気がつくと私は、街の外れと思われる場所に立っていた。
ここが、異世界。少し離れたところに見える街並みは、ファンタジーものの作品でよく見る様な、中世ヨーロッパ風である。
さて。これからどうしようか。ううん、そうですね…。うん、ここは定番の、冒険者のギルドを捜しますか。おそらくギルドに登録した方が、色々と仕事の斡旋もしてもらえるだろうし、何かと便利なのは間違いないはずだ。
私は街中に入ると、気の良さそうなおばさんにギルドの場所を聞く。どうやらここは、駆け出し冒険者の街でアクセルという名前らしい。
私は教えられた道を歩き出し、やがて見つけた建物の扉を開けると、中から賑やかな喧騒が聞こえた。
「いらっしゃいませ。仕事なら奥のカウンターへ。食事ならテーブルにどうぞ」
短髪赤毛の、ウェイターのお姉さんが声をかけてきた。私は軽くお礼を言ってから、教えられたカウンターの前に並ぶ。やがて順番が回ってきて。
「お待たせしました。今回はどういったご用件でしょうか」
優しそうな、金髪の、受け付けのお姉さんが語りかけた。胸が大きいのは少しムカつくけど。
「ええと、冒険者の登録をお願いします」
「はい、冒険者の登録ですね? 登録料として千エリスが必要ですが」
「……登録料?」
これは、想定外である。まさかお金を取られるとは。
「……すみません、出直してきます」
私はそう告げて、カウンターから離れるのだった。
ギルドのテーブルに着き、ひとつため息を吐く。
さて、どうしたものか。私はアクア様から、お金…エリスを受け取ってはいない。念のために服の隅々までまさぐったものの、所持していたサイフに入った日本円しか無かった。
ううむ、まさか特典ではなく、お金が無くて躓くとは思ってもみなかった。さて、どうやってお金を稼いだものか。
「ねえキミ、どうしたの?」
そんな私に、声をかける者がいた。振り返るとそこにいたのは、私よりひとつかふたつ年上の、短い銀髪の…女の子。一瞬、男の子かと思ったけど。
「実は冒険者の登録に来たのですが、お金の持ち合わせがなくて」
「ふうん。まだ小さいのに偉いねー」
カチン、ときた。そりゃあ私は、同年代の中では小柄だし、色々と成長も遅れてるが。
「……あの、こう見えても私、十二月には十四歳になるのですが」
「ええっ!? あ、ご、ごめん!」
少女は私に謝った。しかし、そこまで驚かれても、余計に虚しいのだけど。
「もう、いいです」
「うう、本当にごめんね? それでお詫びじゃないけど、登録料はあたしが出してあげるよ」
「え?」
それは、有難いけど…。
「あ、そんなに警戒しなくてもいいから。最初は理由を聞いて、立て替えてあげようと思ったんだよ。ただ、失礼なこと言っちゃったから…」
それって結局、お詫びでは? まあ、突っ込む気もないけれど。それにこれは、渡りに船でもある。
「そうですね。それではお言葉に甘えることにしましょう」
そう言って私は立ち上がろうとして、まだ名前も聞いていないことに気がついた。
「そういえば、まだ名前を伺ってませんでした。私は高橋めぐみ。めぐみと呼んでください。あなたのお名前は?」
「あたしはクリス。盗賊職の冒険者だよ」
私はクリスさんと共に、再びカウンターの前に立つ。
「あら、クリスさん、と先程の…。どうされたのですか?」
「はい。実は、登録料をクリスさんが払ってくれることになったので、改めて冒険者の登録に来たのです」
「あはは、まあ、成り行きってやつね」
苦笑いを浮かべるクリスさんに、受け付けのお姉さんが「そうですか」と言って頷いた。
「それでは、冒険者について説明させていただきます」
そう前置きをして説明を始めるお姉さん。それによると冒険者とは、モンスター退治を生業とする者たちの総称で、基本は何でも屋みたいなものらしい。
冒険者には各種職業があり、生き物を食べたり殺したりする事で経験値が貯まり、一定値に達するとレベルアップする。つまりRPGと同じ理論である。そしてレベルアップする事で得たポイントを振り分けて、スキルを覚えていくらしい。なんてゲーム的な世界なんだろう。
「ではこの用紙に、貴女の氏名、年齢、身体的特徴等を書き込んでください」
私は用紙を受け取り、受け付けのお姉さんが言ったとおりに書き込んでいく。
高橋めぐみ、十三歳。黒髪、黒目。身長…。
「はい、どうぞ」
「はい。ええと、タカハシメグミさん…、十三歳ですか」
お姉さんの発言に若干引っかかるものがあるが、特に失礼なことを言ったわけではないし我慢しよう。
「それではこのカードに触れてください」
私は言われるままカードに触れる。私が願ったとおりの特典が付いていれば、魔法に特化したステータスになっているはずだが。
「はい、いいですよ。ええと…、えっ、なんですか、このステータスは! 魔力が半端じゃありませんよ!?」
キターーーーッ!
私は内心でガッツポーズをとる。
「まるで紅魔族並み…、いえ、それも大きく上回るかもしれません!」
「ちょっと、メグミってば凄いじゃない!」
特典のお陰とはいえ、こう、ちやほやされるのは中々に気分がいい。
「それに知力も、紅魔族並みに高いですよ!」
知力に関しては、学年トップの成績だったので元々自信はあるが、これまた特典でかさ上げされてる可能性はある。
「これなら上級職のアークウィザードやアークプリーストにもなれますよ!」
まあ、それを望んでの特典だったから。それよりも。
「質問があるのですが」
「はい、なんでしょう?」
「ウィザードやプリースト以外…、もっと言えば冒険者以外でも、魔法は覚えられるのでしょうか?」
これは私にとって、とても重要なことである。何しろ[ダイ大]の大魔道士は、元になったゲームで言うと賢者、すなわち魔法使いの魔法と僧侶の魔法を使いこなす者の事。
つまり私も両方の魔法を使いこなせて、初めて大魔道士を名乗れる、というわけだ。
「そうですね。理屈の上では可能だと思います」
「理屈の上、とはどういうことですか?」
そこが一番重要なのだ。
「冒険者の職業も、またそのスキルも、黎明期の人々が築き上げたものです。それをシステム化し、各職種にスキルや魔法を振り分けたものが、現在の冒険者の職業ですね。
なので当時と同じように、魔法の知識を得、術を組み立てる事が出来れば、才覚次第で魔法を覚えることは可能という事になります」
「わかりました。ありがとうございます」
なる程。[ダイ大]とは別作品になるけど、[スレイヤーズ]での魔道士の魔法習得と同じ方法というわけだ。まあ、両方使えるのなら問題ない。後は職業をどちらにするかだけど。
「ええと、それではアークウィザードでお願いします」
私がこちらを選んだ理由。それは攻撃魔法のあるこちらの方が、レベリングがしやすいからだ。
「わかりました。……はい、登録完了です。今日からタカハシメグミさんは、アークウィザードです」
そう言って差し出されたカードを私は受け取った。
「では、改めまして…。冒険者ギルドへようこそ、タカハシメグミ様。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています」
受け付けのお姉さんに祝福され、私の冒険者ライフは始まるのだった。
当初はクリスじゃなくてリーンだったんだけど、爆焔3巻冒頭でクエストから帰ってきてたんですよね。やっぱ勢いで書いちゃ駄目だ。