【新装版】GR:DED   作:雁野 命

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#05

 

「これは……一体!?」

 

驚愕するウェル博士だが、それも当然である。地響きとともに緊急事態を告げるサイレンが響いたと思えば壁を破って現れたゴーストライダーに掴まれる。そんな状態で平静を保てる人間はそういるものではなく、彼もそうではなかった。

 

「地下の動力炉。アルター使いはお前の案か?」

 

「だとしたら、どうします?私を殺しますか?」

 

常人であれば恐怖で卒倒しかねない声のゴーストライダーに対し煽るようなウェル博士の言葉。ピクリ、と反応するゴーストライダーだが、即座に首を絞める手に軽く力を籠めて眼前に引き寄せる。

 

「ッぐ……!?」

 

「お前は殺さん。だが、報いは受けてもらう」

 

「う、うわぁぁぁーーー!!」

 

冷たく言い放つゴーストライダーがウェル博士に贖罪の眼(ペナンスステア)を覗き込ませる。贖罪の眼(ペナンスステア)、本来は罪を付きつけて魂を焼く力があるが、それ単体に命を奪う力は無い。なぜなら、それは人生をやり直させる更生のための力でもあるからだ。そして、罪を付きつけるためには見る必要がある。今、ウェル博士の魂を見たゴーストライダーはその眼によって彼の全てを知るのだった。

 

(……この男、やはり外道だったか)

 

「(だが、其の手で命を奪ってはいない)」

 

ウェル博士の罪に絞り出すようなゴーストライダー──一騎の言葉に諭すような口調のゴースト。だが、怒りをぶつけるべき相手は魂を焼かれ、意識のないままゴーストライダーの手に掴まれていた。

 

(……分かっている。俺も、ゴーストライダーだ)

 

振り切るように言い放つゴーストライダーはウェル博士を左肩に担ぐと部屋にある端末を炎で溶かす。蒸発しつつ燃える端末をそのままに部屋から出たゴーストライダーは適当な通路に博士を捨てると、この建物の地下にあるアルターの精製施設へと向かうのだった。

 


 

燃え盛る建物、吹き飛ばされて気絶している警備員。精製されたアルター使いで構成される戦闘部隊が壊滅している様は正に阿鼻叫喚の地獄絵図であった。地下にある精製施設を破壊してそんな地獄を作り出したゴーストライダーは、地表中央の建物にあるデータセンターへと向かっていた。

 

「止まれ!止まらんと──ぶべっ!?」

 

「ひ、ひいぃぃ……!?」

 

「無駄だ。死にたくなければそいつを連れて逃げろ」

 

直にここは沈む、と冷たく言い放つと気絶する精製されたアルター使い──ダース部隊の一人と近くにいた研究スタッフらしき人物を放置して階段を上る。そして、しばらく通路を進んでデータセンターが目の前になった三叉路で右の通路から、緑色に輝く球体がゴーストライダーの眼前に飛んでくる。が、それを右手で軽く受け止めるとあっさりと握りつぶした。

 

「よくも僕の大事なタマを!」

 

ゴーストライダーが声の方へ顔を向けると、HOLYの制服を着たアルター使いが同じような7つの球体を浮かべながら、3m程離れた所からゴーストライダーを睨みつけていた。

 

「僕の名前は──ぐえっ!?」

 

「うるさい、黙っていろ」

 

「あぁ!?B級アルター使いが一瞬で!?」

 

ゴーストライダーは自己紹介をする間も与えず、巻いていたチェーンでアルター使いを引き寄せて叩き伏せる。一瞬の出来事に驚く事務スタッフらしき人物を置いてデータセンターへと入ったゴーストライダーはコンソールを操作する。やがて、目当ての情報に行きついたのか画面を静かに見つめる。

 

「これは、好都合だな」

 

ウェル博士の部屋と同じようにサルベージ不可能な程に部屋を焼き尽くすと倒れているB級アルター使いから無線機を奪う。

 

「ひっ!?」

 

怯える事務スタッフを放置してゴーストライダーが指笛を吹くと、違和感を感じたスタッフは背後を振り向く。すると、通路の向こう、何も無いはずの空間がぽっかりと開いて中から車輪が炎に包まれたアメリカンバイク──ヘルバイクが現れてゴーストライダーの真横、右の通路に頭を向ける形で滑り込む。

 

「……バイ、ク?」

 

「ここは沈む。そいつを連れて逃げると良い」

 

バイクに跨りながらスタッフに忠告するゴーストライダー。だが、その行動に疑問に感じたスタッフは何とはなしに声をかけてしまう。

 

「あの、あなたはどうするんですか?」

 

「俺は……こちらから出る」

 

ゴーストライダーの言葉にヘルバイクのエンジンが轟音を上げる。地獄(ヘル)の名を関するに相応しいこの世の物とは思えない音にスタッフは身を縮める。

 

「ひっ──え?」

 

困惑するスタッフを他所に轟音を響かせるヘルバイクがその軌跡に炎の(わだち)を残しながら真っ直ぐに通路を疾走して視界から消える。やがて響く大きな破壊音と衝撃にスタッフが通路を覗き込むと、その先には大きく破壊されている壁だったものと、外へと続く炎の轍、そして、文字通り空を走るヘルバイクに乗るゴーストライダーの後ろ姿があった。

 

「……あ、早く逃げないと!?」

 

あまりの衝撃に呆気に取られていたスタッフだったが、先ほどのゴーストライダーの言葉を思い出して脱出のために倒れているアルター使いを引きずっていくのだった。

 


 

付近を飛行中の本部が壊滅、その一報を受けたHOLYバルベルデ支部は蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。さらに、既に墜落を始めていることもあって支部長会議は紛糾し、他の支部からは救助艇が送られるかすら怪しくなっていた。そんな中、つい数時間前に任務を終えて帰還したカズマは待機要請が出ているにも関わらず、墜落している本部を車庫から眺めていた。

 

「燃える髑髏(どくろ)のアルター使い、か……へっ、ビッグ・マグナム程度じゃ物足りなかったからなぁ」

 

満足させてくれよ、猟犬さんよぉ、と呟くカズマ、その顔には獰猛な笑みが浮かんでいた。報告にあった燃える髑髏のアルター使い──それが以前に自分を転生させた存在から聞いた転生者を狙う猟犬であると確信しており、楽しそうに見上げる先には雲一つない夜空に月が輝いていた。

 

「つっても、ここからあそこまで飛ぶわけにもいかねーからなぁ」

 

どーすっかなぁ、などとボヤいていると無線機に緊急連絡が入ったことを伝える信号音が鳴り響く。咄嗟に応答すると地獄の底から響くような声が流れてきた。

 

『NP3228、表に出てこい。繰り返す。NP3228──』

 

「来やがったなぁ!」

 

通信の内容を聞いて飛び出したカズマは支部の広場に出て仁王立ちになる。

 

「さぁ!俺はここだぜ、燃える髑髏のアルター使いさんよぉ!!」

 

大声で宣言したカズマの前に急に影が差す。気配に気付いて空を見上げるとヘルバイクに乗ったゴーストライダーが目の前に飛んで来るところであり、そのまま横滑りしてバイクが止まる。顔を上げた異形の魂を見抜くような視線と異質な気配に思わず飛び退いたカズマの全身が総毛立つ。

 

「へ、へへ……見つけた。見つけたぞ!!」

 

「ああ、そうだな」

 

獰猛な笑みを浮かべて楽しそうに叫ぶカズマと対照的に感情を感じさせない声のゴーストライダー。その距離およそ6m程。悠然とバイクを降りるゴーストライダーにカズマは右手を突き出し、人差し指から小指へ握りこんで最後に親指を握って拳を作る。

 

()()()()からつかみ取ったこの力、随分と持て余しちまったが──」

 

拳を作ったカズマの動きに連動して体が発光し、周囲の地面が抉れていくと、右目から右肩、右腕へとアルターが再構成されていく。

 

「──アンタみたいな化け物ともやり合えるんだ──」

 

再構成されたアルター──シェルブリット・第二形態となった右腕の手の甲を相手に見せつけるようにして、拳を上に向けて内側へと肘を曲げる。

 

「──転生者(アルター使い)も悪かねぇ、そう思うだろ?あんたも!!」




●#05について
・その手で命を奪ってはいない
今作におけるゴーストライダーを象徴する言葉です。罪人とはいえ感情のままに殺していては復讐を越えた私刑になってしまうため、彼らとしてはどこかに基準を設ける必要があったという話です。

・B級アルター使い
スクライドよりゲスト参戦の橘さんです。出番は一瞬ですが、インパクトのあるセリフがあるのでここで使わせていただきました。

・NP3228
スクライドでHOLYに捕まったカズマに付けられたコードです。ここでは原典のカズマになり切っている男にだけ通じる符号として使っています。

・見つけたぞ!!
今作のカズマは原典のカズマになり切っていることを表すため、ここだけでなく随所で原典のカズマが使っていそうな言い回しを多用させています。そのせいか初稿では作者もゴーストライダーに劉鳳みたいな言い回しをさせてしまっていました。
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