魔法少女リリカルなのは Conviction 作:のんべんだらり
フェイトと別れ、二時間ほど後。
ユーティを受け取り、自室に戻ったユンフの目は赤いものの、表情は吹っ切れたように晴れていた。
「……いいのね?」
「うん」
「…そう」
残していくことを嫌うのは、待つ気持ちを知っている彼だからだろうか。
私物の少ない部屋を一巡りしたユンフは笑って、ユーティを見る。
猶予だった時間も、もう終わる。
「…ありがとう、フェイト」
そう言ったユンフは、笑顔で消えた。
バルデッシュを受け取り、ユンフと話をしていた場所を通り過ぎようとしたフェイトの足に小さな石があたった。
手にとってみるとそれは、宝石の欠片のようだ。
「あれ、これって…」
透きとおる翠は見覚えがある。
三日月の片割れだ。
「さっきユンフが落としたのかな」
ふと、先ほどのことを思い出し、また頬が染まる。
自分の気持ちに気づいてからは、どうしても意識してしまい、フェイトはこの行動を繰り返していた。。
出会い頭にマリーには何があったのかと訊かれ、すれ違ったエイミィとリンディはフェイトの顔を見るなり、ご機嫌だった。
(もしかして私…わかりやすいのかな)
明日の学校ではやてとアリサに何を言われるやら。
なのはやすずかはともかく、あの二人にはからかわれるに違いない。
あたふたする自分が目に見えて、フェイトは肩を落とした。
そんなことを考えている間に、アースラ艦内のユンフの部屋の前まで来てしまった。
(うぅ…緊張する…)
深呼吸を繰り返し、ノックをする。返事はない。
振り絞った勇気が肩透かしをくらったようで、少し落ち着きを取り戻す。
「…いないのかな」
出直そうとフェイトが腕を下ろしたそのとき、扉が開いた。
「え…」
三秒思考停止。
二。
一。
「ええっ!?」
思ってもない事態に、フェイトの頭はパニック状態。
「ご、ごめん。ユンフ!勝手に開けるつもりは……」
慌てて謝罪するフェイトだったが、室内に誰もいないことを知り、一人芝居の羞恥に陥る。
だが、微かな違和感に首を傾げる。
鍵を開けたままで外出するのは、いくらユンフとはいえ無用心すぎるのではないか。
それに、片付けが大の苦手なユンフの部屋が、綺麗になっているのはなぜだろう。
ふと、机の上に一枚ある白い紙に目をとめる。
ぼんやりとした思考のままフェイトは手を伸ばした。
「……うそ、だよね」
書類が震える。
足が、瞳が、揺れる。
「こんなの、冗談だよね…?だって、さっき話したばかりで――」
手の中から、翠石がこぼれ落ちた。
……
■診断書 患者:ユンフ・アルフィード
急激な魔力変化、それに伴い封印されていた次元転移能力の制御不能の疑いあり。
発動条件不明のため、早急に精密検査を要する。
……
フェイトの願いも空しく、どこを探してもユンフの姿はなかった――。
これで魔法少女リリカルなのは Convictionは終了です。
読了ありがとうございました。