魔法少女リリカルなのは Conviction   作:のんべんだらり

15 / 23
第15話

リインフォースによって集められたなのは、フェイト、ユンフ、それにヴォルケンリッター。

魔法陣を展開する、ユンフたちの中央でリインフォースは穏やかな顔をしていた。

 

「これで、本当にいいの?」

「ああ。主の侵食を止めることができ、主と話すことができた…本望だ」

「…そっか。満足、しちゃったんだ」

 

蒼い魔法陣が、ゆっくりと雪の表面を照らしだす。

続いて金色、桃色と続き、三色は彼女の位置で混ざり合っていく。

 

「どうして…どうして、はやてちゃんにお別れをしないで行っちゃうの?捜せば、他に方法はあるかもしれないのに」

「いずれ、お前にもわかる。海より深く愛し、その幸福をなによりも願う相手ができたときに」

 

その清清しいほどの、決意になのはは二の句を告げられない。

いよいよ、と目を閉じたとき、彼女の主は現れた。

 

「そんなんちゃう!そんなんちゃうやろ!リインフォース!!」

 

四苦八苦しながら、車椅子を必死に動かすはやて。雪にバランスを奪われ、身体が投げ出される。

 

「暴走はウチが抑える!だから破壊なんてせんといて!!」

「だだっ子はご友人に嫌われます……聞き分けを、我が主」

 

はやての頬に撫で、笑うリインフォース。

一つだけ、願いをはやてに託して彼女は空へ昇る。

お礼と別れを伝えて。

 

「ありがとう…そして、さようなら」

「リインフォース!!」

 

泣き続けるはやてにシグナムたちが駆け寄る。

同じ家族を失った痛みが、彼女たち八神家を支配していた。

それを眺めていたフェイトは、ふと薄暗い空をいつまでも見上げているユンフに気づいた。

瞳を閉じている顔に雪が当たっては、地面に落ちていく。

一枚の絵を切り取ったかのように、そこだけが時が止まっているかのように見えた。

 

「…また」

 

ぽつりと白い息が吐き出される。

両手をだらりと垂らしている後姿は、闇の書の中で見た幼いユンフのようで。

 

「……また、守れなかった」

 

意味しているものは重く、フェイトの胸に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月25日、クリスマス。

例年よりも冷えの厳しい聖なる日は、イブに続いて天からの贈り物が降り注いでいた。

コートを着込んだユンフは、公園のベンチに寒さをものともせず腰掛けていた。

 

あれから、クロノたちにユーティのことを知らせた。

詳しいことはわからないの一点張りである程度の納得をしてもらったが、しばらくネチネチ言われそうだ。

一度くらいは検査を受けてあげようと思う。

 

 

なのはは管理局に就職を考え、家族にその気持ちをぶつけたらしい。

晴れて認めてもらえて、家族ぐるみで応援をしてくれると泣いて喜んでいたのを覚えている。

すずかやアリサに事情を説明した際にひと悶着はあったようだが、落ち着いたようだ。

 

 

はやても足の容態が良くなると言うことで、しばらくは入院生活でリハビリが続くそうだ。

無断外出で、シグナムとシャマルが担当医にお叱りを受けたのはまた別の話。

 

「まだここにいたの。アリサたち、待ってるよ?」

「…フェイト」

 

フェイトは、正式に養子としてハラオウン家に迎えられた。

これからはフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと長い名前になる。

呼ぼうとして早速、舌を噛んでしまったのは苦い記憶だ。

 

「…うん。すぐ行く」

 

仕切りなおしということで今日は月村家でのクリスマス会が開かれることになっていた。

それにユンフも誘われているのだが、ぼんやりとしている間に約束の時間が過ぎてしまったようだ。

事前に遅刻すると連絡をしていたフェイトは息を弾ませて、ユンフの傍に近づいた。

一向に動く気配のないその腕をおもむろに取る。

 

「そう言ってユンフが来たこと、ないよね」

「むむっ、フェイト、だんだんクロノに似てきたね」

 

これも、兄妹パワーか。

フェイトの手を冷やさないように、繋いだ手をそっと離す。

彼女の眉が若干下がったようだが、気のせいだろう。

俯いたフェイトに気づかれないようにユンフはしゃがみ込む。

 

「ねぇ、ユンフ――きゃっ」

「え、なに?」

 

投球後のフォームのままユンフはフェイトに問い返す。

不意打ちだったのか、軽く握った雪だまを頭に被ったフェイトは固まったままだった。

だが、静かに雪を振り落とし、膝を曲げ、せっせと雪をかき集め――

 

「ぶっ!?」

 

メジャーリーガー顔負けの速球を、ユンフに投げつけた。

記録は見事、DEADボール。

 

「は、反則反対!」

「先に始めたのはユンフだよ」

「むっ、その言葉後悔させてあげるよ。覚悟!」

 

手当たり次第雪を丸めて放り投げるが、フェイトは軽々とさける。

躍起になって投げつけても掠りもしないどころか、反撃をくらう始末。

 

「ぶっ!フェイト、今、魔法使ったでしょ!?大人げないよ!」

「私、まだ子どもだもん」

 

雪をぶつけ合いながら、公園を走り回るユンフとフェイト。

そんな二人の笑い声が聖夜にしばらく響いていた。

そして、揃ってびしょ濡れで大遅刻をし、アリサに怒られるのはもう少し後の話である。

 

 

 

 

 

 

 

そして――

カウントダウンは気付かれることなく、進む。

 

【――やっと…見つけた】

 

日常が、壊れる。




A's編終了。
次話からオリジナルになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。