とある最強の喧嘩人形   作:成宮凛夏

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episode4: 『友と信頼』

 

 

 

 茜色に染まる空の下。

 深い眠りに落ちていた大魔人が重い瞼を開けるのと同時に眼前に見慣れた頭が見えた。

 

「やあ! 目が覚めたかい?」

 

「……新羅か。なんでテメェが俺の身体を背負って歩いてんだ?」

 

 静雄を背負う白衣の少年、岸谷新羅は眩しいほどの笑顔と目を輝かせながら高らかに声を張り上げる。

 

「それは決まってるじゃないか! メスをへし折る鋼の肉体の真実を求めて、静雄の解剖を……」

 

「……死ぬか?」

 

「冗談です、ごめんなさい。っていうかさ……何したら、あそこまで火傷すんの? もし俺が偶然にも通りかからなかったら、今頃は面倒なことになってたよ」

 

 気付けば、静雄の背中には適切な応急処置が施されていた。さすがは次期――闇医者になる男。本人は医者を志しているようだが、あまりの変態ぶりに静雄は医者ではなく、闇医者だろうなどと思っている。

 

 笑顔から一変し、真剣な表情の新羅。静雄はろくでもない思考を振り払い、どう答えるか迷った。まさか、おとぎ話に出てくるような魔術師と喧嘩して重度の火傷を負いましたなんて信じるわけが――。

 

(ねぇな。いや……曲がりなりにも俺を助けてくれたのは事実だ。本当のことを言ってみるか)

 

「当麻の彼女が腹空かしてたから、一緒に飯でもって話になってよ。そんで気付いたら魔術師と喧嘩してた」

 

「うんうん。話がさっぱりわからないや。当麻の彼女とご飯の話からいきなりファンタジーな話が始まったね。ファミレスに魔術師でも居たのかい? それは凄いなあ……やめっ、首がちぎれちゃう!?」

 

 新羅にはまったく悪意はない。しかし、静雄の怒りのパラメータは静かに上昇を始めた。そんな静雄に気付いてか、気付かずにか、新羅は無言で静雄を背負いながら歩き続ける。

 まるで、触らぬ神に祟りなしと言わんばかりに。

 

 ふと、静雄はあることに気付いた。目が覚めた時点で気付くべきことだったのだが。

 

(インデックスの奴、いねぇ!!)

 

「おい、新羅」

 

「ん?」

 

「俺を見つけた時に小さいシスターが居なかったか――」

 

 

   *

 

 

 第七学区学生寮。インデックスにとっては始まりの場所と言っても過言ではなかった。上条当麻という一人の人間との出会いに、独りだったインデックスに家族のように温かいほんわかとした気持ちが芽生えた。

 僅かな時間で信用を築くのは難しいだろう。だが、その僅かな時間で不幸少年は信用を築いた。

 

 インデックス本人は無意識なのだろう。

 静雄が倒れたのと同時に頭がパニックになり、足は自然と第七学区学生寮へと向いていた。

 彼なら――上条当麻なら助けてくれる。そんな思いがインデックスにはあった。

 

 階段を上るにつれて心がじんわりと温かい気持ちに満たされていく。あともう少しで当麻に会える、インデックスは当麻の部屋のある階の廊下へ勢いよく飛び出す。

 

「な……なんで……」

 

 インデックスは絶句した。

 

 目の前の光景を理解しようと必死に頭を働かせようとする。

 

 しかし、頭の中は真っ白になる。

 

 なぜなら――目の前にステイル=マグヌスが居るのだ。

 

「やあ、インデックス」

 

 魔術師は数時間前の出来事など、まるでなかったかのように無傷でその場に立っていた。口に紫煙を吸い込み、宙に吐き出される。

 インデックスは蛇に睨まれた蛙のように動けず、立ち尽くす。当麻の部屋まであと一歩というところで立ちはだかる壁。

 

「どう……しよう……あともう少しなのに。早くしなきゃ、静雄が」

 

「インデックス、キミの探しているお友達はまだ帰ってきてない。それに――あの化物だって身体に相当なダメージを受けてるはずだから、ここまでは来れないだろうし」

 

 周囲に視線を走らせるが、人の気配もなにもない。壁には札がまんべんなく散りばめられ、戦闘の用意はすでに出来ていた。しかし、インデックスは準備はおろか、魔術を使えない。

 まさに絶体絶命とも言える状況だった。

 

「もう観念したらどうだ?」

 

 魔術師は口に加えている煙草を地面に落として靴で火を消す。こんな何気ない動作の一つでもインデックスはビクッと身体を大きく震わせる。

 

(誰か――誰か……助けて……)

 

 

 

 その時だった。

 場の雰囲気が一瞬で変わった。

 正確に言うならば、その存在が事態を混沌に変える。

 

 

「おい。クソ野郎」

 

 魔術師の背後から怒りを押し殺したような声が聞こえた。恐る恐る振り向くと、先刻まで激闘を繰り広げた相手が廊下の手すりで仁王立ちしていた。

 

「第二ラウンドだ」

 

 




次話からかなり長くなります。
|ョω・`)
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