この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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めぐみ×尚美回が続いてます。実は思ったより長くなってしまった。


この幼馴染みとクエストを!

私達はギルドへと入る。うむ、相変わらず飲んだくればかりだ。と、そこに見知った顔が。

 

「あ、メグミにカズマくん」

「よう、クリス」

「クリスさん、こんにちは」

 

そう。クリスさんが酒場で、お酒を飲んでいたのだ。

 

「ああ、こんにちは。それでダクネスは?」

「ダクネスは一昨日(おととい)、アルダープの所に行ったきり…」

「和真さん、言わないでください!」

 

うう、ダクネスさんは今頃…。

 

「?」

 

クリスさんはわかってないのか、キョトンとしている。でも、それでいい。世の中、知らない方がいい事もあるのだ。

 

「めぐみん。そのダクネスって人、もしかして…」

「ロゼは黙っていてください!」

 

まったくこの子は、こういう事にはやたらと耳聡いのだから。

 

「あれ? そういえば見ない顔がいるね。メグミの隣にいる子と、その子によく似た紅魔族の子」

「この子はロゼ…もとい、豊崎尚美。私の幼馴染みで親友です。そして紅魔族の子はゆんゆん。めぐみんのライバルで、私の友人です」

 

「友人」という言葉に、興奮したゆんゆんの瞳が紅く(かがや)く。一体、どれだけぼっちを拗らせてたのだろう。

 

「ロゼ、ゆんゆん。こちらはクリスさん。私がこちらへ来た当初、色々とお世話になった方です」

 

今度は二人に、クリスさんの紹介をする。するとロゼが一歩前へ出て。

 

「初めまして、クリスさん。めぐみんがお世話になったみたいですね。ありがとうございます」

「ああ、いや、お世話ってほど…めぐみん?」

「あ、私の愛称です」

 

ううむ、愛称と同じ名前の人物が身近にいると、こういった形で話が途切れて面倒くさい。

 

「ああ、そういう事か。……ところでメグミ」

 

クリスさんが、私の顔の横に自身の顔を寄せて、小声で言う。

 

「アルダープの事、まだまだ調査継続するんでしょ?」

「……お願い、出来ますか?」

「うん。あたしもちょっとばかし気になることがあったから、いいきっかけにはなったよ」

「そうですか。それでも、ありがとうございます。この穴埋めは必ず…」

「そこまで気にしなくても、いいんだけどね」

 

そう言って、申し訳なさそうな表情で右頬を掻くクリスさん。……はて。この間からクリスさんのこの仕草に、何か引っかかるものがあるのだが。一体なんだというのだ。

 

「おい、そろそろ行こうぜ。尚美の登録、さっさと済ませちまおう」

「あ、そうですね。それでは失礼します」

「うん、またね」

 

そう言って私達は、クリスさんと別れるのだった。

 

 

 

 

 

「受け付けのお姉さん」

「ああ、サトウさん。今日はどうなさいましたか?」

 

なぜかは知らないが、ルナさんの事は頑なに「お姉さん」と呼ぶ和真さん。単純に今までそう呼んでいたので、今更「ルナ」とか「ルナさん」等と呼ぶのが気恥ずかしいのかも知れない。

 

「実は今日、メグミの幼馴染みがこの街にやって来たんですけど、まだ冒険者の登録を済ませてないって言うんで連れて来ました」

「まあ、そうだったんですか。ええっと…あら? あなた、ゆんゆんさんにそっくりですね?」

 

やはり言われたか。しばらくの間はこの様に言われるのだろう。仕方のないことだが、やはり煩わしい。

 

「でもこうして見ていると、双子のようですね。双子の姉妹同士でお友達みたいな」

「なるほど。言われてみれば、確かにそうだな。特に、暴走する妹のめぐみんに、突っ込む姉のめぐみ、みたいな感じだし」

「ちょっと待ってください! どうして私が妹側なんですか!?」

 

めぐみんが文句を言っているが、私も時々妹の様に思うときがある。いや、兄弟姉妹(きょうだい)はいないのだけど。

 

「待て待て、あくまで世間的なイメージだから!」

 

そう、あくまでイメージ。私の想いも、それに引っ張られてのことだろう。

 

「あー…、なんだかすみませんね? 私が余計なことを…」

「しぃっ。お姉さんは何も悪くなんかありませんよ」

 

立てた右人差し指をルナさんの口に当て、黙らせながら和真さんは言った。やや演技じみてるが、こう言う態度(ポーズ)は少しばかり、中二心をくすぐってくる。

 

ずぴし!

 

突然私の頭に衝撃が走る。振り向き見れば、右手に手刀を作ったロゼが呆れ顔で私を見てる。

 

「今、スイッチ入りそうになったでしょ?」

「さすがはロゼ、気づきましたか」

 

頭を抑えながらも、相変わらずのロゼに感嘆する。

 

「ねえ、めぐみん。あの子、メグミにツッコミ入れたわよ?」

「さすがは幼馴染み。あのメグミに、まったく引けを取らないとは」

 

アクア様とめぐみんが、もしょもしょと会話する。なんだろう。私の評価がまるで、どこかのドラまたの様な気がするのだが。それに肩を並べるロゼの評価も、なんだか怪しいものになっているみたいだ。

 

「アクセルのカエルスレイヤー()のひとりに突っ込めるなんて、なかなか有望よね。私の後任の子を、少しだけ見直したわ」

 

後任って、ロゼが言っていたノエルって人…人? まあ、いいけど、その人のことだろうか。

……というか!

 

「カエルスレイヤーズって、いつの間に複数形になったんですか!?」

「昨日よ。ゆんゆんの、カエルを倒すあの素晴らしい様は、メグミにも引けを取らなかったと思うの。それで甲乙をつけがたかったから、二人まとめてカエルスレイヤーズよ!」

 

う、嬉しくないっ!

 

「……友達とペアの二つ名。ちょっと、嬉しい?」

「舞い上がらないでください、ゆんゆん! カエルスレイヤーズだなんて、さすがにダサいですよ!!」

「え、でも…」

 

これだからぼっちはあああああ!!

 

ずぴし!

 

頭に二度目の衝撃が走る。

 

「落ち着きなさい、めぐみん。この手のことは、後でゆっくり話し合いなさいよ」

「そう、ですね。……ありがとうございます、ロゼ。少々…いえ、結構取り乱しましたが、もう大丈夫です」

 

まったく。クールな魔法使いへの道のりは、本当に程遠いですね。

 

「……ええと、それで、冒険者登録の件は?」

『あ』

 

ルナさんに言われ、ようやく本題を思い出す私達だった。

 

 

 

 

書類に記入しカードに触れ、ロゼのステータスが記載されたカードをルナさんが読み上げる。

 

「……トヨサキナオミさん、ですね。ええとこれは、知力が結構高めで、筋力がやや高め。後は、魔力がそれなり以外、他は平均的ですね」

 

な!? 魔法系統の特典を貰ったわけでもないのに、魔力がそれなりだと? まさかロゼに、魔法の資質があったとは!

 

「へー、メグミも当初から魔力が高めだったけど、この子もそうなのね」

「……え? 私もそうだったのですか?」

 

私はてっきり、転生特典でここまで魔力が高いのだと思っていたのだが。

 

「ええ、そうよ。今は当初より底上げされてるけど、メグミは初めから資質があったのよ。ほら、メグミって向こうでも、浄霊とかしてたんでしょ? 呪文の種類は違うけど、あれだって立派な魔法なんだから」

 

言われてみれば、確かにそうかも知れない。

 

「……お前、生まれついてのチート持ちだったんだな」

 

あ、和真さんが拗ねてしまった。

 

「何言ってるの、カズマ。向こうにだって魔法の力はあるわよ? ただみんな、その使い方を忘れてしまっただけなのよ。そのせいでマナも薄くはなってるけど。あ、でもカズマは、どっちみち才能が無かったけどね」

「うっせーわ!」

 

アクア様、追い討ちかけるのはやめてください。

……しかし、そうだったのか。という事は、威力は落ちるかも知れないものの、こちらの魔法を向こうで使うことが出来るかも知れないという事だ。……まあ、魔王を倒して願いを叶えてもらう以外、戻る手段は無いのだけれど。

 

「……コホン」

 

いけない。また話が脱線してしまった。

 

「ええと。それで、どの職業を選択なさいますか? 上級職以外の全ての職に就くことが可能ですよ?」

「……あの、弓を得意とする職業は?」

「それならばアーチャーですね」

「それじゃあアーチャーにします」

 

まあ、そこが妥当な線だろうか。魔法の資質は勿体ないが、ロゼの能力を生かすなら、やはりアーチャーにするべきだと理解している。

それに私が、魔法の組み立てなども含めた知識を教え込めば、資質とは別の才能次第になるが、ある程度の魔法は使えるようになるだろう。魔法を使うアーチャー。カッコイイではないか!

 

ごす!

 

「今までで一番暴走しそうな気がしたんだけど」

「ふ…、残念ですがこの想いは、その様なことでは止まりませんよ?」

 

親友の格好いいところが見られるのなら、これくらいは甘んじて受けよう。

 

「く、こういう時のめぐみんは、何やっても無理だもんね」

 

さすがはロゼ。私の事を良く理解している。

 

「ねえ、めぐみん。今、ナオミさん、『何やっても』って言ったよね?」

「『何言っても』でない辺り、つくづくメグミの親友だと思わされますね」

 

今度はゆんゆんとめぐみんが、何やら変な考察をしているが無視しよう。

 

「あのー…」

 

あ。

 

「お姉さん! 何度も何度も、スミマセン!」

 

和真さんが、勢いよくお辞儀をして謝った。

 

 

 

 

 

「……それで厚かましいお願いなんですが」

 

ロゼの登録が全て終了したところで、和真さんがルナさんに相談を持ちかける。

 

「掲示板に張り出されていないクエスト、ありませんか? 初心者でも出来そうなやつがいいんですが、掲示板のは高難易度なものしか無くて…」

 

確かに。昨日のは、ギルドのクエストではなかったですし。

 

「……それなら、昨日と同様ジャイアントトードの討伐などはどうでしょう。昨日の討伐の後も、まだ数匹ほど確認されてるんです。クエストとしては受けていませんが、臨時報酬くらいは出させていただきますよ?」

「……カエル、ですか」

「はい、カエルです」

 

……まあ、うちのパーティーは私を除き、ジャイアントトードとの相性が悪いので、躊躇う気持ちはわかる。だが今日は、おそらくゆんゆんも着いてくるだろうから、アクア様とめぐみんさえ抑えれば、問題はないはず。

 

「めぐみん。ジャイアントトードって?」

「初心者向きのモンスターで、家畜すら丸呑みするほどの巨大なカエルです。本来は冬眠している時期なのですが、ちょっとした異変で地中から這い出してきた個体がいるのですよ」

 

めぐみんの名誉のためにも、爆裂魔法の事は黙っておいてあげよう。

 

「初心者向きなら、受けた方がいいんじゃないの?」

「……ところがうちのパーティーとは相性が悪く、まともに戦えるのが私くらいなのです。因みに、気を抜くとぱっくりいかれます」

「カエルの中は、結構(ぬく)いですよ?」

「……そんな知識、知りたくなかったんだけど」

 

ロゼが、いつぞやの和真さんの様なことを言っている。

 

「だ、大丈夫です! 私がみんなを守りますから!」

 

予想通り、ゆんゆんの参加が決定した。となれば当然。

 

「よぉし。後で爆裂散歩に付き合ってやるから、めぐみんは爆裂魔法の使用を禁止。それと今回は、半分以上尚美のためのクエストになるから、アクアも余計なことはするな」

「まあ、仕方がありませんね」

「余計なこととは何よ! 私はみんなのためを思って…」

 

素直に了承するめぐみんに対して、アクア様はいつもの如くごねる。和真さんの言い回しのせいもあるが、それでももう少し、聞き分けがよくなってほしい。

 

「もしもの時は、めぐみ、力尽くでいいから止めてくれ」

「わかりました」

「私、大人しく見守ってるわ」

 

急に聞き分けが良くなるアクア様。最初からこういう態度なら、こんな脅しも必要ないのだが。

 

「という訳でお姉さん。ジャイアントトードの討伐に行ってきます」

 

 

 

 

 

そしてやって来た平原…というか雪原。確かに視認できる範囲でも、5匹ほどカエルがいる。

 

「さあ、やるならさっさと()ってください。さもなくば、我慢できなくなった私の爆裂魔法が火を噴きます!」

 

めぐみんのこれは、煽ってるのではなく、本気だからなぁ。

 

「……本当に大きいね」

「ロゼ、いけますか?」

「うん、ビックリしただけ。問題無いよ」

 

瞬間、スッと雰囲気が変わる。どうやら()()モードに入ったようだ。

 

「あれ? でも、ナオミさんの武器は…」

「大丈夫、今出すから。

……『トレース・オン』!」

 

そのかけ声と共に、ロゼの左手に和弓が現れる。……というか、トレース・オンだと!?

 

「おい、今、トレース・オンって…。まさか投影魔術なのか?」

「いえ、ロゼはゲームはやりませんし、アニメやマンガもほとんど見ません。精々昔の、少女向けのラノベを読むくらいです。これはあれです。私が『ロゼの射形は、Fateの弓兵を思い起こさせる』と言って、エミヤの事を語ったのが原因でしょう」

 

あの時は確か、弓や矢を出現させるときのセリフとして教えただけで、投影魔術の事は言わなかったはず。だから恐らくロゼのは、弓を出現させる合い言葉的なものなのだろう。

 

「では、いきます」

 

そう言って矢筒から、矢を一本引き抜く。それは黒っぽい矢羽根が付いた鏑矢。その矢を弓に番い引き絞り、狙いを定め。

 

「南無八幡大菩薩…」

 

そう呟いて解き放つ。びゅう…と音を立て、遠く離れたカエルの頭に命中、昨日の和真さんの時とは違い、あっさりと地に伏した。

更にもう一本の矢を抜く。やはり鏑矢だが、矢羽根は灰色と白の縞柄である。この矢も先程と同じ所作で解き放つ。びゅう…と風を切り、またもや頭に命中し、その命を奪った。

 

「すげ…。本当にアーチャー・エミヤみたいだ」

 

和真さんが呟く。実際私も、ここまでとは思っていなかった。何しろロゼはまだ、アーチャーのスキル[狙撃]を修得していないのにこの腕なのだ。

それにしても、本来殺傷力の低い鏑矢でこれほど攻撃力が高いのは、おそらく特典の効果なのだろう。そしてその特典にも、ようやく当たりがついた。

 

「ロゼのその武器、[雷上動]と[水破・兵破]ですか」

 

確か、源頼政が鵺退治に使った武器だったか。以前ロゼから聞かされた話である。

 

「ちゃんと覚えてたんだね。……さて、あと3匹」

 

そう言って今度は、いつの間にか補充されていた二本を一度に引き抜き、弓に番える。

 

「な、ロゼは曲撃ちが出来るのですか!?」

「うん。弓道じゃ邪道だから、見せたことなかったけどね」

 

まさかそんな特技があるとは、今まで知りもしなかった。

ロゼは二本の矢を同時に解き放つ。その矢は、比較的近くに寄り添っていた二匹の頭に突き刺さった。

 

「ナオミさん、すごい…」

 

ゆんゆんが唖然としながら言った。私も、物凄く驚いている。

と。さすがにカエルがこちらに気づき、物凄い勢いで近づいて来た。

 

「ここは私が! 『ライト・オブ・セイバー』ッ!」

 

ゆんゆんが昨日の光刃を閃かせ、カエルを胴から真っ二つに。これで辺りにカエルはいなくなった。

 

「どうやら何事も無く終わったようですね」

「さすがに、ここら辺のカエルは一掃したでしょ」

 

な、めぐみんにアクア様!

 

「お前らあああ! だからなんでそう、フラグを立てたがるんだよおおお!!」

 

和真さんが叫んだ、まさにその時。すぐ傍の地中から、新たなジャイアントトードが二匹、這い出してきた。だが、昨日の二の舞はとらせない。

 

「『五指爆炎弾(フィンガー・フレア・ボムズ)』ッ!」

 

私が放った五つの火球が、二匹のカエルを飲み込む。

 

「「すごい…」」

 

この呪文を知らない、ロゼとゆんゆんの感嘆の声が綺麗に被るのだった。




次回まではめぐみ×尚美回が続きます。
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