この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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この紅魔の少女と邂逅を!

私がこの世界に転生して一週間が経った。今の私は、宿屋に引き籠もっている。

……とは言っても別にニートになるつもりではない。クリスさんと共に昨日まで、毎日ジャイアントトードの討伐クエストをこなし、お金に余裕も出来た。こちらの服と戦闘用にワンドを揃え、宿屋に数日分の宿代も支払った。なので、受け付けのお姉さん…ルナさんに紹介してもらった魔法使い、リーンさんから魔法学校時代のノートを借り、勉強をしているのだ。大魔道士を目指すために(その1)! である。……元ネタは知らないけど。

クエストに関しては、最初はクリスさんに悪いと思っていたのだけど、特定のパーティーを組んでいないから、しばらく面倒見ると言われたので、お言葉に甘えさせてもらった。

さて、私のスキルだが、初級魔法と中級魔法を習得している。初期ポイントが腐るほどあり、全ての魔法を習得できるほどなのだが、まだ戦闘に不慣れなのでこの程度に絞っているのだ。

……実際、カエルには食べられそうになるし(未遂)、倒したときの嫌な気分にもまだ慣れていない。そういう意味では、クリスさんとの仮パーティーは有難かった。

魔法もそうだが、心も強くならないと大魔道士など程遠いだろう。これからも精進をしなければ。

 

くうぅぅ……

 

……運動もせずずっと勉強をしていたが、すでにお昼を回り、さすがに私のお腹の虫も鳴き出した。

ああ、お腹が空いた。お昼ご飯はどうしようか。……まあ、素直にギルドへ行きますか。あそこならリーズナブルにご飯が食べられるし、慣れればあの喧騒も心地よい。

そうと決まれば速実行。私は宿を出た。

 

 

 

 

 

街を歩く中、私はある噂を思い出す。それは、私とそっくりなアークウィザードの少女がいる、というもの。何でも私が冒険者の登録をした日、つまり私が異世界転生した日にアクセルへやって来たそうだ。しかもどうやら、(くだん)の紅魔族らしい。これは興味深い。

 

「その少女と会ってみたいものです」

 

思わず呟く私。紅魔族は、アクア様から話を聞いたときから会ってみたいと思っていたし、それが自分のそっくりさんだと聞いたら尚更である。まあ、さすがにそんな、漫画みたいにはいかないだろうけど。

 

 

 

 

 

冒険者ギルドの扉を開けて中に入る。そこはいつもと同じように、喧騒に溢れかえっていた。

しかし。徐々にその喧騒が静まり返っていく。一体どうしたのだろうか。

よくよく観察してみると、冒険者達の視線は私か、あるいは別の一画に集中しているのがわかった。私はその一画に視線を移す。

そこには、黒いローブを身に纏うふたりの少女がいた。

……えっ!?

私が驚愕していると、テーブルに突っ伏していた少女が私に気がつき、やはり驚きの表情へと変わる。

 

「……ゆんゆん、(くだん)の少女が現れた様です」

「え?」

 

少女の言葉に、テーブルの上に散らばったトランプを弄ぶ黒猫を前に落ち込んでいた少女が、こちらを見る。

 

「あ…」

 

ゆんゆんと呼ばれた少女も驚きの表情となる。

私はテーブルに近づき、突っ伏していた少女の前に立ち。

 

「貴女が、噂の…?」

 

私が小さく呟くと、彼女は気怠そうにしながらも立ち上がり。

 

「ハアッハッハッハァ! 我が名はめぐみん! 紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者!!」

 

ビシッとポーズを決めて、名乗りをあげる。いつもなら、このカッコいい名乗りに痺れていたところだが、今回はそれ以外の所に注意が行ってしまった。

めぐみん、と彼女は名乗った。アクア様が「変わった名前」と言ってたので、おそらく本名だろう。

そして私は高橋「めぐみ」。私の親友は私の下の名前から、「めぐみん」というニックネームで呼んでいた。これは、偶然なんだろうか?

 

「何をしているのですか。貴女の番ですよ」

 

思考に耽り沈黙していると、それを打ち破るかのようにめぐみんが言った。とは言っても、私ではなくもうひとりの少女に向かってだ。

 

「ええっ、私もやるの!?」

「当たり前じゃないですか。紅魔族たるもの、名乗りがあげられなくてどうするんです」

「うう…、恥ずかしい…」

 

そう言って、もう一人の少女も立ち上がり。

 

「わっ、我が名はゆんゆん! アークウィザードにして中級魔法を操る者! やがては紅魔族の長となる者!」

 

名乗りを上げ、顔を真っ赤にした。そんな彼女を見て、涙腺が緩みそうになる。

 

「……え、私、哀れに思われてる?」

 

いけない。彼女、ゆんゆんに、あらぬ疑心を抱かせてしまった。

 

「ム、(われ)が名乗りを上げたというのに、貴女は名乗らないのですか!?」

 

ああ、そうだ。今はそちらが重要だ。

気持ちを切り換え私は、右掌を広げて顔に当て、指の隙間からめぐみんを睨むように見つめる。

 

「フフフ、すまぬな。汝らが素晴らしき名乗りに、我も最上の名乗りを返さねばならぬ故、暫し没頭してしまったようだ」

「ふぁっ!?」

「では我が名乗り、心して聞くがいい!

我が名は高橋めぐみ! 異邦の魔法使いにして、あらゆる魔法を探求する者! やがて大魔道士となる者!!」

 

顔に当てていた手を斜め上に振り上げ、ポーズを取りながら、私は名乗りを上げた。

……ああ、気持ちいい。ここまで全力でポーズを取り、セリフを言ったのは何時ぶりだろう?

 

「おおおお!? 紅魔族でもないのに、なんという素晴らしい名乗り! しかも大魔道士などと、とんでもないセンスです!

…………タカハシ、メグミ?」

「めぐみんと、似た名前?」

 

ひとしきり興奮した後、ようやく私の名前に気づいたらしい。

 

「ちなみに愛称は、貴女の名前と同じ『めぐみん』です」

 

めぐみんを見て、今度はいつもと同じ口調で語りかけた。

 

「……そういう事ですか。ゆんゆんが名乗りを上げる前に沈黙していた、その理由は」

 

おや、かなり頭の回転が早い。そういえばアクア様は、紅魔族は知力が高いって言っていた。なら、頭がいいのも頷ける。

そんな事を考えていると、突然めぐみんががくりと膝を崩す。

 

「めぐみん!?」

「ううむ、まだ魔力が回復してませんね」

 

心配するゆんゆんを無視して、そう独り言ちるめぐみん。しかし、魔法のエキスパートである紅魔族のめぐみんが魔力切れを起こすとは、どういったことだろう?

 

「もう、どうしてそこまで爆裂魔法にこだわるのよ!」

「ふっ、それはそこに爆裂魔法があるからです」

「ならせめて、他の魔ほ…」

「嫌です」

「最後まで言わせてよっ!」

 

なる程。そういえば魔法を修得するとき、クリスさんが言ってましたね。爆裂魔法は攻撃力は高いものの、一日一発が限度のネタ魔法だと。

それに魅入られた少女…。

 

「フフフ…、非常に興味深い」

「「え?」」

 

私の呟きに、ふたりは訝しげな視線を向けるのだった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

私達の前に現れた、私とそっくりの少女。タカハシメグミと名乗る彼女、名乗りといい、その前の口上といい、我々紅魔族から見てもかなりイカしてると言えるだろう。

しかし、彼女の身形(みなり)は、私から見ても変わっていると言える。強いて言うなら紅魔の里の、魔法学院の制服と雰囲気は似ている気がする。ともかく彼女は、この辺りの出身ではないのだろう。

彼女は何処から来たのか。非常に興味深いとは、どういう意味なのか。

……ふっ、いいでしょう。彼女の思惑が何処にあるのかはわかりませんが、私が必ず解き明かして見せましょう!




漸く、めぐみとめぐみん(ついでにゆんゆん)を対面させられた。セシリーと顔合わせさせるかどうかは未定。
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