【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#04

「はい、もしかしたら──いや、確実に僕は普通の人間ではないかもしれません」

 

「「ッ!?」」

 

「(一騎、如何言う心算だ?)」

 

(黙って見ていろ)

 

ゴーストの困惑を他所(よそ)に、一騎は悲しそうな目をしつつ驚く二人の前に右手を差し出す。

 

「僕の手を見て貰えますか?」

 

「「?」」

 

「このままでは何もありません。ですが、こうすると──」

 

差し出した手に左手で陰を作り意志を籠めると右手の陰になっている部分だけをゴーストライダーへと変身させると、骨だけになった手の上に炎の玉を作り出した。

 

「こ、これって!?」

 

「……これでさっきのアルターを倒したんですか?」

 

「(成程。先の戦いの説明、と言う事か)」

 

「はい、その通りです」

 

驚愕する二人の前で左手を退()けて光を当てると右手は元に戻った。

 

「その、これって……」

 

「力の原理も理由も分かりません。ですが、直感的に使い方が分かるんです」

 

「「……」」

 

押し黙る二人、それも当然である。いかに埒外物理(らちがいぶつり)の相手と戦おうとも、その本質は少女である彼女たちにとってこの現象は想定を超えていたのだから。そんな二人の前で一騎は一度、深呼吸するとそれぞれの目を見る。

 

「僕は知りたい。どうしてこんな力を持っているのか、僕がどんな人間だったのかを。だから──」

 

言葉を続けようとする一騎を今度は、わかりました、と響が手で制する。

 

「じゃあ、やっぱり師匠に連絡して正解でしたね」

 

笑顔で答える響に対して困惑した表情を浮かべる一騎。足りない言葉を埋めるように立ち上がった響は一騎に向き直る。

 

「わたしたちのいるS.O.N.G.(ソング)には、そう言う専門家の人がいっぱいいるんで、もしかしたら何かわかるかもしれませんよ!」

 

「でも、僕みたいな何もわからない存在なんて迷惑なんじゃ……」

 

力強く宣言するように話す響、その姿に一騎は困惑と躊躇(ちゅうちょ)を示す。その姿を見た響は、こほん、軽く咳払いしてから改めて真っ直ぐ一騎に向き直る。

 

「わたしは立花響、16歳です!あと、誕生日は9月の13日で、血液型はO型!趣味は人助けで好きなものはご飯&ご飯です!」

 

満面の笑顔で、自己紹介です、と言う響に呆気に取られる一騎だったが、その横でほほ笑んだ未来が、じゃあ私も、と一騎に向き直る。

 

「私は小日向未来、16歳です。誕生日は11月の7日のA型です。それと、さっきは助けていただいてありがとうございました」

 

響に(なら)って同じく笑顔で自己紹介と先ほどの礼を述べる姿につられて一騎も笑ってしまうが、では、と前置いて二人の目を交互に見る。

 

「僕の名前は外狩一騎、だと思います。誕生日とかはわからないですけど、二人に会えて本当に良かったと思っています」

 

常の彼を知る者ならば同一人物か疑ってしまうような爽やかな笑顔で自己紹介する一騎の姿に二人も心なしか笑顔になる。

 

「それじゃ、覚えてること、一つずつ上げていきましょう!」

 

まずは名前かー、と意気込む響をたしなめつつ嬉しそうな未来、心からの笑顔を浮かべる二人の言葉に、うーん、と唸りながらも同じように笑顔を浮かべる一騎は何かを思い出す振りをする。

 

「(狙い通りか?)」

 

(半分は、な。だが──)

 

ゴーストの言葉に対し疲れたように返す一騎だったが、二人の笑顔を見て一度、言葉を切る。

 

「(だが?)」

 

(彼女たちは怪物を拒絶しなかった……やはりここは救うに値する世界だ)

 

一騎のまさしく心からの言葉に、然り、と力強く頷くゴースト。その声色には心なしか喜色が浮かんでいるようだった

 

「(良い人間達だ)」

 

(そうだ、俺たちはこの笑顔を──人々の営みをこれ以上奪わせないためにどんな嘘を貫いても罪人を狩る)

 

そのためのゴーストライダー(俺たち)だ、と力強く、祈るように、呪うように心の中でゴーストと世界に宣言する一騎だったが、笑顔に隠されたその決意を二人は知る由もなかった。

 


 

自己紹介が終わった三人はやってきた後処理専門のチームに後を任せて迎えの車に乗ってその場を離れていた。車の向かう先はS.O.N.G.の本部であったが、その車内には後部座席で目隠しをさせられている一騎と、時折、申し訳なさそうに後ろを振り返る二人の姿があった。

 

「すいません、一応、規則と言うか安全のためなので……」

 

「あぁ、別に気しないでください」

 

申し訳なさそうな響の声に対してまったく気にしていないように振る舞う一騎だが、それもそのはずである。ある種の訓練を受けた人間であれば周囲の人間や環境から発生する音、匂いなどからおおよそのルートを把握することは可能であり、彼自身もこれまでの経験から似たようなことが出来るからであった。

 

「(抑々(そもそも)、只の布であれば、我らには関係ないからな)」

 

(まぁ、そんな奴は珍しいがな)

 

それ以前にゴーストによる超感覚を持つ彼にとってただの目隠しなど有って無いようなものだが、そうとは知らない二人からは安堵の声が漏れた。そんなやり取りをしていると目的地に着いたのか不意に車が止まった。

 

(……街中?いや、地下、か)

 

「あ、着いたみたいですよ」

 

「そうですか。あの、この目隠しは……?」

 

「はい、外してもらって大丈夫ですよ」

 

目隠しを外して一瞬、眩しそうに目を細める振りをした一騎が目にしたのはどこかの地下の駐車場と思われる場所だった。三人が下りたことを確認した車がどこかへ走り去ると響が前に出る。

 

(確か、本部は潜水艦だったはずだが……?)

 

「それじゃ、案内しますね」

 

(いぶか)しみながらもそんな態度はおくびにも出さず周囲を軽く見渡してから、お願いします、と軽く頭を下げる一騎。そんな内心を知らない二人は始めて来た場所が気になっていると判断したのかそのまま先導する。

 

(場所の違い……これも転生者の影響、か)

 

一騎が歩きながら自分の知識との差異について考えていると先頭を進む響が何を思ったのか振り返る。

 

「そういえば、一騎さんってガイコツになる時……う~ん、そう、変身!変身する時って疲れたり痛かったりしないんですか?」

 

「変身って……」

 

「(変身、か。悪くは無いな)」

 

(……少し黙っていろ)

 

変身の辺りで妙なポーズを取る響にやんわりとツッコミを入れる未来。そんな二人に一瞬、呆気に取られる表情をする一騎だったが、すぐに気を取り直す。

 

「え、っと、そうですね……とりあえず、今は特に異常はないですね」

 

軽く腕を回して見せたりしつつ答える一騎の姿にどこか安堵した様子の二人。そのやり取りの中、視線だけで周囲を見渡していた一騎の目には偽装された監視カメラや各種のセンサーが見て取れた。

 

「(芸が細かいな)」

 

(……仮にも国連機関の施設だろうからな)

 

相変わらずのゴーストとのやり取りの中、大き目のシャッターの前で三人の足が止まった。

 

「ここ、ですか?」

 

「いえいえ、ここからがすごいんですよ!」

 

どこか楽しそうな響が通信機を壁の一部に偽装された読み取り装置にかざすと、シャッターが開き、エレベーターが現れる。

 

「これは……すごいですね」

 

「秘密基地っぽくてカッコいいですよね!」

 

近未来的な設備に対して驚いた様子を見せる一騎に対してエレベーターに乗り込んで得意気な顔をする響に未来は苦笑いする。

 

「……立花さんっていつもこんな感じなんですか?」

 

「ええ、響はいつもこんな感じです」

 

「え?何の話?」

 

ううん、なんでもない、と乗り込む未来に続いて慌てて一騎が乗り込むと、シャッターが閉まりエレベーターは更なる地下へと下りていくのだった。

 




●#04について
・変身を見せる
ウソを信じさせるために多少の真実を混ぜる、という手法です。どちらかと言えばインパクトの大きさで誤魔化している節もありますが、何かしらの説明は必要なのでこの方法を取ったと思われます。

・自己紹介
原典にあったシーンから持ってきましたが、相互理解の方法として適切ですし、何もわからない人間を安心させる方法としても正解だと思ったので採用しました。

・S.O.N.G.本部
原典から大きく変わったところの一つです。活動縮小に伴う予算削減の影響で都内の一般施設に偽装した地下に移転しました。施設自体はもともとのスペースを改造したもので仮設司令部と同程度の設備はあります。

・変身
地の文では変身と書いていますが、一騎からするとゴーストと一体化するイメージなので合体とか憑依、顕現の方がしっくりくるかもしれません。ちなみに、響のポーズは特撮っぽい感じのイメージです。

・地下へのエレベーター
扉の隠し方は原典の旧本部を参考にしました。地上施設は3階建てぐらいのビルをイメージしていますが、上階にはよくわからないダミーの企業か政府機関が入っていると思います。
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