この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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先週には出来上がってたのに、予約投稿を忘れてました。すみません。


この憐れな女神とクエストを!

「フッフッフ…!」

「ちょっと、特訓場所に来て早々、何勿体ぶった笑い方してるのよ?」

 

おっといけない。思わず笑いが込み上げてきてしまった。

 

「リーンさん。少し前に私が言ったこと、憶えてますか?」

「……もしかして、再現魔法がどうとかいうやつ?」

 

どうやら、憶えていてもらえたようだ。

 

「実は幾つか組み立て終わって、今日、実験しようと思っていたのですよ!」

「へえ! まだ一週間くらいしか経ってないのに、もう出来たんだ!?」

 

リーンさんが若干興奮している。やはりウィザードとしては、新しい魔法には興味をそそられる様だ。

 

「まずはアレンジ系で、ファイヤーボールの威力を調整して、上級・中級・初級の三段階にしました。見ていてください。最初は初級の…!

火炎呪文(メラ)』!」

 

私がワンドを振ると、通常のファイヤーボールより弱めの火球が飛び、的の岩にぶつかり弾けた。

 

「続いて…!

火炎呪文(メラミ)』!」

 

今度の火球はファイヤーボールより少し強めで、同じく的に当たり弾ける。

 

「最後は…!

火炎呪文(メラゾーマ)』!」

 

そして、ファイヤーボールとは比べ様もない強力な火球が的に当たった。

……くううっ! ついに。ついにっ! ポップ兄さんが得意とする呪文を再現出来たっ!! もう、感無量である!

 

「凄…。ファイヤーボールも上手にアレンジすれば、こんなに威力が上がるんだ」

 

その通り! スキルの習得をシステム化した恩恵は多大にあるけど、同時に才能さえあれば誰でも簡単に、スキルや魔法が使えるようになってしまう。

別に、それが悪いことだとは思わない。お陰で若いうちから実戦経験を積めるのだ。ただその為に、新しい技や魔法、それにアレンジ等を突き詰める人が減ってしまったという弊害も見てとれた。世の中侭ならぬものである。

 

「さあ、リーンさん。他の魔法も見てください!」

 

その後私は氷結(ヒャド系)呪文、爆裂(イオ系)呪文、真空(バギ系)呪文を披露した。真空呪文は高評価、爆裂呪文は爆発系魔法の劣化版だが、魔力消費のコスパがいいことを評価された。ただ、氷結呪文に関しては、「マヒャドよりカースド・クリスタルプリズンの方が効果が高い」と一掃されてしまった。ううむ、解せぬ。

 

 

 

 

 

翌日。リーンさんは、一日では終わらないもののクエストが受けられたとかで、パーティーメンバー ── ダストさん(クズ)を含む ── と共に出発していった。というわけで、私は突如暇になってしまった。仕方がないので、宿に戻って魔法の研究でもしようかと思案をしていたところ。

 

「お願いよおおおお! もう、バイトばかりするのは嫌なのよぉ!」

 

と言うアクア様の声が聞こえてきた。声のした方を見てみると、和真さん達が席を囲んでいる。……というか、暇になってからというもの、この時間にみんなが揃っているのが珍しい。

そんな事を考えていると、アクア様が掲示板の方へ走って行き、少ししてその後を和真さんが追いかけて行く。

 

「一体何事ですか?」

「おや、メグミ。三日ぶりくらいですか」

「私は一週間ぶりだな」

 

めぐみんとは時間が合った時に顔を合わせているが、ダクネスさんは実家で筋トレをしている関係上、ここ一週間顔を合わせることは無かった。

 

「そうですね。それで、アクア様は何を? それに和真さんも」

「ああ、アクアがアルバイトで苦戦しているみたいでな。今回は頑張るから、どうしてもクエストを受けたいそうだ」

「ですが、アクアだけだとトンデモないクエストを受けてしまいそうなので、カズマにも見てもらうことにしたのです」

 

なる程。アクア様には悪いが、めぐみんの言う事はもっともである。

 

「それで、メグミはどうするのですか?」

「……幸か不幸か、今日は特訓について来てくれる人はいません。それに私はこのパーティーのメンバーですよ? 一緒に行くに、決まってるではないですか」

 

そう答えると、めぐみんがハァ…とため息を吐いた。

 

「……それは一体、どういう意味ですか? 私は、売られた喧嘩は買いますよ?」

「なんでそういう所は、我々紅魔族寄りなんですか!?」

 

なんでと言われても。これでも昔よりは、自制が利く様になったくらいだ。

 

「……私はただ、報酬の割合が減ると思っただけです。その、仕送りの問題があるので」

「仕送り? めぐみんの実家(いえ)は、その、お金に不自由しているのですか?」

「……下手に気を遣った言い方されると、むしろ傷つきますよ!? ええ、そうです。うちは貧乏ですよ!」

 

そうだったのか。てっきり私は、めぐみんの大食漢振りは魔力を大量に消費したためだと思っていたが、そういった背景があったとは。決して某魔を滅する者(デモン・スレイヤー)と同じ理由では無かったのだ。中の人と名前が似てるけど。……いや、私もそうだけど。

 

「……お、丁度いい。めぐみも来てたか」

 

と、私は後ろから声をかけられた。相手は当然、和真さんだ。

 

「ああ、和真さん。話はめぐみんとダクネスさんから聞きました。もちろん私もご一緒しますよ」

「すまない、助かる。実は俺の作戦だと、本当にピンチに陥った時に、めぐみんやダクネスは使い辛かったんだ」

 

……作戦?

 

 

 

 

 

アクセルの街から少し離れた場所にある湖。ここは街の水源のひとつになっており、今回のクエストはここの水の浄化という事だ。そしてその方法は。

 

「……私、ダシを取られる紅茶のティーバッグの気分なんですけど」

 

その呟きは、湖の浅瀬に置かれた大きな檻の中で体育座りをしている、アクア様のものだった。

和真さんの説明によると、この湖にはブルータルアリゲーターというモンスターが棲息しているので、逆にアクア様を檻に入れて身を守ることにした、という事だ。もしもの時には、檻と繋がった鎖を引っ張り回収するという。

ただ、予定外の事態に見舞われて回収できなかった場合、めぐみんの爆裂魔法ではアクア様を巻き込んでしまうし、浅瀬とはいえ水の中では、ダクネスさんも小回りが利かずに盾役としての能力が半減してしまう。それで和真さんは、多彩な魔法が使える私の存在が有難かったわけだ。

 

「中々のアイデアですね、和真さん」

「だろ?」

 

私と和真さんがそんな事を話していると、ダクネスさんが。

 

「いや、結構乱暴な気がするのだが」

 

などと言ってきた。

 

「なにを言ってるのですか。私と和真さんがいた所では、大きな檻に人を入れて、しばらく息が出来るように空気の入ったボンベを背負わせて海に放り込み、巨大肉食魚を観賞するアトラクションだってあるのですよ?」

 

私の説明にダクネスさん、そしてめぐみんが戸惑った表情を見せる。二人は事の真偽を確かめようと、和真さんへと視線を向けた。

 

「……まあ、メジャーな訳じゃないけど、確かにあるな、そういうの。……海外の話だけど

「何か言ったか?」

「いや、大したことじゃない。とにかく、めぐみが言ったことは本当で間違いないよ」

「そうなのですか。二人がいた国では、変わったことを考える人がいるのですね」

「そうだな」

 

どうやら二人とも、納得してくれたようだ。だが紅魔族に、変わったことと言われたくはないのだが。

 

 

 

 

 

二時間が経過した。今の所、モンスターの気配は無い。

 

「おーいアクア。浄化の方はどんな具合だ? あと、トイレ行きたくなったら言えよ?」

 

やれやれ。本当に和真さんはデリカシーが無い。

 

「浄化は順調よ! あと、アークプリーストはトイレに行かないから!」

 

……とは言え、アクア様のこの返答もどうかと思う。

 

「どうやら順調の様ですね。因みに紅魔族もトイレには行きませんから」

 

めぐみんまで…。トイレに行かないなんて、今時アイドルだって言いはしないのに。

 

「わ、私もクルセイダーだから、トイレは…、トイレは…!」

 

……あれ? ダクネスさんの事だからもっと興奮すると思ったのだが、どうも本気で恥ずかしがっているような。もしかして性的な辱めはストライクゾーンだけど、この手の話は対象外、……というか苦手なのだろうか。

ううむ。この人の羞恥の基準がイマイチわからぬ。

 

「ダクネス、コイツらに対抗するな。この二人には今度、日帰りじゃ終わらないクエストを受けて、本当にトイレに行かないか確認してやる」

「和真さん。水の心配はないのですから、食事を汁物中心にするのはどうでしょう?」

「お、そのアイデアいただきだ!」

 

私が出したアイデアに乗っかる和真さん。

女性は身体的構造上、男性と比べてトイレが近い。保健体育の授業の時、先生がそんな蘊蓄を述べていたので、効果の程は抜群だろう。

 

「や、止めてください! 紅魔族はトイレなんて行きませんよ? でも、謝るので止めてください。

……と言うか、メグミはカズマ側なのですね?」

「私は普通にトイレへ行きますから」

 

キッパリと断言をする。

 

「あの、恥ずかしくはないのですか? あ、いえ、私は行かないので想像ですが」

「恥ずかしいか、恥ずかしくないかで言えば、恥ずかしいですよ? ですが、そこまで気にするほどではありません」

 

どちらかと言えば、この手の話題に弱いのは私の親友だろう。その代わり、私は性的な話題には弱いが、彼女はその辺には意外と強かった。エッチい場面に遭遇しても、顔を覆った手の指の間から覗き見るタイプの子である。私は、……興味はあるが恥ずかしさが勝って、覗き見るなんてとても出来やしない。

 

「……そうですか。人それぞれなのですね」

 

いけない。思考が逸れていた。とりあえず私は、「そうですね」とだけ返し黙っている。……暫し流れる沈黙の時間。

 

「……しかし、ブルータルアリゲーター、来ませんね。このまま何事も無く終わってくれればいいのですが」

 

ってめぐみん、それってフラグ発言! そして、まさにその発言を待っていたかのように、ワニが群れをなして現れた。

 

 

 

 

 

浄化開始から四時間。ワニに囲まれたアクア様は、必死で浄化魔法をかけまくっている。それはもう、この二時間の間に、私がその浄化魔法の理論を組み上げてしまうくらいに。

もちろん、下手に水辺に近づこうものなら、私がブルータルアリゲーターに襲われるので手伝ったりはしないが。……しかし。

 

「『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』ッッ!」

「アクアー! ギブアップならそう言えよ? そしたら鎖引っ張って、檻を引きずって逃げるから!」

 

ここへ来て何度目かの和真さんの問いに、しかしアクア様は頑なにそれを拒む。

 

「イヤよ! ここで諦めたら報酬が貰えないじゃない!」

 

という事らしい。けれど。

 

ぎちぎちっ! めぎょっ!!

 

「きゃああっ! 檻が、鳴っちゃいけないような音を立ててるんですけどっ!?」

 

……やれやれ。さすがにもう、黙って見ているわけにはいかないだろう。

 

「和真さん。私がブルータルアリゲーターを追っ払いましょうか?」

「お、おお。頼めるか?」

「はい。試したいことや確認したいこともあるので、願ったりですよ」

 

もちろん確認したいこととは、ジャイアントトード以外のモンスターを倒すのに躊躇いはあるのか、である。

そして試したいこととは、リーンさんには披露しなかった呪文だ。別に秘密にしていた訳ではないが、元になる呪文よりも先にアレンジ呪文が完成してしまったため、ちょっと使うのを躊躇ってしまったのだ。

とはいえ、この状況ではこの呪文はかなり役に立つ。使わない手はないだろう。というわけで。

 

「では行きます。

飛翔呪文(トベルーラ)』!」

「えっ!?」

 

和真さんが驚きの声をあげる中、私の体がふわりと浮かぶ。……この浮遊感が、何か変な感じだ。それに安定させるのも結構大変である。ポップ兄さんが初めて使った時、ふよふよ浮いてるのが精一杯だったのも、今なら理解できる。

とはいえ今は、ブルータルアリゲーターをなんとかするのが先決である。私は術を制御して檻の上まで移動をする。

 

「カ、カズマ! メグミが飛んでますよ!?」

「そうだな」

「浮遊の魔法はあるが、あれほど自由に飛び回れるものではないはずだ」

「へー」

 

そんな会話のやり取りが聞こえてくる。

ふっ…。そんな魔法と一緒にしないで欲しい。あれは言わば、[スレイヤーズ]で言う浮遊(レビテーション)である。だが飛翔呪文は、翔封界(レイ・ウイング)に当たる。しかも発動中でも呪文が使えるのだ。

……いやまあ、まだ呪文に慣れてないので、強力な術は使えそうにないが。というわけで。

 

「『真空呪文(バギ)』!」

 

[ダイ大]的アレンジでワニ達を檻から遠ざける。この時飛翔呪文の制御が一瞬疎かになり、体がぐらりと揺れて焦ったが、なんとか立て直すことが出来た。うむ、精進をせねば。

私は、ワニの攻撃が止んだ今のうちに檻の上に降り、術を解除する。

 

「『氷結呪文(マヒャド)!』」

 

放った呪文によりワニ達は凍りつく。そして洩れた数匹に対しては。

 

「『火炎呪文(メラミ)』! 『火炎呪文(メラミ)』! 『火炎呪文(メラミ)』!」

 

火炎呪文の連発で退治をする。……どうやら他のモンスターを倒すのにも躊躇いはないようだ。

 

「……なんかあそこだけ、[ダイの大冒険]だ」

 

和真さんが漏らしたその言葉は、私にとってはご褒美であった。




めぐみのモノローグにも書いてありますが、ブルータルアリゲーターに使ったバギは、[ダイ大]での足止めや吹き飛ばしといったアレンジでの使用も出来ます。
というか、[スレイヤーズ]魔法のアレンジ版は構築しないのに[ダイ大]呪文は構築している辺り、めぐみの[ダイ大]愛の深さがわかります(というより、少し重め)。

[スレイヤーズ]の翔封界は魔力制御が難しく、発動中は他の魔法が一切使えません。なのでめぐみは、慣れれば他の魔法が使える飛翔呪文を構築しました。決して[ダイ大]が好きだからという理由だけではありません(もちろん好きなのも、理由のひとつ)。
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