「ええと、ところで、立花さんもシンフォギア装者だったんですね」
「はい、そうなんですよ!あ、でも、他の人には秘密ですからね?」
絶対ですよー、と念を押す響の言葉に頷きながら不思議と一騎も微笑んでしまう。
「それでは、小日向さんもそうなんですか?」
「いえ、私は協力者としてみんなの手伝いをしているだけです」
「(一騎、今の此の者達は原罪を祓われていない。恐らく、其れに
「……そうですか。ということは、シンフォギア装者ってお二人だけなんですか?」
ゴーストの指摘で現状を把握しつつある一騎は当然と言えば当然の質問をするが、その言葉に他の四人の表情が曇る。
(他にも影響があるのか?)
「ええと、実は他にも二人いたんですけど……クリスちゃんは書置きを残して旅に出ちゃってて……」
「もう一人のマリアも三ヶ月前HOLYに出向……そんな状況ではアイドルを続けられませんから」
「そんなことが……すいません、事情も知らずにこんな質問をしてしまって」
「大丈夫ですよ、わたしもいますから。へいき、へっちゃら、です!」
(……ここまでとはな……)
内心の怒りを押し隠して申し訳なさそうな表情をする一騎に対して空元気にも見える笑顔を見せる響。そんな二人の様子にふと思い出したように翼は顔を上げる。
「そういえば、立花、また無茶をしたそうだな」
声のトーンを一段低くした翼の言葉にビクッと反応した響は目に見えて動揺する。
「あ、あの~これには深~い訳がありまして……」
「すいません、私が響に連絡したばっかりに……」
急に申し訳なさそうな顔でしどろもどろになる響と彼女を庇う未来。そんな二人の姿に翼は小さくため息をつく。
「……立花、いくら浸食を抑えられる処置があるとは言ってもその効果は絶対ではない」
頼むから無茶はしてくれるな、と力強くもどこか労わる声の翼の言葉に、響は静かに、しかしはっきりと頷く。
「そういえば、外狩さんたちはどこかにお出かけですか?」
「あ、そうでした。これから一騎さんの部屋に置くものを買い出しに行くんですよ」
「それで、私たちは助けてもらったお礼代わりに道案内をするんです」
なるほど、と納得した様子の翼。その隣で緒川は手帳を開いて何事かを確認する。
「それじゃ、私も同行してよろしいですか?」
(監視兼、護衛役、と言ったところか)
「(然り。だが、恐らくは護衛の意味合いが強かろう)」
「緒川さん、でしたよね?何かあるんですか?」
「ええ、最近は物騒ですし、足があった方が何かと便利ですからね」
「そうしてもらえると助かりますけど……風鳴さんも何か用事があったんじゃないですか?」
突然の緒川の提案に疑われている訳ではないと理解しつつ、信用のためには受け入れざるを得ない一騎だが、とりあえずの抵抗として翼に話題を振る。
「いえ、私は見舞いを終えて戻ってきたところで……後はここで待機するだけです」
「と言うことみたいですけど、どうしますか、一騎さん?」
「……分かりました、それなら、お願いしてもいいですか?」
翼の返答を受けて一騎の方をうかがう未来。予想以上のやりにくさに内心で辟易する一騎だが、ひとまず緒川の提案を受け入れることにする。
「もちろんです。では、行きましょうか」
「(さしもの狩人も善意に勝てんか)」
(……復讐の精霊の言葉とは思えんな)
内心で辟易する一騎だったが、翼に別れを告げて四人になった一行はエレベーターで地上へ出ると、緒川の運転で市外へと向かうのだった。
「──と言う訳で、最後にここでいろいろ買ってから帰りましょうか」
市外を車で回ってひとまずの案内を終えた四人は、そのまま買い出しのためにショッピングモールに来ていた。休日の午後ともなればそれなりの人がいる中で、はしゃぐ響と揃って楽しそうな表情の未来、それに続く形で戸惑いつつもほほ笑む一騎とその後ろ姿を見守る緒川、その姿は守るべき日常を存分に楽しもうとしているようだった。
「それにしても、この通信機ってとても便利ですよね」
なんとなく手にした通信機を手の中で
「そうですよね。協力者の私たちも持たせてもらってますけど……これが私と響を、みんなを繋いでいると思うと何だか感慨深いです」
「未来……」
温かい雰囲気に包まれる四人だったが、街頭のモニターから速報を伝える音が聞こえてくる。
『臨時ニュースです。南米バルベルデで活動中のアルター能力者を擁する武装集団をHOLYが鎮圧しました。繰り返します──』
四人の見上げた画面には速報の文字とともにHOLYの活動を伝えるニュースとその詳細な情報が読み上げられていた。
「HOLYの活動ってどこでもやってるんですね……」
「はい、一般人ではアルター使いは止められませんからね。世界中で必要とされているんですよ」
まぁ、司令や外狩さんのような例外もいますけどね、と付け加える緒川だが、彼自身も忍者の出であることを知っている響と未来は苦笑いになる。
「そういえば、今日の現場にHOLYの人たちは来ていなかった気がするんですけど……」
「それなら簡単ですよ……ちょうど今、ニュースでやるみたいですね」
ふと思い出した一騎の疑問に対する緒川の回答で四人がモニターの方を向くと、速報を読み終えたアナウンサーが次のニュースを読み始める所だった。
『──次のニュースです。本日、午後1時、完成したHOLY日本支部がマスコミに公開されました。今回、支部が完成したことで日本におけるHOLYの活動が全面的に支持される形に──』
「──と言う具合で、今後はS.O.N.G.の活動も人命救助が専門になるかもしれませんね……これで、翼さんもアイドルに戻れるといいんですけど」
あ、今のは聞かなかったことにしてください、と慌てて否定する緒川と思うところがあってか複雑な表情になる三人。会話の途切れたままの四人の脇を通る親子連れ、その娘が無邪気に歌うアイドル、風鳴翼の歌。常ならば微笑ましさを覚える歌が今は四人の表情に影を落としていた。
(転生者の無法がここまで世界を歪めたか……)
本来なら解決している問題。理不尽に歪められた世界の傷を感じた一騎は心の底で元凶である転生者に対する怒りを
「……あの、一騎さん!雑貨だけじゃなくて服とか見てみませんか?」
わたしと未来でコーディネイトしちゃいますよ、と努めて明るく振舞い先導する響、その思いに気づき、緒川さんも試してみたらどうですか?、と乗り気になる未来。そんな二人の姿に呆気に取られるがほほ笑む一騎と緒川。楽しそうに見える四人だったが、彼らの胸中には一抹の寂しさが渦巻いているようだった。
●#02について
・原罪を祓われていない
Vol2で説明した通り、今作での未来は神獣鏡を使用していないため、二人は神の力の器ではありません。そのため、神の力周りの事件はカズマが力技で解決しています。
・行方不明のクリス
作中では描写されませんが、加入の経緯が変化してカズマの影響を大きく受けているため、強さを求めて世界を旅している設定です。
・浸食を抑える措置
敗北して監視されているフィーネが響と会話する中で可能性を感じたことから、融合症例の治療のための研究を行った成果です。あくまで抑える措置であり、このままでは危険なため、神獣鏡を使った除去を考えている可能性もあります。
・通信機
本編での描写を見るに意外と簡単に持たせている可能性があるため、今作では一騎も持っていることにしました。作中では描写されませんが、おそらく戸籍についても何かしらの措置が取られていると思います。
・バルベルデの事件
#01で言及された事件です。作中でも名言されていますが、このような事件が多発しているため、HOLYの勢力は拡大を続け、S.O.N.G.が担っていた日本での対処も支部ができたことで戦力の低下したS.O.N.G.も更なる活動の縮小が予想されます。