【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#06

「……でも、はっきりとは思い出せないんですが、どこか聞き覚えのあるような気がします……教えていただけませんか、そのカズマと言う人のことを」

 

静かだが力強い一騎の言葉に一度深呼吸した弦十郎が、少し長くなるが、聞いてもらえるか?、と問うと一騎ははっきりと頷いた。

 

「わかった。まず、我々S.O.N.G.について説明したいが、君はノイズについてどれぐらい知っている?」

 

「ええと、検査の時に少しだけ。確か、触れた物を灰にする神出鬼没の存在だと聞きました」

 

「そうだ。そして、ノイズに対抗するために国連が編成したのが我々S.O.N.G.だ。ノイズは特定特異災害と呼ばれ、オーバーテクノロジーで作られた無人兵器だ。奴らは無機物をすり抜ける能力を持つ、そのため、現代兵器は通用しない」

 

我々が奴らを災害と呼ぶのはそのためだ、と付け加えた弦十郎はコップに水を注ぎ、一度飲む。ここまではいいか?、と確認する弦十郎に一騎はしっかりと頷く。

 

「そして、奴らに対抗できるのはシンフォギアだけ……()()()。そう、三年前のあの日までは──」

 

一度、言葉を切った弦十郎は手元のコップに目を落としながら話し始めた。

 

「あるライブ会場にノイズが出現し、現場はパニックとなった。幸い、現地には二名のシンフォギア装者(そうしゃ)がいたが、状況としては大規模な被害は免れそうもなかった。しかし、そこに一人のアルター使いが現れてノイズを倒し始めた。その男こそ──」

 

「シェルブリットの、カズマ……」

 

「そうだ。彼のおかげで装者一名を含めた数十名の()()()を出したが、最小限の被害で事件は終わった……それから二年間、彼は姿をくらましていたが、ある時、響君を助けた彼を保護することになった」

 

そう、今の君のように、と語りながら真っ直ぐに一騎を見る弦十郎。その視線に向き合う一騎の目にも真剣な思いが込められていた。一騎の視線を正面から受けた弦十郎は小さく笑みを浮かべる。

 

「その後、我々はいくつかの大きな事件に遭遇したが、そのどれもが彼の協力によって収束している。若さゆえに暴走しがちだが、自分に正直であり続ける……そんな男だ」

 

思い出すように語る弦十郎の目は一騎の姿に別の誰か──カズマを重ねているようにも見えた。

 

「そうですか……それで、彼は今、何処にいるんですか」

 

「……彼は破天荒なところがあってな。残念だが、半年ほど前にHOLYに異動になった」

 

「そう、ですか……ところで、HOLYとはどんな組織なんですか?」

 

目に見えて落ち込んだ様子を見せる一騎だったが、本心から気になったHOLYの単語に興味を示す。

 

「そうだな、君はアルターについて覚えていることはあるか?」

 

「そうですね……以前に聞き覚えはある、と思います。それと、実際に戦いましたが、急に出てきて驚いたぐらいで……詳しいことはさっぱりです」

 

予想通りの返答だったのか、なるほど、と頷く弦十郎。

 

「我々も詳しいことはわかっていないが、アルターはアルター能力によって周囲の物体を分解して再構成された存在、のことだとされている」

 

「なるほど……なんとなく、分かったような気はします」

 

ひとまずの納得を見せる一騎に、すまないな、と申し訳なさそうな顔で言う弦十郎だが、すぐに頭を切り替える。

 

「そもそも、このアルター能力はカズマだけのものだと思われていた。しかし、八ヶ月前、我々が要請を受けて南米のバルベルデへ向かうとそこにいたのはノイズではなく暴走したアルター使いだった」

 

(なるほど……廃墟のアレは隆起現象か)

 

納得した内心をおくびにも出さない一騎だが、特に警戒していない弦十郎は気づかないまま説明を続ける。

 

「幸い、こちらの説得で保護することには成功したが、それを機に各地で大規模な地面の隆起現象とアルター使いの発生が確認されるようになった。そして、現状を危険視した国連によって作られたのがアルター使いの専門機関、HOLYだ」

 

(いい線はいっている、が、始まりが違う)

 

「HOLYはアルター使いの保護を名目に活動しているが、君も遭遇したようにアルター使いには力に溺れる者もいる。そんなアルター能力者による犯罪の取り締まりを行っているのがHOLYの実働部隊──カズマのいる所だ」

 

(つまり、そう言うこと、か)

 

分かってしまえば何と言うことはない、今回の転生者はアルター使いと戦うためにHOLYを作った、それだけの話であった。

 

「カズマが、そこに……」

 

「そうだ、実働部隊にはカズマのように民間人のアルター使いが数多く所属している。それゆえにいろいろと噂もあるが、実績を上げて今では世界中に支部を作りつつある」

 

まぁ、その代わりにS.O.N.G.の出番は減ったがな、と続けて一度水を飲む弦十郎。一騎にはその表情は先ほどまでと変わらないはずだが、どこか哀愁のようなものがにじんでいるようにも見えた。

 

「……あの、アルター使いではない僕がHOLYに入ることは出来ますか?」

 

「君が、か……出来ない訳じゃないが、やめておいた方がいい」

 

おおよその状況を理解した一騎は転生者に近づくために質問してみたが、それに対する弦十郎の返答は芳しくない。

 

「?なぜですか?彼に──カズマに会えば何かわかるかもしれないんですよ?」

 

力強く静かに問いかける一騎に対して弦十郎は言いにくそうに小さく顔をしかめる。

 

「……アルターの研究機関でもあるHOLYはその性質上、秘密主義の下に部門ごとに分かれて運用されている。カズマのようなアルター使いならまだしも、君のように限定的な力しか持たない人間では彼と接触するだけでも難しいだろう」

 

そう、ですか、と納得しつつも落ち込んだ様子を見せる一騎に、そこで一つ提案がある、と空気を切り替えるように弦十郎が手を叩く。

 

「提案、ですか?」

 

「そうだ。記憶が戻るまでここにいるつもりはないか?もちろん、カズマにも連絡しておくから、都合がつけば会えるようにしよう」

 

(確かに都合はいい、がどうしたものか……)

 

どうだ?、と続ける弦十郎に対して困惑した表情を浮かべる一騎。確かに状況だけ見れば彼にとって好都合ではあるが、彼らの本分としては過度な干渉を避けたいことも事実であった。

 

「ありがたい話ですけど……でも、ご迷惑じゃないですか?」

 

「なるほど。では、うちの協力者である未来君を助けてもらったお礼ならどうだ?」

 

「……わかりました。それじゃあ、次に住む場所が決まるまで置いてもらっても構いませんか?」

 

「もちろんだ。S.O.N.G.へようこそ、一騎君」

 

これ以上は断り切れないと悟った一騎が諦めて提案を受け入れるとニヤリと笑った弦十郎はソファーから立ち上がる。

 

「さて、細かい話は後にして、まずは飯だ!君も食うだろ?」

 

「……そうですね、よく考えたら何かを食べた記憶もありませんし」

 

「(此の男、良き人間だが……)」

 

(あぁ……まったく、儘ならんものだな)

 

ぐぅ、と腹の虫を鳴かせながら答える一騎に、それはいかんな、と先導する弦十郎。そんな彼に従いつつ心の中で辟易する一騎とゴーストであった。




●#06について
・今作のアルター使いについて
原典のアルター使いとは違って新生児である必要はなく、隆起現象の影響を受けた人間が「向こう側」の世界を認識することでアルター能力に目覚めるシステムになっています。

▽シンフォギア本編との道のりの違い
・ライブでの死者が少なく、奏も植物状態で入院しているため、響のサバイバーズギルトが少し弱い
・一期の事件では響が説得しつつあったクリスとフィーネを殴り飛ばしているため、のちに協力が得にくい
・また、リディアンにて隆起現象が発生し、三期時点で日本でアルター使いが確認される
・一期の補足としてクリスは説得中でフィーネは生きているが、司令に監視されている。月は無傷
・二期の事件は神獣鏡は使われておらず、ほとんどは殴り飛ばしているため、響と未来は神の力の器にはなれない
・事件の発端はなくなったが、F.I.Sはフィーネのバックアッププランで動いていた
・二期中盤にはクリスが仲間になっているが、カズマの影響を大きく受けている
・三期ではマリア達の協力もないため、シャトーの起動にすら至っていないが、イグナイトは研究中
・中盤辺りで響の事情を知ったマリアが協力的になる
・四期はカズマが事前に結社と騒動を起こしつつ、本編中でアダムを殴り倒したため、神の力にまつわるデータが少ない
・また、アダムとの戦いの余波でバルベルデにて隆起現象が確認される
・五期については事件も短くなり、棺との戦闘後にシェム・ハを無理やり「向こう側」の世界に殴り飛ばしたせいで南極で隆起現象が起こる
・五期(秋から冬)の後の数か月で世界各国で隆起現象が起こりアルター使いが自然発生

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