【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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Vol.3:Reckless Fire Part.2
#01


夢を、夢を見ていたんです。

とても激しく、荒々しく、悲しい夢を、わたしは見続けていたのです。

地面から延びる光の柱に飲まれて消えていく街や人、自分であることを掴むために切り捨てたこれまでを。

ああ、全ては前に歩くために。全ては前に進むために。内なる思いを秘めたあの人の夢を。

 


 

「?気のせい、か」

 

深夜、丑三つ時とも呼ばれるこの時間帯、本来、文明の匂いの遠い南米のバルベルデであれば天上に輝く天然のプラネタリウムを楽しむことも可能だが、HOLYのジープの車列が走っているこの日、この場所においてはそんな風情は感じられなかった。

 

「隊長!カズマ()()、そろそろ着きますよ!」

 

車列の二番目で何かの気配を感じて空を眺めていたカズマと呼ばれた青年は声の主である副長を務める男の方へ顔を向ける。

 

「うっせーな、聞こえてるっての!それより、今回のヤツは強いんだろうなぁ?」

 

明らかに呼びかけを上回る声量で発せられた言葉に副長は一瞬、顔をしかめるが、一応は上司であるため文句を飲み込む。

 

「……そりゃ、そうですよ。なんせ、補給線がないはずなのに大量に銃を持ってるような連中ですからねぇ」

 

錬金術師が関わってる、なんて噂もありますがね、と付け加える副長に対してカズマは獰猛(どうもう)な笑みを浮かべる。

 

「へっ……嬉しいねぇ。最近は結社の生き残りも減っちまったからなぁ……」

 

そんだけの奴ならさぞ楽しめそうだ、とどこか遠くを見ながら嬉々として戦いに備えるカズマに副長は辟易する。

 

「まぁ、楽しそうなのはいいですけど、俺たちまで巻き込まんでくださいよ。この間なんか三人も医務室送りになってますからね」

 

上からもいろいろ言われてるんですよ、と呆れたように愚痴を言う副長だが、そんな文句もどこ吹く風なカズマは空を見上げる。

 

「あーあ、早くフィーネとかシェム・ハみたいに全力でやれるような奴は来ねぇかなぁ」

 

「……頼むからそんな物騒なことを部下の前で言わんでください」

 

また胃薬もらわないとなぁ、などと考える憂鬱な副長の心情など露知らず、まだ見ぬ強者との戦いを夢見るカズマだった。

 


 

「買い出し……ですか?」

 

昼食を終えた一騎が自室として宛がわれた空き部屋に向かおうとしていると待ち構えていた響と未来に買い出しへと誘われた。

 

「はい、だって一騎さんの荷物って何にもないんですよね?」

 

「それで、響と二人で買い出しに誘ってみよう、ってことになったんです」

 

「あぁ、それで……でも、僕の個人的な用事に付き合わせていいんですか?」

 

「(連れ立って動いては目立つからな)」

 

(……まぁ、どうせ言っても聞かんだろうが)

 

一応、納得は示しつつもやんわりと拒否する一騎だったが、彼女たちにとっては否定の内に入らないのか、悩むそぶりもなく首を横に振る。

 

「だって一騎さん、この辺りのこと知らないじゃないですか」

 

「それに、さっき助けてもらったお礼も出来てませんしね」

 

「そうですか……それじゃ、街を案内してもらってもいいかな?」

 

(ほが)らかに笑う二人に案の定、従わざるを得ないと感じた一騎は内心では不承不承(ふしょうぶしょう)ながらも受け入れることにした。

 

「それじゃ、出発──」

 

「おや、外狩さん、お出かけですか?」

 

いざ出発、と言うタイミングで横合いからかけられた声に三人が目を向けると緒川ともう一人、特徴的な長髪と左で結わえたサイドポニーの少女──風鳴翼(かざなりつばさ)が立っていた。

 

「はい、そうですけど……そちらの方は?」

 

「えっ!?翼さんを知らないんですか……って、そういえば、記憶がないんですよね」

 

翼さん?、と頭に疑問符を浮かべる一騎に声を上げた響を筆頭にその場の全員が驚きを隠せない。それもそのはず、国民的アイドルと言っても過言ではない翼を知らない、それだけでも彼らにとっては衝撃だったからである。

 

「そうですか、では、自己紹介を。私は風鳴翼、今は休業中ですが、アイドルをやっています。そして、そこにいる立花と同じシンフォギア装者です」

 

よろしくお願いします、と丁寧に挨拶する翼に対し、反射的に一騎も、こちらこそ、よろしくお願います、と頭を下げる。そんな一騎の様子をじっと見ていた翼の視線に気づいた一騎は頭に疑問符を浮かべる。

 

「あの、僕の顔に何か……?」

 

一騎の言葉で無意識の行動に気づいた翼は慌ててかぶりを振る。

 

「失礼、いえ、その、知り合いに似ていたもので」

 

「あ、それ、私も思ってました」

 

「え!?未来だけじゃなくて翼さんもそうなんですか?」

 

翼の言葉に未来が反応したことで驚く響。どうやら三人とも同じ人物を──おそらく、シェルブリットのカズマを思い浮かべているようだった。

 

「そんなに似てますか?」

 

「いえ、あの男とは似ても似つきませんが……」

 

「確かに、顔とかしゃべり方は違うんですけど……うーん」

 

「何と言うか、雰囲気、とかが何だか近い感じがしませんか」

 

(雰囲気?──まさか、外の世界の理を感じ取ったのか?)

 

「(然り。恐らく、直感で見抜いたのであろう──やはり、人間は侮れんな)」

 

未来が口にした雰囲気と言う言葉に、確かに、と頷く翼と、わかるかも、と同意を示す響、そうですか?、とよくわからない顔をしているのは緒川と内心で納得している当事者の一騎であった。

 




●#01について
・夢を見ていました
前後編の後編のアバンということでこちらでも使用しました。ここでは一人称を意図的に前編とは違う表記にしていますが、これは二つシーンがシチュエーションが同じだけで語り手と主人公が違う別の夢であることを意味しています。

・副長
名前もないモブですが、意外と作中では重要な会話をしています。ちなみに、あとで明言しますが、この時戦う相手はビッグ・マグナムという設定です。

・連れ立って動くと目立つ
前話で情報を集めた一騎は単独で市街を調査するつもりでした。邪魔された理由はネームドの人たちは善人が多い、と言うだけではなく、世界自体が転生者かそれに類する存在に都合がよくなるように動くシステムが原因です。

・翼さん登場
彼女だけでなく一騎に対して友好的な反応が多い理由は直感以外にもフォニックゲインが関係している可能性がありますが、隆起現象に遭遇していることも原因かもしれません。
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