この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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今回は、めぐみんのモノローグから始まります。


この大魔道士見習いに二度目の死を!

「カズマ、武器武器! 早く、その手に持ってる武器を捨ててっ!」

 

アクアのそんなセリフが聞こえた後。カチリという音が聞こえ、更にその直後にチンという音が聞こえる。そしてトスンという、雪に重いものが落ちた様な音。

なんだろう。物凄くイヤな予感がするのだが。

私は死んだフリを止め、少しだけ顔を上げる。そして視界に入ってきたのは、白い雪に広がる赤い色。そしてダクネスの横に倒れるカズマの体と、少しズレた位置に転がる、あれは…。うそ、ですよね?

 

「許…さない……」

 

……え、メグミ?

 

「許さない! よくも、私の大事な仲間をッ!!」

 

そう叫び、立ち上がった彼女は右手を腰だめに構える。掌は開いた状態で上を向き、指先には五つの炎が点る。あれは、ベルディアに使っていた…。

 

「『五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)』ッ!!」

 

勢いよく腕を突き出し、同時に放たれた五つのファイアーボールが、冬将軍に直撃する。

次の瞬間、メグミが後ろに飛び退き、爆炎を突っ切ってきた冬将軍の斬擊が空を切る。やはりというか、冬将軍に大したダメージは見受けられない。

その様なことは当然予測していたのだろう、メグミは既に次の呪文を唱え終わっている。

 

「『烈閃咆(エルメキア・フレイム)』!!」

 

その魔法は、キャベツ狩りの時に使用していた術を更に強力にしたと(おぼ)しきもの。直撃を受けた冬将軍は、僅かに怯む。が、すぐに立て直し、片刃の剣を振り上げ斬りかかる。まずい! さすがに今度は避けられ…!

 

「『魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)』!」

 

メグミは取り出したワンドに魔法を纏わせ、両手で支えて剣を受け止めた。だが力負けをした彼女は、勢いよく吹っ飛ばされ、る?

いや、もとより受けきれないと思ったのか、相手の力を利用して距離をとったのか!

メグミは掌を上にして、軽く両手を広げる。すると、やや赤みがかった黄色い閃光が両手から放出され、頭上で繋がりアーチを形作る。その閃光の軌道に沿うように、両手を頭上に挙げ、人差し指と親指を立てたまま作った拳を合わせて、前方に振り下ろして叫んだ!

 

「『極大閃熱呪文(ベギラゴン)』ッッッ!!!」

 

放たれたのは、以前に見たギラという魔法を遥かに強力にしたもの。それは熱量だけならば、インフェルノをも超えているだろう。その術がまたもや冬将軍に直撃する。これはさっきまでの比ではない。

 

「……やった」

 

思わず、口に出してしまった。まずい。これではまるっきりフラグではないか!

そしてそれは、思い切り悪い形で回収されてしまう。

爆炎から現れた冬将軍は、先程よりもボロボロにはなっていたが、それだけのことである。

一端納刀した冬将軍は、素早くメグミの前まで踏み込み。先程聞こえた、カチリという音。そして一瞬手元がぶれて、チンという音が聞こえた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

極大閃熱呪文を放った、そのすぐ後。

 

「……やった」

 

そんな声が聞こえた。それはフラグだと思ったその一瞬で、私は冷静になる。直後にボロボロになった冬将軍が迫り、カチリという鯉口を切る音が聞こえた瞬間に悟ってしまった。私は負けたのだと。

チンという鐔鳴りが聞こえ、遅れて腹部に痛みが奔り、そして意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

「……高橋めぐみさん? あの、随分と落ち込んでいる様ですが…?」

 

女神エリス様は、沈んだ気持ちの私に優しく声をかけてくれた。

 

「いえ、気になさらないでください。ただ、普段クールであることを心がけておきながら、あの様な醜態を晒したことが情けなかっただけですから」

「そうですか。……確かに、あの様な冷静さを欠いた行動は、冒険者にあるまじきものではありますね」

 

……う。さすがに、こうもハッキリ言われると、かなり来るものがある。

 

「……ですが、仲間を想い、仲間のために起こしたその行動は、とても尊いものだと思いますよ」

「!! エリス、様…!」

 

その言葉に、私は救われた気がした。それはおそらく、外面的な言葉などではなく心からそう思ってかけてくれた言葉だったからなのだろう。

母の実家がお寺の関係で、なんちゃって仏教徒な私だが、思わずエリス教に改宗しようかと思ってしまったくらいだ。

 

「……憑きものが落ちた様な表情(かお)ですね」

「はい。ありがとうございます、エリス様」

「いいえ。私は思ったことを言ったまでですよ」

 

そう答えて、にっこりと微笑む。なんて謙虚な。言っては悪いが、どこかの女神様とは雲泥の差である。……と、そんな事を考えていたら、関連付いて思い出した。

 

「あの、話は変わりますが、みんなは無事なのでしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ。冬将軍は貴女を斬った後に、消えていなくなりました。佐藤和真さんも、アクア先輩のリザレクションで生き返ってます」

「そうですか。よかっ…」

 

…………おや?

 

「今、何と仰いましたか!?」

「冬将軍は消えていなくなったと…」

「その後です!」

「佐藤和真さんは生き返りましたよ」

 

……はぁ!?

 

「ちょっと待ってください! リーンさんから借りたノートに基礎知識として書かれてましたが、死者の蘇生は一度だけだったはずです!

私と和真さんは既に一度生き返った身。それとも、異世界転生の分はカウントされないのですか!?」

「あ、いえ…」

 

言葉を濁し、右頬を掻くエリス様。

 

「その、アクア先輩に脅されて仕方がなく…。おそらく貴女も、生き返ることになると思いますよ?」

 

マジですか。ううむ、私の怒りは何だったのだろう。挙げ句の果てに殺されて…。

 

「……メグミさん?」

「あ、何でもありません!」

 

そうだ、せっかくエリス様が慰めてくれたのだ。せめてこの場だけでも、マイナス思考は無しにしよう。

 

「あの、ところでエリス様は、アクア様からどの様な脅しをかけられたのですか?」

 

最初に見た苦笑いはアクア様に脅されたのが原因だったのだろうが、言ってはなんだがこの様な立派な女神様に、脅しの材料になるものなど思いつきもしないのだが。

 

「え!? あ、その、ナイショです!」

 

なんだろう。頬を染め、右手の人差し指を立てて口に当てる仕草はとても愛らしいのだが、何か慌てた様子も感じられる。余程バレたくない何か…が……。

…………ああ、そういう事か。思わずジイッとエリス様を見つめていたら、一箇所だけ違和感を感じてしまったのだ。

 

「……あの、メグミさん? どうかなさいましたか?」

「……いえ。深くは語りませんが、エリス様は私と同類だったのですね」

「えッッッ!? ななな何を言って!?」

 

目に見えて動揺するエリス様を見てると、むしろ微笑ましく思える。

 

「先に言いましたが、深くは語りません」

 

というか、深く語るとこちらもダメージを受ける。

 

「……そ、そうですか。ええ、そうですね。その方がいいと思いますよ?」

 

お互い、暗黙の了解を得るのだった。

 

 

 

 

 

『メグミ、聞こえる?』

「あ、アクア様」

 

突如聞こえてきたアクア様の声。

 

『どうやら聞こえてるみたいね。……全く、カズマはいざ知らず、どうして貴女まで死ぬ羽目になってるのよ。生き返らせる、こっちの身にもなってよね』

「す、済みません」

 

アクア様の自分勝手な理由も見え隠れしているが、言ってることは正しいので文句も言えない。

 

『まあ、いいけど。それじゃあエリスから聞いてると思うけど、蘇生魔法のリザレクションをかけたから、早く戻ってきなさい。もしエリスが文句を言う様なら、胸のp…』

「アクア様。それ以上言ったら、私も敵に回しますよ?」

 

言った自分自身が驚くくらいのドスの利いた声に、アクア様は押し黙った。

 

『……と、とにかく、早く帰ってきなさいよ。みんなも心配してるんだから!』

 

それだけ言うと、アクア様の声は聞こえなくなった。

 

「やれやれ。アクア様もあそこまで怖がらなくても…」

「いえ。今のは、近くにいた私も怖かったですよ?」

 

……女神様二人が怖がるって、私を何だと思っているのだろう。そんな納得のいかない感情が表情に出たのだろう。エリス様がクスリと笑って言った。

 

「メグミさんは、自制の利くめぐみんさん、といった感じですね。そのかわり、本気で怒ると何を仕出かすかわからない…。まさに今回の事が良い例です」

 

う…。そこを突かれると、返す言葉もない。

 

「……メグミさん。先程は尊いものと言いましたが、それでも、無駄に命を散らす様な行動は慎んでくださいね?」

「はい。それはもう、身に染みております」

 

とはいえ、レックスさんに注意されたにも関わらずこの場にいるのだ。前にも思ったが、一朝一夕とはいかないだろう。うう、先々のことを考えると気が重い。自分自身の命が関わってる分、余計に、である。

……ええい、止め止め!ここではマイナス思考はしないと決めたのだ。向こうに戻って落ち着くまでは、この話は保留である。

 

「……エリス様、そろそろお願いします」

「そうですね。それでは、高橋めぐみさん。今度お目にかかるのは、天寿を全うした時である事を願ってますよ」

 

そう言ってエリス様は、魔法陣(地上への扉)を開いてくれたのだった。

 

 

 

 

 

意識が浮上する。薄らと目を開けると、心配そうに覗き込む和真さん、めぐみん、ダクネスさんの姿があった。

 

「よかった。心配したんだぞ」

 

そう言って安堵のため息を吐く和真さん。……というか。

 

「和真さんに言われたくはないのですが」

「……だそうですよ」

「尤もな意見だな」

「くっ…」

 

私の意見にめぐみんとダクネスさんが乗っかり、和真さんが呻き声を上げる。

 

「だ、だが、ダクネスには言われたくねえぞ! お前が素直に土下座してりゃ、こんな事にならなかったんだ!」

「な…、く、確かに、私が素直に頭を下げていればカズマは死なず、結果メグミも死なずに済んだのだ。私はどう詫びたら…」

 

……いけない。ドMモードに入っていないダクネスさんは、かなり真面目な人だった。とはいえ(なだ)(すか)すのでは納得しないだろうし、下手をすれば逆に、ドMスイッチを入れてしまいかねない。ううむ、ならばこういうのはどうだ?

 

「そうですね。確かに大元の原因はダクネスさんにあります。ですが剣を手放さなかった和真さんにも非がありますし、私も我慢が足りませんでした。

なので以降、こういった状況で下手に意地を張らないというのなら、私は不問にしますよ。

……和真さんはどうですか?」

「……ったく、しょうがねえな。それを言われたら、俺も反論できないしな」

 

どうやら和真さんも、私が上手い落とし所を探しているのに気づいてくれた様だ。

私の提示には、お互いに責任があるから深くは考えないようにと促す事と、許す条件をつけることで自責の念を軽くする事、二つの効果がある、はずだ。それに和真さんが合わせてくれたことで、ダクネスさんも素直に受け入れられると思うのだが…。

 

「……わかった。ありがとう、二人とも。こんな私を許してくれて」

 

どうやら上手くいった様である。私はひとつ息を吐き、いい加減に体を起こす。と同時に強いめまいに襲われる。

 

「ちょっとメグミ、気をつけなさいな。貴女、カズマ以上に血を失ってたのよ。オマケに体の修復にだって時間がかかったし、カズマよりもダメージは残ってるんだからね」

 

そ、そうだったのか。しかし、首を落とされた和真さん以上って一体…。

 

「ええと、私、どの様な殺され方をしていたのでしょうか?」

 

居合いで、腹部に攻撃を受けたのは判るのだが。

すると、和真さん以外の顔色が悪くなる。

 

「俺が目を覚ましたときには治療が進んでたが、めぐみんから聞いた話じゃ、胴から上下が真っ二つにされて、色々散らばってたらしい。ハッキリ言って、想像するのは止めといた」

 

……想像以上に酷かった様だ。確かに周りには、和真さんの時以外の大きな血溜まりと、血飛沫とは別の小さな血溜まりが点々とある。想像するのを拒否した和真さんは正解だと思う。

……ん? 胴から真っ二つ? それって…。

私は視線を下げ、自分の腹部を見た。するとそこは、服が途中から切り落とされ、私のお腹周りが剥き出しになっている。……って。

 

「ッッッいやああああッ!!!」

 

あまりにもの恥ずかしさに、私は手でお腹を隠して絶叫するのだった。




烈閃咆(エルメキア・フレイム)……めぐみんが推察したとおり、烈閃槍(エルメキア・ランス)の強化版。人間くらいなら一撃で精神を破壊する。
ベルディアやウィズの様な強力なアンデッドと出会ったので、めぐみが戦力強化のために再現した。DQには、精神ダメージ呪文が見当たらないので(浄化系統もニフラムくらいだし)。

極大閃熱呪文の動作は、実は不要(両手に魔力を発生させて、添えて突き出せばOK。かめはめ破みたいなのでも問題なし)。要は、自分の趣味でそこまで再現させただけです。
……というか、キレててもそれをやるめぐみも大概ではある。
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