この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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久しぶりの投稿です。
当初予定していたところまで行かなかったのでサブタイトルを変更、今回予定していたサブタイトルは次回持ち越しになりました。


このアンデッドナイト達に爆裂を!

御剣がギルドを飛び出していった後。

 

「……ところで。先程からアクアが女神と呼ばれていたが、一体何の話だ?」

 

ダクネスさんが訊ねてきた。まあ、女神だ何だとあれだけ騒いでいれば、気になるのが当たり前だろう。

と、和真さんが私に目配せをした後、アクア様へと視線を移す。するとアクア様は、こくりと頷いた。

 

「今まで黙っていたけれど、貴女達には言っておくわ。私はアクア。アクシズ教団が崇拝する、水を司る女神。そう。私こそが水の女神アクアなのよ!」

「「っていう夢を見たのか」」

「違っうわよ! 何で二人ともハモってんのよ!?」

 

……どうやら信じてもらえなかったようだ。まあ、普段が普段なので致し方ない。

そんな事を思っていた、その時。

 

『緊急! 緊急! 冒険者の皆さんは直ちに武装し、戦闘態勢で門の前に集まってくださいっっ!』

 

ルナさんの緊急放送の声が響き渡る。

今度は一体何事だろうか。そんな事を考えていると。

 

『緊急! 緊急! 冒険者の皆さんは直ちに武装し、戦闘態勢で門の前に集まってくださいっっ!

……特に、冒険者サトウカズマさんとその一行は、大至急でお願いします!』

 

……はい?

 

 

 

 

 

私達が正門前までやって来ると、そこにはいつぞやのデュラハンが、今回は部下のアンデッド達を引き連れ待ち構えていた。…………あー、そういえばあのデュラハン、あんなことを言っていたっけ。

一週間前の出来事を思い返し、彼がここへ来た理由をなんとなく察した。そして私達の姿を見つけると。

 

「何故城に来ないのだ、この人でなしどもがぁぁぁぁぁぁ!」

 

案の定、彼は非常に怒っていた。

 

「えっと、何故城に来ないって、何で行かなきゃなんないんだ? もう爆裂魔法も撃ち込んでもないのに、何そんなに怒ってるんだよ」

 

しかし和真さんは、このデュラハンが何故怒っているのか、理解できていないらしい。まあ、喉元過ぎれば熱さ忘れると言うし、既に私達にとっては解決事案である。知らぬはデュラハンばかりなり、だ。

 

「爆裂魔法を撃ち込んでないだと!? 何を抜かす、白々しいっ! そこの頭のおかしい紅魔の娘が、毎日欠かさず通っておるわ!」

 

…………ほほう?

 

「お前、行ったのか? もう行くなって言ったのに、また行ったのか!」

「私も詳しく知りたいですね?」

 

和真さんがめぐみんの両頬を引っ張り、私はワンドの先を彼女の目の前に突きつける。

 

「ひたたたた。違うのです、聞いてくださいカズマ! メグミ!

今までなら、何もない荒野に魔法を放つだけで我慢できていたのですが、城への魔法攻撃の魅力を覚えて以来、大きくて硬いモノじゃないと我慢できない身体に…」

「よぉし、ちょっと黙ろうか! モジモジしながら何口走ってやがるっ!」

 

私は顔が熱くなるのを感じた。いや、わかってはいるのだ。めぐみんは別に、そういう意味で言ったのではないと。だが、モジモジと、見様によっては妙に艶めかしく身体を動かす仕草が、当然性的な連想をさせる。あるいはワザと、そんな仕草をしているのかもしれない。

私が性的な話題に弱いことを、既に薄々勘づいているのだろう。めぐみんは私をちらりと見て、一瞬だけ、春日部の幼稚園児の様にニヤリと笑った。ハッキリ言ってムカつくのだが、思考がぐちゃぐちゃしてイマイチ定まらない。

そんな中。

 

「待てよ? お前、魔法撃ったら動けなくなるだろうが! なら、一緒に行った共犯者がいるはずだ。一体誰と…」

 

そう言うと和真さんは辺りを見渡し。

 

「お前かああああああ!」

 

スイと視線を逸らしたアクア様に詰め寄り、めぐみんの時と同様に頬を引っ張る。

 

「だってだって、あのデュラハンのせいでろくなクエストが請けられない、その腹いせがしたかったんだもの! あいつのせいで、毎日店長に叱られる羽目になったのよ!」

 

いえ、叱られるのはアクア様自身のせいでは? あと、そういった理由でめぐみんに付き合うくらいなら、真面目にバイトをした方が遥かに生産性が高いと思う。

……と、冷静にツッコミが出来るくらいには、落ち着きを取り戻した私。全く、復帰までに時間がかかって仕方がない。

そんな自己分析をしていると。

 

「この俺が頭にきているのは、爆裂魔法の事だけではない! 貴様らには、仲間を助けようという気は無いのか!?」

 

デュラハンが怒りを噛み殺しながらに言う。やはりそういう理由でしたか。

 

「仲間を庇って呪いを受けた、騎士の鑑のようなあのクルセイダーを見捨てるなど…」

 

デュラハンがそこまで言った時。重い鎧のために遅れていたダクネスさんが、ようやく到着する。

 

「……や、やあ。……その、騎士の鑑などとは、照れるではないか」

「…………あ、あるぇえーーーー!?」

 

……まあ、デュラハンの気持ちもわからないではない。同情する気はないが。

 

「なになに? ダクネスに呪いを掛けて一週間経ったのに、ピンピンしてるから驚いてるの? このデュラハン、私たちが呪いを解くために城に来るはずだと思って、ずっと待ち続けてたの? 私があっさり呪い解いちゃったのも知らずに?

プークスクス! ちょーうけるんですけど!」

 

だからと言って、煽るのはやめて頂きたい。女神とアンデッドが水と油なのはわかっているが、わざわざ自分から波風立てるのはどうかと思う。

 

「……おい、貴様。俺がその気になれば、この街の冒険者をひとり残らず斬り捨て、住人どもを皆殺しにすることだって出来るのだぞ。いつまでも見逃してもらえると思うなよ?

この俺は、疲れを知らぬ不死の体。お前達、駆け出し冒険者では傷一つつけられぬわ!」

 

…………!?

 

「見逃してあげる理由がないのはこっちの方よ! アンデッドのくせに、こんな注目を集めて生意気よ!

消えて無くなりなさい! 『ターンアンデッド』!!」

「魔王の幹部が、プリースト対策も無しに戦場に立つと思っているのか?

俺を筆頭に、このアンデッドナイト軍団は魔王様の加護により、神聖魔法に対して強い抵抗をぎゃあああああああっ!!」

 

アクア様の浄化魔法を避けようともせずに語っていたデュラハンだったが、直撃した途端に叫び声を上げた。アクア様は和真さんに向かって「私の魔法が効かない」と言っているが、あれは少なく見積もってもそこそこ効いているはずだ。

 

「……話は最後まで聞くものだ。俺はベルディア。魔王軍幹部が一人、デュラハンのベルディアだ!

魔王様の特別な加護を受けたこの鎧と俺の力により、そこら辺のプリーストのターンアンデッドなど効かぬ! 効かぬのだが…。

なあお前。本当に駆け出しか?」

 

なる程。どうやらその、魔王様の加護とやらを、アクア様の女神パワーによって貫いたという事のようだ。もちろんその分力が殺がれ、アクア様が思っていたほどのダメージを与えられなかったという所だろう。

 

「……まあいい。本来は、この街周辺に強い光が落ちてきたと占い師が騒ぐから調査に来たのだが、面倒だ。この街ごと無くしてしまえばいいか」

 

……私は先程アクア様を、有名なガキ大将になぞらえましたが、どうやらこのベルディアという名のデュラハンも同様だったようだ。

 

「さあ、お前たち。俺をコケにしたこの連中に、地獄を見せてやるがいい!」

 

デュラハン・ベルディアは配下のアンデッド達に、攻撃の命令を出そうとし。

 

「あ、あいつ、アクアの魔法が意外に効いてビビったんだぜ、きっと」

「ちち、違うわっ! 魔王軍の幹部が、そんなヘタレなわけがないだろう!」

 

……和真さん。煽り方がポップ兄さんみたいで親近感が持てるけど、さすがに少し命知らずでは? ベルディアが上手く乗ってくれたから良かったものの、下手をしたら問答無用で、和真さんの首を狙いにきていたかも知れないというのに。

 

「まずは、雑魚を片付けてからボスの前に立つ。これが昔からの伝統と…」

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!!」

「ひぃああああああ!!」

 

意外と伝承物が好きらしいベルディアが話している途中で、問答無用で高位の浄化魔法を放つアクア様。和真さんをどうこう言えないくらいにゲスい手だ。

ちなみに、先程よりも苦しそうに転げ回っているが、それでもアクア様にとっては「ちっとも効かないの」という事らしい。

 

「ええい、もういい! お前ら、街の連中を皆殺しにせよ!」

 

ダメージを受けつつもベルディアは、上げた右手を振り下ろし命令をした。

 

 

 

 

 

ベルディアの部下、アンデッドナイトはわらわらと街中へと攻め込んできた。冒険者達が迎え撃つ中、ベルディアは高笑いをし。

 

「さあ、お前達の絶望の叫びを俺に! ……俺……に…?」

 

ベルディアのセリフは、段々と尻すぼみになっていく。何故ならば。

 

「わああああ! なんで私ばかり狙われるのぉ!? 私、女神なのに! 日頃の行いだっていいのに!」

「ああ、ズルいぞ! 私は本当に普段の行いがいいはずなのに、なんでアクアにばかり…!」

 

この様に、なぜかアクア様の元にアンデッドナイト達が集まっているのだ。あと、ダクネスさんは少し黙っていて欲しい。

 

「おい、めぐみん。あのアンデッドの群れに、爆裂魔法を撃ち込めないか?」

 

和真さんがそう切り出すもののめぐみんは、街中である事と、全てのアンデッドナイトがアクア様に群がっているわけではなく、まとまりが無いことを理由に断っている。

……というか、普段の爆裂狂ぶりに忘れそうだったが、彼女は知力の高い紅魔族。ちゃんとそこら辺の線引きは出来ていたようだ。

と、そんな事を考えていると。

 

「うわあああん! カズマさん、カズマさーん!!」

 

アクア様が和真さんに、助けを求めて駆け寄ってきた。

 

「バカ、こっち来んな! 向こうへ行ったら今日の晩飯奢ってやるから!」

「私が奢るから、このアンデッド何とかしてえ! おかしいの。このアンデッド達、ターンアンデッドでも消しきれないの!」

 

何やってるのだろうか、あの二人。……夫婦漫才?

いやしかし、アクア様でも浄化しきれないとは。先程ベルディアが言っていた、魔王の加護のせいだろうか。

と、和真さんが何か閃いたという表情をして、めぐみんに街の外で呪文を唱えて待機しているように指示を出した。

……なるほど、そういう事ですか。

 

「カズマは一体…」

「それは指示どおりにしていれば、すぐにわかります。さあ、急ぎましょう」

 

私はめぐみんの手を引いて、街の入り口へと駆け出した。途中ちらりと和真さん達を見ると、アクア様が引き連れるアンデッドの数が先程よりも増えていることを確認し、自分の推測の正しさを実感する。

門を出た私は、息を整えてからめぐみんに言う。

 

「さあ、爆裂魔法の詠唱を」

「私もなんとなく理解しましたから、そんなに急かさないでください」

 

おや。さすがは知力の高い紅魔族。ここへ来るまでの間に、和真さんの策に気がついたようだ。

 

「ではいきます。

 

── 闇より昏き(かがや)きよ

   滅びを誘う爆焔よ……」

 

……はて。ホーストの時と詠唱が違いますね。もしや、詠唱のアレンジでしょうか?

 

「 ── 悠久の時より来たりて

    その強大なる力もて

    この世に在りし全てのものを

    破壊と滅びへ誘わん」

 

……なんだろう。【スレイヤーズ】の[混沌の言語(カオスワーズ)]の様な韻の踏み方ですね。まあ、前回聞いたときはそんな事は無かったし、今回がたまたまなんだろう。

そんな下らないことを考えていると、門から和真さん達が現れ通り過ぎ、その後ろを物凄い数のアンデッド達が追いかけてきていた。

 

「めぐみん、やれーっ!!」

「なんという絶好のシチュエーション! 感謝しますよ、カズマ」

 

めぐみんは和真さんに感謝を告げると、声も高らかに口上を述べる。

 

「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者! ベルディアよ! 我が力、見るがいい!!

『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

彼女の放った爆裂魔法は、見事に全てのアンデッドナイト達を屠ったのだった。




めぐみんが某幼稚園児の様な笑いをしているのは、カズマに頬を引っ張られているのでそう見えただけ。
めぐみん的には、もう少しニヒルにニヤリと笑ったつもりです。

後、爆裂魔法の詠唱(オリジナル)が【スレイヤーズ】っぽいのは、最初の二行を考えてから七五調であるのに気づいて(スレイヤーズの呪文(カオスワーズ)は基本七五調)、敢えてそれっぽくしてみました。
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