魔法少女リリカルなのは Conviction 作:のんべんだらり
【な、な、なっ……!】
海鳴市の海上。
二人の魔法少女が対決しようとしている傍らで、一人の少年が手を振っていた。
【なんでユンフがそこにいるんだぁーーー!?】
「えぇ!?ユンフさん!?」
予想外の再会はクロノだけではなく、叫び声を聞いたなのはもそちらへと振り返る。
くせっ毛を潮風に靡かせながら、フェイトといるのは街で出会ったユンフその人で。
「クロノもなのはも元気だねー。それじゃ僕はそろそろ退散するよ、頑張ってねフェイト」
「……うん」
ほのぼのとしている当人は、邪魔にならないようにと陸地へと降り立った。
同じくなのはを見守る側のフェレット――ユーノは、新しい魔導師の出現に警戒を強める。
だが、それをアルフが制した。
「やぁ、アルフ!三日ぶり」
「アンタ、あたしがいない間にフェイトになにもしてないだろうね」
「なにもしてないよ。正体明かしたくらい」
「……そうかぃ」
フェイトと一緒に出てきたときにもしやと思ったが、アルフが人間の言葉を喋っても驚かないことで確信した。
置いてきぼりのユーノは一人押し黙ってしまったアルフと初対面のユンフの間で視線を行ったり来たりさせる。
「あの、それであなたは一体?」
「ユンフ・アルフィード。たぶん、管理局の魔導師」
「もしかしてクロノが話してた、気まぐれ幼馴染みって……」
「…間違いなく、コイツのことだろうね」
アルフとユーノの会話が掴めず、ユンフは首を傾げる。
上空では、なのはとフェイトの全力全開勝負は繰り広げられているというのに、ここには緊張感は全くなかった。
【おい】
それぞれのパートナーに意識を向けたユーノとアルフの傍らで、ぼんやりと戦闘を眺めていたユンフの頭に声が響いた。
【なに、クロノ。まだ怒ってるの?】
【そうじゃない。…この戦闘の後のことだ。気付いているんだろう?】
【…見張られてる感じは、それとなく】
視線はそのままに、不自然にならないようにアグーバを手に取る。
なのはとフェイトの大きすぎる魔力に隠れるようにして、鋭い刃のような。
【おそらく決着が着いた瞬間に手を出してくるはずだ】
【それで僕に何をしろと?】
【エイミィが出元を解析するから、キミには魔力をできるだけ明確に維持させてほしい】
つまりは、時間稼ぎだ。
現場にいる魔導師でなければ難しく、ユンフは適任といえる。
幸いとアルフもユーノも夢中で、ユンフの言動に構っている余裕はないようだ。
【…三十秒が限度だね】
【充分だ】
【ユンフくん、よろしくね】
手の中のデバイスを握りしめ、ユンフはふっと魔法が行き交う空に頷いた。
モニターしているだろうクロノとエイミィにはバッチリ見えたはずだ。
「というわけで。アグーバ、準備は?」
〈いつでも〉
「それじゃ、いこうか」
気配と共にユンフはかき消えた。
◆◆◆
「くっ!」
全力全開のスターライトブレイカーを防ごうとするフェイトに焦りが浮かぶ。
(あの子だって防いだんだ。ここで私が逃げちゃ、ダメ)
自身を奮い立たせるが、桃色の魔力の塊は膨大な威力でフェイトに襲い掛かる。
穿つように通り過ぎたあとに残ったのは、バリアジャケットを失ったフェイトだった。
そのまま、重力に引かれ海へと落ちていく。
「フェイトちゃん!」
一直線に海へと潜り、なのはがフェイトの腕を取って空へと翔る。
「私の勝ち、だね」
「……うん」
勝負は勝負だ。
フェイトはバルディッシュから集めた10個のジュエルシードを出した。
微笑みあって、その手に託そうとしたそのとき――
「――っ、きゃああああああ!!」
紫の雷がフェイトに突き刺さった。
暗雲の中を、ジュエルシードが引き寄せられるように消えていく。
「フェイトちゃん!!」
「フェイト!!」
吹き飛ばされたなのはより早く、見守っていたアルフより早く、その身体を支えた人物がいた。
「……ユンフ、さん…」
「ん、気を失ってるだけだよ」
冷えた身体にコートをかけて、なのはとユンフが着陸すると、アルフが駆け寄ってきた。
人型となったアルフにフェイトを任せ、ユンフは地平線を見据える。
後味の悪さに閉口していたなのはの肩にユーノが飛び乗り、その横顔を覗きこんだ。
【……ひとまず、全員アースラに来てくれ】
たった一言、クロノから伝えられた言葉に従うしかなかった。