【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#03

夕方、S.O.N.G.の本部のあるビルの前で緒川の運転する車が止まる。まず降りてきたのは楽しそうな顔で雑貨屋のレジ袋を持つ響。

 

「いや~楽しかったですね」

 

「もう、響が楽しんでどうするの?」

 

続いて車を降りながらたしなめる未来も同じ袋を持っていることから楽しんだことがうかがえる。後に続く一騎も着替えや日用品の入った買い物袋を持ったまま、穏やかな微笑を浮かべている。

 

「では、僕は一度車を置いてきますので」

 

先に行っててください、と言い残して車を走らせる緒川。軽く伸びをした一騎の前に荷物を後ろ手に持った響と未来が並び立つ。

 

「どうかしましたか?」

 

「えっと、今日の記念にこれ、どうぞ!」

 

「これは……」

 

「私と響から、歓迎の証です」

 

響が差し出したのは赤と青の紐で作られた飛んでいる鳥のモチーフの付いたストラップだった。サプライズに驚く一騎だが、すぐに笑顔を見せる。

 

「ありがとう、大事にするよ。そうだな……これで、どうかな?」

 

受け取った一騎は取り出したストラップを少し弄って通信機に付けると二人に見せる。夕日に照らされるストラップを見て喜ぶ二人、穏やかな空気に包まれるこの状況は一日の終わりとしては最高の光景──のはずだった。

 

「(来たぞ、一騎)」

 

「!?」

 

「あれは……」

 

突如、周囲に鳴り響くヘリのローター音に周囲を見回す三人。ゴーストの警告でいち早くヘリを見つける一騎、ついで、響と未来もその姿を捉えるが、目に映った三機のヘリとそのマークに驚愕する。

 

「HOLY……何でここに?」

 

(ホーリーアイ、いや、絶対知覚との併用か)

 

困惑する二人と内心で気づきつつも表向き困惑を装う一騎。そんな三人の前に先頭のヘリが降り立ちドアが開く。中から部下を引き連れて現れたのは黒いマントと槍を持ち、ガングニールを纏った女──マリア・カデンツァヴナ・イヴその人であった。

 

「マリア、さん?どうしてここに?」

 

「久しぶりね、響、未来」

 

「この人も……シンフォギア装者……」

 

毅然とした、しかし、どことなく様子のおかしいマリアに三人は困惑を深める。そんな三人の様子を見て取ったマリアは真っ直ぐに一騎へと向き直る。

 

「そう、私はシンフォギア、ガングニールの装者。そして──」

 

一度、言葉を切ったマリアは手に持った槍──アームドギアを一騎に向ける。それと同時に背後に控えていた部下がサブマシンガンを構えて一騎に向ける。

 

「──あなたを拘束しに来た、HOLY日本支部の支部長、マリア・カデンツァヴナ・イヴだ!」

 

「マリアさん!?どうして……ッ!?」

 

「(戦闘を見られていたか)」

 

(さもありなん、だな)

 

衝撃的な言葉に動揺を隠せない響と未来。同様に困惑を示す一騎だが、その理由には大凡の見当がついていた。

 

「あの、どう言うことでしょうか?」

 

「決まっている。アルター使いを倒したその異能……個人が持つには危険すぎるその力は、我々HOLYで管理させてもらう!」

 

力強く宣言するマリア、誰が見ても模範的なHOLYとして振舞うその姿は、どことなく無理をしているようにも見えた。

 

「そんな!?一騎さんは何も悪いことはしていないんですよ!」

 

「抵抗するなら、この場で処分させてもらう」

 

「……ッ!?」

 

一騎を庇おうとする未来だったが、冷たく言い放つマリアに肩を落とす。処分と言う言葉に反応して反射的に前に出そうになる響だったが、それを片手で制する一騎。

 

「……一騎さん?」

 

「駄目だ、下手に動くと君たちも危ない」

 

近くを滞空するヘリから注がれる視線と目の前のマリア、さらにその後ろに控えるサブマシンガンに響は圧倒的な不利を悟る。

 

「そうよ……響、アナタたちのやり方では何も守れないのよ」

 

「……くッ!?」

 

悔しそうに歯噛みする響とどこか自分に言い聞かせるような言葉のマリア。そんなやり取りの中、周囲を見渡した一騎は既に決めた答えに向けて行動を開始する。

 

「マリアさん、でしたね?」

 

「ええ、そうよ。それで、こちらに来てもらえるかしら?」

 

返答によっては、と鋭い視線で槍を向けるマリアに対して一騎は真っ直ぐと視線を合わせる。

 

「はい──ですが、一つ条件があります」

 

「……言ってみなさい」

 

「僕が大人しく捕まる代わりにS.O.N.G.(ここ)の人たちを見逃してもらえませんか?」

 

「(成程、彼奴等の懐に入る心算か)」

 

(ああ、調べるにしてもこの方が都合がいい)

 

「「一騎さん!?」」

 

「ッ!?」

 

お願いします、と深く頭を下げる一騎。その言葉に衝撃を受ける響と未来。そして、槍を向けたままだったマリアも一瞬、息を詰まらせる。

 

「師匠なら何とかしてくれます!だから……」

 

「いいんです、響さん。この人たちに着いて行けば会える気がするんです、シェルブリットのカズマに」

 

「一騎さん……」

 

二人のやり取りを見ていたマリアは少し考えると槍を下ろして構えを解く。

 

「……わかったわ。全員、銃を下ろしなさい」

 

「支部長!?」

 

「命令よ。それと、彼らはただの民間人だと思って保護していた──上にはそう報告します。」

 

「……了解、致しました」

 

驚く部下を命令で黙らせるマリアに、ありがとうございます、と一騎は丁寧に礼を言う。

 

「それで、こちらは約束を守ったわ」

 

「はい、今からそちらに行きます。ただ、その前に──」

 

一騎は一度言葉を切ると、振り返ってほほ笑みながら響と未来を交互に見る。

 

「小日向さん、立花さん、昼間も言いましたけど、僕は二人と──S.O.N.G.の皆さんと会えて本当に良かったと思っています」

 

司令と緒川さんにもそう伝えてください、と頭を下げた一騎は、それじゃ、さようなら、と穏やかな笑顔を向けると、泣きそうな顔の二人に背を向けて無抵抗である事を示すために両手を上げたままマリアの方へと歩き出す。

 

「……挨拶は済んだかしら?」

 

「はい、もう大丈夫です……ありがとうございました」

 

「ッ……彼を連行しなさい」

 

「了解」

 

マリアは部下に指示を出して一騎に手錠をかけさせると、そのまま部下たちととも離陸準備の済んだヘリに乗り込んでいくが、その途中、通信機と買い物袋を奪われた一騎は窓から離されて真ん中の席に押し込まれた。

 

「一騎さんッ!必ず、迎えに行きますから!」

 

「帰ってきたら、みんなでふらわーのお好み焼き、食べましょうね!」

 

「(流石に心が痛むか?)」

 

(そんな繊細さはとうに捨てた……だが、彼女は違ったようだな)

 

「……私がやらねば……ッ」

 

(……少し眠る、後は任せた)

 

離陸したヘリの中でドアが閉まる寸前に聞こえた二人の言葉に一騎は内心で自嘲(じちょう)するが、正面に座るマリアがチームの長として毅然に振舞おうと無理をしている姿に憐れみを感じつつ到着まで目を閉じるのであった。

 




●#03について
・ストラップ
この手のイベントに必須な思い出のアイテムとして考えました。デザインのモチーフはワイルドアームズのロディをイメージしています。あと、旧版では盛大に誤字っていたことに気付きませんでしたがそこも修正しました。

・マリア登場
今作では響が体内のガングニールを使っているため、もう一つのガングニールはマリアが使っています。マリアがHOLYに所属する理由は旧F.I.Sのメンバーの身の安全のためです。

・支部長ムーブ
この一連の流れを作りたいがためにHOLYに入れました。あと、ここで笑わなかったらこの先笑うところはないです。
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