魔法少女リリカルなのは Conviction   作:のんべんだらり

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第6話

裁判当日。

クロノによって万全の状態が整えられた上での判決は、無論勝利の結果で終わった。

しかし、アースラに戻った勝訴側の弁護人の口はへの字に曲がっていた。

 

「気にすることないって。無事に終わったんだから良しとしようじゃないか」

「そういう問題じゃない」

 

腕を組んでそっぽを向くクロノを追いかけるユンフ。

そこへ出迎えていたエイミィがやってくる。

 

「おめでとう!フェイトちゃん、アルフさん。…ってあらら?クロノくん、ご機嫌ナナメだね」

 

事情を知るフェイトとアルフ、ユーノは苦笑い。

それだけで察したのか、エイミィは一つ頷いた。

 

「ユンフが公判中に居眠りしていて。それで……」

「クロノくんが拗ねちゃった、と」

 

何度かユンフが小突かれているような仕草を見たのは間違いではなかったようだ。

密かにモニタリングしていたとは言えないエイミィは、知らん顔でフェイトの説明に頷き返した。

 

「最近ずっと修練に付き合ってくれていたから」

「それじゃ、そろそろエイミィさんの出番だね」

 

そう言うと、エイミィはそそそっと二人の後ろに回りこむ。こそこそと囁いたかと思えば、ユンフとクロノが握手を交わしていた。

エイミィが高々と掲げたVサインが、とても恐ろしい。

 

「フェイト。後のことは僕らに任せて、海鳴市へ向かうといい」

「え?」

「うんうん。早くなのはを安心させてあげないと」

 

フェイトは戻ってきたクロノとユンフの顔を見比べる。

エイミィが言ったのかと思ったが、そういうわけではないらしい。

 

「…ありがとう、二人とも」

 

ふんわりとフェイトは微笑む。

二人の間で何があったのか好奇心が湧き上がるが、触らぬ神に祟り無し。その場の誰も、尋ねる勇気はない。

 

「それとユンフ。キミにも海鳴市へ向かってほしい」

「了解!フェイトのボディガードだね」

「まぁ、そんなところだ。できるかぎり一緒に行動するようにしてくれ」

「…え?ええ!?」

 

まるで先ほどの仲違いが嘘のように意気投合しているクロノとユンフに慌てたのはフェイトだ。

その頬がほんのり赤く染まっていく。

 

(おんや~、これはこれは…)

 

敏感に感じ取ったエイミィの顔がニヤつく。

急に口元を緩めた隣の彼女に少し引きつつ、クロノは話を進める。

 

「出発は明日正午。転移ポートに集まってくれ」

「わかった」

 

ユーノは食堂に行き、フェイトはアルフに背中を押されながら部屋へ戻っていく。

そして、その場に幼馴染みの三人が残った。

 

「……それで、エイミィ。今回の調査対象はなんなの?」

「魔導師事件の襲撃者だよ」

「あながち、ボディガードも嘘じゃないってことだ」

 

フェイトも乗艦するアースラは戦闘能力の高い隊員揃いだが、おそらく現段階で危険察知はユンフが一番早い。

襲撃に気づいてしまえば、火力のあるフェイトやなのはが控えている。簡単にやられることはないだろう。

 

「出現場所の限定はある?」

「それがランダムなんだよねぇ。場所じゃなくて、どうやら魔力を選んでいるみたい」

「魔力?それってやっぱり、大きな魔力を好むとか?」

「ああ。襲われた魔導師も高ランクの方がリンカーコアの損傷が激しい。明らかにそれが目的だ」

 

理由はわからないが、命ではなく、魔力を集めてまわっていることから、管理局の反組織ではない。

また、証言から少人数のチームだったことも判明している。

念のためフェイトたちを送り届けるついでの捜査がユンフの本当の仕事だ。

 

「ん?ちょっと待って。過去に海鳴で襲われた人はいるの?」

「最初の被害者だな。丁度半年前になる」

「管理外世界で魔力のある人間を見つけるのは難しいよね。それなのに誰が魔導師なんてよくわかったなぁ」

「どういうことだ?」

 

表情を引き締めて問うクロノに、自分の中でも明確なものでないのか、顎に指をあてながらユンフは首を捻った。

 

「広域探知魔法。それが少なくとも一回使われたってことだね?」

「そうじゃなくても、AAクラスを倒すくらいだ。魔力を感知できる力量を持っているはずだが…」

 

エイミィの助言にクロノが続けた。

じっとユンフは白いタイルを眺める。

 

「だけど、なのはは引っかからなかった」

「彼女の魔力は類稀なほど膨大だぞ。見過ごすことはないだろう」

「そう。なのはは見つかっていない。だけど、相手はなのはの“魔力”に気づいている」

 

そこまで言われて、意味する危険性がわからないほどクロノは鈍くない。

その考えを肯定するかのように、一斉に赤いランプが点灯し始めた。

 

「どうやら想像以上に、事態は先行しているみたいだ」

 

けたたましい音が鳴り響く中、ユンフの声がよくとおった。

 

「エイミィ!すぐに現場の解析、襲撃者のデータ検索を。それと、なのはの居場所も」

「うん!」

「ユンフはフェイトたちを呼び出して、すぐに転移できる準備をしてくれ」

「わかった」

 

これは発端でしかない。

そんな気がしてならなかった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

高町なのはは、苦戦していた。

ジュエルシードの事件でもフェレットモードのユーノと一緒だったし、クロノが、ユンフがいてくれた。

最後にはフェイトとアルフも共にいた。

 

(そっか…私、一人で戦うの初めてなんだ)

 

オレンジの髪を左右に三つ編みした少女を霞む視界で捉えながら、ぼんやりと思った。

バリアジャケットを破壊され、ビルの中に吹き飛ばされたなのはの前で少女がデバイスであろうハンマーを振り上げる。

 

(諦めたくない…フェイトちゃん、ユンフくん、ユーノくん…っ!)

 

心で叫び、なのはは目をつむる。

少女の腕が振り下ろされる瞬間、金色の魔法陣が少女の帽子を吹き飛ばした。

そこには少女のハンマーをバルディッシュで止めているフェイトの姿。

 

「っ、仲間か!」

 

すかさず身を引いた少女に、フェイトはバルディッシュを構える。

 

「……友達だ」

 

力強い後ろ姿になのはの身体から力が抜け、意識と共に地面に崩れ落ちそうになる。寸前、横から伸びてきた腕が折れそうになった意志を支えた。

 

「遅くなってごめん、なのは」

「ユンフくん…」

「待ってて。すぐに回復を」

「ユーノくんも…」

「アルフも来てるよ」

 

上空でなのはを攻撃していた少女をバインドで拘束しているアルフ。

回復魔法をかけるユーノ、踏ん張りのきかないなのはを優しく座らせるユンフに涙が落ちそうになる。

しかし――戦闘は終わらない。

炎の剣が現れ、フェイトとアルフをなぎ払った。

 

「シグナムッ!」

 

少女に呼ばれた薄紅色の髪をポニーテールにした女性、シグナムは少女にかけられているバインドを解除させる。

 

「早く主の元に帰るぞ、ヴィータ」

「ああ!」

 

シグナムが少女――ヴィータの頭に帽子を被せる。

新たな強敵を一瞥し、ユンフは飛ばされたフェイトを見た。派手に飛ばされただけで、ダメージはないようだ。

左方の空中では、アルフがシグナムと同時に現れたもう一人の男と戦っていた。

 

「転移の準備はできているのに…」

「まずはこの空間結界をどうにかしないとダメだね」

 

結界魔法は入ることは容易いが、内側から外にかけての魔力変換効率が高いため、出ることの方が困難である。

分析できないかと目を閉じたユンフの鋭くなった感覚が僅かな殺気を感じ取る。

 

(なんだ、この違和感……見られている…?)

 

シグナムたちがなのはの魔力を狙っているのは確かだった。だが、それではない敵意が存在している。

この場以外のところから。

 

「ユーノ、なのはを頼んだよ!」

「ユンフっ!?」

 

見逃しては危険だと、直感が警告していた。

 

 

◆◆◆

 

 

「おかしいな、この辺りだったはずなのに…」

〈我は感じ取れなかったが…〉

「確かにいたんだ。こればかりは信じてとしか言えないけど」

〈信じるさ。こういうときの坊は、な〉

 

くすっと笑みを零し、アグーバをデバイスモデルからフェンサーモデルへと変化させる。

背丈くらいの大剣をユンフは担ぎ、警戒する。

遠くではユーノがフェイトの助太刀で、ヴィータと戦っていた。

魔法陣の中で守られているとはいえ、長引けば消耗しているなのはの身体に障る。

 

「あんまり時間はかけられないか。結界の解除を優先させよう」

 

そう結論付けて、ユンフが戻ろうとした刹那――

 

〈Protection!〉

 

鼻先で砲弾が破裂した。

 

「な、なんだなんだ!?」

 

アグーバがシールドを展開してくれたから良かったが、死角からの攻撃にユンフは動揺を隠せない。

それもかなり速い。まるで弾丸だ。

 

「とにかく移動!このままじゃ、いい的になる」

〈坊、後ろだ!〉

「うひゃ!」

 

反転して物陰に隠れようとするユンフを、誘導砲撃が追いかけてくる。

 

「このっ」

 

ユンフは左右に細かく動き、散らしていくが、この手の追跡タイプはしつこい。

操作している魔導師を叩かなくては、埒があかない。

一体どこから操れば、建物の裏に隠れたところでも見えるというのか。

はた、とユンフの動きが止まる。

なのはたちとの距離がずいぶん遠のいている。

 

(引き離されている…?)

 

最初に比べ、数の減った砲弾。

十分に引きつけ、ユンフは方向を180度変更し、全速力で空を駆る。

すると、慌ててスピードを上げ、挟み撃ちにしようと新しい砲弾が出現した。

 

「やっぱりっ!アグーバ!なのはたちのところに戻るよ!」

 

翻弄されながらユンフが辿り着いたのは、スターライトブレイカーを放たれる瞬間だった――。

 

 

 

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