「『エクスプロージョン』!!」
このかけ声と共に、遠く離れた古城は爆焔に飲み込まれる。うむ。いつ見ても、めぐみんの爆裂魔法の威力は素晴らしい。
これで、魔力を使い果たして倒れてさえいなければ。とはいえこれは、見事としか言い様がない。和真さんがああだこうだ言いながらも、爆裂散歩に付き合ってるのも納得がいく。
そんな和真さんは、今日はいない。何でも、どうしても外せない用があるとかで、私にお鉢が回ってきたのだ。
いや、それならゆんゆんがいるだろうという話だが、彼女は私の薄情な親友と共に、一週間ほど前から紅魔の里へと出かけている。
アクア様は土木工事の親方に頼まれて、一昨日から毎日応援に、ダクネスさんは父親に呼ばれ、昨日から実家に帰っている。
私も出来れば、魔法の特訓という名目で辞退したかったのだが、リーンさんは運悪く捕まらなかったし、クリスさんはどうやら和真さんの用事の相手だったようだ。
「メグミ! 私の爆裂魔法はどうでしたか!?」
……やれやれ。本当に爆裂魔法一直線ですね、めぐみんは。とはいえ私も魔法使いの端くれ。ちゃんと感想を述べねば。
「そうですね。バニルに放った時もそうでしたが、収束と開放、そして威力が以前より格段に上がっています。これをスキルポイントを一切振り込まずに、呪文詠唱のアレンジとその才覚によって成し遂げているのだから、天晴れとしか言いようがありませんよ」
「なっ、メ、メグミ!?」
私の評価を聞き、慌てだすめぐみん。全く、何を今更。
「貴女がポイントを振らずに貯めていることは、私にはもう既にバレていると、分かっていることではないですか」
そう。再現魔法のために、既存の魔法をアレンジしたり新たに組み立てていた私には、毎回爆裂魔法の詠唱が違う理由が分かっていた。そして初めて見た爆裂魔法の威力とアレンジ後の威力の対比から、ポイントを使った形跡が無いことに気づき、めぐみんに問い詰め発覚したのだ。
ただ、その理由が理由なので、他のパーティーメンバーにはバラしていない。これは、未来のめぐみんが決めることですから。
「し、しかし、誰かに聞かれでもしたら…」
「心配性ですね。わざわざこんな場所に来る人なんて、そうそういませんよ。もしも和真さんの用事がこの近くなら、めぐみんを一緒に連れていって、用事が終わってからここに来るという選択をしていたでしょうし」
「そ、それもそうですね」
私の説明でようやく安堵する。
「……ところでメグミ、そろそろ魔力を回復して欲しいのですが」
「やれやれ、仕方がありませんね。では、『
私とめぐみんだけの秘密、DQ8に登場した魔力を分け与える呪文、その再現魔法をかけてあげる。
何故秘密なのかと言えば、これを和真さんが知ればめぐみんの魔力回復役を私に丸投げするのでは、と彼女が恐れたからである。そんなに彼にオンブされたいのだろうか。
私とめぐみんがアクセルに向かって歩いていると、脇の繁みからガサリと音がして。
「ぎぎゃあ!?」
「「ゴブリン!?」」
思わず私とめぐみんが声を上げた。まずい! とにかく魔法を! そう思った次の瞬間。
「でやあぁっ!」
同じく繁みから現れた男が、剣を振り下ろしてゴブリンを叩き斬った。……って。
「クズ!?」
「うぉい! 誰がクズだっ!? ……って、中二姉妹じゃねえか」
「「姉妹じゃありませんっ!」」
めぐみんと綺麗に被った。これでは姉妹と呼ばれても仕方ありませんね。と、それはともかく。
「
そう言って私は、ロッドをスゥッと構える。
「おい、ちょっと待て! 俺に何の恨みが…」
「あなたは、周りの女性陣に恨みを買いまくっているでしょう? まあ、それはともかく。クリスさんとの会話を盗み聞き、[カエルスレイヤー]を広めたのはあなたですよね?」
私が尋ねると、クズの顔色がみるみる悪くなっていく。
「ま、待て! それならクリスだって同罪だろ!?」
「クリスさんには先日、ギルドで会ったときにデコピンしておきました」
「クリスに甘くねーか!?」
「クリスさんは、広める気はありませんでしたからね。罪の重さが全く違います」
クリスさんはむしろ、気を遣って言ってくれたのだ。なので減刑は当然である。
「さあ、罪を認め、私とO・HA・NA・SHIしましょう?」
「お話って、肉体言語だろっ!!」
「おや、ご存知でしたか」
私は一度も、肉体言語とか言ったことはないのだが。
「言わせてもらいますが、メグミの普段の行動から、その独特な言い回しの『お話』の意味は察せられますよ?」
……言われてみたら、確かにめぐみんの言うとおりだろう。
「……言葉の意味は、この際どうでもいいのです。私が言いたいのは、あなたにはお仕置きが必要だ、ということです!」
そう言って私は、このクズの眼前にロッドの先を突きつける。
「我が剣…もとい、我がロッドのサビとなるがいい!」
「ま、待て! 取引だ! お前にいいことを教えてやる!」
「……いいでしょう。減刑の割合は、聞いた上で判断させてもらいますが」
そう応えると、私は一歩だけ後ろに下がる。ただし、ロッドを下ろしたりはしない。
「実はカ…」
「『
と。突然繁みの中から声が聞こえ、一条の光の槍がクズにヒットした。……って烈閃槍!? それにこの声は…。
「大丈夫、二人とも? このクズに何かされてない?」
「リーンさん!」
そう。そこから現れたのはリーンさん。いや、それだけではない。その後からテイラーさんとキースさんも現れた。それもそうか。どう考えてもこれは、クエストの最中なのだから。
「まったく。取りこぼしたゴブリンをひとりで追いかけていったかと思えば、メグミ達に絡むとは」
テイラーさんが呆れて言う。
「ち、違…。俺が…」
「違いますよ。今回はメグミがダストに絡んでたのです」
な!? めぐみん、余計なことを!
「え? そうなの?」
「ええ、まあ。私の嬉しくない二つ名、[カエルスレイヤー]を広めたのが
「なんだ。ダストの自業自得じゃないか」
テイラーさんが呆れた眼差しを向ける。隣のキースさんも、やれやれといった表情だ。
「それじゃあ、後で簀巻きにでもして送り届けようか?」
「いえ、結構です。今イチスッキリとはしませんが、リーンさんがお仕置きを代行してくれたようなものなので。これ以上はやり過ぎになりますから」
リーンさんの申し出を辞退する私。感情任せでは、御剣を引っ叩いたときと同じになってしまう。こんな男でも仲間想いな一面もあるので、さすがに問答無用とはいかないのだ。
「そう? よかったわね、ダスト」
「よか、ねえよ…」
烈閃槍のダメージを受けた
「しかし、ダストは何を言おうとしていたのでしょうか」
テイラーさん達と別れ、私達が先にアクセルへと向かっていると、突然めぐみんがその様なことを言った。いやまあ、確かにそれは気になってはいたが。
「さあ。ですが、相手の善意ならまだしも、お仕置きを受けた彼から情報を聞き出しては、さすがに等価交換とはいかなくなりますからね」
CLAMP作品や型月作品でよく出る表現だが、確かにこの手の過不足はまずいと思う。まあ、普段はそこまで厳密ではなくていいと思うが、さすがに魔法使い的には多少は考えるべき事柄ではある。魔法の行使とは、魔力の消費とそれに見合う術の発動という、まさに等価交換の上で成り立っているのだから。
……詠唱のアレンジで、コスパがよくなったり同じ魔力消費量で威力上昇する事もあるが、この場合は元の詠唱自体にロスがあると見るべきだろう。めぐみんの爆裂魔法が良い例である。
「等価交換を持ち出されると、さすがに言及は出来ませんね」
その喩えのとおりめぐみんも、等価交換の重要性は理解しているらしい。やはり紅魔族は、魔法のエキスパートなのだ。
そんな話をしているうちに、アクセルの門の前までやって来た。……おや? アクア様の姿が見えませんね?
私は見かけた親方に声をかける。
「あの、すみません。アクア様の姿が見えないのですが」
「ん? ああ、お嬢ちゃん達か。お捜しの嬢ちゃんはここにはいねえよ。頼んでた作業があらかた終わったから、もう帰ってもらったんだ。いやあ、あの嬢ちゃんの壁塗り技術は本当にありがたいぜ」
「そういえばパーティーを組む前、よく壁塗りをしている姿を見ましたね」
ああ。それなら、私も一度見たことがある。その頃はまさか、本当にアクア様だとは思わなかったけど。
「ああ、そうだ。どうせなら、家へ帰る前にギルドへ寄って来な。おそらくギルドの酒場で飲んでると思うし、さっき見かけたカズマも、盗賊の嬢ちゃんとギルドに寄るとか言ってたからな」
「おお、それは貴重な情報ありがとうございます」
う。めぐみんに先を越された。私も後からお礼を言うと、作業の邪魔にならないように土木現場から離れていった。
「では、親方さんの進言どおり、ギルドへ向かいますか」
そう言って私は歩き出し…?
「どうしたのですか、めぐみん。急に浮かない顔をして」
「……何か、忘れてるような気がして。……いえ、きっと私の思い過ごしでしょう。気にしないでください」
……? よくわからないが、めぐみんが気にしなくていいと言うのだから、それこそ気にしてもしょうがない。
私達は改めて歩き出し、やがてギルドの前までやって来た。その扉に手を触れ、勢いよく開けると…?
『メグミ! めぐみん! お誕生日おめでとう!!』
ギルドの中から一斉に、そんな声がかけられた。って、誕生日? ……あ。今日って12月4日でしたか!?
「なるほど。私が忘れていたこととは、我らが誕生日のことでしたか」
確かに先程、めぐみんが言っていたことだ。しかし、異世界転生の関係でこちらの日付を忘れがちな私はまだしも、めぐみんに気づかせないというのはかなり大変なはず。
「本当に、二人に気づかれないように、時間をかけて少しづつカレンダーとかを隠した甲斐があったわ」
そう言ったのは、紅魔の里にいるはずのゆんゆん。もちろん隣にはロゼがいる。
……もしかして。
「みんなが用事だと言っていたのは…」
「ああ。アクア以外は、このための準備をしてたってワケだ」
やっぱり。……ん?
「アクア様以外?」
「アクアに話すとボロを出しかねないからな。親方に事情を説明して、臨時で雇ってもらうように手を回したんだ」
親方もグルだったのか! あ、だからここに立ち寄るように言っていたのか!
「本当に失礼しちゃうわ! 教えてもらったのだって、今日現場に行ってからだもの。お陰で二人へのプレゼント、用意できなかったじゃないの!」
「だったら、お前の宴会芸でも見せてやれよ。『請われてやるもんじゃない』とか言ってたけど、二人へのお祝いとして見せる分には文句ないだろ?」
「……ま、まあ、しょうがないわね」
アクア様は渋々の様なセリフを言っているが、その実満更でもないように頷いた。
「あと、私とゆんゆんは、二人へのプレゼントの調達に行ってたの。でも、紅魔の里までってのは本当だよ?」
「……待ってください。ということは、魔道具師による矢筒の作製というのはブラフですか?」
私の疑問に、しかしロゼは首を横に振る。
「それは本当。でも、時間がかかるのは分かってるから、さすがに進捗状況の確認はしてないよ。ただ、制作依頼のついでに、二人へのプレゼントの製作もお願いしたの。お金はアクアさん以外が出し合ってね」
アクア様から徴収しなかったのは、先程の和真さんの説明のとおり、アクア様がボロを出す可能性があったからだろう。
「私はここの飾りの下準備を自宅で済ませていたんだ。……ただ、私は不器用だから、クリスが手伝ってくれたが」
ダクネスさんが最後の方で恥ずかしそうに言うと、その後を引き継ぐかのようにクリスさんが話し出した。
「で、あたしとカズマくんは、ギルドや冒険者仲間に箝口令を出して、それ以外は普段どおりに行動して怪しまれないようにしてたのさ。因みに今日はカズマくんと、ダクネスの家から飾りを持ってきて飾り付けをしてたんだ」
なるほど。しかも時間差で仮の用事を入れて、私やめぐみんが怪しまないようにしていたみたいだし、なかなかにやってくれる。
「ねえ、ちょっと。お祝いのパーティーなんでしょ? いつまでも下らないこと話してないで、さっさとプレゼントでも渡してお食事しましょ?」
「そうだね。アクアさんの言うとおり、パーティーを楽しまないと。少ししたら他の冒険者仲間も来るのに、ただ雑談してましたじゃ逆に気を遣わせちゃうよ」
なんだか、それこそクリスさんに気を遣わせてしまってるような。しかし他の冒険者仲間…。おそらく私や和真さんと親交のあるテイラーさん達や、ダクネスさんの知り合いのセドルさん達だろう。……そういえばテイラーさん達って。
「あの、和真さん。テイラーさん達がクエストに出てる理由って、私がめぐみんの爆裂散歩に付き合って確実にギルドから離れるようにですか?」
「ん? ああ。確かにそうだけど、提案したのはリーンからだな」
なんと。いやしかし、リーンさんとの付き合いも既に数ヶ月に及んでいるし、私の性格もある程度知れているので、これくらいの策を巡らせてもおかしくはないか。
そんな考察をしていると、コツン、と頭に何かがぶつかる感触がして。
「こら、めぐみ。クリスさんに言われたばかりでしょ。だから、はいこれ」
そう言ったロゼの手には、ラッピングされた長方形の箱。
「めぐみんにも、はい」
ゆんゆんの手にも、同じサイズの箱に、別のラッピングがされた物。そうか。私達へのプレゼント。多分ラッピングは、ロゼとゆんゆんがそれぞれ行ったものだろう。私が渡されたものは明らかにロゼのセンスだから、間違いないはずだ。
「さあ、早く開けて開けて」
ロゼが責っ付く中、包装を丁寧に開き、箱を開けると中に…は……。
「ほう。これは魔法石をあしらった、魔道具のネックレスですか」
そう。確かに私にも、魔法石の魔力が感じられる。
「うん。めぐみんには魔法威力上昇、メグミには魔法制御強化が付与されてるの」
確かに、爆裂魔法の威力にこだわるめぐみんには魔法威力上昇が、制御が難しい新呪文を開発中の私には魔法制御強化がぴったりではある。しかしそれよりも…。あ!
私は慌てて和真さんへと視線を移す。
「和真さん、このデザインは…」
「ああ。[アバンのしるし]と同じデザインを描いて渡してもらったんだ。シンプルだけど、めぐみとめぐみんのどちらの衣装にも邪魔にならないし、いいんじゃないかと思って」
おおお! ナイスです、和真さん!
「アバンというと、以前メグミが…あ!」
「そうです、めぐみん! アバン先生は…!」
ごす!
「誕生日だろうと、暴走は許さないからね?」
「……いえ。助かりました」
以前、和真さんに注意されたのに。ロゼがいなければ、確実に暴走していた。
「……あのー。私、いい加減、このご馳走が食べたいんだけど。あと、お酒も飲みたい」
「「すみませんでした」」
私とめぐみんは、思わず土下座をして謝った。……あれ? 私達の誕生会なのに、何故?
その後、ある程度食事を済ませると、早速アクア様が宴会芸を始めた。改めてみると、本当にすごい技術だ。単純な宴会芸スキルだけではないのだろう。
その際中にセドルさん達がやって来て、少し遅れてテイラーさん達がやって来た。
「やっほー。メグミにめぐみん、お誕生日おめでとー」
「ありがとうございます、リーンさん。あと、あのクズについても」
「ははー、やっぱりサプライズの後だと、ダストが言おうとしたことに気づいちゃうか」
「「当然です」」
私とめぐみんの声が綺麗に被る。あのクズは、このサプライズをバラそうとしたのだ。バカですか? あの男は。
「……そういえば、ダストの姿が見えませんが」
「ああ、それならおそらく宿だと思いますよ? あの術を食らうと、一般人なら2、3日、精神力の強い者でも1日くらい寝込みますから」
……だが、ダクネスさんはすぐに回復しそうに思えるのは何故だろう?
「正解。ま、ダストがいるとせっかくのお祝いが台無しになるかも知れないし、あいつにもいい薬になると思うし、一石二鳥ってトコね」
言い得て妙ではあるが、この程度の薬で良くなるほど、彼の病気は軽くもないと思う。
「あ、リーンさん」
そう声をかけたのはロゼ。隣にはゆんゆん。二人はそれぞれ、私達のために飲み物と、離れた位置にある食べ物を取り分けに行っていたのだ。今日は主賓なんだから座っててとか言われて。
ロゼが飲み物を、ゆんゆんが食べ物を目の前に置く。
「……なんですか。この飲み物は?」
めぐみんが、目の前の飲み物を見て訊ねる。が、気持ちはわからなくもない。何しろ毒々しい色をしているのだから。
「これは[尚美ブレンド]ですよ。美味しいと思った飲み物を、ロゼが目分量でブレンドしたものです。大概は見た目がアレですが、何故か非常に美味しいのです」
たまに化学反応で凝固したりと失敗例もあるが、そんなのは本当にたまにであるし、ちゃんと味見をしてから出しているので、私達が被害を被る心配はない。
「!! 本当に美味しいです」
「今日はいつも以上に、腕によりをかけたからね」
「見た目だけなら罰ゲームですがね」
ロゼの腕前を知っている私は、他の人が言ったら悪口になるような軽口を叩く。
「……めぐみん、よく躊躇いもなく飲めたわねー?」
リーンさんがそんなことを言うが、一瞬だけ躊躇っていたのを私は見逃さない。もっとも、その一瞬だけですぐに口にしたのは、確かにすごいとは思う。
「……ところてんスライムを勧められるのに比べれば、どうって事無いですよ」
ところてんスライム? 何だそれは。ゆんゆんが激しく頷いてるし、あまり食指が動かない…というか、食欲が減退するような見た目なのだろうか。
「ちょっと貴女達。もう十四歳、結婚できる歳になったのよ? つまり大人の仲間入りしたんだから、お酒くらい飲まないと!」
「おおお!」
あろうことか、こちらへやって来たアクア様はそんなことを言って、クリムゾンビアの入ったジョッキを私達の目の前に置いた。めぐみんは歓喜しているが、先日の醜態を自覚していないのだろうか?
「って、こいつらにはまだ早いっ!!」
「ああっ!」
和真さんが咄嗟に、私達の前のジョッキを取り上げた。
「そうだ。前にも言ったが、若いうちからお酒を飲むとパーになると言うぞ」
ダクネスさんも、和真さんに追随する形で援護をする。
「だからそんなの…」
「若いうちからのアルコールの摂取は、脳の発達に障害を及ぼす可能性があります」
言い返そうとするアクア様に、私は冷静な口調で言う。思わず無言になるアクア様。
そして私はめぐみんへと視線を移し。
「それから若いうちのアルコールの摂取は、二次成長を妨げる可能性があります」
その言葉に、めぐみんはビクリとする。
「何がとは言いませんが、まだ可能性が残されている今のうちは、お酒は我慢しましょう?」
「……わかりました」
私自身にも言い含めたその言葉に、めぐみんは神妙に頷いた。
「……あたしも、お酒は控えよっかな」
同病の中では比較的
「おう、お前ら。何シケた話してんだ。酒なんか関係ねえ。せっかくのお祝い事なら、精一杯楽しんどかなきゃ損ってもんだ」
「ああ」
「その通りだ」
同じく話を聞いていたのだろう、セドルさんの発言に、ヘインズさん、ガリルさんの二人が同調する。
「まったく。あなた方は、タダ酒にありつければそれだけで満足しているのでしょう?」
口さがないめぐみんの言葉。しかしその表情は、呆れながらも笑みが浮かんでいる。やれやれ。彼女のツンデレは、ゆんゆんだけではないのですね。
「相変わらず素直じゃないんだから」
ゆんゆんも呆れながらぼやいている。
だが、確かにセドルさんの言うとおりだ。どうも私やめぐみんは、変に考え過ぎるきらいがある。だが、今日くらいは肩の力を抜くべきだろう。
「ありがとうございます。今日は素直に楽しむことにします」
そう言うと、私はロゼが持ってきたグラスを取り。
「今日は、私とめぐみんのためにありがとうございます。そんな皆さんにも祝福がありますように。
乾杯!」
『乾杯!!』
私の音頭に、みんなが声を合わせて復唱するのだった。
というわけで、お約束の誕生日イベントでした。
なお、ダストはこのサプライズをバラそうとしたワケなのですが、もしバラしていたら、減刑どころかより重くなっていたという。本当にリーンのお陰であの程度で済みました。……和真と同じく、地頭はいいはずなのに。