この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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このダンジョンへの誘いを!

ダスティネス邸からの帰り道。

 

「これでは、普通に見合いを断っていた方が良かったではないか」

 

などとダクネスさんはお怒りだ。何があったかは、あらまし程度には聞いているので、ダクネスさんの意見もわからなくはない。

だが、助けを求めてきたのはダクネスさんの方である。そもそも上手く断れなかったダクネスさんの尻拭いという形で、和真さんは今回の作戦を立てたのだ。

まあ実際は、ダクネスさんとお見合い相手…バルター様をくっつけようと画策していたみたいだが、心配していたことも事実みたいなので、和真さんには少し文句を言っただけで、その矛先を納めはしたけれど。

そんなもろもろを含めて意見を述べてみると、ダクネスさんは言い返せないのか、黙り込んでしまった。

 

「うーん、でも、カズマはダクネスをバルターって人に押し付けようとしてたのよ?」

「それはそうですが、ダクネスさんの幸せを願ってと言うのは本当だと思いますよ? 少ししか会話をしてませんが、あの方ならダクネスさんの性癖を理解しても、その全てを包み込んでくれる度量のある人だと思います。ハッキリ言って、かなりの優良物件ですよ」

「だ、だよな?」

 

アクア様の意見に反論すると、和真さんは縋るように言った。まったく、この男は。

 

「これはあくまで、その一面もあるというだけです。そもそも和真さんはダクネスさんを、寿退社というお目出度い事だと理由付けでもして、追い出そうとしていたのではありませんか?」

 

私は醒めた眼差しで和真さんを見る。気づけば他のみんなも、同様の眼差しを向けていた。

和真さんの額には脂汗が浮かび、やがて。

 

「スミマセンでしたあっ!!」

 

彼は土下座をして謝るのだった。まったく、やれやれです。

 

 

 

 

 

お屋敷に近づいた頃、不意にダクネスさんが言う。

 

「そう言えば、先程の勝負ではお前が勝ったわけだが、一体どんな要求をするつもりなんだ!? 私が想像するよりも凄いことをするとか言っていたが…」

 

……ほう?

 

「ねえ、カズマ。ダクネスが心配かけたことでイライラしてたのはわかるけど、あまり凄いことは要求しないであげてね?」

 

アクア様が珍しく真っ当なことを言っておられる。と言うか、見るところはちゃんと見ている…場合もあるらしい。

 

「和真さん。どうか、私の対処に困るような要求はしないでくださいね?」

 

私がそうお願いすると、ロゼが。

 

「え? 私はそっちの方が面白そうだけど?」

「何をほざくか! この、生臭乙女!!」

 

……ロゼよ。この間も思ったが、あなたのその性格、随分と拗らせてはいまいか? 日本で暮らしていたときは、そこまでではなかったような気がするのだけど…。

 

「あー、ええと。要求に関しては追々と」

 

問題の先送りをする和真さん。それについて私が追求しようとした、その時。

 

「待っていたぞ、サトウカズマ!」

 

お屋敷の門の前で、検察官のセナさんが待ち構えていた。

 

「なんですか。またカズマにイチャモンでもつけに来たのですか?」

 

めぐみんはどうしてこう、攻撃的に物事を進めようとするのだろう。いやまあ、私も攻撃的な性格をしているが、状況によっては弁えたりもしてるのだ。

 

「イチャモンなどではない! ジャイアントトードの時も、あなた方が原因である公算が高かったのは事実でしょう!」

「ジャイアントトード?」

 

その時はパーティーから離れていたダクネスさんが、疑問を浮かべる。原因(推定)をぼかして説明した、ロゼとゆんゆんも同様だ。

 

「……数日前までのジャイアントトードの異常発生の原因が、めぐみんの爆裂魔法の可能性があるのです」

 

私が簡単に説明すると、めぐみんと同行していたダクネスさんは顔をしかめ、状況を知らないロゼとゆんゆんは、ただ成る程と頷いている。

 

「それで今回はなんだってんだ?」

 

和真さんは警戒しつつもケンカ腰に尋ねる。もう少し穏便に、とは思うが、濡れ衣を着せられた上に危うく死刑になるところだったのだ。さすがにめぐみんとは違って致し方ないと思う。

 

「キールのダンジョンから、謎のモンスターが大量に湧き出しているのだ。記録を調べた結果、最後にダンジョンへ潜ったのはあなた方です。なら、その可能性を疑うのが当然というものでしょう?」

 

成る程、確かに理には適っている。とは言え。

 

「セナさん。我々にはサモナーの資質を持った人はいませんよ。ゆんゆんは昔、悪魔召喚を試したことがあるようですが、このパーティーに加入したのはつい先日のこと。時期が合いません。

私は、勉強すればおそらく召喚系魔法も出来るようになると思いますが、今現在はそのスキルはありませんし、それについては冒険者カードを確認して貰えればわかることです。

あと、仮に召喚系の魔道具が存在していたとしても、今の我々にはそれを手に入れるためのお金の余裕がありません。大量発生させるほどの数を揃えるなんて、とても無理です。

という訳で、そちらの見立ては見当違いと断言します」

「そ、そうですか…」

 

セナさんの様な、頭は固いもののちゃんと聞く耳は持っているタイプには、変な隠し事はせず理路整然とした説明で納得させる方が、むしろ手短に済むものだ。

 

「そうよ。むしろ私のおかげで、あのダンジョンにはモンスターが寄りつかないはずよ!」

 

……なんだって?

 

「だって、ダンジョンの奥にリッチーを浄化させた魔法陣が残ってて、今でも邪悪な存在が立ち入れないようにしてるんだから!」

「……ほう。その話、詳しくお聞かせ願えますか?」

 

アクア様の発言に、しっかりと食いつくセナさんであった。

 

 

 

 

 

現場にいた上で、冷静に、かつ的確に説明する事が出来るという理由で、私が引き続いてキールのダンジョンで起きた出来事を話して聞かせた。

 

「……成る程。その話を聞く限り、確かにモンスターの大量発生とは関係なさそうですね」

「ええ。さすがに絶対とは言い切れませんが、おそらくは別の理由があるはずです」

 

ここで一旦、間を置いて。

 

「和真さん。モンスターの大量発生、私達で解決しましょう」

「え、何でだよ。アクアが原因じゃないのは、今説明したじゃんか」

 

この男、何故こう楽ばかりしようとするのだろうか。

 

「私は言いましたよね? 絶対とは言い切れないと。もし間接的にでも関係していれば、むしろ印象を悪くする可能性がありますよ? それに関係なかったとしても、率先してお手伝いした方が司法側の印象も良くなります」

「……あなたの言うことは正論過ぎて、何も言い返せない」

「あなたはどこの、ゲーオタ文芸部部長ですかっ!」

 

って、くっ! 正論で言い負かす自信はあるのに、彼の言動に引っかき回される。中二病で、アニメやマンガ、ゲーム等も好きなオタク気質ゆえに、そういったネタをぶち込まれるとつい反応してしまうのだ。

などと、自己を省みてる私のすぐ横を、ロゼがスッと走り抜けて。

 

「……和真さん。話の腰を折るのは止めましょう?」

 

人差し指と中指を立てた右手を勢いよく突き出し、和真さんの目の前でピタリと止めてからそう告げた。……いや、傍から見てるこちらも怖いのだけど。

 

「……俺は言いたい。お前はどこの、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースの朝倉さんだ」

 

気持ちはわかるぞ、和真さん。……いや、それは置いておくとして。

 

「それで和真さん、どうしますか?」

 

私は平静を装ってそう尋ねた。

 

「……この状態で、断れると思うか?」

 

ロゼの指は、相変わらず和真さんの目の前に突きつけられている。

 

「思いません」

「……やれやれだぜ」

 

な、私の口癖を!? ああ、いや、ニュアンスからすると空条承太郎(JOJO)の方か。

とはいえ、これは言質を取ったとみなしてもいいだろう。

 

「という訳でセナさん。私達がモンスター大量発生の原因究明をお手伝いします」

「あ、ありがとうございます!」

 

セナさんは、本当に嬉しそうにお礼を述べるのだった。

 

 

 

 

 

一旦、屋敷で装備を整えた私達は、キールのダンジョンまでやって来た。私達の他にはセナさんと、数人の冒険者もいる。

うむ。これだけ関係者が増えたのだから、あらかじめダンジョンでの経緯を話したのは正解だろう。それなら、たとえダンジョンの奥でアクア様の魔法陣を消す作業をしても、怪しまれずに済むからだ。

それにしても。

 

「なるほど。確かに謎のモンスターだ」

 

和真さんは言った。そう。そこには、おかしな仮面を付けた膝丈ほどの人形のような物が何体も、ちょこまかと動きまわっていた。だがしかし、私の意見は少し違う。

 

「どちらかといえば、特殊なゴーレムと言った方が近いのでは?」

「うん。言われてみたら、確かにそんな気がする」

 

私の意見に、ゆんゆんも同意した。そんな中、アクア様が石を拾い上げながら、不機嫌そうに言う。

 

「何故かしら。私、この人形を見ていると、無性にムカついてくるのだけど」

 

なんて物騒な発言だろう。しかし、女神のアクア様がムカつくというのにも、何かヒントがあるような気がする。それが何かまではわからないけれど。

 

「アクア様、まずは調査が先ですから、下手に刺激を与えないでくださいね?」

 

と。とりあえずは釘を刺すことにした私。アクア様が余計なことをすると、必ずと言っていいほど状況が悪化するからだ。

 

「あの…」

 

ここでセナさんが声をかけ。

 

「タカハシさん。改めて、ご協力感謝します」

 

彼女は私へとお礼を述べる。だが。

 

「待ってください。お礼を述べる相手を間違えてます。このパーティーのリーダーは和真さんですよ?」

「ええ、もちろんわかっています。ですが、そのリーダーを動かしたのはあなたです。その協力への感謝ですよ」

 

成る程、そういう…。しかし。

 

「ですがそういう事なら、ロゼ…尚美もその一因を担っているのですが?」

「ええと、検察官としては一応、見て見ぬフリでその意を示そうかと…」

「……ああ」

 

そういえば、あれは恐喝に当たる行為でしたね。

 

「コホン。それでは改めて、サトウカズマさん及びそのパーティーの皆さん。ご協力を感謝します。

ご覧いただいたとおり、このダンジョンからは謎のモンスターが大量に発生しています。原因は不明ですが、サトウさんとの関与が薄いという事実と照らし合わせ、何者かがモンスターを召喚しているという可能性が最も高いと思われます」

 

要は先ほどまでは、その何者かが和真さんではないかと疑われていた、というわけだ。

 

「なので、もし召喚者がいた場合は倒してもらい、召喚の魔法陣にこの札を貼ってください」

 

そう言われ手渡された札を見た和真さんは、「これは?」と聞き返す。すると、それに答えたのはセナさんではなく、ゆんゆんだった。

 

「それは強力な封印魔法の札ですね。召喚の魔法陣は一度起動したら、術者の生死に関わらずに起動し続けるものもあるんです」

 

確かに、リーンさんから借りたノートにも、軽くその事には触れていた。私の場合はそれ以前に、ファンタジー物の作品でそのパターンをいくつか知っていたりするけれど。

 

「なるほど。だが、そんな物は必要ない。実は俺に、いいアイデアがあるんだ。……めぐみん、準備はいいか?」

「はい。任されました」

 

和真さんの呼びかけに、スタッフを構えためぐみんが、ずいと前に出る。……って、まさか!?

 

「サトウさん、何をなさる気ですか? ……ま、まさか?」

 

どうやらセナさんも、同じ結論に至ったようだ。

 

「お、ピンときたか? そう、ダンジョンの入り口に爆裂魔法を放って封鎖しちまおうかと…」

「そ…」

 

何かを言い放とうとしたセナさんに被せて。

 

「何言ってるんですかあああっ!!」

 

すぱああああん!

 

「紅めぐも、そんな話に乗ってるんじゃないっ!」

 

ごす!

 

私が振るったロッドが和真さんの頭に、ロゼの手刀がめぐみんの頭にそれぞれ直撃した。二人は共に、頭を抱えてうずくまる。

 

「私達が行うのは原因の究明。その上で召喚者がいた場合は倒し、魔法陣を封印する。これが基本条件です。臭い物に蓋をすることではありませんよ。相手がテレポートを持っていたら意味ないですし。

そもそもここは、初心者のためのダンジョン。チュートリアルとも言える場所です。そんな所を封鎖するなど、本当に最終手段ですよ」

「……ごもっともです」

 

私が意見を述べると、和真さんは低頭平身でそう言った。何故か今一、誠意は感じられないが。

私達がそんなやりとりをしていると、アクア様が再び石を拾い上げ、モンスターに投げつけようとする。どうやら、我慢の限界が近づいてきたらしい。すると(くだん)のモンスターがアクア様に近づいてきて、その足にしがみついた。

 

「なになに、甘えてるのかしら。ムカつく仮面だけど、こう甘えられると、段々と可愛く見えて…」

 

アクア様も結構チョロインなのだろうか。とか思った傍から。

 

ちゅごうん!

 

モンスターは自爆をして、アクア様がそれに巻き込まれてしまった。

 

「見ての通り、このモンスターは動いている者に取り付いて自爆するという性質を持っていて、冒険者ギルドでも対応に苦慮している状態なのです」

「なるほど。こいつは厄介だな」

 

いやいやいや。

 

「和真さん。たいした怪我をしてないとはいえ、少しはアクア様の心配をしましょう?」

「そうですよ。……え、たいした怪我はしてない?」

 

アクア様を介抱しながら言う私に、同じく介抱していたゆんゆんが同意する。直後に、私の発言に疑問を呈しているが、説明が面倒なので無視を決め込んだ。それに。

 

「ありがとう、メグミ。ゆんゆん。貴女達だけでも心配してくれて、とても嬉しいわ」

 

アクア様にそんなことを言われ、照れと嬉しさで舞い上がり、直前の疑問は吹っ飛んだようである。

 

「アクアは納得済みな様なので、話を進めましょうか」

「……相変わらずですね、サトウさん」

 

セナさんが突っ込むが、先に無視して話し始めたのはあなたですよ?

 

「んんっ!ともかく、このモンスターは少しでもダメージを受ければ自爆、受けなくても隙を突いて近づき、取り付いて自爆。遠距離から一体々々倒していくしかない状況なんです」

 

ううむ。そうなると遠距離射撃のロゼの出番…いやいや、ダンジョンの中ともなると、弓の攻撃には少し手狭な場所もある。だとすれば、私やゆんゆんの様な魔法使いが向いているか。和真さんはパーティーのリーダーとして強制参加させられるとして…。

私はあとひとり、この行軍に必要な人物へと視線を移す。ちょうどその時、私の思考を読んだかのタイミングで、彼女はモンスターの一体へと近づいてゆき。

 

どむっ!

 

張り付いてきたモンスターが爆発する中、平然とたたずむその姿。

 

「うむ。これならいける。問題ないな」

 

彼女…ダクネスさんは言う。アクア様ですら軽くダメージを負ったのに、傷ひとつ負っていないその姿には若干引いた。が、これなら私の予定の組み合わせで上手く機能するはずだ。

 

「和真さん和真さん」

「はい、和真です」

「私に、パーティーの組み合わせについての意見があるのですが」

「ほう。聞こうじゃないか」

 

私の意見に耳をかたむけた和真さんは、あっさりと受け入れてくれたのだった。

 

……追記。ダンジョン攻略メンバーから外されたアクア様は、それは大層お喜びであられた。……すみません。ダンジョンに取り残されたこと、かなりのトラウマだったのですね。




ゲーオタ文芸部部長……【涼宮ハルヒの憂鬱】スピンオフ作品【長門有希ちゃんの消失】のヒロイン、長門有希の事。対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース…などではない、普通の人間の女の子。

対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースの朝倉さん……【涼宮ハルヒの憂鬱】に登場した朝倉涼子の事。直前に長門有希(パラレル)のネタを入れたため、この発想に至った模様。

ゆんゆんが普通にお札の説明をしてますが、パーティー入りしてしばらくたっているため、和真にも少し慣れているからです。
とはいえ、会話になるとぼっち属性を発動しますし、ましてや和真レベルの激しい突っ込みには、アタフタ・オロオロします。
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