朝、目を覚ました私。機動要塞デストロイヤーを破壊してから数日が経った。
ギルドから呼び出され、今日は顔を出さなくてはならない。理由は当然、デストロイヤーに関連した事だろう。普通に考えれば討伐…、ああいうのも討伐と言うのかはわからないが、その報奨金の授与だと思われる。
……だが、何故だか嫌な予感がする。いや、理由はわかってる。
まずはベルディアの時に、上げて落とされるという前例があったこと。報奨金は出たものの、それを超えた借金を背負わされてしまった。その事がどうしても頭を掠めてしまう。……そういえばあの時、つい領主を疑ってしまったが、さすがに思考が飛躍しすぎだろう。
次に和真さんの発言である。コロナタイトをランダム・テレポートさせるという時に言った、「人のいる場所に転送されるより、無人の場所に送られる確率の方が遥かに高いはずだ」とか、「全責任は俺が取る。こう見えて俺は運がいいらしいぞ!」など、どう考えてもフラグ発言にしか思えない。特に全責任云々は、物凄く不安になってくる。
そして決め手が、どうやらこの世界では、フラグの回収率がやたらと高いらしいという事だ。私がムシャクシャして受けたカエル退治は見事に返り討ちに遭い、和真さんがめぐみんに使ったスティールは見事にぱんつを奪い取り、アクア様の発言の直後にデストロイヤーの自爆スイッチが入った。これだけ状況証拠が揃うと、和真さんのフラグ発言に嫌な予感を感じても仕方がないだろう。
……そういえば、コロナタイトのテレポートに関しては、結果的にではあるが私から立候補したのだった。これもまたフラグっぽい気がする。ううむ、くわばらくわばら。……この災厄除けの呪文が効いたという話は聞かないが、それこそ鰯の頭も信心だ。
今朝は私が朝食を作った。だが。
「……普通だな」
「普通ね」
「普通ですね」
「そうか? 充分美味しいと思うが」
私の料理の評価がこれだ。貴族のお嬢様であるダクネスさんだけは良い評価をしてくれたが、何故か全然嬉しくない。
「まあ、玉子サンドで飛び切り美味い事なんて、そうそうないとは思うけど」
和真さんのフォローが、今は虚しく感じます。
とはいえ、みんなの評価は妥当な物だ。何しろ私の料理の腕は、取り敢えず及第点のものが作れる程度。しかもレパートリーも数えるほどだ。こんな事なら、もっと自発的に料理をしておけばよかった。
少し落ち込み気味の私がふと顔を上げると、めぐみんと視線がバッチリ合った。
「フッ」
めぐみんがニヤリと笑う。……まさか彼女、料理上手なのか!? 私の同位存在なのに? いや、スペックが同じでも、環境によって結果が違うことくらいはわかっているが。だが、それでもなんか悔しいDEATH!
「どうしたの? なんだか落ち込んでるみたいだけど」
ギルドへやって来て、出会ったリーンさんの第一声がこれである。
「いえ、今朝から少しばかりショックな事がありまして。まあ、たいした事ではないのですが」
たいした事ではないが、もう少し料理の勉強をしようと思うくらいにはヘコんでいる。
「んー、まあ、よくわかんないけど、そういう日もあるよね」
そう言って、慰めるように頭を撫でる。なんだか子供扱いされるのが少しムカつくが、気分の方も少しは上向いた。本当ならリーンさんの尻尾をモフモフすれば、それだけで一発回復なのだが、さすがに失礼なのでそんな事はしない。
……そういえば最近、
「……ありがとうございます、リーンさん」
それはそれとして、私はリーンさんにお礼を述べた。
私が和真さん達の所まで来ると、ダクネスさんと何やら話しているところだった。
「……よくこの街を守ってくれた。……どうも、ありがとう! お前にはいつか、私の事を話したいと思う。何故私がこの街を守りたいと言っていたのかを」
……そうか。どうやら和真さんは、ダクネスさんからの信頼が少しずつ上がってきているようだ。
「そういやお前、今回やたらと格好良かったな」
「そ、そうか?」
和真さんが誉めると、ダクネスさんがはにかみながら応えた。確かに、ダクネスさんは格好良かった。しかし。
「一番何もしてなかったけどな」
そう。そうなのだ。ダクネスさんは最先端で突っ立っていただけなのだ。
「そういえばダクネスってば、街の前で立ってただけねー。でも、私は頑張ったわよ。結界破ったし、カズマの傷も治したし。後、めぐみんに魔力も分けてあげたし」
アクア様、せめてダクネスさんの事は言わないでいてあげるのも親切ですよ?
「私はもちろん、日に二発も爆裂魔法を撃って大活躍をしました。しかも二発目は、あのデストロイヤーを粉砕してやりましたからね」
めぐみんも、もう少し空気を読んで。あなたは賢く、気配りが出来る子だったはずです。
「それでしたら、カズマさんとメグミさんも大活躍だったじゃないですか。カズマさんは見事な指揮を執って、乗り込んでからは大物のゴーレムを倒し、コロナタイトを鉄格子から取り出して。
メグミさんは魔法を使ってデストロイヤーに乗り込むのを手伝ってくれましたし、複数のゴーレムを魔法で退治して、テレポートを使ってコロナタイトを飛ばしました」
う、本当に悪気の無いウィズさんのせいで、とうとう私も巻き込まれてしまった。
「何言ってんだ。ウィズの爆裂魔法もそうだし、コロナタイトで灼かれた俺の手を、魔法で冷やしてくれたじゃないか」
……こうなったら、毒も喰らわば皿まで、ですね。
「そうですよ、ウィズさん。そもそもめぐみんひとりの爆裂魔法では、今回の作戦は成り立たなかったのです。本当にウィズさんには感謝してますよ」
私のお礼の言葉に、ウィズさんは恥ずかしそうにしている。
「で? 街を守るって駄々をこねてた、お前の活躍は?」
「きっとあれですよ。『私の強敵を感じ取る嗅覚が、香ばしい危険な香りを嗅ぎ取っている』とか、格好つけてたあのシーンです」
「なるほど。お前の活躍シーンは、危機感知センサーか」
私と和真さんがからかう様に言うと、ダクネスさんは顔を手で覆い、しゃがみ込んでイヤイヤしながら。
「こ、こんなっ! こんな新感覚はっ! ……わああああーーーっ!!」
と叫んでいた。どうやらダクネスさんにとって、性癖とそうで無い辺りの、狭間の羞恥責めだったらしい。恥ずかしさの方が若干勝っていたようだが。
……突然。ギルド内の喧騒がピタリと止んだ。私は辺りを見渡し、その原因を知る。
そこにはルナさんと、長い黒髪の女性が四人の騎士を従え立っていた。……何故だろう。ルナさんの表情が暗い気がするのだが。再び私は、嫌な予感を感じる。その証拠に、黒髪の女性は私達を、……いや、正確には和真さんを厳しい眼差しで睨みつけている。そして、彼女は言った。
「冒険者、サトウカズマ! 貴様には現在、国家転覆罪の容疑がかけられている! 大人しく、自分と共に来てもらおうか!」
と。
前書きにも書きましたが、今回はかなり短めです。3000字いかないのはかなり珍しい。
今回で第2章は終わりですが、あと1本幕間(原作に倣って「よりみち」表記)の話を上げさせてもらい、その後またしばらく休ませてもらいます。