この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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ついに、あの呪文への布石が打たれます。


この魔法の実験に光明を!

私達が借金から解放されて、1週間が経ち。二日酔いが酷かったあの日を除いた昨日までは、クエストを休んで再現魔法の開発にいそしんだ。今回はプリーストの魔法に、DQや【スレイヤーズ】以外の作品の術も構築してみた。

というわけで今日はロゼ、ゆんゆん、更にリーンさんと一緒に、いつもの場所で発動実験というわけだ。

 

「さて。それではまずは、プリーストの魔法から。『セイクリッド・エクソシズム』!」

 

バニルの時とは違い、しっかりと組み立て直した魔法の光が、的の岩に炸裂する。うむ、完璧。

 

「ええっと。悪魔相手じゃないから、私達には効果がわからないんだけど」

 

……おう。放った私は手応えを感じてるけど、言われてみたら確かにその通り。

 

「すみませんでした。一応感触的には成功です。さて、次です。『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

 

ふむ。今度の術も、手応えはしっかりと感じている。ゆんゆん達には、相変わらずわからないだろうが。

 

「凄いよ、メグミ。プリーストの魔法が使えるだけでも魔法使いの枠を越えてるのに、更にその上位魔法まで…」

「さ、さすがは、我が目標にして友でもあるメグミだわ」

「そうでしょ? めぐみは凄いんだから!」

 

いや、ロゼよ。何故にお前が胸を張る。あなたが胸を張ると…。

 

びし! ばし!

 

「あイタッ! ちょっとめぐみ、胸を叩かないでよっ」

「これ見よがしに胸を強調する、ロゼが悪いのです!」

 

私のコンプレックスを知ってるはずなのに、この女は性懲りもなく…。

 

「……やっぱりメグミって、めぐみんと似てるとこあるよね?」

 

そりゃあ異世界の同位存在ですから。

 

「……うん。詳しくは言わないけど、あたしはメグミの気持ちはわかるかな?」

 

おお、心の友よ!

 

「……類友」

「フン!」

 

スコーン!

 

「いったあああ」

 

本当に、口の悪いところはゆんゆんと似てますね!

 

「……武術に長けてるのに避けられないなんて。メグミってどれだけ強いの?」

 

何だかゆんゆんが勘違いしているが、ハッキリ言って私よりもロゼの方が強い。……おそらくだが、私の攻撃が避けられないのは、ロゼの精神的なところが原因だと思う。それが、自身は達人じゃないと否定するところに関わっているのだろう。しかも無自覚に。

まあ、これに関しては彼女自身の問題なので指摘はしないが。ロゼも私の無自覚には立ち入らない。お互い気付くようにさり気ない助言をすることはあるが、あくまでその程度だ。馴れ合うばかりが親友というわけではないのだ。

……さて、何だか話が逸れてきたので軌道修正をば。

 

「私とロゼの強さは、今は関係ありません。今日は私の魔法実験なのですから」

「それはそうだけど…、やっぱり気になるっていうか…。ううん、何でもない!」

 

私がロッドを正眼に構えた途端、ゆんゆんは自身の意見を撤回した。うむ、わかればいいのだ。

 

「……横暴」

 

スコーン!

 

「~~~!」

「まったく、懲りない女ですね」

 

まったく同じ力加減で振るったが、流石に二発目はかなりキツかったのか、ロゼは無言のまま頭をおさえてうずくまるのだった。

 

 

 

 

 

ようやく軌道修正した私は、次の呪文を披露する。

 

「さて、次は再現魔法です。この術は受け手が必要なのですが…。そうですね。ゆんゆん、お願いできますか?」

「ええっ、私!? ええと、大丈夫なの?」

「問題ありません。いわゆる状態異常系に補助系が組み合わさったような術ですが、体に害のあるものではないので」

「状態異常ってだけで怖いんだけどっ!」

 

ううむ、ああ言えばこう言う。いや、怖いのは仕方が無いけど。

 

「……まあ、状態異常というのは大袈裟ですが。それにゆんゆんのポテンシャルなら、さほど問題ないはずです」

「私の、ポテンシャル? ……えっと、本当に問題ないのよね?」

「はい」

 

私は力強く頷いた。

 

「……わ、わかったわ! う、受けてやろうじゃないの!」

 

……こういう所はやっぱり紅魔族なんだな、と思う。とは言え言質はとれた。

 

「ではいきますよ。……『魔法力吸収呪文(マホトラ)』!」

「あうっ!? 魔力が…?」

 

よし。成功した。

 

「今のは魔法力吸収呪文。魔力のみですが、《ドレインタッチ》の下位互換といったところですね」

 

そう、下位互換。本職ではない和真さんのドレインタッチにすら、吸収量では及ばないのだから。とは言え、魔力補填のためにはとても役に立つのも事実だ。

 

「それ、凄い。魔法使いの魔力切れ対策になるんじゃ…」

「確かに役立ちますが、魔力残量の管理が必要ですし、能力差が大きい相手には効かない可能性もあります。そもそも完璧な再現ではないので、発動させるにはごく僅かながら魔力を消費してしまいます。つまり、スッカラカンだと発動できないということですね」

 

私の説明に、リーンさんは軽く考え込み。

 

「それでも凄いよ。魔力の残量管理は魔法職なら当たり前のことだし、今のあたしには使いどころの見極めが難しくても、いずれ役立つ魔法だよ」

 

ほう。何に触発されたのかはわからないが、リーンさんも魔法使いとして日々前進しているようだ。……いや、先輩に対して上から目線でしたね。反省。

 

「魔力ゼロだと使えないんじゃ、無理矢理めぐみんに教え込んでも意味ないか…」

 

ゆんゆんが半ば愚痴る様に言う。爆裂魔法使用後の対策か。とはいえ、そもそも無理矢理に教え込もうにも、頑なに覚えようとはしないだろう、めぐみんは。

 

「メグミ。後でその魔法教えて」

「いいですよ。ポイントは3かかりますが、使いこなせればそれだけの価値がある術です。……ゆんゆんはどうしますか?」

「私もいいの…? あ、ううん! 目標であるあなたから施しを受けるわけにはいかないわ!」

 

……先程も思ったが、ゆんゆんもやっぱり紅魔族なんだな、と思う。原因がおそらく、ぼっちを拗らせたことだというのが悲しくもあるが。

 

「……さて。再現魔法はまだありますよ」

「……今日は飛ばすね?」

「そうなんですか?」

 

リーンさんの呟きに、ロゼは聞き返す。

 

「うん。今日はあたし達が途中で割り込むからわかりにくいけど、いつもは魔法が無事に発動すると、余韻に浸ったりしてるから」

 

さすがはリーンさん。ベルディアのせいでクエストが受けられなかったとき、ほぼ毎日魔法の特訓に付き合ってくれただけはある。

 

「実は本格的に試したい魔法は後にとってあるんです。破魔魔法はハリボテ程度のものは一度放ってますし、そういった経緯があるので、完成版とその上位版は元々出来そうな気がしてたのですよ。

そして魔法力吸収呪文は、以前組み上げ成功した魔法をアレンジした…というか逆転させた呪文なので、成功する公算は元々高かった、というわけです」

「なるほどねー」

 

私の説明に納得するリーンさん。実際、次からが本格的な発動実験なのだ。

 

「さて、では改めて次の…」

 

そこまで口にしたとき。

 

ガサリ

 

繁みから聞こえた音。そして現れたのは。

 

「一撃熊!?」

 

リーンさんの悲鳴に近い声。だがしかし。

 

「これは絶好のチャンス! 実験の順番を切り替えます!」

「え、メグミ!?」

 

私の言ってる意味がわからなかったんだろう、ゆんゆんが素っ頓狂な声を上げる。だが、説明してる暇はない!

 

「いきます! ……『崩霊裂(ラ・ティルト)』!」

 

術を放つと、一撃熊の足許から蒼白い光が立ち上がり、一撃熊は「ガァ!?」と短く悲鳴をあげて大地に倒れ伏した。私はすぐさま冒険者カードを確認し。

 

「討伐、完了。……やりました! 【スレイヤーズ】の精霊魔法最強呪文、[崩霊裂(ラ・ティルト)]の再現に成功です!!」

 

DQの術ではないが、【スレイヤーズ】内で黒魔法の竜破斬(ドラグ・スレイブ)と双璧をなす術の再現。対象一体の精神を破壊し絶命させる強力無比な術。

私はリナにはなれないが、ゼルガディスやアメリアと並び立ったということだ。

 

「……なるほど。こういうことね」

「……ロゼ。冷静に、その様に納得されると、さすがに恥ずかしいのですが」

 

顔が火照るのを感じながら、私はそう返すのだった。

 

 

 

 

 

「さて…」

 

気持ちを落ち着けた私は、仕切り直すように言った。

 

「それでは改めて、次の再現魔法へいきましょう。今度は、参考にした物語(作品)も新たなものとなっています。では…」

 

私はロッドを振り上げ、振り下ろすと同時に術を発動させる。

 

「『砲撃(フォイア)!』」

 

魔力そのものを弾として放出したものが、的へと命中する。しかし私はそこで終わらせずに。

 

「『散弾(ショット)』!!」

 

複数に分裂させた魔力の弾を射出。更に。

 

斬撃(シュナイデン)!!!」

 

ラストにロッドを横薙ぎに振り抜き、魔力の斬撃を放つ。ただし出力はすべて、かなり抑えてある。特に散弾と斬撃は範囲技なので、そこを踏まえての念のため、だ。

 

「……ふう。順番が崩霊裂の後になったので、威力の面では見劣りしますが、攻撃はむしろ派手なので、結果オーライです。何より、手応えが感じられましたからね」

 

魔力そのものを撃ち出す魔法。そう解釈できるものを含め、いくつかの作品で存在はするが、やはり最近の作品で私好みなものだと【プリヤ】こと、【Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ】だろう。そもそも【ステナイ】が好きで派生作品も見てたから、魔法少女の魔法ということを除けば何の抵抗もない。

……周防九曜のコスプレした私だが、さすがに魔法少女は勘弁願いたい。いわゆる、譲れない一線である。前にも言ったが、私は中二でオタクではあるが、コスプレイヤーではないのだ。たとえ今の私の衣装がリナ=インバースの衣装に似ていようとも、違うったら違う!

 

「どうしたの、めぐみ? 喜んでたと思ったら、急に悩ましい顔になって」

「……いえ。今の術の事を考えていたら、連鎖的に嫌なことにまで思考が進んでいって、最終的に強引に否定してました」

「……? そう?」

 

他人の思考というか、意思というか、感覚的思考と言えばいいのか、とにかくそういうものを何となく読み取れるロゼも、さすがに複雑に切り替わってくタイプの思考は読み取れなかったようだ。ま、超能力者というわけではない、あくまで直感力なのだから当然か。

 

「……では最後の実験に取りかかる前の、最後の再現魔法に行きましょうか」

 

そう言うと私は短い呪文を唱え、掌に青い光球を出現させる。

 

「え? アレンジ版のファイアーボールに似てる…けど、色が違う?」

 

ほう。一度見せただけなのに、しっかりとそれを覚えていたか。伊達にめぐみんのライバルを自称してる訳ではない、ということですね。

 

「ゆんゆんが言うとおり、火炎球とは対をなす魔法です。いきますよ。『氷結弾(フリーズ・ブリッド)』!」

 

私が放った光球が的に当たった瞬間、的である岩の表面を凍りつかせた。

 

「……えっと、メグミ? カースド・クリスタルプリズンが扱えて、ヒャド系魔法を組み上げたのに、何故今更?」

 

リーンさんの疑問も当然だ。本来なら私も組み上げる気などなかった。ただ、同時に魔法が使えることがわかったので、せっかくだから【スレイヤーズ】的魔法検証をしてみたかったのである。

つまり再現魔法は術の特性も再現されるのか、それとも魔法的事象は現状のまま変わらないのかを。

私がそういったことを簡単に説明すると、理由に関してはみんな理解を示してくれた。

というわけで、最終実験。私は左手に火炎球、右手に氷結弾の光球を出現させる。

 

「『火炎球(ファイアー・ボール)』『氷結弾(フリーズ・ブリッド)』!」

 

呪文名こそ二つに分けているが、同時に、進路先でお互いがぶつかるように放った。そして二つの光球は。

 

バジュッ!

 

途中で何の変化も見せることもなく、ぶつかって蒸発するような音を立てて消滅した。

 

「……やれやれ。どうやら再現魔法でも、あくまでこの世界の法則で成り立っているようですね」

「ねえ、メグミ。物語のとおりだったらどんな事が起こってたの?」

 

リーンさんが興味深そうに聞いてくる。もちろん、実験が終わってから説明をしようと思ってたので問題はない。

 

「物語のとおりなら、お互いの光球が相互干渉を引き起こして引かれ合い、ぶつかった瞬間に『パキーン』といった感じの乾いた音を響かせて消滅します。

もしこの現象が起きたなら、ある攻撃魔法を再現し、崩霊裂と相互干渉を引き起こさせ、複合的な攻撃魔法を再現させようと思ったのですが…」

 

もちろん、ある攻撃魔法とは竜破斬の事である。冥王(ヘルマスター)にダメージを与えたアレを再現してみたかったが、さすがにそういうわけにはいかないようだ。……いや、あの術を再現しようと思ったら、まず爆裂魔法のアレンジをしなければならないんだけど。どんなに魔力の高い人でも、……神や悪魔でも1発が限界の魔法を、どうアレンジしたものかという問題があるのだが。

 

「……ねえ、ゆんゆん。さっきから考え込んでるけど、どうしたの?」

 

え? あ、言われてみれば…。説明に興じて気がつかなかった。ロゼ、ナイスフォロー。

 

「……えっと、我が儘なのはわかってるんだけど。ちょっと気になることがあったから、さっきの実験、もう少し繰り返してくれない…かな?」

「はい?」

 

予想もしていなかった答えに、私は間抜けなひと言を返してしまった。

 

 

 

 

 

それからしばらくして。

 

「……もう一回」

「もう、いーかげんにして欲しいのですが」

 

私は疲れた声で言った。最初の実験を除いても、もうかれこれ20回は超えている。魔力はまだ持つが、特訓というわけでもない、自身にとっては何の意味もないことを繰り返していたら、さすがに精神的に疲れもする。

 

「お願い。あと1回でいいから」

 

……やれやれ、仕方がない。ぼっちで引っ込み思案のゆんゆんが、思い切り自分の意思を表に出して言っているのだ。

 

「わかりました。あと1回だけですよ」

 

私はそう言うと、両掌に光球を生み出す。……お? これは、今日一番で両方の調整がとれた、最高の出来ですね。気持ちが吹っ切れたのが、良い方向に働いたのかも知れない。

 

「ではいきますよ! 今日、最高の出来のっ! 『火炎球(ファイアー・ボール)』! &『氷結弾(フリーズ・ブリッド)』!」

 

私は二つの魔法を放ち、その光球がぶつかり…え?

………………。

私は一瞬、思考を停止させてしまった。よくよく見れば、周りのみんな…私に指示を出したゆんゆんでさえも呆然としていた。

……そういえば最初の実験の時、今回よりも遙かに落ちるとはいえ、嫌々やっていたものに比べれば両魔法のバランスはかなり良かった。

そうか。ゆんゆんはその時、僅かに生じたその現象を何となく感じ取っていたのか。まったく。ゆんゆんは、やっぱり凄い魔法使いですよ。

 

「……あ、今の」

 

ゆんゆんが正気を取り戻し、言葉を発したその時、私は彼女の肩をガッシリと掴んだ。

 

「え? あの、メグミ?」

「ありがとうございます、ゆんゆん! あなたのお陰で、ある再現魔法の可能性が見出(みいだ)せました!」

「え? え?」

 

ゆんゆんは訳がわからないようだが、そんなことは関係ない。私にとってはとても重要な事なのだから。

 

「あなたには感謝してもしきれません! ゆんゆん、本当にありがとうございます!」




めぐみが見出した術は、当然アレです。
アレに関しては、「一応その説明で納得できなくはないけど、あくまでトンデモ物理理論」に依っているので、めぐみとしても諦めていた呪文です。ただ、この物語のこのすば世界では、その理論が成り立っていたというわけですね。
一応いつか本編でも説明するつもりですが、書き忘れるかも知れないので補足説明しました。
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