撃たなきゃ死ぬっていうから、仕方なく付き合ってやったのに」

「うむ。だが何故、この街随一のところで言い淀んだんだ?」

「しーっ! そこは黙っておいてあげなさいよ。多分、随一って言った瞬間にメグミの事が頭をよぎって、日和りそうになったのよ!」

「せっかくの口上の最中(さなか)にそんな些細なことで言い淀むとは、めぐみんもまだまだですね」

 

そんな事を話し合ってると、めぐみんの顔がわずかに紅潮していた。どうやら会話が聞こえていた様だ。

対するデュラハンの反応はと言うと。

 

「なるほど、紅魔の者か。そのふざけた名前は、別に馬鹿にしていた訳ではなかったのだな」

「おい。両親から貰った私の名に、文句があるなら聞こうじゃないか」

 

そうか。魔王軍幹部からも、紅魔族の認識はそうであったか。

 

「……ふん、まあいい。俺はおまえらに、ちょっかいかけにやって来たのではない。しばらくあの城に滞在することになるだろうが、これからは、爆裂魔法は使うな。いいな?」

 

そう言ってデュラハンは、踵を返し立ち去ろうとするが。

 

「無理です。紅魔族は日に一度、爆裂魔法を撃たないと死ぬんです」

 

めぐみんがとんでもないことを言い出した。

 

「何出鱈目言ってるんですかっ!」

 

私はワンドを閃かせ、めぐみんの頭に叩き込む。

 

「あなたの言うことが本当なら、ゆんゆんはとっくに亡くなってますよ! 精々死ぬのはあなたくらいです!」

「いや、めぐみんだって死なないだろ。て言うか、ゆんゆんって誰だ?」

 

ああ、そういえば、ゆんゆんの事は話していなかった。私は説明しようと思ったが、止めることとする。デュラハンの雰囲気が変わったからだ。

 

「……どうあっても、爆裂魔法を撃つのは止める気はないと?」

 

デュラハンのその問いに、めぐみんは深く頷いた。

 

「……俺は、魔に身を堕としてはいるが元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。……だが!」

 

どうやら彼は、正々堂々の勝負が好みのようだ。

 

「……ふっ! 余裕ぶっていられるのも今の内です! 先生! お願いします!!」

「しょうがないわねぇ」

「えっ!?」

「ハァッ!?」

 

私と和真さんが驚きの声をあげる。

いや、しかしアークプリーストで、しかも女神のアクア様。魔王軍幹部になる程の実力を持ったデュラハンにも、引けを取らないはずだ。

アクア様は前へと踏み出し、めぐみんの横に並び立つ。

 

「ほう、これはこれは。アークプリーストか。

俺は仮にも、魔王軍の幹部のひとり。こんな街にいる、低レベルなアークプリーストに浄化されるほど、落ちぶれてはいない。

そうだな。ここはひとつ、紅魔の娘を苦しませてやろうか」

 

デュラハンがそう言うと、右手に黒い、昏いオーラが集まっていく。

 

「私の祈りで浄化してやるわ!」

 

そうアクア様は言うが、おそらく今からじゃあ…。

 

「間に合わんよ」

 

私は右手を伸ばし…。

 

「汝に死の宣告を! お前は一週間後に死ぬだろう!!」

 

その手がめぐみんに届くよりも先に、デュラハンが呪いを放ったのと同じタイミングで、ダクネスさんがめぐみんの襟首を掴み、引き寄せながら入れ替わるように前へ出た。

 

「なっ、ダクネス!?」

 

めぐみんが声を上げる中、ダクネスさんに黒いモヤがかかり消えていく。

 

「ダクネス、大丈夫か!?」

「どこかおかしな所はありませんか!?」

 

和真さんと私が尋ね、ダクネスさんが数度、手を握って開くを繰り返す。

 

「……特に何ともないようだが」

 

そう、ダクネスさんは言った。けれど、ファンタジー物の受け売りではあるが、呪いなんてものは後から効果が現れるものもざらにある。だから、今は何も異常が感じられなくても…。

 

「今は何ともないよ。若干予定は狂ったが、仲間同士の結束が固い貴様らにはむしろ好都合か。

紅魔の娘よ。そのクルセイダーは一週間後に死ぬ。お前の大事な仲間はそれまで、死の恐怖に怯え苦しむのだ。そう。貴様の行いのせいでな!」

 

やっぱり!

私は伸ばした手が間に合わなかったことに歯噛みをし、しかし直ぐに、もし間に合っていたとしても呪いを受けたのが、ダクネスさんではなく自分に置き換わっていただけだと気づき、少しだけ落ち着いた。

……やれやれ。レックスさんに注意されていたはずなのに。

 

── 誰かを庇っておっ()ぬなんて事、ないようにしろよ?

 

この言葉、ちゃんと心していたはずだったが、私の元々の性格、簡単には治せないようだ。

そう改めて自分に向き直っていたところ、ダクネスさんがそんな気分をぶち壊した。

 

「なんて事だ! つまり貴様は、呪いを解いて欲しくば俺の言う事を聞けと!」

「ファッ!?」

 

はい。いつものダクネスさんです。

 

「くっ、呪いくらいではこの私は屈しない! 屈しはしない、が! ど、どうしよう、カズマ。

見るがいい、あのデュラハンの、兜の下のイヤラシい目を! あれは私を城へと連れて帰り、呪いを解いて欲しくば黙って言うことを聞けと、凄まじいハードコア変態プレイを要求する変質者の目だ!」

「……ファッ?」

 

……少しだけ、デュラハンが可哀想に思えてきました。

 

「私の体は好きに出来ても、心まで好きに出来ると思うなよ! 城に囚われ理不尽な要求をされる女騎士とか。

ああっ、どうしよう、カズマッ!! 予想外に燃えるシチュエーションだ!

行きたくはない、行きたくはないが仕方がない! ギリギリまで抵抗してみるから邪魔はしないでくれ!

では、行ってくるっ!」

 

どうしよう。作品としてドMキャラを見るのは構わないが、身内にいると対処に非常に困ってしまう。いつものようにワンドで引っ叩こうものの、彼女にとってはご褒美にしかならないだろう。

デュラハンの元へ行こうとするダクネスさんを羽交い締めにして、必死に止めている和真さんを見ながら、ぼんやり考えていると。

 

「とにかく! これに懲りたら、俺の城に爆裂魔法を撃ち込むのは止めろ!

そして紅魔の娘よ。クルセイダーの呪いを解いて欲しくば、城まで来るがいい。最上階の俺の部屋まで来ることが出来たなら、その呪いを解いてやろう!」

 

そう言い残し、首の無い馬に跨がり立ち去っていった。

 

 

 

 

 

あまりにもの出来事に静寂が流れ。

 

「おい、どこへ行く気だ」

 

一人、街の外へ向かうめぐみんに、和真さんが声をかける。

 

「今回の件は私の責任です。ちょっと城まで行って、あのデュラハンに爆裂魔法ぶち込んで、ダクネスの呪いを解かせてきます」

 

振り向きもせずに言うめぐみんに、和真さんはため息を吐き。

 

「俺も行くに決まってんだろ? そもそも、毎回一緒に行きながら、幹部の城だって気づかなかったマヌケだしな」

 

そんな二人の会話を聞きながら、一緒に着いていきたい気持ちを、グッと堪える私。冷静に、なれ!

 

── 魔法使いってのはつねに、パーティで一番クールでなけりゃならねえんだ。

全員がカッカしてる時でも、ただ一人氷のように冷静に戦況を見てなきゃいけねえ…。

 

マトリフ師匠の言葉を思い浮かべ、他に出来ることはないかと考えを巡らせる。

あのデュラハンが使ったのは[死の宣告]という、呪いによって指定された日に命を奪うというもの。

なら呪いと対極を為すものは、……浄化? しかし相手は魔王軍の幹部。おそらく並のアークプリーストでは、少しばかりレベルが高くても呪いを解くことは出来ないだろう。

……では、並のアークプリーストではなかったら? むしろ規格外のアークプリーストだったら?

 

「二人とも、待ってください。デュラハンの元へ行く前に、試すべき事があります」

「「試すべき事?」」

 

聞き返す二人に頷いてから、私は視線を移し。

 

「アクア様。ダクネスさんの呪い、解くことは出来ますか?」

「もちろんよ! 私を誰だと思ってるの?」

 

私の質問に胸を張って答えるアクア様。今は見違えるほどに頼もしく感じる。

 

「じゃあ、いくわよ!

『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

アクア様が魔法を唱えると、ダクネスさんの体が淡く輝いた。……ついでにプリーストの魔法の観察も欠かさない。

 

「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ! どう、どう? 私だってたまには、プリーストっぽいでしょう?」

「ええ。でもアクア様。『たまにはプリーストっぽい』ではなく、常にプリーストらしくいて欲しいのですが」

 

アクア様に同意した後に少しばかり苦言を呈すると、「えー、そんなの面倒じゃない」と言われてしまった。

やれやれ。この人の性格も、一朝一夕とはいかないようだ。

 

「「……えっ?」」

 

ぽつりと呟く声に振り向けば、和真さんとめぐみんが呆然と立ち尽くしていた。まあ二人とも、特に和真さんは、普段では考えられないくらい意気込んでいたから、仕方がないのかも知れませんが。

私は視線をめぐみんのみに向けると。

 

「……フッ」

「そんな目で、私を見るなあああああ!」

 

少しだけ、先日の仕返しをしてやるのだった。




ようやく真っ当に【ダイ大】ネタ入れられました。
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