この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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前回、章管理を忘れていたので、今回の投稿前に直しました。


この中二病少女に取り調べを!

「……やれやれです」

「タカハシメグミさん?」

 

取調室の椅子に座る私の呟きに、疑問に思ったのだろうセナさんが名前を呼んだ。

 

「いえ、先程までのことを思い返していたら、ちょっと愚痴がこぼれただけです」

「そうですか。まあ、当然ですね」

 

セナさんは納得したとばかりに頷く。うむ。やはり私への態度は、和真さんへのものよりかは柔らかい気がする。

 

「さて、タカハシメグミさん。幇助の疑いと言いましたが、あなたへの嫌疑はさほど強くはありません。重要参考人としての取り調べというよりは、参考人としていくつか質問させていただく、と捉えてください」

 

ほう。どうやら思っていた以上に軽い扱いだったみたいだ。とはいえ変なことを言えば、参考人から重要参考人になってしまう可能性だってある。慎重に答えなければ。

 

「では始める前に。これが何か知ってますか? これは嘘を見破る魔道具です」

 

つまり、嘘発見器という事か。

 

「この部屋の中に仕掛けられている魔法と連動して、発言者の言葉に嘘が含まれていた場合は感知して音を鳴らします」

 

なるほど。しかし少し懸念もあるので聞いておこう。

 

「あの、少し確認しておきたいのですが」

「職務上答えられないこともありますが、それ以外なら」

「では。その魔道具で見抜ける嘘というのは、自分でそうだと認識していないものも含まれるのでしょうか」

「……ええと、どういう意味ですか?」

 

どうやら少し回りくどかったようだ。

 

「つまり、自分ではそうだと思っていたことが、実際は違っていた場合などです」

「そういう事ですか。それならば反応はしません。あくまで嘘か(まこと)かを見抜くものですから。ただし、忘れていて違うことを言った場合も嘘と認識して反応しますし、嘘ではなくても真実を覆い隠した場合は、罪悪感など心理的変動に反応してしまう場合もあります」

「……100%の精度ではないのですか」

 

それは証拠としてどうなんだろうか。

 

「それでも嘘は確実に見抜けますので。変に見栄を張らなければ良いだけのことです」

 

まあ、そのとおりではあるが。だけど人間、見栄を張ってしまうものである。

 

「では、よろしいですか?」

「あ、はい」

 

こうして私への聴取が始まった。

 

 

 

 

 

「タカハシメグミさん。年齢は13歳で、職業は冒険者のアークウィザード。……13歳ですか」

「私の年齢に文句があるなら聞こうじゃないか」

「いえ、別に…」

 

チリーン

 

「……すみません。もう少し年下だと思ってました」

 

……なぜだろうか。逆に私がダメージを受けてしまったのだが。そ、それはともかく、どうやらこの魔道具、正常に作動しているようだ。

 

「で、では改めて。あなたの出身地と、冒険者になる前は何をしていたのですか?」

「出身地は日本。そこではごく普通の学生でした」

 

チリーン

 

「……タカハシメグミさん?」

「ちょっと待ってください!」

 

ええと、状況を整理しよう。私は普通に、出身地と何をしていたかを答えただけだ。これの一体どこ、に…。待てよ? もしかして…。

 

「まず、出身地は日本です」

 

シーン…

 

「そこでは学生でした」

 

シーン…

 

どちらも魔道具は鳴らない。では。

 

「私は、()()()()()学生でした」

 

チリーン

 

……ううむ、やはりか。

 

「……私は中二病を隠して、ごく普通の学生を演じてました」

 

シーン…

 

ハア、と小さく溜息を吐いてから、私は言った。

 

「どうやらこれが原因のようです。自分でも普通にそうしていたので、嘘という認識は無かったのですが…」

 

それでも知ってもらいたい欲求はあったので、それがわだかまりとなって反応したといったところだろう。

 

「どうやらその様ですね。ええと、中二病というのはつまり…」

「紅魔族の様に、格好いいセリフを言ったりポーズをとったりするアレです。私の場合は世間からは孤立したくはないので、普段は抑えて親しくなった相手にしか表に出しません。……たまにうっかりはしますが」

 

また魔道具が鳴るかも知れないので、最後にちょっとだけ付け足した。あと、言っても違和感の無いシチュエーションの時は披露するが、こちらは「普段は」の対義と魔道具は捉えたらしい。

 

「……わかりました」

 

セナさんも、余計なことを言って墓穴を掘らないためか、返した言葉は素っ気ないものだった。

 

「……ニホンという地名は聞いたことありませんが、まあいいでしょう。では次に、あなたが冒険者になった理由を伺います」

「色々と理由はありますが…。

まず、生まれ育った国からこちらへ送ってくれた方に魔王討伐を頼まれたこと。

次に、私自身が創作物の大魔道士に憧れていたこと。

最後に、私はつい人助けをしてしまうお節介体質だということ、でしょうか。

他にも細々(こまごま)とはありますが、大きな理由はこの三つです」

「魔王討伐とは、大きく出ましたね。ですが、魔道具は鳴らない…。つまり真実なのでしょう」

 

それはもちろん。和真さんはどうだか知らないが、私はまだ魔王討伐も視野に入れているのだ。……そういえばこの間のゴーレムのお陰で、久しぶりにレベルが上がったっけ。

 

「それでは次の質問に移ります。あなたは領主殿に恨みをもってませんでしたか?」

 

これはまた、答えにくいことを。

 

「恨みがないと言えば、嘘になりますね。ベルディア討伐の報奨金と借金の問題がありますから。ですが、殺してしまいたいほど恨んでいるわけではありませんよ。もちろん、目の前で仲間や仲の良い知人に何かあれば、衝動的にという事も有り得ますが、それは相手が領主だからではなく、誰であっても同じことですから」

 

実際、和真さんが殺されたときは、冬将軍に対して途轍もない殺意をもって襲いかかったわけだし。

 

「では、領主殿に殺意は抱いていないと?」

「はい。少なくとも、コロナタイトをランダムテレポートさせたあの時に、そんな想いは抱いてませんでした」

 

当然、魔道具は鳴らない。

 

「それでは次に、あなたが所属するパーティーのリーダー、サトウカズマについて。彼は領主殿に恨みを持っていると思いますか?」

 

……ついにきたか。私が参考人なら、当然聞かれると思っていたのだ。

 

「そうですね。少なくとも、私と同じ様な想いは抱いていると思います。ただ、例えば『殺してやりたい』とか思っていたとしても、それを実行に移すには、和真さんは臆病だし優しすぎると思います」

「ですが街の噂では、真の男女平等を志していて、女性でも平気でドロップキックをぶちかませると言っていたようですが?」

 

か、和真さん、そんな事を…。

 

「ま、まあ、出来たとしても、喧嘩やセクハラが精一杯だと思います。ダクネスさんも言ってましたが、和真さんはヘタレですから。……あ、でも、仲間の為なら勇気を振り絞れる人だとは思いますよ?」

 

死の宣告を受けたダクネスさんの為に、ベルディアが居る城へと乗り込もうとした人なのだから。

 

「つまり、勇気を振り絞って領主殿を殺害する可能性も、あるということではないですか?」

「……勇気という言葉は、身を奮い立たせる正義の言葉です。人を殺す理由には使いませんよ」

 

セリフこそ、何処ぞの学生探偵の幼馴染みのものを拝借しているが、私が和真さんを指して言った「勇気」は、まさにこれだと思っている。だからこそ、セナさんが今言ったことは、私にはとても容認できなかった。

 

「そ、そうですか。それは失礼しました」

 

……おや? セナさんが何やら怯えているような? もしかして、またやらかしたのだろうか。

実は昔ロゼが言っていたのだが、私は時々、相手を威圧するような、殺気のようなものを放つことがあるらしい。もちろんその時は、冗談を言ってるのだと思って聞き流していたのだが、エリス様を震え上がらせたあの時から、アレは本当のことだったんじゃないかと思い始めている。

思い返せば、こちらに来てから思い当たることが何度となくあった気がするのだ。

……いや、まあ、今思い返すことでもないか。

 

「ええと、話を戻しますが、サトウカズマという人物は、恨みで人を殺すような人物ではないと?」

「……私も、和真さんの全てを知っているわけではありません。なので絶対とは言えませんが、少なくとも私はそうであると思ってます」

 

これは、和真さん以外のみんなに対しても思っている事だ。まあ、めぐみんの場合は、うっかり爆裂魔法に巻き込んで()りかねない恐ろしさはあるが。

……おや。そう考えると、キレた私が一番危険なのだろうか?

 

「……わかりました。参考にさせていただきます」

 

参考、か。まあ、「参考人」の意見なので当然ではあるが、せめて、和真さんへの尋問の時に反映されることを祈ろう。

 

「それでは最後に、念の為確認します。タカハシメグミさん、あなた自身は魔王軍の関係者ではないのですね? 魔王軍の幹部と交流があるなんて事も」

 

いやいや、さすがにそれは飛躍しすぎだろう…とか思ったが、そもそも和真さんがその嫌疑をかけられてるのだから、むしろ聞かれて当たり前だった。

 

「もちろんです。戦闘時のことを除けば、幹部との交流だってありませんよ」

 

私の回答に当然の事ながら、魔道具が鳴ることはなかった。

 

 

 

 

 

事情聴取が終わると、私は即座に解放される。一方、和真さんは重要参考人のためか、今日は一晩留置所で過ごし、取り調べは明日行われるらしい。仕方がないとはいえ、まるで犯罪者と決めつけられているみたいだ。

屋敷に戻ると、アクア様達が何か会議をしていた。というか、めぐみんとダクネスさんが何やら拒否しているのを、アクア様が強引に推し進めようとしているみたいだ。

 

「どうしたのですか?」

「あ、メグミ! よかった、釈放されたのね!」

「メグミ、心配したぞ」

「無事で何よりです」

 

などと声をかけてくれたが。

 

「……アクア様とめぐみんは、早々に切り捨ててませんでしたか?」

 

私がそう言うと、二人はびくりと肩を震わせた。

 

「やややあねえ、あんなの、演技に決まってるじゃないの!」

「そそそのとおりです! 我が仲間を見捨てると、本気で思っているのですか!?」

「……思ってませんが、演技でもなかったように思いますね」

 

冷ややかな眼差しを向けながら突っ込むと、またもやびくりとする。

 

「……やれやれ、ここで二人をやり込めても意味ありませんね。それで話は戻りますが、一体何を話してたのですか?」

「ああ、そうよ! 聞いて聞いて! 今夜、カズマとメグミを奪還する計画を立ててたの!」

 

……は?

 

「めぐみんに街の近くで爆裂魔法を撃ってもらって、警備の人が出払ったその隙に、私がカズマに鍵を開けるための針金を渡すの。それで牢屋から抜け出したカズマがメグミを救出して一緒に脱走するっていう計画だったのよ。まあ、メグミは無事に帰れたみたいだけど」

 

陽動作戦自体は悪くない発想だが、和真さんが解錠スキルを持っているという話は聞かないのだけれど。それに。

 

「それでは私達は、本当の犯罪者になってしまいますよ」

「甘いわよ、メグミ。国家転覆罪なんて、下手したら死刑よ?」

 

アクア様の発言に、ダクネスさんが真剣な面持ちで頷いた。

 

「なるほど。言いたいことはわかりました。が、それでもかなり無茶だと思いますが」

「その通りです。確かに紅魔族的には非常に燃えるシチュエーションですが、それでも勝算が低すぎます」

「ああ、さすがに無謀が過ぎる」

 

私の意見に賛同する二人。おそらく先程も、これらの理由で言い争っていたのだろう。

 

「何言ってるのよ。それじゃあカズマがどうなってもいいの?」

「う…」

「それは…」

 

ああ、これは二人とも断れないパターンだ。

 

「……仕方がありません。私は別行動をとらせてもらいます」

「え、ちょっとメグミ?」

 

本当はみんなにも手伝ってもらいたかったのだが、仕方がない。アクア様の言葉を聞き流し、踵を返した私は、再び屋敷を出て行くのだった。

 

 

 

 

 

翌日の夕方。ダクネスさんから予想だにしなかった情報が告げられた。

 

「カ、カズマが裁判にかけられるとは、どういう事ですか!?」

 

そう。慌てるめぐみんが言った通り、和真さんの容疑が深まってしまったらしいのだ。しかし、昨日の質問と同様の取り調べなら、見栄で魔道具が鳴ることがあっても、和真さんの容疑が深まる要素は無いと思うのだが。

 

「あの、何かの間違いでは? 和真さんが魔王軍の片棒を担ぐような人でないことは、ダクネスさんだってわかってますよね?」

「ああ、もちろんだとも。だが、『魔王軍の幹部と交流がないか』という質問に引っかかってしまったらしい」

「あ…」

 

? どういう事だろう。めぐみんは心当たりがあるようだが。そもそも私も同じ質問をされたが、特に問題はなかった。

 

「あの、その質問に何の問題が?」

「なんのって…」

「あ。そういえばカズマが教えてくれたとき、メグミは不在でしたね」

 

教えてくれた? 不在? 疑問を浮かべた私の顔を見て、めぐみんが説明を続けた。

 

「この屋敷の悪霊退治の話を持ってきたとき、説明してくれたのですよ。ウィズが実は、魔王軍の幹部だと」

 

…………は?

 

「だが本人曰く、結界の維持をするだけのなんちゃって幹部という事で、口外しないことになったらしい」

 

……そういえばあの時は、テイラーさん…もといテイラー先生から剣術を見てもらって、後から合流したのだった。

そうか。その事実を知らなかったお陰で、私の場合は嘘とは判定されなかったというわけか。

 

「……つまりいよいよ、カズマの危機が危なくなってきたのね!」

 

今まで黙っていたアクア様が、手をギュッと握りしめ、右腕だけでガッツポーズを取り、熱く語る。……まあ、格好つけたいだけだろうが、中二な私の琴線には触れる。話が逸れそうなので、我慢してるが。あと、重複表現が少し残念だ。

 

「これはいよいよ、本気で脱走しないとだわ。めぐみん、ダクネス、今晩もお願いね!」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「昨日の騒ぎは私達の仕業だと、あっさりとバレてしまったのだぞ! 同じことをしても二の舞になるだけだ!」

 

……それは爆裂魔法を使ったからでは?

 

「ふふん、私だって馬鹿じゃないわ。こんな事もあろうかと思って用意しておいたの」

 

そう言って取り出したのは、穴が二つ開いた、二枚の袋。

 

「ま、まさか、それを被れと言うのですか?」

「い、嫌だぞ! そんなみっともない真似!」

「何言ってるの。正体を隠すためには仕方がないことなのよ?」

 

いや、爆裂魔法を使えば同じことだと思う。とはいえ今回も、二人は断り切れないだろう。

 

「そうだわ。今回はメグミも…」

「残念ですが、これから人と会う約束があります」

 

アクア様の案をきっぱりと断る。まあ、残念と言うのは嘘だが。

 

「まさか、メグミだけ逃げる気ですか!?」

「逃げるとは人聞きの悪い。本当に約束があるのですよ。相手の都合で夜になっただけです」

 

これは正真正銘、本当の事である。

 

「という訳で、皆さん頑張ってください。期待をせずに待ってますよ」

 

そう言って私は、一縷の望みをかけて屋敷を出たのだった。




初めの方の魔道具についての質問は、カズマに対しての曖昧な反応に、自分なりの解釈を含めた説明をするために入れました。
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