この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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予定より早めの再開です。


第3章 ダクネス無用!?
プロローグ


私は今、取調室の中の、机の前に座っている。その机を挟んだ真正面には、長い黒髪で眼鏡をかけたキツめの美人、検察官のセナさんがいた。

 

「タカハシメグミさん。改めて言いますが、あなたには国家転覆罪の容疑がかけられたサトウカズマ氏を、幇助(ほうじょ)した疑いがあります」

 

そう。私には、和真さんの犯罪の片棒を担いだ疑いがかけられていたのだ。

話は、少し前へと戻る。

 

 

 

 

 

「冒険者、サトウカズマ! 貴様には現在、国家転覆罪の容疑がかけられている! 大人しく、自分と共に来てもらおうか!」

「ええと、どちらさまですか? というか、国家転覆罪って何の事だ?」

 

長い黒髪の女性の言葉に、和真さんが素直に疑問をぶつける。

 

「自分は王国検察官のセナ。サトウカズマ、貴様には現在テロリスト、もしくは魔王軍の手先ではないかとの疑いがかけられている」

 

な!? それはまた、とんでもない言いがかりである。

 

「ええっ!? ちょっとカズマ、また何かやらかしたの? ほら、謝って! 私も一緒にごめんなさいしてあげるから、早く謝って!」

「このバカ! 俺がそんな犯罪、犯すわけないだろ!」

「そうですよ、アクア様。そもそも二人はほとんど一緒にいるのだから、和真さんがそんな事していないのは、アクア様自身が知っている事でしょう?」

 

私が和真さんの援護をする。これはアクア様に言って聞かせているのも勿論のこと、同時に検察官、セナさんへの牽制も兼ねている。

 

「あの、何かの間違いではないですか? カズマはセクハラとか、小さな犯罪はちょくちょくやらかしますが、そんな大きな罪を犯す程、度胸のある人間ではありませんよ」

「おいコラめぐみん、俺の擁護をしているのか喧嘩売ってるのか、ハッキリしろ!」

 

和真さんの文句もわかる。が。

 

「まあ、確かに、軽犯罪までは擁護できませんね」

「めぐみ、お前もか」

 

ブルータス、お前もか。みたいに言われても、覆す気はない。

 

「……確かに。この男が、そんな大それた罪を犯せるとは思えないな。そんな度胸があるなら、屋敷内を薄着でうろうろしている私を、あんな獣の様な目で見ておきながら何もしないなんて事はないはずだ。夜這いのひとつもかけられないヘタレだぞ、この男は」

「ベべべ別に見てねーし! お前、自意識過剰なんじゃねーの!? ちょっとくらいエロい体してるからって、調子に乗るんじゃねえぞ! こっちにだって選ぶ権利くらいあるんだからな!」

 

この男のこの反応。どうやらダクネスさんを、そういう目で見ていたようだ。しかし、そう見られるのも嫌だが、自分にそういう目が向けられないのも、やっぱりムカつく。何がとは言わないが、明らかに差別だと思う。

 

「貴様、風呂場ではあんなことをさせておいて、何を今更…」

 

風呂場? もしかして、サキュバスの夢サービスの時のことだろうか。本当に和真さん、何をやらせたんだか。

 

「あの時はサキュバスに操られてたからな! お前こそ、雰囲気に流されて、俺の背中流してたくせに! なんだ? ひょっとして期待してたのか? お前、どんだけチョロいんだよ!」

 

な!? ……うう、具体的なことは言わないでほしい。それだけで、顔が火照ってくるのがわかるくらいなのだ。

 

「おおお前、やっぱり記憶があるじゃないか! それに私は、エリス様に仕えるクルセイダー。この体は清いままだ! それをチョロいとは何事だ! ぶっ殺してやる!」

「……ダクネスさん。『ぶっ殺してやる』は、エリス様に仕えるクルセイダーとしてどうなのでしょうか。あと、そもそも薄着で屋敷内を歩き回らないで欲しいのですが」

 

なんとか気持ちを落ち着けて、私は極力冷静にツッコミを入れる。

 

「う…」

 

痛いところを突かれたのか、ダクネスさんは口篭もってしまった。と。

 

「コホン。冷静にツッコミを入れてますが、あなたも無関係ではありませんよ。タカハシメグミさん!」

「…………え?」

 

セナさんの発言に、一瞬思考がフリーズする。ええと、私も無関係ではない?

 

「サトウカズマ、貴様の指示で転送されたコロナタイトが、この地を治める領主、アルダープ殿の屋敷を吹き飛ばしたのだ」

 

なっ!? 確かに私は、テレポートを使ってコロナタイトをランダム転送させた。発案はウィズさんで、私がそれを引き継いだ形ではあるが、最終的な判断を下したのは和真さんである。そして実行者である私も、確かに無関係とは言えない。

 

「なんて事だ。俺が指示したせいで、領主が爆死しちまったのか…」

「どの様な方かは存じませんが、死者の冥福は祈らなくてはなりませんね。南無阿弥陀仏…」

「勝手に殺すな! 使用人は出払っていた上に、領主殿は地下室におられたとの事で、怪我人も出ていない」

 

おや。どうやら私の早とちりだったようだ。

 

「なんだ、死んでないのか。いやあ、良かった良かった」

「良くはない! 貴様、わかっているのか? 領主殿の屋敷に爆発物を送り、その屋敷を吹き飛ばしたんだぞ。そのため貴様には、テロリストか魔王軍の手の物ではないかとの嫌疑がかかっているという訳だ」

 

なるほど。状況を鑑みれば、嫌疑をかけられても仕方がない状況ではある。事実かどうかは別としてだが。

 

「ふ。何かと思えば、カズマはデストロイヤー戦の功労者ですよ? 確かに指示を下したのはカズマでしょうが、あれは緊急措置で行ったものです。下手をしたら爆発によって死者が出ていた怖れもあるのですよ? それを踏まえれば、むしろ感謝されて然るべきです」

 

さすがは知力の高い紅魔族。理路整然と反論をしている。

……いや、私だって同じ様な反論は出来るのだ。だが、私も共犯者として疑われている以上、同じことを言っても、言い逃れをしていると見なされかねない。そういう意味でも、めぐみんの擁護は大変有難い事だ。

事実、ギルド内の冒険者達も、和真さんを擁護する方向に傾いていた。……セナさんが次のことを言うまでは。

 

「因みに。国家転覆罪は、主犯以外の者にも適用されることがあります」

 

ギルドの中は、一瞬にして静まり返った。まあ、致し方がないが。

 

「……確かあの時、カズマはこう言ったはずよね? 『大丈夫だ! 世の中ってのは広いんだ。人のいる場所に転送されるより、無人の場所に送られる確率の方が遥かに高いはずだ。大丈夫、全責任は俺が取る。こう見えて俺は運がいいらしいぞ!』って」

 

……アクア様。どうしてこんな時だけ、やたらと記憶力が良いんですか?

 

「おいアクア。まさか本気で、俺に責任転嫁するつもりじゃ…ない…よな?」

 

徐々に語尾が弱々しくなっていく和真さんに、すいっと目を逸らすアクア様。

 

「わ! 私がもしその場にいたら、きっとカズマを止められたはずなのに。しかし、その場にいなかったのだから仕方ありません。ええ、仕方ありませんね」

 

そう言うめぐみんのセリフは棒読みである。さっき褒めて損した気分だ。

 

「おい、お前らまさか…」

 

うむ。いわゆる蜥蜴の尻尾切りだろう。とはいえ和真さん側の私は、実は彼程慌ててはいない。いや、確かに薄情だとは思うが、セナさんにあんな脅しを受けた以上、仕方がないことだとも思っているのだ。

と、その時。

 

「待て。主犯は私だ。だから是非とも私に、その牢獄プレイ…じゃない、厳しい責めを負わせるがいい!」

「あなたはデストロイヤーの前で、ずっと肉の壁になっていたそうじゃないですか」

「肉の壁…!? ああ…!」

 

セナさんの言い方もあれだが、ダクネスさんも大概である。

 

「……くっ。だが、お前らが味方をしてくれなくったって、俺にはギルドのみんながいる、か…ら……」

 

和真さんが振り返りながら言うも、ギルドのみんなは目を逸らしてしまった。まあ、予想通りではある。……あ、いや、リーンさんだけ私に向かって、両手を合わせて謝っている。味方にならないのは変わらないが。

 

「和真さん。これ以上みんなに縋っても可哀想ですよ。権力に弱いのは、私達だって変わらないでしょう?」

「いや、そうだけど。めぐみは随分と落ち着いてるな?」

「私は、早い内から腹を括ってますから」

 

そもそも、和真さんや私が立てたフラグのことには気づいていたし、今朝から嫌な予感がしていたので、早い内から覚悟が出来ていたのが大きい。

あと、強いて言うなら、セナさんの言葉使いだろうか。和真さんは呼び捨てにしているが、私に対してはさん付けだ。これだけでも、私に対してはそれほど強い嫌疑がかかっていないのがわかる。

 

「というわけで連行されるのは構いませんが、その前に疑問に思ったことを尋ねてもいいですか?」

「……なんですか?」

 

どうやら私からの質問は許されたようだ。

 

「どうして、テレポートの指示を受けたのが私だとわかったのですか?」

 

そう。あの場には、同じアークウィザードのウィズさんだっていたのだ。

 

「……冒険者達からの聴き取り調査によると、機動要塞の中枢部へ向かったのはサトウカズマ、タカハシメグミさん、アクアさん、ウィズさんの四名だったとのこと。しかしウィズさんは、直前に爆裂魔法を放っていたため、テレポートは使用できなかっただろうと判断されました。もっとも、魔力の回復手段があるのなら別ですが」

 

セナさんが疑わしそうな視線を和真さんに向ける。和真さんは冷や汗をかき、顔を青ざめさせていた。……まさか、ドレインタッチのことがバレている?

 

「さあ二人とも、我々と共に来てもらおうか」

 

セナさんの号令と共に、騎士たちが和真さんの腕を掴む。私は素直に従ったためか、騎士が両脇に立つだけで済んだ。

こうして私達は、警察署へと連行されたのだった。




何となく、アニメ版のセリフっぽいの入れてみたり。
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