今回はカズマ視点のモノローグです。
プロローグ
前略。
お父さん、お母さん、お元気ですか? あなた達の息子、和真です。
トラックに轢かれそうだった少女を助けて死んだ俺は、死後の世界で美しい女神アクアと出会いました。
彼女は勇敢な俺に、ぜひ異世界へ行って魔王を倒して欲しいと懇願しました。そんな申し出を快く引き受けた俺に、感銘した女神様もついて来てくれたのです。
しかしやって来た世界は、モンスターが犇めき合うファンタジー世界。さすがに俺達だけで戦うわけにもいかず、パーティーメンバーを募集する事にしました。今は、どんなメンバーが来てくれるのか、心待ちにしている所です。
それではまた、お便りします。
「……えーっと、カズマ。何だか不快な思考を感じるのだけど?」
「なっ、アクア、何言ってやがる!? 俺はただ、どんなメンバーが仲間になるか、考えてただけ…」
「ほんとうに? 私の曇り無き
「そ、そんな事は…。ああ、そうだよ! 都合のいい妄想して、現実逃避してましたよ、チクショウ!!」
トラックに轢かれそうだったのは勘違いで、実際はトラクターでした! しかも庇わなくてもトラクターは止まり、むしろ俺が突き飛ばしたせいで怪我させちゃいました! スミマセン!
俺の死因も、トラックに轢かれたと思い込んで、心臓麻痺起こしただけです!
異世界転生したのだって、この駄女神に唆されただけだし、コイツが俺の死因を馬鹿にしたり、あまりにも舐めた態度だったから、腹癒せに特典としてコイツ指名しました!
モンスター犇めくも何も、初心者向けのジャイアントトードすら一匹倒すのに四苦八苦で、限界感じてパーティー募集出しました! さあ、笑いたきゃ笑うがいい!!
「うん。素直になったみたいね」
心の中で盛大に暴露していた俺を見て、途中でディスられてたことにも気づかず、にこやかな笑顔になるアクア。そんな様子を見て、俺は若干心苦しく、もならない。
まあ、俺にも責任はあるが、事態をややこしくしている九割九分はコイツのせいだ。それは自信を持って断言できる。
……俺、なんでコイツを特典に選んじまったんだろ?
「………………来ないわね」
アクアが寂しそうに言う。だがそれも、仕方のないことだ。何しろ俺達が、上級職のアークプリーストと、最弱職の冒険者というデコボココンビだという事に加え、上級職のみの募集という、かなり尖った内容だからだ。
他にも突っ込みたい所は多々あるが、きりが無いので黙っておく。
「なあ、ハードル下げようぜ。目的は魔王討伐だから、仕方がないっちゃ仕方がないんだが…」
「うう。だってだって…」
まあ、上級職で固めておきたいのはわかる。今言ったとおり、最終目標は魔王討伐だからな。
だが、最初から上級職になれる奴もいるが、普通はレベルを上げて、条件が揃って、ようやく上級職になるもんだ。ゲーマーの俺が言うんだから間違いない。
つまり、冒険者としてはある程度腕を上げてるわけで。もう既に他のパーティーに入っているか、ある程度のランクにあるパーティーに入るのが普通で、殆どメリットのない初心者パーティーに入るなんて酔狂な奴、そうそういる訳がないのだ。
「大体、お前は上級職かも知れんが、俺は最弱職なんだ。周りがいきなりエリートばかりじゃ俺の肩身が狭くなる。もう少し募集のハードルを下げて…」
「上級職の冒険者募集を見て来たのですが、ここで良いのでしょうか?」
そんな俺達にかけられた声。見れば、肩に届くかどうかという長さの黒髪に、真っ赤な瞳。左目には眼帯をし、黒いマントにローブを纏い、とんがり帽子を被り杖を携えた、見るからに魔法使いとわかるロリッ子がいた。
少女はバサリとマントを翻し。
「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者…!」
……………………。
「冷やかしか?」
「違わい!」
いや、どう見ても冷やかしだろ? 大体、めぐみんって何だ、めぐみんって。愛称か何かか?
そんな事を思っていると。
ずびしっ! と音が聞こえそうなくらい鋭い面を背後から受け、めぐみんと名乗った少女が頭を抱えてうずくまる。
「全く、めぐみん。その名乗り上げは、世間一般的ではありませんよ?」
そこには、世界的に有名な眼鏡の魔法使いの少年が持つ様な杖を、突き出すように構えたロリッ子がいた。というかこの子、髪の長さと瞳の色以外、めぐみんにそっくりなんだが?
「うう…、後ろからは卑怯ですよ」
「帽子を被ってますし、軽量のワンドですから、大したダメージは無いはずです」
いや、かなり鋭い打ち込みだったし、結構ダメージが伝わったんじゃないか? ……と、そんな感想は置いといて。
「えっと、君は? あ、俺は冒険者の佐藤和真。こっちはアークプリーストのアクアだ」
「ああ、申し遅れました。私はアークウィザードの高橋めぐみ。あらゆる魔法の探求者で、やがて大魔道士を名乗るため、日夜研鑚を積んでいます」
めぐみんとは違い、落ち着いた口調で自己紹介をする少女。改めてその衣装を見ると、赤い半袖の服に黒いマントを羽織り、長手袋にブーツという出で立ち。何か何処かで見たことあるような? それにこの少女の名前、タカハシメグミって、まさか?
そんな疑問を吹き飛ばすかのように、めぐみんがめぐみに詰め寄り問い詰める。
「な、メグミ!? 何故先日のような、素晴らしい名乗りを上げないのですか!?」
「……あれは、あなたの名乗りに触発されただけです。親しくなった相手の前でなら、その限りではありませんが…」
めぐみんと違ってマトモだと思ったが、どうやらこの子も同じ穴の狢らしい。とはいえ、普段は自重してるようなので、その分マシなのかも知れないが。
「ええと、帽子を被った貴方。その赤い瞳、もしかして紅魔族なの?」
アクアが尋ねると、めぐみんは恭しく頷き。
「いかにも! 我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん!我が必殺の魔法は山をも崩し、岩をも砕く!
……というわけで、優秀な魔法使いはいりませんか? そして図々しいお願いなのですが、出来れば面接の前に何か食べさせては頂けませんか?」
どうやら、腹ぺこキャラだったらしい。
「飯を奢るくらい構わんが。その眼帯は何だ? 怪我してるんなら、コイツに直して貰ったらどうだ?」
「ふっ。これは我が強大な魔力を抑えるための、マジックアイテム! もしこれが外されることがあれば、この世に大いなる災厄がもたらされるであ」
ずぴし!
再び、めぐみのワンドが振り下ろされる。
「だから、知らない人が聞いたら信じてしまうでしょう!? そういうのは、もっと親しい相手にやってください!」
成る程。どうやら今のは嘘だったらしい。
「ええと、サトウカズマさん。うちのめぐみんがご迷惑をおかけしました。どうもすみません」
「私はいつから、メグミのうちの子になったんですか! それに紅魔族にとって、あれは日常会話程度のものですよ!」
イヤな日常会話だな、それ。
「ここには、めぐみん以外の紅魔族はいません。それをわかった上での発言ですか?」
「むうう、ああ言えばこう言う…」
「それはこちらのセリフですよ」
郷に入りては郷に従え。めぐみの方が正論な分、やや有利か。とはいえ、このままじゃ話が進まない。取り敢えず、思った疑問を投げかけてみるか。
「あー、ええと、すまない。紅魔族って何だ?」
「ああ。紅魔族とは高い魔力と知力を持った、魔法のエキスパート集団です。赤い瞳と特殊な…、中二病な性格、そして変わった名前が特徴ですね」
めぐみがわかりやすく説明してくれた。てか、今、中二病って言ったよな? それじゃあやっぱり、めぐみって。
「ちょっと、そこの貴女! せっかく私が説明しようと思ったのに、セリフ取らないでよ!」
「ああっ、すみません、アクア様!」
今、アクア様って言った! これはもう確定だろ!?
「変わった名前とは失礼ですね。むしろ、こちらの人達が変わってるのです!」
「ちょ、めぐみんも落ち着けって! ……ちなみに、ご両親のお名前は?」
なんとなく気になり、俺は尋ねた。
「母はゆいゆい、父はひょいざぶろー」
…………。
「……我が両親の名に文句があるなら、聞こうじゃないか」
「ま、まあ、とにかく。飯でも食いながら話をしよう!」
俺は思いっきり話を逸らすのだった。
俺とアクアは、めぐみんの食いっぷりに、思わず見とれてしまう。それはまるで、竜殺しの呪文を得意とする、女大魔道士の様だ。そういや中の人って、[めぐみ]だったな。……まあ、偶然だろうけど。
……ん? 竜殺しの女大魔道士?
「あっ! めぐみのその衣装、天才美少女魔道士の!?」
「ああ、気がつきましたか。似たデザインの服があったので、選んでみました」
やっぱりそうか。まあ、ショルダーガードはしてないし、デザインも全く同じってわけじゃないが、雰囲気は出てる。
「……本当は、ポップ兄さんの衣装に似たのがあったので、そちらにしたかったのですが、私には似合わなかったので、泣く泣く断念しました」
「……ポップ兄さん?」
「あっ!」
思わず言ってしまったのだろう。しまったという表情を浮かべるめぐみ。
しかし、ポップか。あの有名なDQスピンオフ漫画の、もうひとりの主人公的なキャラだよな。そいつが兄さんで、大魔道士を名乗るため頑張ってるって事は、マトリフが師匠ってとこか。
こりゃ確かに、親しい相手…というか、オタク、おそらく中二病だろう彼女を理解してなきゃ、確実に引かれるわ。めぐみが慎重になるのも納得だ。
俺がそんな事を考えていたら、アクアがいきなりテーブルを叩き立ち上がった。
「ああっ! 思い出した! 貴女、カズマのひとつ前にこっちへ送った子じゃない! 名前は確か、……ワタハシヤスミ?」
「高橋めぐみです! 自己紹介、聞いてなかったんですか!?」
「おま、SOS団の仮団員かよ!?」
ホント、なんてピンポイントな間違いをしてんだ。そもそも、俺のひとつ前の相手くらい、覚えてろっての。
「……あの、楽しそうに会話してるところすみませんが、私の面接ではないのですか?」
「「「あ」」」
食事を頬張りつつも、所在なさげに尋ねるめぐみんが、少し寂しそうに見えた。
ええと、……すみませんでした!
追記。取り敢えず、めぐみんの採用の合否は、戦闘を見て決めることにしました。
めぐみの衣装は、本編で彼女自身が言ってるとおり、めぐみん顔でポップの衣装が似合いそうになかったので、代替案でリナ(スレイヤーズ)の衣装にしました。後、(このすばのイメージ的な)魔法使いに見えないのも、要因の一つです。
……中々【ダイ大】要素が入れられない。