この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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第0章最終話です。


エピローグ

めぐみんが悪魔 ── ホーストという名前だったらしい ── を倒した翌日。さすがにマズいと思い、いい加減ジャイアントトードの討伐依頼を受けて正門へと向かっていると、見知った二人の少女が連れ立って、正門の方へ歩いて行く姿が見えた。

 

「めぐみんにゆんゆん」

「……またメグミですか」

 

またとは失敬な。まあ、昨日、今日と似たシチュエーションだから、気持ちもわからないではないけど。……ん? ゆんゆん?

 

「……うん。せっかくだから、メグミさんも一緒に来てくれる?」

「え? はい、いいですが…」

 

少し深刻そうなゆんゆん。一体何だろうか?

 

 

 

 

 

ゆんゆんに連れられて平原へとやって来た私達。辺りには、カエル退治をする冒険者達の姿もある。

 

「ここでいいかな」

 

そう言ってゆんゆんは立ち止まると、私達へと振り返り。

 

「我が好敵手にして、紅魔族一の通り名を持つ者、めぐみん!

そして、我が新たなる目標にして、魔法の探求者、タカハシメグミ!」

 

え、私が新たな目標? いつの間にそんな事に?

 

「我が名はゆんゆん! アークウィザードにして中級魔法を操りし者、やがては紅魔族の長となる者!

……これから私は旅に出るわ。そう、ライバルであるめぐみんを倒すため。そして()()()、あなたを越えるため。 上級魔法を身に付けるための旅にね!」

「先日は私のことを、ライバルではなく、『あなたは、私の一番大事な友達』」

「わああああ聞こえない聞こえない!」

「勝手に私を目標に据えられても困るのですが」

「だから今言ったんじゃない!」

 

ふむ、難しい年頃ですね。

 

「ひょっとして、私に小っ恥ずかしいことを言ってしまったから、ほとぼりが冷めるまで旅に出るのですか?」

「いくら何でも、そこまで頭悪くないわよ! ……それは、その、ちょ、ちょっと…だけ…だから」

 

ちょっとはあるんだ。まあ、ゆんゆんらしいが。そしてめぐみんは、もう少しゆんゆんに優しくしてあげてもいいと思う。

 

「と、ともかく! 私が上級魔法を覚えたら、その時こそ決着を着けるわよ! ……悔しいけど、結局めぐみんがあの悪魔を倒しちゃったし。今の私じゃ、あなたに勝てないことは認めてあげる。

そしてメグミ。はっきり言って、あなたの才能が羨ましい。だけど、だからこそ、いつかあなたを追い抜いてみせる!

……このまま一緒にいても、二人を追い抜くことは難しそうだしね」

「難しそうも何も、今のところの戦績は、私がほぼ全勝じゃないですか」

 

……()()? という事は、1回2回負けてるってことだろうか。

 

「う、うるさいわね! それでどうなのよ、二人とも!」

「いいですよ。その時こそは、一切の小細工無しで決着を着けましょう」

 

笑顔で応えるめぐみん。もしかして彼女は、ツンデレなのか?

そして二人の視線は私へ。

 

「……やれやれです」

 

何処ぞのラノベの本名が出ていない、主人公にして語り手の口癖が出てしまった。

 

「まあ、いいでしょう。その代わりひとつ、条件があります」

「条件?」

 

ゆんゆんが緊張の面持ちでこちらを見る。

 

「私の友となってください。こちらへ来て知り合いは出来ましたが、友人と呼べる者は、まだいませんから」

 

クリスさんやリーンさんには良くして貰ってるが、友人とは明らかに違う。どちらかといえば、頼りになる先輩といったところか。セシリーさんは、近所の困ったお姉さん枠である。

 

「え…、あの、私なんかが友達でいいの…?」

「なにを言っているのですか。私からの提案なのに、良いも悪いもないでしょう?」

 

この自己評価の低さは、幼い頃の我が親友を彷彿とさせますね。

 

「えっと、あの、不束者ですがよろしくお願いします!」

 

……すみません。少し重いです。

 

 

 

 

 

「……さて、せっかく平原に出たのですから、クエストに取りかかるとしますか」

 

ゆんゆんと別れた私は、軽いトラウマの克服を兼ねたクエストを開始しようとしたのだが、めぐみんが私の傍を離れない。

 

「どうしたのです。私と一緒にクエストをしたいのですか?」

「あ、いえ。二つほど、確認したいことがあるのですが」

 

めぐみんが真っ直ぐこちらを見て訊ねてくる。

 

「……なんでしょうか?」

「まず一つ目。あなたがホーストの足止めを行ったとき、魔力が不足していると言ってましたね?」

「……ええ」

「あれは、私に華を持たせるための、嘘だったのではないですか?」

 

……やれやれ。私は心の内で、先ほどと同じセリフを言う。

 

「……勘のいい子は嫌いだよ」

「では、やはりそうなのですね」

 

せっかくのネタだが、異世界故に伝わらず、ちょっとばかり寂しい。

 

「めぐみんも、ライバルの前でカッコつけたいだろうと思いまして」

「まったく。いらぬお世話…と言いたいところですが、まあ、感謝はしてます。ありがとうございました」

 

やっぱりめぐみんは素直じゃない。そこがかわいいところでもあるが。

 

「いえ、私もお節介でしたことですから。……それで、もう一つは?」

「あ、はい。その、ゆんゆんと別れる間際に、何やらポーションを受け取っていたようですが…」

「ああ、これですか」

 

一度ホルダーに引っかけたポーションを取り出し、めぐみんに手渡す。

何でも、対ホースト戦の奥の手で準備していた、パラライズの威力上昇と範囲を広げる効果があるポーションらしいのだが、私がカースド・クリスタルプリズンで足止めをしたために、使わず終いになってしまったそうだ。

それで、友達で功労者である私に譲られたのだが。

 

「……あの、非常に言いにくいのですが、これはおそらく欠陥商品です」

「……え? どういう…、何か知っているのですか?」

 

私が尋ねると、めぐみんは言いにくそうにしながらも答えてくれた。

 

「これはおそらく、我が父、ひょいざぶろーが作ったものです。父が作る魔道具は、その、効力は凄いものの、なにかしらの欠陥を付与してしまうのです」

 

……なるほど。DQで言うところの、[もろはのつるぎ]みたいなものか。

 

「わかりました。では、そのポーションの処理は、めぐみんにお任せします」

「はい。……その、ご迷惑をおかけして、すみませんでした」

 

私は貰っただけで、何も迷惑などしていない。むしろその言葉は、ゆんゆんにこそかけてやるべきだと思うのだが、ツンデレめぐみんが素直に言うとは思えない。

 

「……なにか、言いたいことがあるなら、聞こうじゃないか」

 

……めぐみんはどうやら、勘もいいらしい。

 

 

 

 

 

ゆんゆんと別れてから数日が経ち。

連日のカエル退治で、私のトラウマも解消された。そしておそらくだが、飲み込まれたショックとその解消が切っ掛けとなってか、少なくとも、ジャイアントトードに対しては、後ろめたさを含めたイヤな気分は、一切しなくなった。

他のモンスターに対してはどうだかわからないが、少なくとも、気持ちの切り替え方のコツは掴んだと思う。

ようやく私も、少しは冒険者らしくなったということだろう。

そんな私も、そろそろ誰かとパーティーを組んだ方がいいのだろうか。いつまでもカエル退治をしている訳にもいかないし、何よりカエルでは、レベルが中々上がってくれない。

……私のレベルアップには、一体どれだけの経験値が必要だというのだろうか?

半ば思い悩みながらギルドの前まで来ると、入り口の扉が開き、見知った顔が現れた。

 

「おっと。お、嬢ちゃんは確か、メグミ、だったか?」

「そう言うあなたは、確かレックスさん、でしたか。それに、ソフィさんとテリーさん、でしたね」

 

そう。ゆんゆんと共にホーストと戦っていた、冒険者のパーティーだった。それにしても。

 

「どうしたのですか。クエストにしては大荷物に見えますが」

 

彼らが携えた荷物は、クエストの準備というよりも…。

 

「ああ。実は激戦区の王都に拠点を移そうと思ってな。さっきめぐみんも誘ったんだが、断られちまった。この街が気に入ったんだと」

 

やはり旅仕度でしたか。

それにしても、めぐみんの強みと欠点を知りつつ誘ってくれるこの人達なら、彼女の事を活かしてくれると思うのだが。……まあ、めぐみんがこの街が気に入ったという気持ちも、わからなくはない。

 

「それでだが、お前も俺達のパーティーに入らないか? ……言っとくが、アイツに断られたから誘ってるってわけじゃないぞ。元々お前も誘う気だったんだ。……どうだ?」

 

それは…、確かに魅力的なお誘いである。激戦区という事は、ここよりも強いモンスターが沢山いることだろう。確か魔王軍ともぶつかり合ってると、聞いた気がする。

……だけど。

 

「ありがたいお誘いですが、辞退させていただきます。お世話になった人に、まだ恩返しも出来てませんし、何よりここは、居心地がいいですから」

 

私が答えると、レックスさんは苦笑いを浮かべ、言った。

 

「やれやれ、またフラれちまったか。だが、まあ、そんな気はしてたけどな」

「……そうなのですか?」

「ああ。お前は無鉄砲なアイツと違って、かなり慎重みたいだからな。何か理由でも無い限り、実力が伴わない場所には行かないと思ってたよ」

 

それは、確かに。レベル上げはしたいが、だからといって必要以上に危険な場所へなど、行きたいとは思っていない。この仕事、命あっての物種である。

 

「その癖、かなりのお人好しだ。思わず、誰かを庇っておっ()ぬなんて事、ないようにしろよ?」

 

う、耳が痛い。私がこの世界に転生したのも、人命救助が原因だ。さすがに軽口では返せない。

 

「……わかりました。肝に銘じておきます」

「おう、そうしてくれ。

それじゃあ、俺達はそろそろ行くから」

「はい。レックスさん達も気をつけて」

 

旅立つ彼らに、私は手を振り見送るのだった。

 

 

 

 

 

ギルドの中へ入ると、私は辺りを見渡す。レックスさんの話からすると、おそらくギルド内に、めぐみんが居るはずだ。お腹を空かせているだろう彼女に、たまにはご飯を奢ってあげようと思っていたのだけど…。

……いた! 彼女は掲示板の前から、テーブル席の方に向かって歩いて行く。私は、めぐみんが向かう先のテーブルへと視線を移し…、え?

そのテーブルに座っていたのは、一組の男女。

男性は私より、二つ三つ年上で茶髪。上下の衣装は、同じデザインの、緑色のジャージ。そう。あの土木現場で見かけた男子だ。そしておそらくは、私と同じ、異世界転生者。その根拠はジャージだけではない。

男子の向かいに座る女性。私は彼女を知っていた。

水色の長い髪に、水色の瞳。均整のとれた顔立ちに、同じく均整のとれた、抜群のプロポーション。彼女は…。

そんな二人が座る、席の前までやって来ためぐみんは、気怠そう…な演技をしながら、二人に声をかけた。

 

「上級職の冒険者募集を見て来たのですが、ここで良いのでしょうか?」

 

予想外だったのだろう二人が、ぽかんとめぐみんを見ている。そんな中、めぐみんはマントを翻し、口上をあげる。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者…!」

「……冷やかしか?」

「違わい!」

 

……やれやれ。どうやらこれが、こちらでの口癖になりそうな予感がする。

呆れながらも私は、めぐみんの下へ足を踏み出したのだった。




一応、めぐみとめぐみんは、育った環境が正反対(一般的な環境か、中二病一族の中か)な為に、本質は同じながら性格には差異が出ている、という設定です。

次回からいよいよ本編ですが、章タイトルをどうしようか悩んでます。原作タイトルで行くか、オリジナルにするか…。

第1章の章タイトルは?

  • 原作と同じで!
  • 新規タイトルで!
  • 作者のお好きに!
  • それよりも続きを早く!
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