魔法少女リリカルなのは Conviction   作:のんべんだらり

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第13話

街は鮮やかな装飾が施され、恋人たちや家族連れで埋め尽くされている。

天気予報を信じれば、今年はホワイトクリスマスになるらしい。

そんな他愛のない話に花を咲かせながら、なのはたちはユンフを待っていた。

 

「ごめん!遅くなっちゃって」

「美少女四人を待たせるなんて、いい度胸じゃない」

 

ご立腹なアリサにユンフは頭をかき、謝罪を述べる。

身体チェックが長引きそうだとクロノが言っていたが…。

 

【ユンフくん、検査は?】

【問題なし。見つからないように抜け出してきた】

【それってまずいんじゃ…?】

【いいのいいの。どうせ異常なんてないんだから】

 

不安を感じるが、なのはは気にしないことにした。

 

「それじゃあ、全員揃ったところで」

「行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

瞬間、部屋の空気が凍った。

 

「……」

「……」

 

はやての病室に来ていたヴォルケンリッターとなのは、フェイトはお互いに驚愕で固まっている。

 

「な、なんや、今日はえらい冷えるなぁ」

「そう?病院って冷暖房完備じゃなかったっけ?」

 

若干、一名は普段どおりに明るかったが。

そんな彼の態度が、なのはたちやシグナムたちに混乱を招いていた。

雰囲気を察したのか、アリサやすずかも戸惑ったように視線を見合わせる。

この中でにこにこしているユンフをはやては尊敬したくなった。

 

「なのはもフェイトも座りなよ。せっかく食いしん坊ヴィータが譲ってくれたんだから」

「てめぇ!」

「あかんよ、ヴィータ」

「……ふんっ」

 

はやてが諌めると、大人しくなるヴィータ。

すると、脳内にシグナムの声が響いた。

 

【ちょっと来い】

 

ハッとしたように顔を上げるなのはとフェイト。

 

「すみませんが、少し…」

「あーー!!」

 

シグナムを遮るように、ユンフが叫んだ。

 

「急に大声出さんといてぇな、ユンフくん……」

「ねぇ、はやて!ここって飲食禁止?」

 

耳を抑えるはやてに、ユンフは詰め寄る。

 

「ちょっとくらいやったら平気やと思うけど…」

「せっかくのパーティになんか足りないと思ったら!食べ物がないじゃないか!!」

「そういえば…」

 

アリサとすずか、はやては一理あると頷いた。

ポカンとしたシグナムたちを放って、ユンフは話を進めていく。

 

「というわけで、買出し班!なのは、フェイト!」

「「は、はい!」」

「それと、荷物が持ちきれないので、大人組のシグナム、シャマル!」

「は、はいぃ!」

「う、うむ」

 

指名されたものは、思わず背筋を伸ばす。

 

「五人でちょっと、買い占めに行ってくるね!リクエストがあったら今の内」

「せやったら、イチゴのクリスマスケーキ。いっちゃんでかいヤツな」

「いえっさー!」

「……肉」

「七面鳥やん」

 

はやての元気な返答を聞き、ユンフは四人を連れて出て行った。

 

「楽しみやなぁ」

 

心から笑っているはやての顔を見上げ、ヴィータは胸が寂しくなった。

 

 

 

 

 

 

「不自然な退出ははやてに気づかれるよ、シグナム」

「……感謝する」

 

初対面で、しかも険呑な雰囲気を漂わせている相手を連れ出すほど、不自然なことはない。

機転を利かせたユンフの判断は正しい。余計な心配をはやてにさせたくないという気遣いは、シグナムとしても同じだ。

 

「でもまぁ…結果、戦うってことに変わりはないんだろうけどね」

「ユンフくん!」

「そのための念波だもん。今更説得なんて聞く耳もってもらえないよ、なのは」

 

はやてが闇の書の主だと知って、ユーノの報告を聞いて。

 

「だけど!闇の書が完成したら…っ!」

 

説明しようとしたなのはは、不意打ちの攻撃を凌ぐ。

ヴィータの付加能力で屋上は炎に包まれた。

 

「悪魔め……」

「悪魔で……いいよ。悪魔らしいやり方で、話を聞いてもらうから!」

 

ヴィータと対面するなのは。

 

「我ら守護騎士……主の笑顔のためなら、騎士の誇りさえ捨てると決めた。…もう、止まれんのだ!」

「止めます。私とバルディッシュが!」

 

フェイトもシグナムとデバイスを突きつけあう。

 

「僕が魔力ない状態って知ってるよね、シャマル」

「…ええ。それでも、あなたが私たちの邪魔をするというのなら、容赦はしません」

「…わかった、アグーバ」

〈デバイスモデル〉

 

シャマルとユンフが腕を上げる。

闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

一対一のガチンコ勝負が始まってしばらく、各々仲間と離れてしまっていた。

意地と意地のぶつかり合い、想いと想いの相違が、激しい火花を散らす。

もし、こんな出会いでなければ、どれほどの友人になっていたことかと期待を寄せてしまうほど、熱い戦いだった。

だがそれも、なのはに複数のバインドがまたもかけられたことによって中断させられる。

 

「っ」

「なのはっ!」

 

姿を消していた仮面の騎士に、フェイトが一太刀見舞う。

しかし、新たに現れた仮面の騎士に彼女もまたバインドに捕らえられてしまった。

闇の書を取り出す、仮面の騎士にユンフの直感が警告を鳴らす。一回しか奪えないと言う特性を持つ、闇の書。

なのは、フェイト、ユンフは既に蒐集されているため、狙いは別にある。

その意味に気づいたユンフはシャマルたちに向かって忠告を飛ばす。

 

「逃げるんだ!!彼らの狙いは…っ!」

 

バインドがユンフの言葉を塞ぐ。

動揺を隠せないヴォルケンリッターはユンフたち同様、行動を制限され――。

そのまま闇の書に吸収され、用のなくなった服だけが空を舞っていた。

 

「何なんだてめぇら!」

「プログラム風情が知る必要はない」

「ヴィータちゃんっ!」

 

意識を飛ばしたヴィータを抱え、仮面の騎士はなのはとフェイトに化ける。

本当の彼女達は4重のバインドで拘束され、クリスタルケージに閉じ込められている。

ちらりと視線を投げられたユンフは病院の上空で、見ているしかできなかった。

チリチリと頭の裏が焼けるように危機感は膨れ上がっている。

そしてそれは――現実となった。

 

「あれ、なんでウチこんなところに……?」

「っ!?」

 

病室にいるはずのはやてが、そこにいた。

事態を呑み込めずにいる彼女の目の前で、偽者のなのはとフェイトはヴィータを破壊する。

 

「いやぁああああああああっ!!」

〈封印、解放〉

 

はやての絶叫とともに覚醒する闇の書。

閃光の後、彼女のいた場所に立っていたのは銀髪の女性だった。

それを見て変身を解き、仮面の騎士に戻る偽者たち。涙を流し、闇の書が空間攻撃を射出する。

 

「ユンフ!」

「レイジングハート、お願い!」

 

バインドから抜け出したフェイトが手足を拘束されているユンフを担ぎ、なのはがシールドを張って前に出る。

凌いだものの、三人は風圧で押されてしまう。

 

「…っ、フェイト!なのは!あそこ!!」

「アリサちゃん、すずかちゃん!?」

「なんで二人がここに!?」

 

肩を抱き合って不安そうに空を見上げている少女二人が結界内に入りこんでいた。

戦う力のない彼女たちにとって、ここは極めて危険地帯。

 

「僕のことはいいからアリサたちをっ!」

「…わかった!」

 

迷っていたフェイトだったが、魔力の集束を見てなのはと飛び立っていく。

いくら彼女達が速くとも、数十キロは離れている距離では残念だが間に合わないだろう。

なのはたちに狙いを定めている、銀髪の女性の注意を逸らさなければいけない。

 

「まったく、損な役回り」

 

さぁ、もう一分張りだ。

 

 

 

 

すずかとアリサを安全なところへ転移していったのを見送り、なのははキッと目に力を入れた。

二人は駆けつけてくれたユーノとアルフに守ってもらうように頼んだから大丈夫だろう。

あとは全力全開で戦うのみ。

宙に浮かんでいる闇の書の意思の周りを、錯乱させるように翠の光が飛び回っている。

だが、弾き飛ばされる度にその輝きは鈍くなっていた。

また黒ずんだ紫に吹き飛ばされる。

 

「ユンフくん!」

 

窓ガラスを突き破るユンフの姿になのはは向かいそうになった身体を向き直らせる。

今は闇の書を止めなくては、ユンフの頑張りを無駄にすることになる。

拳を握りしめて、砂煙の上がるビルを見つめているフェイトも必死に抑えているのだから。

 

「闇の書さん!」

「お前も…その名で、私を呼ぶのだな」

 

ビルから突き出てきた、蔦がなのはとフェイトを縛り上げる。

 

「私は主の願いを叶えるだけだ。悪い夢であってほしいと願った主の願いを」

「それではやてちゃんは喜ぶの!?道具でいてあなたはそれでいいの!?」

「我は魔道書。ただの道具だ」

 

赤い眼から、溢れ出す雫。

 

「だけど言葉を使えるでしょ!?心があるでしょ!本当に心がないなら、泣いたりなんかしないよ!!」

「この涙は主の涙。私は道具だ。悲しみなどない」

「バリアジャケット、パージ」

 

モデルチェンジをしたフェイトの魔力が、拘束を焼ききる。

 

「悲しみなどない…そんな言葉をそんな悲しい顔で言ったって誰が信じるもんか」

「あなたにも心があるんだよ。あなたのマスターは、はやてちゃんは…きっとそれに応えてくれる優しい子だよ」

「だからはやてを解放して。武装を解いて、お願い」

 

闇の書の意思が答えるように、地面から炎が噴出す。

 

「早いな。もう崩壊が始まったか。直、私も意識がなくなる」

 

冷静に彼女は言う。

 

「そうなれば、すぐに暴走が始まる。意識があるうちに主の望みを叶えたい」

 

手を掲げ一言。

 

「闇に沈め」

「このだだっ子!言うことを…聞けぇ!」

 

フェイトが飛び込む。

だが、開いた闇の書から発生した、魔力光がフェイトに絡みつく。

 

「お前らも我がうちで眠るといい」

「っ、あ…?」

「フェイトちゃん!」

 

金色が弾ける。

そしてその矛先はなのはにも忍び寄る。――が

 

「っ!?」

 

危険に気づいたときには、強い力で突き飛ばされていた。

 

「なのは……あとは、頼んだよ」

「ユンフ、くん…っ」

 

翠の光に包まれ、笑いかけるユンフがなのはの目に焼きついた。

 

「全ては安らかな眠りのうち」

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