この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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ちょいと長くなった。


この仮面の悪魔との決着を!

冒険者達による、ダクネスさん≒バニルへの攻撃が始まってからしばらくして。

 

「くそっ! あのダクネスが、こんなに手強いなんて…」

「当たらねえ! 簡単に剣で弾かれちまう! 攻撃も重いし、斬り付けもやたら速い! 向こうが手加減してなけりゃ、俺達はとっくに()られてるぞ!」

 

攻撃が当たらず、むしろいい様にあしらわれている冒険者たちが口々に言う。ベルディア程ではないが、あの時の情景を思い浮かべるには充分な腕前だ。本当に、普段のダクネスさんではあり得ないほどの剣の腕である。

 

「ふはははは! この体は実に具合がいいな! 筋力はあるし耐久力もある! 更には忌々しい神々の魔法にも耐性があるときた!(うう…みんなに迷惑をかけているというのに、この人数を圧倒できているのが、なんだか嬉しい…)」

「ダクネスさんは、言わなくていいことまで言わないでくださいっ!」

「(ああっ! その叱咤がまた、心地いい…)」

 

しまった! 思わず、入れなくていいスイッチまで入れてしまった!

 

「ダクネス。今お前、心地いいって…」

「(言ってない)」

 

和真さんのツッコミのおかげで、取り敢えずダクネスさんは正常運転に戻ったようだ。

 

「……ねえ、やっぱりダクネスさんは、バルター卿と結婚した方がいいんじゃない? この人を理解しつつも丁重に扱ってくれる人なんて、あの人しかいないと思うんだけど」

「……ロゼ。面倒くさくなりましたね?」

「そ、そんなことはない、よ?」

 

どうだか。ぼっち気質の名残かどうかはわからないが、ロゼは時々、対人関係を面倒くさがることがある。

ダクネスさんとは今日会ったばかりの初対面だ。しかも、こんなクセのある面倒くさい性格の相手である。ロゼが面倒くさがるのも、ある意味仕方が無いと思ってるのだが。

……もっとも、ゆんゆん程ではないものの人との繋がりに執着するくせに、時に面倒くさがる事もあるロゼも、充分に面倒くさい性格をしてると思うけど。

 

「(あの…。面倒くさいというのは、結構精神的に来るものがあるのだが…)」

「ダクネスさん、そういうトコです。何故、今の発言が貴女の性癖に刺さらないのか、そちらの方が謎なのですが…?」

「(せせ、性癖とか言うなぁっ!) ……ふむ。先程まで感じた喜びの感情とは違い、なかなか味のある羞恥の悪感情であるな」

 

本当に、ダクネスさんの羞恥の基準は何なのだろうか。

……おっと。それよりも、たった今思いついた方法を。私はロゼに近づき、耳許に口を寄せながらぼそりと呟くと、彼女は頷いた。それを確認すると、私は再び呟いて彼女から離れる。

 

「ほう。何か企んでいるようだな。では少し覗いて…」

「させません! 『爆煙舞(バースト・ロンド)』!」

 

私は目眩ましのための呪文を放つ。悪魔相手なので効果があるかはわからないが、ダクネスさんを通しているので可能性に賭けてみた。

 

「フハハハ! 残念だったな! 一時的には効果があるが、視覚を我輩が主軸に切り替えれば、些かの問題もない!」

 

つまり一瞬、見通す能力の隙を突けたというわけだ!

 

びゅうう…

 

「くっ!? 鬱陶しいわっ!」

 

爆煙が晴れた瞬間に放たれた鏑矢を、無理矢理身体を動かして手で弾いたその時。

 

びゅうう…

 

再び聞こえる鏑矢の音。さすがにこのタイミングは予想外だったのか、今度は身体を動かすことも出来ずにいる。そして。

 

ざっ!

 

「ぬおっ!?(つぅっ!?)」

 

浅くだが、ダクネスさんの腕に矢が突き刺さった!

 

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』ッ!!」

 

こちらは打ち合わせをしていなかったが、アクア様がタイミング良く悪魔祓いの魔法を放つ。

 

「おおおおっ!?(ああああああっ!!)」

 

直撃を受けたバニル…とダクネスさんが声を上げた。しかし《セイクリッド・エクソシズム》より強力とはいえ、ダクネスさんの聖騎士としての耐性で、やはりバニルにも耐えられてしまったようだ。

 

「……くうぅ、忌々しい! 水の女神と同じ名の、頭のおかしなアークプリーストが!」

「あらやだ、強がっちゃって。プークスクス! それに頭がおかしいのは、私じゃなくってめぐみんの方なんだから」

「ええっ!? とんだとばっちりです!」

 

めぐみんが喚いているが、それなら爆裂狂な所を正すべきである。

 

「めぐみんの事なんてどうでもいいわ。それよりも、どうしてナオミの矢はダクネスさんに刺さったの?さっきは傷ひとつ付けられなかったのに」

 

やはりゆんゆんは毒舌家である。とは言え、その疑問には答えねばなるまい。幸い、と言っていいのかはわからないが、他の冒険者達が再びバニルに挑んでいるので、それくらいの余裕もある。

 

「簡単な事です。ロゼの矢に《魔皇霊斬(アストラル・ヴァイン)》という、切れ味を増す術をかけたのですよ」

 

とは言うものの、神器の能力に上乗せできるのか、とか、神器の能力に反応しておかしな事は起きないか、等の心配はあったのだが、どうやら杞憂で終わったようだ。そしてロゼには、手や足といった致命傷にはなりにくいところを狙うように指示をした、というわけである。

……しかしそれでも、矢の先が少し刺さっただけで済むダクネスさんの防御力には舌を巻くしかない。

 

「な、何をのんきに話し込んでるんですか!? サトウさん、早くあの悪魔を退治してください!」

 

本当にのんきに見えたのだろう。セナさんが和真さんを責っ付いてきた。とは言え相手は大悪魔。しかもダクネスさんの体を奪った状態だ。彼女が言うほど容易いことではないのだが。

 

「……確かに、このままって訳にはいきませんよ。今はまだダクネスの意識もしっかりしていますが、いずれは完全に悪魔に取り込まれてしまうはずです。そうなる前に、何とかしなくては…」

 

普段のキレやすい若者代表の様な言動から一転、仲間想いな一面を覗かせるめぐみん。いやまあ、私も同じ事で頭を悩ませているわけだが、いかんせんバニルの見通す能力と、ダクネスさんの防御力を含めた身体能力の高さの相性が良すぎて、非常に困っているのだ。

そうこうしている間にも、バニルの猛攻で冒険者のひとりが横殴りの攻撃を受けて、攻防の均衡が崩れた。

 

「フハハハハ! 年貢の納め時だな、我が宿敵よ!」

 

そう言いながら、アクア様に近づいていくバニル。

 

「ダクネス、私信じてるから! 悪魔なんかに負けないわよね? 大丈夫よね?」

 

アクア様の呼びかけに、しかしダクネスさんは反応を示さない。まずい! 思ったよりもバニルの支配力が上がってる!?

 

びゅう…

 

ロゼが矢を放ち、バニルは一瞬体を硬直させるが、その手で矢を弾き。

 

びゅう…

 

再度矢は放たれるが、今度はそれにも反応して矢を弾く。

 

「生憎だが既に手の内は知れ、尚且つ見通せる状態ならば、汝の攻撃も脅威とはならんぞ」

 

ロゼに焦りの色が見える。武術モード状態の彼女には珍しいことだ。

 

「サトウさん、貴方は参戦しないのですか!?」

「いや、知ってのとおり、俺って最弱職の冒険者ですよ? 俺より強いめぐみや尚美でも歯が立たないのに、俺にどうにか出来ると思うんですか?」

「あなたって人は! あなたって人はーーーっ!!」

 

セナさんが喚いているが、和真さんが言うことはもっともである。ただ、和真さんには期待をしたくなる何かがあるのも確かだ。ベルディアの時も、デストロイヤーの時も、和真さんの機転によって救われたのだから。

 

「カ、カズマー! これってピンチなんですけど! 実は、今までで一番ピンチなんですけどっ!!」

 

その声にそちらを見れば、冒険者達は全てたたき伏せられた所だった。

私は思わず和真さんを見る。いや、私だけではない。めぐみんも、ゆんゆんも、セナさんも、ロゼでさえも和真さんへと視線を向けていた。そして。

 

「しょうがねえなあああああああっ!!」

 

そう言って和真さんは剣を引き抜き、アクア様の許に駆け出していった。

 

 

 

 

 

「フハハハハ! よもやこのような場所で、我が宿敵を滅ぼせる日が来ようとは、さすがの我輩にも見通せなんだわ!

……む? どうした、この場で最も貧弱な冒険者よ。……既に汝の性格を見通した上で予言をしよう。

安定と平穏を求める汝に告ぐ。余計なことは考えず、ここは見て見ぬ振りをするが良かろう。汝の強運は、世にも稀な程運の無い仲間によって、ものの見事に相殺されている。その能力を遺憾なく発揮させるには、パーティーメンバーを変えるが吉。さすれば…」

 

私達を全否定するようなことを述べるバニルに構わず、そのマスクを目がけて和真さんは剣を振るった。しかしそこは見通す悪魔、その攻撃はあっさりと避けられてしまう。

 

「自らの身が最も大切だった男よ。汝がどうこうしたところでどうにもならぬ。今ならバニル人形にお揃いの仮面を付けてやるから、それを持って帰るがいい」

「い、いらねえ。……って、それよりダクネス! お前、何あっさり乗っ取られてんだよ。そんな悪魔に躾けられて、お前はそんなにチョロいお手頃女だったの?」

 

おお、煽る煽る。それはもう、ポップ兄さんのように。

 

「フハハハハ、無駄だ! 既に(誰がチョロいお手頃女だ! 別に躾けられてなどいないぞ! ただ、この悪魔の支配力と、心を抉る手段が絶妙で…)貴様の声など…。ふむ。何たる鋼の精神力。我輩の支配力にここまで堪えられるとは」

 

バニルは褒めるが、半分は性癖に上手く刺さっているだけのような気がする。

 

「いいか! ダクネス、よーく聞け!」

 

おっと、そんな下らない考察をしている場合ではなかった。

 

「今から仮面に貼られた封印を解く。そうしたら一瞬でいい、バニルから支配権を取り戻して、仮面を剥がして投げ捨てろ!」

 

なるほど。確かにダクネスさんから離れたマスクだけの状態ならば、アクア様の悪魔祓いの魔法も効果が高いはずだ。

 

「ふむ。悪くない作戦だが、貧弱な貴様がこの娘の能力を存分に引き出した我輩を相手に、如何にして封印を解くというのだ?(うむ。今の私なら、誰にも負ける気がしない!)」

 

やはり見通す悪魔、和真さんの作戦…も……。

 

「って、ダクネスさん! 貴女は私達の敵ですかっ!?」

 

思わず突っ込んだ私は悪くないと思う。

 

「……めぐみ、()っちゃう?」

「ロゼ! 冗談でもその発言はNGですよっ!!」

「……我輩の見立てでは、半分は本気のようであるな」

「ロゼエエエエ!?」

 

あ、あなたって人はーーー!

 

「……ある程度の殺意が湧いてるのは本当だけど、さすがに同族殺しのタブーは犯さないよ」

「(殺意を向けられて、嬉しいような、悲しいような…)」

「そんなことで喜ばないでっ!!」

「やっぱり…」

「ロゼは黙っててっ!!」

 

……何故私は、こんなにツッコミを連発しているのだろう?

 

「……メグミの口調が変わってきてるので、いい加減話を進めませんか?」

 

憐れんだ眼差しを私に向けて、めぐみんが場を取りなしてくれる。私はいつになったら、クールな魔法使いになれるのだろうか。

 

「そうであったな。小さき娘の上等な悪感情で、すっかり忘れておったわ。それで、どうやって封印を解くつもりだ?」

 

バニルが余計なことを言っているが、さすがにもう突っ込まない。クールだ。クールを心がけろ。

 

「カズマ。あなたの後ろには私がついてるわ!」

 

和真さんの後ろに隠れたアクア様が言う。

 

「もちろん私もついてますよ!」

 

めぐみんもシチュエーション的にノリノリだ。私も参加したいところだが、今回は役割分担的にクールで行くことにする。

 

「フハハハハ! この我輩をねじ伏せて! (この封印の札を)剥がすとでも(言うのなら!)やれるものなら(やってみるがいい!)……って、やかましいわ!」

「お前ら、あれだけ嫌がってた封印を、解かれたいのか解かれたくないのか、一体どっちなんだよ」

 

うむ。私も突っ込みたいが、また変な風に脱線するのはいやなので、ここはぐっと我慢する。

 

「小僧。貴様、何か企んでいるようだな。貴様の後ろの、ピカピカとまぶしいオーラを放つ奴のせいで、今一はっきりとは見通せなんだが、剣を合わせる気はないようだな。何かのスキルを使う気か?(スティールだ!カズマお得意の、スティールを使うに違いない!)」

「お前、敵に手の内を教えてどうする!」

「……本当に、滅んだ方がいいんじゃないかな?」

 

和真さんは突っ込み、ロゼが冷めた眼差しで言う。何だか本当に、ロゼを諌める気がなくなってきたのだが。

 

「ようし、ダクネス。修練場の勝負のように、今回も賭けをしようぜ! もし俺が勝ったら、約束していた『すんごい要求』に更に上乗せさせてもらう! お前が勝ったら好きにしろ!」

「(こ、こんな場面でそんなっ!?)こ、こらっ! 甘言に惑わされるな! 魔力を高め、スティールに耐える用意を…!」

 

中々に上手い手だ。ダクネスさんの性癖を突いて無効化を図るとは。ただし私は変に妄想してしまい、思考が鈍りそうになっているのだが。

 

「いくぞ、バニル! それからダクネス、バニルが動けないように抵抗しとけよ!」

「冒険者のスティール如き、我輩に通じると思ったら大間違いだ!」

 

むぅ。確かにベルディアの時も、弱体化させて初めてスティールが決まっていた。地獄の公爵なんて肩書きの大悪魔相手に、和真さんのスティールが決まるかどうか…あ。封印を解くのに、別にお札を剥がす必要は…。

 

「……あ。ティンダーで燃やすとか?」

 

今まで会話に参加していなかったゆんゆんが、突然ポツリと呟いた。

 

「『ティンダー』ッ! ……って!?」

 

まさにその発言の直後、和真さんが放った火の初級魔法。しかし、ゆんゆんの発言にダクネスさんの気が逸れたのか、はたまたバニルが抵抗に抗ったのか、放たれた火は辛うじて避けられてしまった。

 

「ゆ、ゆんゆん! あなたって人は! あなたって人はあああああっ!」

「ああっ、ごめんなさい!……って、痛い! めぐみん、胸が痛いからぁっ!?」

 

怒っためぐみんが、ゆんゆんの胸を左右から何度も、力一杯に叩いている。私もよく、ロゼにやっていたお仕置きだ。

 

「フ、フハハハハ! よもや仲間の発言から、絶好の機会を逃すとはな! まさに貴様の幸運が打ち消されている証であろう!」

「……本当にパーティー変えよっかな」

 

まずい。このままではとばっちりで、私までパーティーから外されてしまう。

こうなったら、私がフォローするべきか? しかし、お札をどうにかしようにも、私に出来るのは和真さんがやろうとしたことの焼き直しくらいだ。生半可な手段ではバニルに通用しないだろう。先程のロゼのように。

どうする? ティンダーの代わりに五指爆炎弾を使う? しかしそれも上手く躱されそうだ。それなら和真さんの真似をして、クリエイト・アースで目潰し…いや、悪魔相手にそれは通じないか。五指氷結弾で凍り漬けにするのも同様だ。ロゼの矢で動きを抑えようにも、そちらもある程度耐性が出来たようだし…。

……いや、待てよ? そう言えば大魔道士を目指す私が、まだ試していないことが…。ぶっつけ本番だが、上手く利用すればあるいは…。

 

「……む? 小さき娘よ。貴様も何か企んでいるようだな? ならば少しばかり思考を見通して…」

「おっと、させません」

 

私は慌てて、アクア様の近くに駆け寄った。

 

「先程、和真さんの思考が読めなかったのは、アクア様のオーラのおかげですよね?」

「……ちっ。余計なことを口走ってしまったか。しかし貴様、何をしようというのだ?(おそらく五指爆炎弾だ! いや、五指氷結弾で凍り漬けにする気かもしれん! そうなったら、私は、私はああああ!)ええい! アドバイスはいいが、その性癖は鬱陶しくて適わんわっ!」

 

……ついにバニルにまで、性癖とか言われ始めたダクネスさん。本当に、少しは自重してほしい。

 

「まあ、ヒントはあげますよ。やることは和真さんと同じです。もちろんアレンジは加えますが」

「……ほう。つまり、破れるものなら破って見せろ、と言いたい訳か。良かろう。やがては、手に入れたダンジョンで我輩に挑戦する冒険者達と相まみえる身。その挑戦を受けてやろうではないか」

 

私の挑戦を素直に受け入れてくれたことは、非常に有難い。

 

「……では、いきます。『ティンダー』ッ!」

 

魔力を盛大に込め、最大出力で発動させたティンダー。しかし私は、前に突き出した掌に魔力を流したまま炎を留め、次のリアクションをとる。

 

「『ウインド・ブレス』ッ!」

「何!?」

「魔法の同時発動ですかっ!」

 

私の行ったことにバニルは驚き、めぐみんが半ば解説じみたことを言った。

ウインド・ブレスで拡散した炎はバニルへと向かう。バニルも慌てて避けようと移動するが、それよりも範囲を広げた炎が勝り、バニル…ダクネスさんの体を包み込んだ。そして目的のとおり、マスクに貼られたお札は燃え上がり焼失する。

 

「……あ。俺と同じって、ティンダーで燃やすことだけじゃなくって、二つの魔法を組み合わせるって意味もあるのか」

「そういう事です」

 

今回の戦法は、和真さんの目潰しと実質同じもの。ただし術の性質上、二つの魔法の同時発動が必要だった。……そう。マトリフ師匠がやってのけたように。

……いや、今は感慨に耽っている場合ではない!

 

「ダクネスさん!今のうちにマスクを!」

 

私のかけ声に、ダクネスさんは慌ててマスクに手をかける。が。

 

「(……くっ! 外れない…!)」

 

なっ、そんな!?

 

「ど、どうするの?私が魔法を放った方がいい?」

 

アクア様が気を利かせて尋ねるが、ダクネスさんに憑いたままでは先程同様耐えられてしまうだろう。

 

「(構わん、撃て。もしアクアの魔法が効かないというのなら、めぐみん。お前の爆裂魔法を食らわせてやれ)」

 

な…!?

 

「な、何を言うのですか、ダクネス! 私の爆裂魔法はキャベツ狩りの時とは違い、さらなる高みへと至っています! いくらダクネスと言えど…!」

「(そんなの、やってみなければわからんだろう?)待て、早まるな」

 

確かに、ダクネスさんもレベルが上がり、防御力が増しているのは確かだが…。憑いてるバニルが止めに入るのもわかる。

 

「……キャベツ狩り?」

「ロゼ、後で説明しますから、今は黙っててください」

 

今はめちゃくちゃシリアスなシーンなのだから。

 

「(アクア。もし仮面が外れたら、すかさず退魔魔法を放ってくれ!)よし! 今日の所は引き分けでどうだ? (外れないなら、爆裂魔法を…!)」

 

宥めるバニルの言葉には耳も貸さず、ダクネスさんはしっかりとした口調で言った。そうか。ダクネスさんの意思は既に固まっているのだ。

 

「……和真さん」

「……わかってる」

 

どうやら和真さんも、ダクネスさんの覚悟は感じ取っていたみたいだ。

 

「(バニル。僅か一時だったが、共に過ごした時間は悪くはなかったぞ。だから、せめて選べ。私から離れ、浄化されるか…。私と共に爆裂魔法を食らうかを)

……我輩は、神の敵対者の悪魔である。浄化されるなど真っ平だ。

……フハハハハ! 我輩の破滅願望、意外な形で適ったな。汝への憑依、中々に愉しかったぞ」

 

バニルの選択を聞き、ダクネスさんは移動して私達から距離をとる。

 

「(さあ、めぐみん!)」

「い、イヤです!」

 

首を横に振り拒絶するめぐみんに近寄り、私は言った。

 

「ダクネスさんを、信じてあげてください」

「メグミ!? いくら自分が手を…!?」

 

いきり立っためぐみんの言葉が、私の顔を見て途切れる。きっと、相当ひどい表情をしているんだろう。それはそうだ。私は感情を押し殺して、言葉を絞り出してるのだから。

 

「ダクネスさんの気持ちを、汲んであげて、ください…」

 

今の私には、これだけ言うので精一杯だった。

 

「……セナ。もし万が一の事があったら、俺が指示を出したって証言してくれ。今回も、全責任は俺がとる!」

 

和真さんの言葉に、青い顔で頷くセナさん。

 

「めぐみん、やれ! アクセル一硬いクルセイダーを信じろ!」

 

その言葉に背中を押され、目に涙をためながら、めぐみんは呪文を放つ。

 

「『エクスプロージョン』ッッッ!!」

 

そしてバニルはダクネスさんと共に、真っ赤な焔に飲まれるのだった。




なお、いずれ近いうちに、神器の矢+魔皇霊斬でも刺さらなくなるほど、ダクネスは硬くなる模様。
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